平服で来てくださいと言われたら|祝いと弔いで逆になる3つの線

「平服で来てください」と言われたら、普段着ではなく、略式の礼装で行きます。主催者が伝えたいのは「正式な礼服までは用意しなくていい」ということで、「いつもの服でいい」という意味ではありません。女性なら、膝が隠れる丈のワンピースかセットアップに、ジャケットなどの羽織りを一枚、足元はつま先の隠れたパンプス。これが平服の基準になります。
ただし、この平服は、お祝いの場とお悔やみの場で正解が逆になります。結婚式の二次会や祝賀会では、明るい色、ほどよい光沢、アクセサリーで華やかさを足します。法事やお別れの会、偲ぶ会では、濃い色、光らない素材、控えめな小物で華やかさを引きます。同じ「平服」の二文字でも、行き先がどちらかで、選ぶ服の向きが反対になるのです。
まず外さない3点は、膝が隠れる丈、肩に一枚重ねた羽織り、つま先の隠れた靴です。この3点がそろっていれば、どちらの場でも略礼装として読み取ってもらえます。そのうえで、お祝いなら色と光を一つ足し、お悔やみなら一つ引く。この記事では、場面ごとの違いを表で並べ、季節、年代、男性と並ぶとき、小物、迷ったときの決め方まで順に整理します。個別の場面をくわしく知りたいときは、各章から専用の記事へ進めるようにしてあります。
平服は「普段着」ではなく「略式の礼装」
装いの格は、上から正礼装、準礼装、略礼装の3段に分かれます。平服はこのうちいちばん下の略礼装にあたります。「平らな服」という字面から、気取らない服、仕事着、休日の服を思い浮かべがちですが、礼装の段の中の一段であることは変わりません。
主催者が「平服で」と書くのには理由があります。お祝いの場なら、ゲストにドレスや留袖を用意させない心遣い。お悔やみの場なら、遺族が「喪服を新しく準備させるのは申し訳ない」と考える心遣い。どちらも、来る人の負担を軽くするための一文です。だからこそ、受け取る側がそれを「何でもいい」と読んでしまうと、主催者の気づかいとずれてしまいます。
礼装の段の全体像を一枚で確かめたい方は、礼装の格とドレスコードの早見表に、正礼装から平服までの関係をまとめてあります。この記事では、その中の平服の段に絞って、場面ごとにどう答えを出すかを見ていきます。
| 段 | 女性の例 | 平服との関係 |
|---|---|---|
| 正礼装 | 留袖、ロングドレス、正喪服 | 平服で、と言われたら不要 |
| 準礼装 | セミアフタヌーンドレス、ブラックフォーマル | 平服の一段上。迷ったときの上限 |
| 略礼装(平服) | ワンピース+羽織り、セットアップ、濃色のスーツ | この記事の対象 |
| きれいめの普段着 | ブラウスとスカート、ニットとパンツ | 平服の一段下。羽織りを足すと平服に近づく |
| 普段着 | デニム、Tシャツ、スニーカー | 平服ではない |
表の中で迷いやすいのは、略礼装ときれいめの普段着の境目です。この境目は、肩に一枚重なっているかどうかで分かれることが多くあります。ブラウスとスカートだけでは普段の装いに見えやすく、そこにジャケットやボレロを一枚重ねると、礼装の側に入ります。
案内のどこに「平服」と書かれているかで場面を見分ける
平服の答えは場面で決まるので、最初にするのは、案内状やメッセージから「どんな場か」を読み取ることです。「平服で」の一文だけを見ても、お祝いかお悔やみかは分かりません。前後の文や、会の名前、会場、時刻を見ます。
| 手がかり | お祝いの場に多い言葉 | お悔やみの場に多い言葉 |
|---|---|---|
| 会の名前 | 二次会、祝賀会、記念パーティー、披露の会 | 法要、一周忌、三回忌、お別れの会、偲ぶ会 |
| 案内の結び | ご出席を心よりお待ちしております | ご参列いただければ幸いです |
| 会場 | レストラン、ホテルの宴会場、会館 | 自宅、寺院、斎場、ホテルの小宴会場 |
| 時刻 | 夕方から夜が多い | 昼前から昼過ぎが多い |
| 会費・香典 | 会費制、ご祝儀不要 | 香典辞退、御花料 |
ホテルの宴会場は、お祝いにもお悔やみにも使われるので、会場だけでは決められません。お別れの会がホテルで開かれることは珍しくなく、「ホテルだから華やかに」と考えると読み違えます。会の名前と結びの言葉を先に見て、会場は格の重さを測る材料として使うと、取り違えが減ります。
言い回しの読み違えで当日に浮いてしまう型は、ディナーのドレスコードの読み違いでも具体的に取り上げています。「平服」「略礼装」「スマートカジュアル」が並んだときの違いを確かめるのにも使えます。
お祝いの場とお悔やみの場で、正解が逆になる
平服の核心はこの章です。同じ略礼装の段でも、お祝いの場とお悔やみの場では、色・光・肌の3本の線を反対の向きに引きます。

| 線 | お祝いの場(二次会・祝賀会・パーティー) | お悔やみの場(法事・お別れの会・偲ぶ会) |
|---|---|---|
| 色 | 明るい色、やわらかい中間色も可。全身黒なら小物に色を一点 | 黒、濃紺、チャコールグレーなどの濃色。柄は無地か目立たないもの |
| 光 | サテン、とろみ、パール、小さな輝きのある石 | 光らない素材。アクセサリーはパールの一連か、なし |
| 肌 | 膝丈前後まで可。肩は羽織りで隠す | 膝が隠れる丈。袖は五分から長袖、首元は詰まり気味 |
| 足元 | 肌色のストッキング、ヒールは3〜7センチ | 肌色か黒のストッキング、ヒールは3〜5センチ、光らない靴 |
| バッグ | 小ぶりで布やエナメルも可 | 黒の布か光沢の少ない革、金具は小さく |
| 避けるもの | 全身白、全身黒に黒小物、カジュアル素材 | 光沢、金具の大きい靴、毛皮、明るい色の差し色 |
表を横に読むと、ほとんどの行で向きが逆になっているのが分かります。お祝いの場で「地味すぎる」と言われる装いは、お悔やみの場でちょうどよく、お悔やみの場で「派手」とされる装いは、お祝いの場でちょうどよい。平服で失敗するのは、服の格よりも、この向きを取り違えたときがほとんどです。
逆になるのは3本の線だけで、残りは共通です。膝が隠れる丈、肩に重ねた羽織り、つま先の隠れた靴。この土台は両方の場で同じなので、ここをそろえたうえで、色と光と肌の出し方だけを入れ替えると考えると、1着の服を両方に使い回せます。
結婚式の二次会・会費制パーティーの平服
結婚式の二次会で「平服で」とあるときは、披露宴のゲストより一段軽い略礼装を考えます。会場はレストラン、カフェ、バー、ホテルのラウンジなどさまざまで、立食の形が多くなります。
| 会場 | 目安 | 足元とバッグ |
|---|---|---|
| ホテルのラウンジや宴会場 | 光沢のあるワンピース+羽織り | ヒール5センチ前後、布やエナメルの小さなバッグ |
| レストラン | とろみ素材のワンピースかセットアップ | ヒール3〜5センチ、チェーン付きのバッグ |
| カフェやバー | きれいめのワンピースに羽織り | 太めのヒール、肩にかけられるバッグ |
二次会は、新郎新婦の友人どうしが集まる気安い会に見えますが、写真が多く残ります。全身白や白に近い淡い色は、花嫁と重なるので避けます。また、全身黒に黒の靴と黒のバッグをそろえると、弔事の装いに近づくので、羽織りか小物のどちらかに明るい色か光を一点入れます。
二次会の装いを会場別にくわしく見たい方は、結婚式の二次会やパーティーの服装に、会費制の会の考え方とあわせてまとめています。
祝賀会・式典・表彰式の平服
会社の祝賀会や創立記念パーティー、表彰式の案内には、「平服でお越しください」と書かれていることがよくあります。この場合の平服は、二次会より少し落ち着いた略礼装です。功績を称える場なので、装いで会を彩るより、きちんとした印象を優先します。
基準はジャケットとワンピース、またはセットアップです。色はネイビー、グレージュ、くすんだ青、深い緑など、明るすぎず暗すぎない中間の色が収まります。主催する側として出る日は控えめに、来賓として招かれた日は一段上げ、壇上に上がる日は写真に映る上半身に明るさを置きます。立場で格が変わるのが、祝賀会の平服の特徴です。
会場がホテルの宴会場なら一段重く、社内やレストランなら一段軽く考えます。ホテルという施設ごとに変わる基準は、ホテルのレストランの服装とドレスコードにも整理しています。
祝賀会そのものの服装を、案内の言い回しごと、会場ごとに深く知りたいときは、祝賀会の服装へ進んでください。「平服」「略礼装」「スーツ着用」などの言い回しを一つずつ読み分けています。
法事・法要の平服
法事で「平服で」と言われる場面は、一周忌を過ぎた三回忌以降や、身内だけで営む法要に多く見られます。この平服は「喪服まで用意しなくていい」という意味で、お祝いの場の平服とは向きが逆です。地味な濃色の、光らない装いを選びます。
| 法事の節目 | 平服の重さ | 目安 |
|---|---|---|
| 四十九日まで | 平服でも喪服寄り | 黒のワンピースかアンサンブル |
| 一周忌 | 喪服か、喪服に近い平服 | 黒か濃紺のワンピース+ジャケット |
| 三回忌 | 平服が増える | 黒、濃紺、チャコールの無地 |
| 七回忌以降 | 平服が多い | 濃色の無地。グレーも可 |
節目が進むほど平服の幅は広がりますが、黒に近い濃色を選んでおけば、どの家の法事でも浮きません。施主の家族として出るか、親族として出るか、知人として出るかで、施主側はやや重く、知人は一段軽くと考えます。
それぞれの節目は個別の記事にまとめています。四十九日の装いは四十九日の服装、秋冬の一周忌は一周忌の服装で上着とタイツの濃さを、三回忌は三回忌の服装で、七回忌の案内状の読み方は七回忌の服装で確かめられます。黒以外の色で出るときの幅は、法事の服装 カジュアルと黒以外の色にまとめています。
お別れの会・偲ぶ会の平服
お別れの会や偲ぶ会は、葬儀を身内で済ませたあと、故人とゆかりのあった方々を招いて開かれる会です。ホテルや会館で、立食や献花の形をとることが多く、案内には「平服でお越しください」とよく書かれます。
この平服は、法事の平服と同じくお悔やみの側です。黒、濃紺、濃いグレーのワンピースやスーツを選び、光る素材と明るい差し色は避けます。会場がホテルで、料理や歓談がある形でも、華やかに寄せる必要はありません。故人を偲ぶ会であることが先に立ちます。
一方で、喪服そのものを着ていくと、会場の中で重く見えることがあります。主催者が「平服で」と書いたのは、喪服の参列者がそろう会にしたくないという気持ちのこともあるからです。黒のワンピースを着るなら、喪服用のアンサンブルではなく、ジャケットを濃いグレーや濃紺にして、黒一色をやわらげる方法があります。
偲ぶ会が故人の好きだった場所で開かれる場合や、「明るい服装で」と添えられている場合は、その意向に沿って、くすんだ色や中間色まで広げても構いません。その場合でも、光沢と大きな柄は控えます。
通夜に「平服で」と言われたとき
通夜は、もともと訃報を聞いて急いで駆けつける場なので、喪服でなく地味な平服で行っても失礼にあたらないとされてきました。「取り急ぎ駆けつけた」という意味が込められていたからです。ただ、現在は通夜にも喪服で参列する方が増えています。
通夜で平服を選ぶなら、黒、濃紺、濃いグレーの無地で、光る素材とアクセサリーを外します。仕事帰りに向かう日は、ジャケットのボタンを留め、明るいインナーを濃色のものに替え、アクセサリーを外すだけでもかなり近づきます。
通夜の装いの基本は通夜の服装の基本に、仕事帰りに着替える時間がないときの段取りはお通夜へ仕事帰りに向かう服装に、それぞれまとめています。
顔合わせ・食事会など、家同士の場の平服
両家の顔合わせや結納の代わりの食事会で、「堅苦しくない服装で」「平服で」と言われることがあります。この場合の平服は、お祝いの側にありながら、二次会よりずっと落ち着いた装いです。主役は本人どうしと両家の親で、ゲストが華やかに装う場ではありません。
目安は、きれいめのワンピースにジャケット、またはセットアップです。色は明るめの中間色、ネイビー、ベージュ系が選ばれます。座敷の料亭なら、正座をしても膝が出ない丈と、脱ぎ履きしやすい靴を選びます。両家で装いの格をそろえることがいちばん大事なので、事前に「どのくらいの服装にしますか」と一言確かめておくと安心です。
立場ごとの装いは、顔合わせの服装に、本人・母親・きょうだいの場合に分けて整理しています。
ビジネスの場の平服
取引先の記念式典や、社外の方を招く懇親会、創業記念の集まりなど、仕事の延長で「平服で」と書かれる場面もあります。この平服は、ビジネスの装いと略礼装の間にあります。
| 場面 | 目安 | 外すもの |
|---|---|---|
| 取引先の記念式典 | ジャケット+ワンピース、セットアップ | 明るすぎる色、大きな柄 |
| 社外の方を招く懇親会 | ジャケット+ブラウス+スカートかパンツ | カジュアルなニット、スニーカー |
| 社内の表彰や記念の会 | 通勤服に光のある小物を一点 | リュック、トートバッグ |
| 研修や会議のあとの懇親会 | 通勤服のままジャケットを着る | 着崩した羽織り |
仕事の場の平服は、通勤服をベースに一段だけ格を上げる、と考えると決めやすくなります。インナーをとろみのあるブラウスに替える、パールのネックレスを足す、バッグを小ぶりのものに持ち替える。この3つのうち1つか2つで十分です。
「平服」より一段くだけた指定として、「スマートカジュアルで」と書かれることもあります。違いはスマートカジュアル女性の服装にまとめています。
色の決め方|明るさの段で考える
平服の色は、明るさを5つの段に分けて考えると迷いが減ります。
| 明るさの段 | 色の例 | お祝いの場 | お悔やみの場 |
|---|---|---|---|
| 1(いちばん暗い) | 黒 | 小物に光か色を足せば可 | 基準 |
| 2 | 濃紺、チャコールグレー、濃い茶 | 可 | 可 |
| 3 | ネイビー、グレー、深い緑、ボルドー | 基準 | 七回忌以降や偲ぶ会で可 |
| 4 | ベージュ、くすんだ水色、モーヴ | 基準 | 避ける |
| 5(いちばん明るい) | 白、淡いパステル | 二次会では白を避ける | 避ける |
お祝いの場では段3〜4、お悔やみの場では段1〜2が中心になります。段3は両方の場の境目で、お祝いの場では落ち着いた選択、お悔やみの場では故人を偲ぶ会や年月の経った法事で選べる色です。
迷ったときは、段1〜2のワンピースを1着持っておくと便利です。お悔やみの場にはそのまま、お祝いの場には明るい羽織りかアクセサリーを足すことで、両方に使えます。逆に段4の服は、お悔やみの場には使えないので、1着目には向きません。
丈と肌の出し方|測れる線で決める
丈と肌の出し方は、鏡の前で測れる線で決めます。
- スカート丈:まっすぐ立ったときに膝のお皿が隠れ、椅子に座ったときに膝上5センチ以内に収まる長さ。座敷の法事なら、正座して膝が隠れる長さ
- 袖丈:お悔やみの場は五分袖から長袖。お祝いの場はノースリーブでも羽織りを重ねれば可
- 首元:お悔やみの場は鎖骨が半分隠れるくらいの開きまで。お祝いの場は鎖骨が出る程度まで
- 背中:どちらの場も、肩甲骨より下が出る開きは羽織りで隠す
いちばん間違いやすいのは座ったときの丈です。立って鏡を見ると膝が隠れていても、椅子に座るとスカートが5〜10センチ上がります。家で一度座ってみて、膝上にどれくらい出るかを確かめておくと、当日に気にしなくて済みます。
秋の平服
秋は、平服の行事がもっとも多い季節の一つです。祝賀会、記念パーティー、秋の結婚式の二次会、そしてお盆を過ぎてからの法事が重なります。
秋の平服で迷うのは、日中と朝晩の気温差です。昼の会場は暖かいのに、帰りの夜道は冷える。そこで、会場で着ている服と移動中の服を分けて考えます。会場ではワンピースとジャケット、移動中はその上に薄手のトレンチやストールを重ねます。
| 時期 | 会場での服 | 移動中に足すもの |
|---|---|---|
| 秋の始め | 七分袖のワンピース+薄手のジャケット | なし、または薄いストール |
| 秋の半ば | 長袖のワンピースかセットアップ+ジャケット | 薄手のコートかトレンチ |
| 秋の終わり | 厚手の生地のワンピース+ジャケット | ウールのコート |
素材は、季節が進むにつれて、とろみのあるポリエステルから、ウール混やジョーゼットの厚手のものへ移ります。お祝いの場ならベルベットやサテンの小物を一点、お悔やみの場なら光らないウール素材で、季節感と場の向きの両方を出せます。
冬の平服|コート・タイツ・ニット
冬の平服で判断が分かれるのは、コート、タイツ、ニットの3つです。

コートは会場に入る前に脱ぐのが基本なので、格には入りません。ただし、お悔やみの場では、玄関や会場の入口で脱ぐまでの姿も見られるので、黒、濃紺、濃いグレーの無地のウールコートにします。毛皮やファー付きのフード、明るい色のダウンは避けます。お祝いの場では、ベージュやグレーのウールコートも収まります。
タイツは、場の向きで答えが逆になります。お悔やみの場では、30デニール前後までの薄手の黒タイツが冬に選ばれています。お祝いの場では、黒タイツは弔事を連想させるので、肌色のストッキングにします。寒さが気になる日は、厚手の肌色ストッキングを選ぶか、移動中だけ上からレッグウォーマーを重ね、会場で外す方法があります。
ニットは、薄手で目の詰まったものなら、ジャケットの代わりにカーディガンとして重ねられます。お悔やみの場なら黒か濃紺の無地、お祝いの場なら細い糸のアンサンブルやラメの入らない明るめの色。厚手のざっくりしたニットは普段着に見えるので、平服には向きません。
冬の会場は、暖房の効き方が場所によって大きく違います。ホテルの宴会場は暖かく、寺院の本堂や自宅の座敷は足元から冷えます。お悔やみの場が寺院や自宅になる日は、ワンピースの下に薄手の保温インナーを着て、首元や袖口から見えないように整えておくと、長い読経の間も落ち着いて座っていられます。インナーは、首元の開きがワンピースより狭く、袖丈が短いものを選ぶと外から見えません。
お祝いの場がホテルの宴会場になる日は、反対に暑さに気をつけます。厚手のウールのワンピースにジャケットを重ねると、立食で人が集まった会場では汗ばむことがあります。中は七分袖の薄手のワンピースにして、ジャケットとコートで外の寒さに備えるほうが、会場の中で快適に過ごせます。
冬の平服で一着を選ぶなら、季節を問わず使える中厚手の濃色ワンピースに、ウールのジャケットを合わせる組み方がもっとも幅広く使えます。お祝いの場には明るいストールとパールを、お悔やみの場には黒の小物を合わせれば、冬の案内のほとんどに答えられます。
冬の墓前や屋外で、コートを脱ぐかどうか迷う場面は、納骨式の服装 冬で、脱ぐ場面と脱がない場面を分けて整理しています。
春と夏の平服
春は、卒業や入学の祝賀会、異動に伴う送別の会など、お祝いの場の平服が多くなります。明るい段3〜4の色が映える季節です。ただし、春のお彼岸の法事や、年度の変わり目のお別れの会も重なるので、向きを取り違えないように気をつけます。
夏は、汗と暑さで羽織りを省きたくなります。それでも、お悔やみの場では、会場に入るときだけでも薄手のジャケットかカーディガンを重ね、肩と腕を隠します。お祝いの場なら、透け感のある薄いボレロやストールで足ります。素材は、麻やコットンは普段着に見えやすいので、とろみのあるポリエステルやレーヨンを選ぶと、涼しさと格の両方を保てます。
年代別の平服
平服の基準は年代で変わりませんが、似合いやすい色と素材、選びやすい形は少しずつ変わります。
| 年代 | お祝いの場の例 | お悔やみの場の例 |
|---|---|---|
| 20代 | 膝丈のワンピース+ボレロ、明るめの中間色 | 黒か濃紺のワンピース+カーディガン |
| 30代 | セットアップ、とろみのあるワンピース+ジャケット | 濃色のワンピース+ジャケット |
| 40代 | ジャケットとワンピースのセット、深みのある色 | 黒のアンサンブル、濃紺のスーツ |
| 50代 | ミモレ丈のワンピース+ジャケット、パールを重ねる | 黒のアンサンブル、光らないパールの一連 |
| 60代以降 | ジャケット+ワンピース、顔まわりに明るい色 | 黒か濃紺のアンサンブル、袖は七分か長袖 |
年代が上がるほど、招く側やまとめ役として出る場面が増えます。そのぶん、自分の装いが周りの基準として見られるので、ジャケットのある装いで一段きちんとさせておくと、周りの方も合わせやすくなります。20代や30代で初めて平服の案内を受けたときは、周りより少しきちんとした側に寄せておくと安心です。
男性と並ぶとき・同伴のとき
夫婦や家族で同じ会に出るときは、二人の装いの格をそろえることを先に考えます。片方だけが重い、片方だけが軽いと、写真や会場の中でちぐはぐに見えます。
| 男性の装い | 女性が合わせる格 |
|---|---|
| 濃色のスーツ+白シャツ+ネクタイ | ワンピース+ジャケット、またはセットアップ |
| ジャケット+ノーネクタイ | きれいめのワンピースに羽織り |
| 黒のスーツ+黒ネクタイ(お悔やみの場) | 黒か濃紺のワンピース+ジャケット |
| 濃紺かグレーのスーツ+地味なネクタイ(お悔やみの場) | 濃色のワンピース、黒以外も可 |
男性がネクタイを締めるなら、女性はジャケットを着る、と覚えておくと分かりやすくなります。色は、お祝いの場では男性のネクタイかシャツの色を女性の小物に一つ拾うと、並んだときにまとまります。お悔やみの場では、二人とも黒か濃紺にそろえ、片方だけグレーにならないようにします。
靴の選び方
平服の靴は、つま先とかかとが隠れたパンプスが基準です。
- ヒールの高さ:お祝いの場は3〜7センチ、お悔やみの場は3〜5センチ。立食や移動が多い日は太めのヒール
- 素材:お祝いの場は布、エナメル、スエードも可。お悔やみの場は光沢の少ない革か布
- 金具:お悔やみの場では、大きな金具やビジューのある靴は避ける
- 外すもの:サンダル、ミュール、つま先の開いた靴、スニーカー、ブーツ(会場内で)
冬の移動でブーツを履いていくときは、会場の入口でパンプスに履き替えます。小さな布袋に入れて持っていけば、荷物になりません。座敷の法事では靴を脱ぐので、ストッキングの伝線と、脱ぎ履きのしやすさも確かめておきます。
バッグの選び方
平服のバッグは、小ぶりで、床に置かずに持てるものが基準です。
お祝いの場では、布やエナメル、細いチェーン付きのバッグが合います。立食で皿とグラスを持つ場面では、肩にかけられるチェーンがあると両手が空きます。お悔やみの場では、黒の布か光沢の少ない革のハンドバッグを選び、金具は小さいものにします。
荷物が多い日は、サブバッグを一つ足します。お祝いの場なら無地の布の手提げ、お悔やみの場なら黒の布の手提げにします。ふだん使いのトートバッグやリュックは、会場の前でクロークに預けるか、持っていかない形にします。
アクセサリーの選び方
アクセサリーも、場の向きで正解が逆になります。
お祝いの場では、パールのネックレスやイヤリング、小さな輝きのある石のピアス、細いブレスレットで華やかさを足します。ヘアアクセサリーは、会場の雰囲気に合わせて小ぶりに。二次会や夜の会なら、少し光の強いものも収まります。結婚式のお呼ばれ全般のアクセサリーの選び方は、結婚式のゲストのアクセサリーにまとめています。
お悔やみの場では、つけるならパールの一連のネックレスとパールの一粒イヤリングまで。二連のネックレスは「不幸が重なる」とされるので避けます。結婚指輪以外の指輪、光る石、ゴールドのアクセサリーは外します。何もつけないのも、お悔やみの場では失礼にはあたりません。
避けたい服
平服でどの場面でも避けたいものと、場の向きで避けたいものを分けておきます。
| 避けたいもの | 理由 | どの場面 |
|---|---|---|
| デニム、Tシャツ、パーカー | 普段着に見える | すべて |
| スニーカー、サンダル | 礼装の足元にならない | すべて |
| リュック、大きなトート | 普段の持ち物に見える | すべて |
| 膝上の短い丈 | 座ると肌が大きく出る | すべて |
| 全身白、白に近い淡い色 | 花嫁と重なる | 結婚式の二次会 |
| 全身黒に黒の小物 | 弔事に見える | お祝いの場 |
| 光沢のある素材、ラメ | 華やかさが出る | お悔やみの場 |
| 大きな柄、明るい差し色 | 目立つ | お悔やみの場 |
| 毛皮、革の目立つもの | 殺生を連想させる | お悔やみの場 |
迷ったときは、「この服で、会場の入口で主催者と目が合っても落ち着いていられるか」と考えてみると、避けたいものが見えてきます。
手持ちの服で平服を組む手順
新しく服を用意しなくても、手持ちの服で平服を組めることは多くあります。次の順で確かめます。

- 場の向きを決める:案内の会の名前と結びの言葉から、お祝いかお悔やみかを決める
- 土台の1着を選ぶ:膝が隠れる丈の無地のワンピースか、上下そろいのセットアップを1着出す
- 羽織りを重ねる:ジャケット、ボレロ、薄手のカーディガンのどれかを重ねる
- 色と光を合わせる:お祝いなら明るい色か光を一点足し、お悔やみなら光るものを外す
- 足元と小物をそろえる:つま先の隠れたパンプス、小ぶりのバッグ、場に合ったストッキング
- 座って確かめる:椅子か床に座り、丈と首元、背中の開きを確かめる
この手順で、手持ちに足りないものがはっきりします。多くの場合、足りないのは土台の1着ではなく、羽織り、パンプス、小ぶりのバッグのどれかです。足りない1点だけを用意すれば、次の平服の案内にも同じ組み方で答えられます。
どちらとも取れるときの決め方
案内を読んでも、お祝いかお悔やみか、あるいは格の重さがはっきりしない場面があります。ここがいちばん迷うところなので、よくある例ごとに決め方を置いておきます。
| 迷う場面 | 決め方 |
|---|---|
| 偲ぶ会に「明るい服装で」とある | 段3の色まで広げる。光沢と大きな柄は控える |
| 法事のあとに会食がある | 法事の装いを基準にし、会食で羽織りを脱ぐ程度にとどめる |
| 祝賀会だが主催者に喪中の方がいる | 段3の落ち着いた色にし、光る小物は一点まで |
| 長寿のお祝いと法事が同じ日 | 先にある行事に合わせ、着替えるか羽織りと小物で切り替える |
| 「平服で」とだけあり、会の名前がない | 送り主に尋ねる。難しければ段2の濃色+羽織りで、小物で調整 |
どちらとも取れるときは、両方に転べる位置に装いを置きます。段2の濃紺かチャコールのワンピースにジャケット、パールの一連、黒か濃紺のパンプス。この組み合わせは、お祝いの場では落ち着いた装いとして、お悔やみの場では控えめな平服として受け取ってもらえます。会場に着いて様子を見てから、明るいストールやブローチを足すか、ポケットにしまうかを決めればよいのです。
もう一つの決め方は、主催者に尋ねることです。「平服とのことですが、どのくらいの装いの方が多いでしょうか」と聞くのは失礼にはあたりません。主催者の側も、迷わせたくないと思って一文を書いているので、答えてもらえることがほとんどです。
和装で行くとき
平服の案内に和装で応えることもできます。和装にも格の段があり、平服の段にあたるのは、お祝いの場なら色無地や江戸小紋、付け下げ、お悔やみの場なら地味な色の色無地に黒の帯、あるいは一つ紋の色無地です。
お祝いの場で訪問着を選ぶと、平服の会では一段重く見えることがあります。主催者や周りの装いと並んだときの釣り合いを考え、平服の会なら色無地か小紋にとどめると収まります。お悔やみの場では、喪服の黒紋付きは平服の会では重すぎるので、グレー、紺、紫系の地味な色無地に、黒か地味な色の帯を合わせます。
和装は、帯や小物の色で場の向きを切り替えられるのが利点です。同じ色無地でも、お祝いの場では明るい帯揚げと帯締め、お悔やみの場では黒や灰色の小物にすれば、両方の場に使えます。着慣れていない場合は、移動の時間と座る姿勢を考え、無理のない範囲で選んでください。
前日と当日に確かめること
平服は自分で判断する余地が大きい分、前日と当日に確かめておくと安心できることがいくつかあります。
| いつ | 確かめること | 見るところ |
|---|---|---|
| 前日 | 服のしわと汚れ | 座ったときにしわが寄る腰まわり、袖口 |
| 前日 | ストッキングの予備 | 伝線したときの替えを一足バッグへ |
| 前日 | 靴の傷とかかと | かかとのすり減り、つま先の傷 |
| 当日の朝 | 天気と気温 | 雨なら靴の替え、寒ければ移動用の上着 |
| 当日の朝 | 会場の入口からの距離 | 歩く時間が長ければ低めのヒール |
| 会場に着いたら | 周りの装いの重さ | 羽織りや小物を足すか外すか |
とくにお悔やみの場では、香典や数珠など、服以外の持ち物も多くなります。バッグに入るかどうかを前日に確かめておくと、当日に慌てずに済みます。お祝いの場では、ご祝儀袋や会費を入れる袱紗が入るかどうかを確かめておきます。
会場に着いたら、入口で一度、周りの方の装いを見ます。自分の装いが周りより軽く見えたら羽織りを着たままにし、重く見えたらストールやジャケットを脱ぐ。平服は、当日のこの小さな調整までを含めて完成する装いだと考えると、気持ちが楽になります。
迷ったときの基準
最後に、どの章にも当てはまらないときの基準を3つにまとめます。
一つめは、一段きちんとした側に寄せることです。平服の場で、周りより少しきちんとして見えて困ることはほとんどありません。逆に、周りより軽く見えると、その場にいる間ずっと気になります。
二つめは、お祝いの場では「足す」、お悔やみの場では「引く」と覚えることです。お祝いの場で迷ったら、明るい色か光を一つ足す。お悔やみの場で迷ったら、光るものや色を一つ外す。
三つめは、羽織りを必ず持っていくことです。会場が暑ければ脱げばよいし、思ったより格の高い会だったら着ればよい。羽織りが一枚あるだけで、当日の調整の幅が大きく広がります。
まとめ|平服の地図
平服で来てくださいと言われたら、普段着ではなく略式の礼装で行きます。まず外さない3点は、膝が隠れる丈、肩に一枚重ねた羽織り、つま先の隠れた靴です。
そのうえで、お祝いの場とお悔やみの場では、色・光・肌の3本の線を反対に引きます。お祝いの場では明るい色と光を足し、お悔やみの場では濃い色にして光を引きます。秋冬はコートが格に入らない代わりに、会場で脱げない上着とタイツの色が分かれ目になります。
個別の場面では、二次会、祝賀会、顔合わせ、ビジネスの集まり、四十九日、一周忌、三回忌、七回忌、お別れの会、通夜、納骨式と、それぞれ少しずつ重さが違います。迷ったら、案内の会の名前と結びの言葉で場の向きを決め、一段きちんとした側に寄せ、羽織りを持って出かけてください。
よくある問い
- Q. 平服で来てくださいと言われたら、普段の服で行ってもいいですか?
- 普段着の意味ではありません。平服は「正式な礼服までは要りません」という意味で、略式の礼装を指します。女性なら膝が隠れる丈のワンピースかセットアップに、ジャケットなど一枚の羽織り、つま先の隠れたパンプスが基準です。デニム、Tシャツ、スニーカー、サンダル、リュックはどの場面でも外れます。
- Q. 法事で「平服で」と言われたら、黒でなくてもいいですか?
- 黒でなくても構いませんが、濃い紺、チャコールグレー、濃い茶など、地味な濃色にとどめます。お祝いの場とは逆に、光る素材、柄、明るい色は引きます。三回忌以降や身内だけの法事で多い言い方で、喪服ほど重くしなくてよいという案内です。迷ったら黒に近い濃色を選んでおけば、どの家の法事でも浮きません。
- Q. 結婚式の二次会で「平服で」とあれば、何を着ればいいですか?
- 披露宴のゲストより一段軽い略礼装が目安です。膝丈前後のワンピースやセットアップに、羽織りを一枚。お祝いの場なので、明るい色や光沢のある素材、小ぶりのアクセサリーで華やかさを足します。全身白と、全身黒に黒い小物をそろえる装いは避けます。会場がレストランか居酒屋かで、靴とバッグを調整します。
- Q. 秋冬の平服で、黒いタイツは履いてもいいですか?
- お悔やみの場では、薄手の黒タイツは許容されることが多く、寒い季節の法事では選ばれています。厚手で透けない黒タイツは普段着の印象が強くなるので、30デニール前後までが目安です。お祝いの場では、黒タイツは弔事を連想させるため、肌色のストッキングにします。寒さが気になるときは厚手の肌色ストッキングを選び、移動中だけ重ねばきする方法もあります。
- Q. 平服はパンツスタイルでもいいですか?
- 多くの場面で問題ありません。お祝いの場ならとろみのある素材のセットアップ、お悔やみの場なら濃色のパンツスーツが選ばれます。ただし、座敷での法事や年配の方が多い会では、スカートのほうが落ち着いて見られることもあります。迷う場面では、膝下丈のスカートかワンピースを選び、パンツは会場が椅子席で、ジャケットと上下の色をそろえられる日にすると収まります。
— メグラシ編集部





