クローゼットにタンスを置く|引き出す前の余白で、置ける場所が決まる

クローゼットにタンスが入るかどうかは、幅と高さでは決まりません。
決まるのは、引き出しを全部引いたときに、体が入る余白が残るかどうかです。
測り方は1つです。タンスを置きたい場所の手前に立ち、壁から向かいの壁(または扉の外側)までの距離を測る。そこからタンスの奥行きと、引き出しが出てくる長さを引く。残りが45cmあれば成立します。
45cmは、人が立って腰を落とし、引き出しの中を見下ろせる最小の幅です。ここを下回ると、引き出しは半分しか引けません。
判定①|引き出しを引いたあとに、45cmが残るか
引き出しの出る長さは、奥行きの8割前後です。奥行き40cmの引き出しなら、32cmほど手前に出ます。
つまり必要な床は、タンスの奥行き+32cm+45cm。奥行き40cmのタンスなら、合計117cmの前後方向が要ります。
| 手前に残る余白 | 引ける割合 | 起きること |
|---|---|---|
| 45cm以上 | 全部引ける | 奥まで見下ろせる。中身が入れ替わる |
| 30〜45cm | 7割ほど | 奥の列だけが使われなくなる |
| 20〜30cm | 半分 | 手前の一列しか使わない段になる |
| 20cm未満 | ほぼ引けない | 段そのものが死ぬ |
ここで見ているのは容量ではなく、その段に入れた服が着られるかどうかです。 引けない段の奥に入れた服は、持っているのに存在しないのと同じになります。
判定②|扉を開けた状態の、開口幅
折れ戸や開き戸のクローゼットでは、扉が全開でも開口部の両端に柱のような残りが出ます。ここを測ります。
開いた状態の開口幅が、タンスの幅より10cm以上広いこと。 これが条件です。
差が10cmを切ると、正面から引けません。斜めに立って引くことになり、引き出しが傾いて滑りが悪くなります。滑りが悪い引き出しは、開ける回数が減ります。
引き戸の場合はさらに厳しくなります。引き戸は一度に半分しか開かないので、タンスの幅は開口部の半分より狭い必要があります。 半分を超えるなら、タンスは扉の内側ではなく外へ出してください。
判定③|掛けた服の下端と、天板の隙間
掛けている服の下にタンスを置く形は、空間の使い方としては合理的です。ただし条件が1つあります。
いちばん丈の長い一着の下端から、タンスの天板までが10cm以上。
10cmを切ると、上段を開け閉めするたびに服の裾が揺れます。揺れるだけならまだしも、裾が天板や引き出しの角に乗り、折りじわが入ります。毎日引く段の上に、丈の長い服を掛けないでください。
隙間が取れないときの手は2つです。タンスの高さを下げるか、その区画に掛ける服を丈の短いものだけに入れ替えるか。後者のほうが、たいてい早く済みます。 丈で並べ替えるだけで、掛ける枚数は変わりません。
判定④|天板の高さは、手が届く帯に入っているか
床から80〜150cmが、立ったまま無理なく手が届き、中が見下ろせる帯です。
天板が150cmを超えると、上段は「見えない段」になります。 見下ろせないので、中身を手探りで探すことになり、探せない服は着られません。
逆に天板が80cmを下回ると、上段まで含めて全部がしゃがむ段になります。しゃがむ段は開ける回数が落ちますが、見下ろせるので中身は把握できます。高すぎるより低すぎるほうが、まだ使えます。
判定の順序としては、まず天板の高さを測り、150cmを超えていたら、その位置には置かないと決めてください。余白や開口幅を工夫しても、見えない段は戻ってきません。
中に入れると、上2段しか使わなくなる
扉の内側にタンスを入れると、扉を開ける・引き出しを引くで動作が2つになります。
動作が2つになると、人は上から順に開けて、目的のものが見つかった時点で止めます。下段まで到達する回数が、目に見えて減ります。
3段のタンスなら上2段、4段なら上2〜3段が実際に回る範囲です。下段は季節に数回しか開きません。
だから下段には、開けなくても中身を思い出せるものだけを入れてください。同じ種類でまとめた靴下、下に着るもの、決まった一組。選ぶ必要のある服を下段に入れると、その服は着られなくなります。
外に出すなら、天板を空けたままにする
タンスを部屋側へ出す判断もあります。扉を開ける動作が1つ減り、天板が使えるようになります。
ただし条件が1つあります。天板の上に物を積まないこと。
天板に何かが積まれた瞬間、上段を開けるたびに物をどかす動作が増えます。動作が増えたタンスは開かなくなり、外に出した意味がなくなります。
天板を空けておくと、そこが一度着た服の一時置きに使えます。これは有効な使い方ですが、置いていい枚数を3枚までと決めてください。 4枚目からは山になり、下の服が見えなくなります。
タンスを置いたぶん、掛けられる丈が変わる
床にタンスを置くと、その上の掛ける幅は残ります。なくなるのは幅ではなく、丈です。
床から天板までが80cmなら、その区画に掛けられるのは、パイプから天板までの距離に収まる丈の服だけになります。パイプが床から180cmなら、掛けられるのは丈90cm以下の服です。
だから、置く前に掛けている服の丈を3つに数えてください。 90cm以下、90〜120cm、120cm以上の3つです。
120cm以上のものが5着を超えるなら、その区画にタンスは置けません。置いた瞬間に、その5着の行き場がなくなります。丈の長い服を別の区画へまとめ、短い服だけの区画を作ってから置いてください。
数えるのに必要なのは巻尺1本と5分です。 置いたあとに気づくと、タンスごと動かすことになります。
引き出しの前に立つ向き|正面か、横か
余白が足りているのに使いにくいとき、原因は向きのことがあります。
正面から引けているかどうかを、一度確かめてください。 体がタンスの正面を向いていて、両手が引き手に届くなら正面です。片手だけを伸ばして斜めに引いているなら、横向きです。
横向きで引くと、引き出しは片側だけに力がかかって傾きます。傾いた引き出しは滑りが悪くなり、開ける回数が減ります。
正面に立てない原因は、たいてい扉の位置か、隣に置いたものです。数cmずらすだけで正面に立てるようになることが多いので、動かす前にまず立ってみてください。
どちらとも取れるとき①|余白が40cm前後
45cmと30cmの中間は、判断が割れます。
このときは、入れる中身のほうを合わせてください。 引き出しを7割引けば、手前2/3は見えます。ここに入れるのは、手前だけで完結する中身、つまり同じ種類を並べたものです。
逆に、種類が混ざる中身は入れられません。混ざったものは奥まで見ないと選べないからです。
もう1つの手として、そのタンスを引き出しの浅い段だけで使う方法もあります。浅い段は引き出す長さが同じでも、中身が一目で見えるので、7割でも判断がつきます。深い段は45cmが必要です。
どちらとも取れるとき②|扉を全開にしないと開かない
置いてみたら、扉を全開にしないと引き出しが引けなかった。よくある行き止まりです。
このとき確かめるのは、扉を全開にする動作が、毎回できるかどうかです。扉の前に物が置かれる家では、全開は続きません。
続かないと判断したら、タンスを扉の可動域の外へずらしてください。数cmずらすだけで、半開きでも引ける位置に入ることがあります。ずらす方向は、扉の蝶番の側ではなく、開いた扉が寄っていく側です。
それでも収まらないなら、扉を外すという選択肢もあります。扉を外すと開口幅の制約が消え、判定は前方余白だけになります。
どちらとも取れるとき③|置き場所を動かせない
賃貸や共用で、タンスの位置を選べないこともあります。この場合は、置き場所ではなく中身の側を配置に合わせます。
引ける段には、選ぶ必要がある服を。引けない段には、選ぶ必要のない服を。段ごとに役割を1つだけ与えてください。
そのうえで、引けない段の枚数を減らします。段が死んでいるのに枚数を維持すると、その服はクローゼットの中で行方不明になります。減らす代わりに、掛ける側へ移せるものは移してください。 掛ければ見えます。
共用の場合は、どの段が誰のものかを先に決めておきます。決めないままだと、引きやすい段だけが取り合いになり、引きにくい段は誰も使わないまま残ります。
タンスに入れる服と、掛ける服の線引き
季節では分けません。分けるのは、畳んで形が戻るかどうかです。
畳んで一晩置き、翌朝広げてしわが残らないもの、肩の形が崩れないもの。これがタンス側です。しわが残るもの、肩に線が入るものは掛ける側に残します。
この分け方だと、春夏ものでも薄手のシャツは掛ける側に残り、秋冬ものでも厚手の下に着るものはタンス側に入ります。季節でまとめて入れ替えると、形の崩れやすい一枚がタンスの底で待つことになり、着たい日に使えません。
判定にかかるのは一晩です。迷っている服が5枚あるなら、5枚まとめて畳んで、翌朝に一度に判定してください。
奥行きが余ったとき、後ろに何を置くか
クローゼットの奥行きが55cm以上あり、タンスの奥行きが40cm前後だと、後ろに15cmほど余ります。
ここは、取り出す必要のないものの場所です。年に1回も開けないなら置いてよく、季節ごとに出すなら置いてはいけません。タンスをどかさないと取れないからです。
服を置く場所としては使えません。使えないと決めておくほうが、あとが楽です。「一応入る」を服で埋めると、そのぶんの服が一年動かなくなります。
2週間で確かめること
置いたあと、2週間だけ数えてください。数えるのは1つ、下段を開けた回数です。
2週間で3回以上開いていれば、その配置は成立しています。0回か1回なら、下段は死んでいます。
死んでいると分かったら、下段の中身を上段と入れ替えるか、下段の中身を掛ける側へ移してください。タンスの位置を動かす前に、中身の側を動かすほうが早く効きます。
数える理由は、置いた直後がいちばん使われるからです。新しい配置は、最初の3日だけ全部の段が開きます。 定着するかどうかは、そのあとの10日で分かります。
まとめ
クローゼットにタンスを置けるかどうかは、外寸ではなく、引き出しを引いたあとに残る床で決まります。前方余白45cm、扉を開けた開口幅はタンス幅+10cm、掛けた服の下端との隙間10cm、天板は床から150cm以下。この4つです。
扉の内側に入れると動作が2つになり、実際に回るのは上2段だけになります。下段には、開けなくても中身を思い出せるものを。外へ出すなら、天板を空けたままにしてください。
中身の振り分けは季節ではなく、畳んで形が戻るかどうかで決めます。どの段に入れたかが、その服を着る回数をそのまま決めます。
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— メグラシ編集部
よくある問い
- Q. クローゼットの中にタンスを入れてもいいですか
- サイズが収まるかではなく、引き出しを全部引いたときに体が入る余白が残るかで判断してください。引き出しの奥行きぶんを引いて、残りが45cm以上あれば成立します。45cmを切ると、引き出しを半分しか引けなくなり、その段の奥側は使われなくなります。折れ戸や開き戸のクローゼットでは、扉を開けた状態の開口幅も測ってください。開口幅がタンスの幅より10cm以上広くないと、正面から引けず、斜めに立って引く姿勢になります。
- Q. 掛けている服の下にタンスを置きたいのですが、高さの目安はありますか
- 掛けている服のいちばん長い一着の下端から、タンスの天板までの隙間を測り、10cm以上あるかを見てください。10cmを切ると、上段を開け閉めするたびに服の裾が揺れ、裾に折りじわが入ります。また天板の上が完全に使えなくなります。10cm以上あれば、天板を一時的な置き場として使えます。隙間が確保できない場合は、タンスの高さを下げるか、その区画に掛ける服を丈の短いものだけに入れ替えてください。
- Q. タンスを中に入れると、なぜ上の段しか使わなくなるのですか
- 扉の内側に入れると、扉を開けてから引き出しを引くまでに動作が2つになります。動作が増えると、人は上から順に開けて、目的のものが見つかった時点で止めます。その結果、下段は開かれる回数が減り、やがて中身が入れ替わらなくなります。下段を使いたいなら、下段に入れるものを「開けなくても中身を思い出せるもの」に限ってください。たとえば同じ種類でまとめた靴下や下に着るものです。選ぶ必要がある服を下段に入れると、その服は着られなくなります。
- Q. タンスは中に入れるのと、外に出すのと、どちらが有利ですか
- 使う頻度で分かれます。週に4回以上開ける中身なら外へ出したほうが有利です。扉を開ける動作が1つ減り、天板も使えます。季節でまとめて入れ替える中身なら中に入れて構いません。判断がつかないときは、2週間だけ開けた回数を数えてください。10回を超えたら外、下回るなら中です。外に出す場合は、天板の上を空けたままにしてください。天板に物が積まれると、そのタンスは開かなくなります。
- Q. 春夏ものと秋冬ものは、どちらをタンスに入れるべきですか
- 季節ではなく、畳んだときに形が戻るかどうかで分けてください。畳んで一晩置き、広げてしわが残らないものはタンス側、しわが残るものや肩の形が崩れるものは掛ける側です。この分け方だと、春夏ものでも薄手のシャツは掛ける側に残り、秋冬ものでも厚手の下に着るものはタンス側に入ります。季節でまとめて入れ替えると、形の崩れやすい一枚がタンスの底で待つことになり、着たい日に使えません。
— メグラシ編集部





