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靴の手入れと仕舞い方|素材別に、毎日・月・季節でやること

メグラシ編集部//読了 20分
季節の変わり目に、素材の違う靴を並べて手入れと仕舞い方を分けているところ

季節が変わるとき、玄関でいちばん迷うのは服ではなく靴です。サンダルはもう履かない。ブーツはまだ早い。その間にある靴を、洗うのか、拭くのか、そのまま押し込むのか。判断がつかないまま靴箱の奥に入り、翌年出したときに白い点が浮いていた、という経験は珍しくありません。

靴の手入れがややこしく感じるのは、やり方が素材ごとにまったく違うからです。革にとって正しい「湿らせた布で拭く」は、スエードでは毛を寝かせる原因になり、エナメルでは表面の樹脂に負担をかけます。ひとつの手順を覚えて全部に当てはめようとすると、必ずどこかで裏目に出ます。

この記事は、7つの素材について「日常」「濡れたとき」「仕舞う前」「避けたい扱い」の4つを表に置くところから始めます。そのうえで、毎日・月に一度・季節の変わり目でやることを所要時間つきに分け、やらなくていいことも同じ量だけ書きます。 後半では、シューキーパーの要否、雨と塩の対処、カビ、合皮の加水分解、買い替えの合図と修理で延ばせる範囲まで進みます。

靴そのものの形や名前を確かめたいときは靴・パンプスの種類16種を、季節の入れ替え全体の段取りは秋の衣替えの手順を見てください。

📋 素材別 手入れ早見表

まずここだけで、目の前の靴をどう扱えばいいかが決まります。迷ったら該当する行だけを読んでください。

素材日常の手入れ(帰宅後)濡れたとき仕舞う前避けたい扱い
スムースレザー乾いた布でほこりを取り、風を通す押さえ拭き→紙を詰めて陰干し汚れ落とし→保革クリーム→乾拭き温風で乾かす/濡れたまま磨く
スエード・ヌバックブラシで毛の流れをそろえる触らず陰干し→乾いてからブラシブラシ→起毛用の防水スプレー濡れた状態でこする/油性クリーム
エナメル(パテント)やわらかい布で乾拭き水気を拭いて陰干し乾拭き→専用の艶出しか何もしない保革クリーム/他の靴と密着させる
合皮乾いた布で拭き、中の湿気を抜く拭いて陰干し汚れを落として乾かすだけ油分を入れる/高温多湿で長期保管
キャンバスブラシで乾いた汚れを落とす中の紙を替えながら陰干し必要なときだけ手洗い→陰干し高温での乾燥機/漂白剤の常用
ラバー水拭きか、固く絞った布拭くだけでよい乾かして、他の素材と離す直射日光の下に置く/折り曲げて保管
ニット素材表面のほこりを払う形を整えて陰干し毛玉を取り、詰め物で形を保つ引っかけたまま履く/圧をかけて重ねる

この表の縦の並びをそのまま覚える必要はありません。素材が違えば正解が違う、それだけが分かっていれば十分です。以降で1つずつ広げます。

帰ってからの1分で、大半が決まる

手入れというと磨く場面を思い浮かべますが、靴の寿命をいちばん左右するのは磨きではありません。履いたあと、中にたまった水分をどう抜くかです。

人の足は一日でおよそコップ一杯分の汗をかくといわれます。その水分はほとんど靴の内側に吸われます。革は水分を含むと繊維がゆるみ、そのまま乾かないうちに次の日も履くと、形が戻らないまま履きぐせだけが深くなります。ライニングの縫い目がほつれるのも、多くはこの状態が続いた結果です。

だから、帰ってすぐにやることは3つで足ります。所要は全部で1分ほどです。

順番やること所要理由
1靴を脱いだら、すぐ靴箱に入れない0秒湿ったまま閉じるとにおいとカビの条件になる
2乾いた布か馬毛のブラシでほこりを払う20秒ほこりは湿気を抱えて革の油分を吸う
3中の紙かキーパーを入れ、風の通る場所に置く30秒形を保ちながら水分が抜ける
4翌日は別の靴を履く0秒内部が乾くには丸一日かかる

4つ目が最も効きます。同じ靴を毎日履くと、内部が乾ききる時間が一度も来ません。手入れの道具を増やすより、履く靴を1足増やすほうが持ちは延びます。

毎日・月・季節の変わり目|時間で分ける

全部を毎回やる必要はありません。頻度の違う3つの層に分けると、負担が一気に下がります。

毎日やること(1分)

やること所要対象の素材
ほこりを払う20秒すべて
中の湿気を抜く(紙・キーパー)30秒すべて
つま先とかかとの傷を目で確認する10秒すべて
泥がついていたら乾かしてから落とす翌日に持ち越し可すべて

月に一度やること(10〜20分・履く頻度が高い靴だけ)

やること所要対象の素材目安
汚れ落とし(表面のクリーナー)5分スムースレザー表面がくすんできたら
保革クリームを入れる10分スムースレザー触ってかさついたら
ブラシで毛を起こす3分スエード・ヌバック毛が寝てきたら
防水スプレーをかけ直す3分+乾燥スエード・キャンバス水をはじかなくなったら
中敷きを外して干す5分すべてにおいが気になったら
ソールの減り方を左右で見比べる2分すべて月に一度で十分

季節の変わり目にやること(1足あたり15〜30分)

順番やること所要見るところ
1中敷きと靴ひもを外す3分中敷きの沈み、ひものほつれ
2外側の汚れを素材に合った方法で落とす5分縫い目とコバの際
3完全に乾かす(最低半日)半日〜1日内側の指先が湿っていないか
4素材に応じて油分か防水を入れる5分入れすぎないこと
5詰め物を入れて形を整える2分つま先が反っていないか
6ソール・かかと・接着を点検する3分買い替えか修理かの判断
7通気のある場所に置く2分密閉しない
8どこに何を仕舞ったかメモを1行残す1分翌季に探さずに済む

季節の変わり目は、手入れの機会であると同時に、点検の機会です。手入れだけして点検を飛ばすと、次に履く日の朝にかかとが崩れているのに気づくことになります。

やらなくていいこと

手入れの記事は「やること」ばかり増えがちですが、実際には過剰なほうが傷む場面が多くあります。ここは同じ重さで書いておきます。

よく言われること実際代わりに
履くたびにクリームを塗る油分が余って表面に残り、汚れを吸うかさついたときだけ
毎回ぴかぴかに磨くつま先以外は艶を出す必要がない月に一度、部分的に
全部の靴にシューキーパー布製・ラバーには効果が薄い革の甲がある靴だけ
買ったらすぐ防水スプレーエナメルとラバーには不要起毛素材と布に
汚れたらすぐ水拭き革は水分でシミになることがある乾いてからブラシで
スニーカーを毎回洗う接着と形が早く傷む汚れが目立ったときだけ
靴クリームを厚く塗る乾かず、内側にまで回る米粒ほどを薄く伸ばす
消臭剤を入れっぱなしにする湿気そのものは減らない乾かすことを先に

とくに油分は、足せば足すほどよいものではありません。革は油分を含むとやわらかくなりますが、やわらかくなりすぎた革は甲の折れじわが深く入り、そこから表面が切れます。入れる量ではなく、入れる間隔で調整すると考えてください。

スムースレザー|乾かす・拭く・たまに入れる

表面がなめらかな革です。パンプス、ローファー、革のブーツの多くがこれにあたります。

場面やること所要補足
帰宅後ほこりを払い、キーパーか紙を入れる1分ここが本体
表面がくすんだクリーナーで古い油分を落とす5分落としてから入れる
かさついた保革クリームを薄く入れる10分米粒ほどを全体に
艶を出したい乾いた布で乾拭きする3分つま先とかかとだけでよい
傷がついた同系色のクリームでなじませる5分完全には消えない
仕舞う前落とす→入れる→乾拭き→形を整える20分完全に乾かしてから

順番は「落としてから入れる」です。古い油分の上に新しい油分を重ねると、表面が厚くなって曇ります。年に一度、季節の変わり目にだけクリーナーを使うと決めておけば、それ以上は要りません。

スエードとヌバック|水より先にブラシ

表面を起毛させた革です。濡れた状態でこすらないことだけ守れば、扱いは難しくありません。

場面やること所要避けたい扱い
帰宅後ブラシで毛の流れをそろえる30秒強く往復させる
汚れた乾いた状態で消しゴム状の道具を使う3分水で洗う
濡れた触らず、紙を詰めて陰干し半日濡れたままブラシをかける
毛が寝た乾いてから一定方向にブラシ3分乾く前にいじる
色が薄い起毛用の補色剤を薄く10分油性のクリーム
仕舞う前ブラシ→起毛用の防水スプレー15分密閉して仕舞う

スエードに油性の保革クリームを塗ると、毛が寝て固まり、元には戻りません。起毛素材には起毛用のものを使う、という一点だけを覚えておけば大きな失敗は起きません。今季はスエードを使ったアイテムを多く見かけますが、扱いの前提が革とは違う素材だと分かって選ぶと、選択そのものが変わります。

エナメル(パテント)|表面は樹脂だと考える

革の上に樹脂の膜がかかっているものです。手入れの対象は革ではなく膜なので、革用のものは基本的に使いません。

場面やること避けたい扱い
帰宅後やわらかい布で乾拭き硬い布でこする
汚れた固く絞った布で軽く拭く溶剤の入ったもの
くもったエナメル用の艶出しを少量保革クリーム
濡れた水気を拭いて陰干し温風
仕舞う前乾拭きして、他と離して置く他の靴やビニールと密着させる
ひび割れた元には戻らない削って直そうとする

エナメルで最も多い失敗は、色移りです。濃い色のものと重ねたり、袋に入れて押しつけたまま数か月置くと、相手の色が膜に移り、拭いても取れません。仕舞うときは1足ずつ布に包んで、平らに置いてください。

合皮|手入れで寿命が延びにくい素材

合成皮革は、布地の上に樹脂を重ねた素材です。軽く、水に強く、手入れも簡単で、扱いやすい素材です。ただしひとつだけ、はっきり書いておくべき性質があります。

合皮は、履いた回数ではなく、作られてからの時間で分解が進みます。 表面の樹脂が空気中の水分と少しずつ反応するためで、これは手入れの上手下手では止められません。

経過のめやす起きること見え方
〜1年ほとんど変化しない新品と同じ
1〜2年表面がわずかに硬くなる見た目には分からない
2〜3年表面のべたつき、細かいひび手に樹脂がつく
3〜5年剥がれ、ソールの浮き粉状に落ちる
5年〜履くと崩れることがある修理はほぼ効かない

条件で前後します。湿度が高く、空気の動かない場所に置くと早まり、乾いた場所では遅くなります。とはいえ保管で寿命を大きく延ばせる素材ではないため、いちばん合理的な扱いは「その期間のうちに履ききる」ことです。

これは合皮を選ぶことが悪い、という話ではありません。軽さと価格の手ごろさは確かな利点で、履く頻度が高い靴、汚れる場面で使う靴、流行の形を短い期間だけ試したい靴には、むしろ向いています。年に一度しか履かない場面のために合皮の靴を「大事にしまっておく」のが、いちばん相性の悪い使い方だというだけです。買う前の判断材料としてはレンタルと購入の使い分けの考え方も参考になります。

キャンバス|洗えるが、洗いすぎない

布地の靴です。洗えるのが利点ですが、洗うたびに接着とソールに負担がかかります。

場面やること所要補足
帰宅後ブラシで乾いた汚れを落とす20秒湿ったままこすらない
部分的に汚れた部分だけを湿らせて叩く5分全体を洗わずに済む
全体が汚れたぬるま湯と中性のもので手洗い30分月に一度を超えない
乾かす紙を替えながら陰干し1〜2日乾燥機と直射日光は避ける
黄ばんだ洗剤が残っていることが多いすすぎを増やす漂白の常用は生地を弱らせる
仕舞う前完全に乾かして、防水スプレー15分湿ったまま仕舞わない

洗ったあとに黄ばむのは、多くの場合カビではなく洗剤の残りです。すすぎを1回増やし、陰干しにするだけで起きにくくなります。

ラバー|白い粉と、ひび

長靴やソールの外側などのゴム素材です。手入れはほとんど要りませんが、劣化の仕方に特徴があります。

症状原因対処
表面に白い粉が浮くゴムの中の成分が表面に出る現象乾いた布で拭けば取れる
細かいひびが入る紫外線と空気にさらされた時間進行は止められない
折り目のところが切れる折り曲げたまま長期保管した筒を立てて保管する
べたつく高温多湿の場所に置いた拭いて風の通る場所へ
硬くなる低温と経年常温に戻してから履く

白い粉を見てカビと思い、慌てて漂白しようとする場面がよくありますが、拭いて取れるならゴム自体の性質です。カビとの見分けは後の表に置きます。長い筒のものは、折らずに立てて仕舞うのが唯一にして最大のコツです。丈のあるブーツを選ぶ段階の話はロングブーツの選び方にまとめています。

ニット素材の靴|毛玉と型崩れ

編み地のアッパーを使った靴です。軽く伸びるぶん、傷み方も布に近くなります。

場面やること避けたい扱い
帰宅後表面のほこりを払う引っかかった糸を引っ張る
毛玉が出た小さなはさみか毛玉取りで表面だけ引き抜く
汚れた部分的に叩き洗い全体を強くもむ
濡れた形を整えて詰め物をし、陰干し絞る
仕舞う前詰め物で形を保ち、上に何も載せない他の靴を重ねる

編み地は一度伸びると戻りません。仕舞うときに上から重さがかかると、履き口が広がったまま翌季を迎えます。

雨に濡れたとき|最初の30分と、翌日

濡れた靴で失敗が起きるのは、たいてい「早く乾かそうとしたとき」です。順番を決めておくと迷いません。

順番やること所要理由
1泥は乾くまで触らない濡れた泥はこするとしみ込む
2乾いた布で水気を押さえる2分こすらず、押さえて吸わせる
3中敷きとひもを外す2分内側に空気の通り道を作る
4紙を詰めて形を保つ3分かたく詰めすぎない
5風の通る日陰に立てて置く半日床に直置きしない
61〜2時間後に紙を交換する3分湿った紙は乾燥を止める
7完全に乾いてから泥とブラシ10分翌日でよい
8革なら最後に保革クリーム10分水と一緒に油分が抜けるため

急いで乾かしてはいけない理由は、素材の中で乾く速さが揃わないからです。表面だけが先に乾くと、革は縮んで硬くなり、ソールを留めている接着剤は熱でゆるみます。ドライヤーの温風、暖房の吹き出し口、日なたの3つは避けてください。

乾かす場所可否理由
室内の風が通る日陰最適温度差が小さく、均一に乾く
扇風機やサーキュレーターの弱風よい温度を上げずに空気を動かせる
除湿機のそばよい空気中の水分そのものを減らせる
玄関の床に直置き避ける床側が乾かない
日なた避ける色が抜け、革が硬くなる
ドライヤーの温風避ける接着がゆるみ、革が縮む
暖房の吹き出し口避ける同上、ひび割れの原因
密閉した靴箱の中避ける乾かないままカビの条件になる

塩を吹いたとき|白い輪の戻し方

乾いたあとに白い輪や線が浮くことがあります。汗の塩分や、冬の路面にまかれた融雪剤が水と一緒に革へ入り、乾くときに表面へ出てくる現象です。放っておくと革が硬くなります。

順番やること所要注意
1白い部分の位置を確認する1分輪の外側まで見る
2ぬるま湯を含ませ固く絞った布を用意2分濡らしすぎない
3輪の内側から外へ、叩くように拭く5分こすらない
4境目をぼかすため、全体を薄く均一に湿らせる3分部分だけだと新しい輪ができる
5風の通る日陰で丸一日乾かす1日温風は使わない
6乾いたら保革クリームを入れる10分塩と一緒に油分も抜けている
7残った場合は間隔をあけて繰り返す一度で消そうとしない

いちばんよくある失敗は、白い部分だけを狙って拭くことです。そこだけがきれいになると、境目に新しい輪ができます。全体を同じ湿り具合にしてから乾かすのが、輪を残さないコツです。

シューキーパーは要るのか|素材と形で分ける

すべての靴に必要なものではありません。効果が出る条件がはっきりしています。

靴の種類必要度理由
革のパンプス高い甲が薄く、折れじわが定着しやすい
ローファー高い甲の面積が広く、しわが深く入る
革のショートブーツ高いつま先が反りやすい
革のロングブーツ高い(筒用)筒が折れると跡が残る
スエードの靴形は保てるが、毛の状態は別問題
エナメルの靴折れじわが割れにつながる
合皮の靴低〜中形は保てるが分解は止まらない
スニーカー形が崩れても履き心地に響きにくい
キャンバスの靴洗ったあとの形出しには有効
サンダル不要甲を覆う面が小さい
ラバーの長靴不要(筒は立てる)折り目だけ注意すればよい
ニット素材の靴伸ばす方向に力が働くと逆効果

木製と樹脂と、代用の紙

種類得意なこと苦手なこと向く場面
木製(吸湿する材)湿気を吸う、においを抑える、形を作る重い、価格が上がる毎日履く革靴、長期保管
木製(吸湿しない材)形を作る湿気は吸わない形だけ保ちたいとき
樹脂製軽い、手入れが要らない、扱いが楽湿気を吸わない旅行、数を揃えたいとき
ばね式(伸びる棒)縦方向にしっかり張る甲の形は作れないつま先の反り防止
丸めた紙すぐ用意できる、湿気を吸う形は大まかにしかできない濡れた日、来客用

紙で代用するときの詰め方には順番があります。つま先の奥に、かたく丸めたものを先に入れる。 そのあと甲から履き口にかけては、軽く空気を含ませるように入れます。かかとまでぱんぱんに詰めると履き口が広がるので、最後は緩めで止めてください。濡れた靴では、1〜2時間おきに紙を交換すると乾きが早くなります。

なお、濡れた直後の革に強く張るキーパーを入れると、そのまま伸びた形で乾くことがあります。半乾きになってから入れるか、その日は紙にしておくのが安全です。

仕舞い方|箱に入れるか、出しておくか

長期保管で失敗が起きるのは、乾かしきらないまま密閉したときです。

保管の仕方向く素材向かない素材条件
買ったときの箱にそのままラバー、合皮(短期)革、スエード乾かしきってから
箱にふたをずらして入れる革、スエード通気が取れる
通気穴のある箱すべて最も安全
不織布の袋に入れる革、エナメル色移りを防げる
棚に出しておくよく履くもの全般ほこりを嫌うエナメル週1回以上履くもの
重ねて積むすべて形が崩れる
ビニール袋で密閉すべて湿気がこもる
圧をかけて詰め込むすべて履き口と甲が変形する

季節を越えて仕舞うものは、乾かす時間をいちばん長く取ってください。表面が乾いていても、内側のつま先はまだ湿っていることがあります。手を入れて指先で触り、ひんやりする感じが残っているなら、まだ早い合図です。

カビが生える条件と、生えたときに戻す手順

カビは運ではなく条件で生えます。条件が3つそろったときだけ出ます。

条件目安断ち方
湿度おおむね70%を超える状態が続く除湿する、扉を開ける
温度20〜30度前後制御しにくい
栄養皮脂、汗、食べこぼし、ほこり仕舞う前に落とす
空気が動かない密閉、詰め込みすき間をあける
時間数日〜数週間定期的に見る

このうち温度は動かしにくいので、実際に断てるのは湿度・栄養・空気の3つです。仕舞う前に汚れを落とすことは、見た目のためではなくカビ対策だと考えると、手が動きやすくなります。

生えてしまった場合の手順です。

順番やること注意
1屋外かベランダに出す室内で払うと胞子が広がる
2乾いたブラシで表面を払う強くこすらない
3固く絞った布で拭き取る濡らしすぎない
4風の通る日陰で完全に乾かす半日〜1日
5革用の除菌できるものを使う素材に合うか確認する
6乾いてから保革クリームか起毛用ブラシ素材に合わせる
7同じ場所にあった他の靴も点検する一足だけということは少ない
8靴箱の中を拭いて乾かす再発の元は箱側にある

表面の白いカビは落とせることが多い一方、内側まで入って革が変色したものは戻りません。同じ靴箱にあった他の靴を必ず確認してください。 一足に出ているときは、たいてい環境そのものが条件を満たしています。

玄関の収納|湿気・数・靴箱の中の空気

靴の持ちは、手入れより収納環境で決まる部分が大きいものです。玄関は家の中でも湿気がたまりやすい場所で、土間のコンクリートは水分を通します。

項目目安理由
靴箱の埋まり具合8割まで空気が動く隙間が要る
扉を開ける頻度週に1回、10分中の空気を入れ替える
除湿するものの位置下段湿気は低いところにたまる
消臭するものの位置中段〜下段においも下にたまりやすい
靴と靴の間隔指1本分密着させない
床への直置き台か棚の上へ床は湿気が上がる
濡れた靴の置き場靴箱の外乾くまで入れない
季節外のものの置き場上段か別の部屋出し入れの頻度で分ける

数が多いと、どうしても詰め込みになります。全部を同じ場所に置こうとせず、いま履く季節のものだけを玄関に置くと決めると、空気の通り道が確保できます。クローゼットの考え方と同じで、収納の設計は季節別ワードローブ整理術と地続きです。

買い替えの合図|ソール・かかと・中敷き

手入れで延ばせる範囲には限りがあります。見た目で判断できる合図を並べます。

見る場所まだ大丈夫そろそろ買い替えか大きな修理
前底の減り模様が残っている模様が消えかけ中の層の色が見えている
かかとの高さ左右の差が分からない片減りが見える傾きで足首が外へ流れる
かかとの角角が立っている丸くなった芯が出ている
中敷き押すと戻る戻りが遅い沈んだまま戻らない
アッパーとソールの境隙間がない一部が浮く歩くと口が開く
甲の折れじわ線が浅い線が白い割れて中が見える
内側のかかと布が残っている薄くなった破れて芯が当たる
全体の履き心地変わらない夕方だけ疲れる履くたびに痛む

いちばん見落とされるのがかかとの傾きです。左右そろえて後ろから見て、垂直の線からどちらかへ流れているなら、歩き方そのものに影響が出ています。ここは早いほど安く直り、遅いほど本体まで傷みます。

修理で延ばせる範囲と、延ばせない範囲

修理に出せば延びるものと、延びないものがあります。

修理の内容延びる目安向く素材・構造判断のめやす
かかとの一番下の交換半年〜1年ほぼすべての革靴減りが芯に届く前
前底の貼り足し半年〜1年革底、薄いゴム底減り始めのうちに
底全体の張り替え1年以上縫って留めた構造貼っただけの構造は可否が分かれる
中敷きの交換半年〜1年外せるもの沈んで戻らないとき
内側のかかとの張り替え1年前後革のライニング破れて芯が当たるとき
履き口の当て革1年前後擦り切れの初期
ファスナーの交換1年以上ブーツ引っかかりが出たとき
色の補修見た目のみ革、スエード構造には効かない
合皮の表面の剥がれほぼ延びない買い替えの検討へ
加水分解したソールほぼ延びない同上

分かれ目は、傷んでいるのが減る部分か、素材そのものかです。減る部分は交換できます。素材の分解は交換できません。この線引きを持っておくと、修理に出す前に見当がつきます。服のお直しにも同じ構造があり、お直しで直せること・直せないことと考え方は共通しています。

修理に出すときは、いつからその状態か、どれくらいの頻度で履くか、あとどれくらい履きたいかの3つを伝えると、直す範囲の相談がしやすくなります。

失敗したときにどう戻すか

手入れの途中で起きやすい失敗と、戻し方をまとめます。多くは戻せます。

起きたこと原因戻し方
革がしみになった濡れた状態で部分だけ拭いた全体を薄く湿らせて陰干し
革がべたつくクリームを入れすぎた乾いた布で余分を拭き、間隔をあける
表面が曇った古い油分の上に重ねたクリーナーで落としてから入れ直す
革が硬くなった温風や日なたで乾かした保革クリームを少量ずつ数回に分けて
スエードの毛が寝た濡れたままこすった完全に乾かしてから一定方向にブラシ
スエードに輪が出た部分だけ濡らした全体を均一に湿らせて陰干し
エナメルに色が移った濃い色と密着させた戻らない。以後1足ずつ包む
キャンバスが黄ばんだ洗剤が残ったすすぎ直して陰干し
靴の中がにおう乾ききる前に仕舞った中敷きを外して丸一日干す
つま先が反った詰め物なしで長期保管キーパーを入れて数日置く
履き口が広がったかかとまで強く詰めた完全には戻らない。詰め方を変える
ソールが浮いた高温で乾かした修理で貼り直せる場合がある

戻らないのは、色移りと、素材そのものが分解したものです。それ以外はたいてい「乾かして、均一にして、待つ」で改善します。 慌てて重ねて手を入れるほど、戻しにくくなります。

手入れの道具|最初に揃えるものと、後でいいもの

一度に全部を買う必要はありません。順番があります。

順位道具使うところなくてもよいか
1乾いた布(着なくなった綿の生地で足りる)すべて必須
2詰める紙すべて必須
3馬毛の柔らかいブラシほこり払いあると毎日が楽
4起毛素材用のブラシスエード、ヌバック該当の靴があれば
5防水スプレー(起毛・布用)スエード、キャンバス該当の靴があれば
6保革クリーム(無色)スムースレザー革靴があれば
7豚毛のかたいブラシクリームを伸ばす革靴があれば
8シューキーパー革の甲がある靴靴の数だけは不要
9革用のクリーナー年に一度の汚れ落とし後回しでよい
10色つきのクリーム傷の補修必要になってから

上から3つがあれば、日常の手入れは足ります。道具を増やすより、乾かす時間を確保するほうが効果は大きいというのが、この記事全体を通した結論です。

つまずきやすいところ

よくある進め方実際に起きていること代わりにできること
脱いですぐ靴箱に入れる湿気が閉じ込められる一晩は外に出す
同じ靴を毎日履く内部が乾く時間がない2足を交互に
濡れた靴を温風で乾かす革が縮み、接着がゆるむ日陰で丸一日
汚れたらすぐ水拭き革はしみになることがある乾かしてからブラシ
履くたびにクリーム油分が余って汚れを吸うかさついたときだけ
買った箱のまま長期保管密閉されて湿気がこもるふたをずらすか通気の箱へ
白い部分だけ拭く境目に新しい輪ができる全体を均一に湿らせる
全部にシューキーパー布とラバーには効きにくい革の甲がある靴に絞る
靴箱に詰め込む空気が動かずカビの条件に8割で止める
減ってから修理に出す本体まで傷んで直せない芯に届く前に出す

まとめ

靴の手入れは、覚えることが多いように見えて、実際には3つの層でできています。

毎日やることは1分です。ほこりを払い、中の湿気を抜き、翌日は別の靴を履く。ここだけで持ちがはっきり変わります。磨くのは月に一度で足ります。

素材ごとの違いは、拭き方より「何を使わないか」に出ます。スエードに油性のものを使わない。エナメルに保革クリームを使わない。合皮に油分を入れない。この3つを外さなければ、大きな失敗は起きません。

濡れたときは、急がないことが唯一の正解です。温風、日なた、暖房の風を避け、紙を替えながら丸一日かけて乾かす。塩を吹いたら、部分だけでなく全体を均一に湿らせてから乾かす。輪を残さないのはここです。

仕舞うときは、乾かしきってから、密閉しない。カビは運ではなく条件で生えるので、湿度・栄養・空気の3つを断てば防げます。合皮だけは例外で、保管では寿命が延びません。その期間のうちに履くのがいちばん報われる扱いです。

そして季節の変わり目は、手入れと同時に点検の機会です。ソールの模様、かかとの傾き、中敷きの戻り。この3つを見て、減る部分の傷みなら修理へ、素材そのものの分解なら買い替えへ。線引きを持っていれば、迷う時間そのものが短くなります。

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— メグラシ編集部

よくある問い

Q. 靴は毎回磨いたほうがいいのですか
毎回磨く必要はありません。履くたびに必要なのは、ほこりを払うことと、中の湿気を抜くことの2つだけで、あわせて1分ほどです。保革クリームのような油分を入れる作業は、革靴でも月に一度から数か月に一度で足ります。油分は入れれば入れるほどよいものではなく、余った分が表面に残って汚れを吸い、革がやわらかくなりすぎて甲の折れじわが深く入る原因になります。指で触れて表面がしっとりしているうちは、まだ足りています。かさついて色が浅く見えてきたときが、入れどきの合図です。
Q. 雨に濡れた靴は、どうやって乾かせばいいですか
急いで乾かさないことが最も大事です。帰ったらまず、乾いた布で水気を押さえるように取り、中に紙を詰めて形を保ちます。そのうえで、直射日光の当たらない、風が通る場所に横倒しではなく立てて置いてください。ドライヤーの温風、暖房の吹き出し口、日なたはいずれも避けます。革は急に高温で乾くと内部の水分だけが先に抜けて硬くなり、ソールを留めている接着剤もゆるむことがあります。丸一日から二日かけて自然に乾かすのが、いちばん傷みません。詰めた紙は湿ったら交換してください。
Q. シューキーパーは必ず要りますか
全部の靴に要るわけではありません。効果がはっきり出るのは、革のパンプス、ローファー、革のショートブーツのように、甲の部分が薄い革一枚でできていて折れじわが入る靴です。スニーカーや布製の靴は、形が崩れても履き心地に響きにくいため、なくても大きな差は出ません。持っていない場合は丸めた紙で代用できます。つま先の奥にかたく丸めたものを先に入れ、そのあと甲から履き口にかけては軽く詰めるのが基本です。かかとまでぱんぱんに詰めると、逆に履き口が広がることがあります。
Q. 合皮の靴は手入れをすれば長くもちますか
残念ながら、手入れで大きく延ばすのは難しい素材です。合皮の表面に使われる樹脂は、空気中の水分と少しずつ反応して分解が進みます。履いた回数ではなく、作られてからの時間で進むのが特徴で、目安としてはおよそ2〜3年、条件がよくても5年前後で表面のべたつき、粉のような剥がれ、ソールの浮きが出てくることがあります。だからこそ、大事にしまい込むより、その期間のうちに履くほうが結果的に得になります。手入れとしては、汚れを拭いて風を通し、直射日光と高い湿度を避けるだけで十分です。
Q. スエードの靴が濡れて硬くなってしまいました。戻せますか
多くの場合、ある程度は戻せます。まず完全に乾かしてください。濡れている状態でこすると毛が寝たまま固まります。乾いたら、ゴム製または真鍮混じりのブラシで、一定の方向に向かって毛を起こすように払います。輪じみが出ている場合は、固く絞った布で全体を薄く均一に湿らせてから、また陰干しして境目をぼかします。それでも毛が寝たままなら、少し離した位置から蒸気を当てて毛を立て、乾いてからもう一度ブラシをかけます。色が薄くなったところは、同系色の起毛用の補色剤で目立たなくできます。
Q. 靴箱に仕舞うのと、出しておくのは、どちらがいいですか
素材と履く頻度で分かれます。週に一度以上履くものは、出しておくか扉のある靴箱でも手前に置くほうが、空気が動いて湿気がこもりません。季節を越えて仕舞うものは、箱に入れるなら乾かしきってから、通気の穴があるか、ふたを少しずらして入れます。買ったときの箱は密閉に近いので、そのまま長期間置くとカビの条件がそろいやすくなります。革とスエードは通気を優先、エナメルとラバーは他のものと密着させない、合皮は湿度の低い場所を選ぶ、と覚えておくと迷いません。

— メグラシ編集部

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