着物の寒さ対策 冬|外にいる時間と冷える場所で、足すものを分ける

**外にいる時間が30分未満なら、肌着を替えずに羽織りものと足元だけで足ります。**1時間を超える日は、着付けの前に肌着を温かいものにして、そのうえで自分がいちばん先に冷える場所を1か所だけふさいでください。全部をふさぐ必要はありません。
着物は、首の後ろ・袖口・身八つ口(脇の下の開き)・裾の4か所から風が入る作りです。洋服と違って、全部を閉じることはできません。だから、閉じる場所を選ぶことになります。選ぶ基準は、自分が冬に洋服でいるとき、どこから寒くなるかです。
首から冷える人は衿元、手から冷える人は袖口、お腹から冷える人は帯の下、足から冷える人は足袋と裾の間を先にふさぎます。迷う人は、この記事の「二か所以上冷えるとき」の節から読んでください。
結論:外の時間で量を決め、冷える場所で置き場を決める
足すものの量と、足す場所は別々に決めます。量は外にいる時間で、場所は自分の冷え方で決まります。
| 外にいる時間 | 肌着 | 羽織りもの | 小物 |
|---|---|---|---|
| 30分未満(移動が中心) | いつもの肌着のまま | 羽織かショールのどちらか | 冷える場所に1つ |
| 30分〜1時間 | 温かい肌着に替える | 羽織かショールのどちらか | 冷える場所に1つ |
| 1時間を超える | 温かい肌着に替える | 和装コートかショールに、もう1枚 | 冷える場所に2つまで |
この表は量の目安です。どこに置くかは、次の節から冷える場所ごとに書きます。
先に測る2つ|外にいる時間と、その日の最高気温
外にいる時間は、家を出てから建物に入るまでの合計ではなく、立ち止まって外にいる時間で数えてください。歩いている間は体が温まります。寒さが効いてくるのは、行列に並ぶ、写真を撮る、境内で子どもを待つといった、止まっている時間です。
次に、その日の最高気温を見ます。最高気温が10度を下回る日は、外の時間が30分未満でも、表の一段下の量にしてください。5度を下回る日は、さらにもう一段です。風が強い予報の日も、同じように一段下げます。着物は袖と裾から風が入るので、洋服よりも風の影響を受けます。
日が落ちる時刻も確かめておきます。日没の前後1時間で、体感はぐっと下がります。帰りが日没をまたぐ日は、帰り道の分も外の時間に数えてください。
首と胸元が冷える人|抜いた衿の後ろを、外でだけふさぐ
着物は衣紋を抜くので、首の後ろにこぶし1つぶんほどの隙間が開きます。洋服でタートルネックが手放せない人は、ここから冷えます。
ふさぐのは外にいる間だけにしてください。衿元を内側から詰めると、着姿が変わってしまいます。外ではショールを首の後ろに沿わせ、前で軽く合わせて、胸元の衿の合わせ目の上に重ねます。ショールの幅は、肩から肘の中ほどまで届くものが扱いやすいです。それより狭いと首だけ覆って肩が冷え、広すぎると前で合わせたときに帯まで隠れて重く見えます。
肌着で温めたいときは、襟ぐりの深いものを選んでください。衣紋の隙間からのぞいたとき、肌着の線が見えない深さが目安です。鏡を背にして手鏡で首の後ろを見て、衿の内側から白い布が見えなければ大丈夫です。
袖口と二の腕が冷える人|振りと袖口から入る風を止める
手先から冷える人は、袖口と、袖の振り(脇の下の開いた部分)から風が入っています。腕を下ろして立っているとき、二の腕の内側がひやっとするなら、振りからの風です。
袖口には、手首から肘の手前までの長さの手袋か、腕だけを覆う筒状のアームウォーマーを使います。袖口から少しのぞいても、着物と近い色なら目立ちません。二の腕まで冷える人は、肘の上まで届く長さのものにしてください。
振りからの風は、羽織りもので止めます。羽織の袖は着物の袖に重なるので、振りの開きをふさいでくれます。ショールの場合は、肩にかけるだけでは脇の下が開いたままです。両端を前で交差させて、片方の端を反対側の脇の下に軽く挟むと、振りの上にショールが乗ります。
腰とお腹が冷える人|帯の下で一枚足す
帯を締めているあたりは、帯と帯板が重なっているので、意外と冷えません。冷えるのは帯の下から腰骨にかけてと、背中の帯の上端の少し上です。
この人は、着付けの前に下で温めてください。裾よけの下に、膝の上までの丈の薄手のスパッツか、腹巻きを1枚足します。腹巻きは、帯の下端より下で終わる幅のものを選ぶと、帯の線がでこぼこしません。帯の位置まで届く幅のものは、帯の上に段差が出ます。
貼るカイロを使う場合は、肌着の上、帯の下端より下の腰の後ろに貼ります。帯の中に入れると、締めた帯で押されて熱がこもり、汗をかく原因になります。低温やけどを避けるために、肌に直接貼らないでください。
足首と足先が冷える人|足袋と裾の間をつなぐ
足から冷える人は、足袋と裾の間の数センチと、足袋の底から冷えています。立っているときに足の甲だけが冷たいなら足袋の生地、足首の上が冷たいなら裾と足袋の間です。
足袋の生地が理由なら、裏地の起毛した足袋に替えるか、足袋の上から薄いカバーを重ねます。足袋の中に厚い靴下を重ねると指先が締めつけられ、かえって血の巡りを悪く感じることがあります。
裾と足袋の間が冷えるなら、足首まで届くスパッツか、足首だけを覆う短いレッグウォーマーを足袋の上に重ねてください。裾が足首の上で揺れても、着物の裾と近い色なら目に入りません。
草履の底は薄いので、石畳や砂利の上に長く立つ日は、底から冷えます。中敷きを一枚入れられる草履なら入れておく、それが難しければ、草履ではなく雨用の草履や、つま先が覆われるものに替えるのも一つの手です。
外の時間が30分未満の日|肌着と羽織りものだけで足りる
駅から会場までの移動だけ、車で着いてすぐ建物に入る、という日は、いつもの肌着のままで構いません。
足すのは羽織りもの1枚と、冷える場所に小物を1つだけです。首から冷える人ならショール、手から冷える人なら手袋、足から冷える人なら足袋カバー。これで足ります。肌着を厚くすると、建物の中で暑くなって、着物の中が汗ばみます。
最高気温が10度を下回る日でも、外の時間が15分以内なら、この組み方のままで足りることが多いです。
外の時間が1時間を超える日|コートとショールを両方持つ
初詣の行列、子どもの行事で境内に長く立つ、屋外で写真を撮る時間が長い、という日は、着付けの前に肌着を温かいものに替えてください。そのうえで、羽織りものを2枚持ちます。
和装コートか羽織を着て、さらにショールを持っていきます。立っている時間が長くなってきたらショールを肩に足し、歩き出したら外します。2枚を出し入れできると、冷えてきたときにやれることが残ります。
小物は、冷える場所に2つまでにしてください。3つ以上足すと、建物に入ったときに外すものが多くなって、外した小物の置き場に困ります。
礼装の日と普段着の日で、足せるものが違う
訪問着や色無地で、式典やお参りに出る日は、目に見える場所に足せるものが限られます。
礼装の日は、外では道行(衿が四角く開いた和装コート)か、無地の大判ショールにしてください。柄の強いショールや、毛足の長い素材は、写真で礼装の格から浮いて見えます。手袋は、着物と同系色の薄手のものにします。足袋カバーやレッグウォーマーは、写真に足元が写る場面では外してください。
その代わり、礼装の日は見えない場所で温めるほうに寄せます。肌着、裾よけの下のスパッツ、腰の後ろの貼るカイロです。外から見えないものは、格に関係なく足せます。
普段着の着物なら、ニットのショールやポンチョ型の羽織りものも使えます。袖の太いものを選べば、着物の袂も潰れません。
二か所以上冷えるとき|どちらを先にふさぐか
首も足も冷える、手もお腹も冷える、という人は多いです。その場合は、体の中心に近いほうを先にふさいでください。
首と足なら首、袖口と腰なら腰が先です。中心に近い場所が冷えていると、手先や足先にいくら足しても温まりにくいからです。先にふさぐ場所は肌着や下に穿くもので温め、もう一方は手袋や足袋カバーのように外せる小物で足します。
どちらが中心に近いか迷うときは、洋服で冬に外に立っているとき、最初に「寒い」と感じる場所を思い出してください。最初に冷えるほうが、先にふさぐ場所です。それでも決められないときは、首とお腹のどちらかにしてください。この2か所は、ふさいだときの効き方が分かりやすい場所です。
ふさぐ場所を全部に広げないことも大切です。着付けで重ねるものが増えると、帯の位置が上がったり、衿元が浮いたりして、着姿が崩れます。中心の1か所を着付けの前に、残りを外せる小物で、と分けておけば、着姿は変わりません。
雨や雪の予報の日|濡れる場所が冷える場所になる
雨や雪の日は、冷える場所がふだんと変わります。濡れた場所から冷えるからです。着物で濡れやすいのは、裾の後ろ側と、袖の袂の下の端、そして足袋のつま先です。
この日は、ふだん首から冷える人でも、足元を先にふさいでください。つま先の覆われた雨用の草履に替え、足袋は裏の起毛したものにします。裾には、着物用の雨よけのコートか、膝下まで届く撥水のショールを重ねます。袂は、歩くときに腕の内側に軽く抱えるようにすると、濡れる範囲が小さくなります。
濡れた足袋は、建物に入ったらすぐに替えてください。替えの足袋を一足、手提げに入れておくと、帰り道まで冷えずに済みます。
暖房の効いた建物に入る日|脱げる順に重ねる
外は寒いのに、会場や食事の席は暖房が強い、という日もあります。こういう日は、温めるものを脱げる側に寄せてください。
肌着はいつものままにして、外ではショール・手袋・足袋カバーで温めます。建物の入口でショールと手袋を外し、足袋カバーは化粧室で外します。脱いだものは小さくたためるので、手提げに入ります。
肌着を厚くすると、建物の中で暑くなったときに脱ぐ方法がありません。帯を締めた体は熱がこもりやすいので、中で長く過ごす日ほど、肌着は薄いままにしておくのが安全です。
着付けの前に決めておくこと
着物の寒さ対策は、着付けのあとでは足せないものがあります。肌着、裾よけの下のスパッツ、腹巻きは、着付けの前でないと入れられません。
着付けを人に頼む日は、温かい肌着を着て行ってよいか、事前に確かめておくと安心です。襟ぐりの形によっては、衿合わせのときに直されることがあります。
自分で着る日は、着付けの前に外の時間と冷える場所を決めて、下に入れるものだけを先に身につけます。羽織りものと小物は、出かける直前に玄関で足せば足ります。
帰りの寒さ|日が落ちたあとの1時間
行きは平気だったのに、帰りに冷え切った、という声も多いです。日が落ちると気温が下がり、さらに一日着物を着て体が疲れているので、同じ気温でも寒く感じます。
帰りが日没をまたぐ日は、行きには使わなかった小物を1つ、手提げに入れておいてください。首から冷える人ならショール、足から冷える人なら足袋カバーです。帰り道で冷えを感じたら、その場で足せます。
着物で行事に出る日の装い全体はお宮参りに母親が着物を着るか、秋の夜の和装はお月見の和装にまとめています。帯が緩んできたときの直し方は貝の口が緩む・結び目が下がるを見てください。
よくある問い
- Q. 着物の下にふだんの発熱素材の肌着を着てもいいですか
- 着て構いません。ただし首まわりと袖の形を確かめてください。丸首の肌着は、衣紋を抜いた首の後ろから見えてしまいます。襟ぐりが深いU字かV字のもの、袖は肘より短いものを選ぶと、着物の衿と袖口から出ません。裾まで長いものは腰まわりがごろつくので、腰骨の上で終わる丈が扱いやすいです。足りない日は、下に穿くものを足して下半身の側で温めると、上半身の線が崩れにくくなります。
- Q. 和装コートを持っていません。洋服のコートでもいいですか
- 普段着の着物なら、袖の太いケープ型や、ゆったりしたポンチョ型の洋服で代わりになります。袖の細い洋服のコートは、着物の袂が中で潰れてしわになるので避けてください。礼装の日は、洋服のコートだと格がずれて見えるので、大判のショールで代えるほうが無難です。会場に着いたら建物に入る前に脱ぐ、というのは和装コートでもショールでも同じです。
- Q. 足袋の下に靴下を履くと、足袋がきつくなります
- 足袋の中に重ねるより、足袋の上から重ねるほうが楽な場合があります。足袋カバーと呼ばれる、足袋の上にかぶせる薄いものを使うと、指先の締めつけは増えずに冷たさだけが和らぎます。ほかに、足袋そのものを裏地の起毛したものに替える方法もあります。いつもの足袋より半サイズ大きい起毛の足袋を一足持っておくと、厚い靴下を重ねる必要がなくなります。
- Q. 暖房の効いた会場で、着物の中が暑くなりました
- 外の時間に合わせて肌着を厚くすると、建物の中では暑くなります。中で長く過ごす日は、肌着を薄いままにして、外で使うものを羽織・ショール・手袋・足袋カバーのような脱げるものに寄せてください。脱げるものなら、建物に入ってから外せます。肌着だけで温めようとすると、中で暑くなったときに手の打ちようがありません。
— メグラシ編集部





