貝の口がゆるむ|結び目か胴の帯か、ゆるむ場所で締め直す手を変える

**貝の口がゆるむとき、まず背中の結び目を指でつまんで、上下に動くか左右に動くかを見てください。**左右に開くなら結び目のゆるみ、上下や斜めに動くなら胴の帯のゆるみです。
結び目がゆるむ人は、手先とたれを重ねる最初のひと結びを締め直します。胴の帯がゆるむ人は、結び目には手を付けず、2周目の巻きと帯の下の滑りを直します。ここを取り違えて結び目だけを締め続けると、同じ帯が出先で何度でも崩れます。
秋冬の木綿やウールの着物は、浴衣より生地が厚く、表が滑るものが多いので、夏と同じ締め方ではゆるみ方が変わります。結び方そのものの手順は半幅帯の結び方|2周巻いたあとに残る長さで決まるに任せ、この記事では「ゆるむ場所」から直す手を分けます。
結論:ゆるむ場所が、締め直す手を決める
貝の口は、胴に2周巻いた帯と、背中の小さな結び目の2つでできています。ゆるみはどちらか一方から始まり、放っておくともう一方へ移ります。だから最初に崩れた場所を見つけて、そこだけを直すのがいちばん早い方法です。
| ゆるむ場所 | 見え方 | 直す手 |
|---|---|---|
| 結び目 | 羽が左右に伸びる・重なりが開く | 手先とたれの最初のひと結び |
| 胴の帯 | 結び目が傾く・帯全体が下がる | 2周目の巻きと帯の下の摩擦 |
表は見分けの軸を置くためのものです。どちらとも取れるときの扱いは、後半でまとめて書きます。
先に測る|出かけて1時間後に、結び目をつまむ
ゆるみは、結んだ直後には出ません。座る・立つ・車の座席にもたれるを何度か繰り返したあと、だいたい1時間ほどで見えてきます。家で確かめるなら、結んでから椅子に10回座って立ち、背もたれに2回もたれてから見てください。
確かめ方は1つです。背中に手を回し、結び目の真ん中を親指と人差し指でつまんで、軽く上下に、次に左右に揺らします。
- 左右に1cm以上動く、または羽の長さが左右でずれている → 結び目がゆるんでいる
- 上下に動く、または結び目ごと斜めに回る → 胴の帯がゆるんでいる
- どちらにもほとんど動かない → ゆるみではなく、帯の位置が低すぎて崩れて見えているだけ
最後の場合は締め直さなくて構いません。帯の上端がみぞおちから指4本ぶん下より低いなら、巻く位置を上げるだけで直ります。
結び目がゆるむ人|最初のひと結びを、上下同時に引く
結び目が開いてくる人は、手先とたれを重ねて一度くぐらせる、最初のひと結びが甘くなっています。ここが甘いと、二つ目の重ねをどれだけ強く締めても、中で帯が滑って羽が伸びてきます。
ひと結びをしたら、手先を真上に、たれを真下に向けて、同時に5秒ほど引いてください。片方ずつ引くと、引いた側だけが締まって結び目が傾きます。上下同時に引くと、結び目が帯の真ん中に座ります。
そのあと、たれを折り上げて手先をかぶせる二つ目の重ねでは、強く引かなくて構いません。形を整える段なので、羽の長さをそろえることに力を使います。
結び目がゆるむ人|帯が柔らかいなら、たれに厚みを足す
最初のひと結びを直してもゆるむなら、帯が柔らかすぎて結び目が自分の重さを支えられていません。帯の端から30cmのところを持って横に出し、先がすぐに垂れるなら柔らかい帯です。
柔らかい帯は、たれを折り上げる前に縦に二つ折りにしてから重ねてください。結び目の中の厚みが増え、摩擦で止まりやすくなります。羽の幅は少し細くなりますが、秋冬の厚い着物の上ではかえって収まりがよく見えます。
浴衣で使っていた軽い帯を秋の着物に回している場合は、たいていこの側に入ります。
胴の帯がゆるむ人|2周目で、脇を下へひと引きする
結び目が傾いたり、帯全体が下がってきたりする人は、胴に巻いた帯が着物の上で回っています。結び目は正しく結べていても、土台が動くので形が崩れます。
直すのは2周目の巻き方です。1周目を巻いたら、2周目を巻きながら、体の脇に来たところで帯の下端を斜め下へひと引きしてください。帯が胴に食い込むのではなく、着物の生地を少し巻き込む感覚になれば合っています。
強く締め上げる必要はありません。息を吸ってお腹がふくらんだときに苦しくない程度で十分です。苦しいほど締めると、座ったときに帯の上端がめくれて、かえって回り始めます。
胴の帯がゆるむ人|着物が滑るなら、帯の下に摩擦を作る
脇でひと引きしても回る場合は、着物の生地が滑りすぎています。ウールや紬、化繊の着物は表がなめらかで、帯との間に引っかかりがありません。木綿の着物はこの点で止まりやすい側です。
見分けは手で足ります。着物の腰のあたりに帯を当て、帯の端を持って横に引いてみてください。帯がするっと動くなら滑る着物、生地ごと引っ張られるなら止まる着物です。
滑る着物には、帯の下に薄い帯板を入れるか、1周目を巻く前に腰ひもの上へもう1本ひもを足して、帯が乗る段差を作ります。どちらも外から見えない場所なので、帯の見た目は変わりません。
肌着を重ねた日は、胴回りが変わる
秋冬は着物の下に暖かい肌着を足すので、同じ帯でも胴回りが太くなります。胴が太くなると2周巻いたあとの残りが短くなり、結び目に回す長さが足りなくなって、結び目が小さく甘くなりがちです。
肌着を足した日にだけ結び目がゆるむなら、帯の締め方ではなく長さの問題です。手先を取る長さを10cmほど短くし、そのぶんをたれに回すと、結び目に必要な長さが残ります。
羽織を着る日は、結び目を指1本ぶん上げる
羽織を着ると、背中の結び目は羽織の重みで下へ押されます。胴の帯がもともとゆるみやすい人は、羽織を着た日に急に崩れやすくなります。
羽織を着る日は、胴の帯を指1本ぶん高めに巻き、結び目を帯の真ん中より少し上に作ってください。羽織の下で押されても、帯の下端より下へは出ません。結び目の厚みが気になる場合の考え方は兵児帯の文庫結び|羽織で潰れる人は帯の張りと長さで羽を変えるが近い話です。
どちらとも取れるとき①|結び目も傾き、羽も伸びている
結び目をつまむと上下にも左右にも動く、という人がいちばん多い側です。この場合は、胴の帯から先に直してください。
順番を逆にすると、結び目をきれいに締め直しても、土台の帯が回るのでまた傾き、傾いた結び目が引っ張られて羽が伸びます。2周目の脇のひと引きと、必要なら帯の下の摩擦を先に作り、それでも羽が伸びるときだけ結び目に手を入れます。
外出先で両方を直す時間がないときも同じです。胴の帯だけを、結び目ごと背中で両手に持って時計回りに少し回し、位置を戻して脇を下へ引けば、結び目のゆるみも半分ほどは戻ります。
どちらとも取れるとき②|帯の張りが、垂れるか垂れないかの境目
帯を30cm持って横に出したとき、先がゆっくり垂れていく帯は、柔らかい側とも張りのある側とも言えません。
この帯は、着物で決めます。滑る着物の上では胴の帯が先にゆるむので、たれに厚みを足す手は使わず、帯の下の摩擦だけを作ってください。木綿のように止まる着物の上では、胴は回りにくいので、たれを二つ折りにして結び目を支えます。
迷ったら、一度だけ両方を試し、1時間後のつまみ方の結果で残す手を選んでください。
どちらとも取れるとき③|座る時間が長い日と、歩く時間が長い日
同じ人、同じ帯でも、その日の過ごし方でゆるむ場所が変わります。
食事や観劇のように座る時間が長い日は、背もたれに押されて結び目が潰れ、左右に開いてきます。座る日は結び目の最初のひと結びを丁寧に引いておきます。
街歩きや旅行のように歩く時間が長い日は、腰の動きで胴の帯が回ります。歩く日は2周目の脇のひと引きを優先してください。宿で浴衣や着物を着たまま過ごす日の考え方は旅館の夕食は浴衣でいいかでも扱っています。
出先で直すなら、背中より先に脇を触る
外出先で崩れに気づいたとき、つい背中の結び目に手が伸びますが、まず脇の帯を触ってください。脇で帯が着物から浮いていたら胴のゆるみです。帯の下端を斜め下へ引き戻すだけで、結び目の傾きも一緒に戻ることが多くあります。
脇がしっかりしているのに結び目が開いているときだけ、化粧室など鏡のある場所で結び目をほどかずに、羽の根元を上下につまんで締め直します。ほどいて結び直すより早く、形も大きく変わりません。
よくある行き違い
ゆるむたびに帯をきつく締め直すのは、胴の帯がゆるむ人にはかえって逆効果です。きつく締めた帯は座ったときに上端がめくれ、そこから回り始めます。締める強さより、脇の向きと帯の下の摩擦のほうが効きます。
また、結び目がゆるむ人が帯板を足しても、結び目の中の滑りは変わりません。帯板は胴の帯のための道具なので、ゆるむ場所を見てから使い分けてください。
よくある質問
Q. 貝の口が、歩いているうちに背中で斜めに傾いてきます 傾くのは結び目ではなく、胴の帯が回っているサインです。2周目を巻くときに脇で帯を下へひと引きし、滑る着物なら帯の下に薄い帯板を入れてください。
Q. 結び目の羽がだんだん長くなって、だらしなく見えます 最初のひと結びのあと、手先を真上に、たれを真下に、同時に5秒ほど引いてから二つ目の重ねに進むと止まります。
Q. 羽織を着る日も、締め方は同じでいいですか 締め方は同じで構いません。胴の帯を指1本ぶん高めに巻き、結び目を帯の真ん中より少し上に作ってください。
Q. 浴衣で使っていた半幅帯を秋の着物に使うと、ゆるみやすい気がします 柔らかく軽い帯は、厚手の着物の上で結び目が負けやすくなります。たれを二つ折りにして厚みを足すか、張りのある帯に替えてください。
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— メグラシ編集部





