気に入らない服も着なきゃと思う|もったいなさは3回着て区切る

**気に入っていない服を、順番が来たからという理由で着ている。**そういう朝が週に2回以上あるなら、あなたが困っているのは服の数ではなく、「満遍なく着なきゃ」という自分で決めた決まりのほうです。
結論から言うと、気に入らない服を均等に回す必要はありません。その代わり、1着につきいちばんいい条件で3回だけ着てみて、3回目が終わった時点で「残す・役を変える・手放す」のどれかに決めてください。4回目からは、決めた行き先に従って着るか、着ないかを選びます。
SNSで「あんまり気に入ってない服も満遍なく着なきゃいけない強迫観念に縛られてた」という言葉に、たくさんの人が反応していました。同じ感覚を持っている人は珍しくありません。服を大事にしたい気持ちと、毎朝の自分の気分を大事にしたい気持ちが、同じクローゼットの前でぶつかっている状態です。
この記事では、その「着なきゃ」をほどくために、自分で測れる3つのもの、つまり鏡の前の3秒、着ている間に手で直した回数、帰ってから脱ぐまでの時間を使って、1着ずつ区切りをつける方法を書きます。服選びそのものに疲れている人は服選びに疲れた|疲れる場面を3つに分けて、1つだけ減らすも合わせて読んでください。この記事は、その中でも「気に入っていないのに着ている服」だけに絞っています。
結論:満遍なく着るのをやめて、1着ごとに3回で区切る
満遍なく着るという決まりは、一見すると服に公平です。けれど実際に起きているのは、気に入らない服の日に気分が下がり、気に入っている服の出番が減る、という入れ替わりです。1週間を通して見ると、好きな服を着ている日が減り、好きではない服を着ている日が増えています。服に公平にしようとして、自分の毎日に不公平になっているわけです。
そこで、決まりを「満遍なく」から「3回で区切る」に替えます。気に入らない服を1着選び、次の3回だけは、その服がいちばんよく見える条件をこちらで用意して着てみる。3回とも同じ3つのものを記録して、3回目の夜に行き先を決める。それだけです。
| 回 | 着る条件 | 見るもの |
|---|---|---|
| 1回目 | 手持ちでいちばん合う相手と合わせる | 3つすべて |
| 2回目 | 1回目と違う場面で着る | 3つすべて |
| 3回目 | 人に会う日に着る | 3つすべて |
この表で大事なのは、条件を変えながらも、見るものは毎回同じにしていることです。条件が違うのに結果が同じなら、それは服そのものの性格です。条件によって結果が変わるなら、その服には向いている場面があるということです。
3回という数には理由があります。1回だけでは、その日の天気や体調に引っ張られます。5回、10回と重ねると、今度は「せっかくここまで着たのだから」という気持ちが育って、判断が鈍ります。3回なら、たまたまを1回ぶん除けて、それでも決めきれる範囲に収まります。
その「着なきゃ」は、どこから来ているか
区切る前に、自分の「着なきゃ」がどこから来ているのかを一度だけ確かめておくと、3回目の夜に迷いにくくなります。相談を聞いていると、出どころはおおむね4つに分かれます。
1つ目は、払った金額を覚えていることです。買ったときの値札を思い出すたびに、着ないことが損に感じられます。けれど、払った分はもう戻りません。気が進まないまま着ても、取り戻せるわけではない。取り戻せるのは、その服がいちばん働ける場所を見つけたときか、その服を気に入って着てくれる人に渡したときです。
2つ目は、人からもらったことです。贈ってくれた人の顔が浮かぶと、着ないことが相手を裏切るように感じられます。これは後の章で、別に扱います。
3つ目は、まだ新しい、傷んでいないということです。毛玉もなく、色もあせていない服を手放すのは、確かにためらわれます。ただ、傷んでいないのは、着ていないからでもあります。新しさは、その服が働いてこなかった印でもあるのです。
4つ目は、着ないと「選んだ自分」を否定するように感じることです。売り場で迷って決めた1枚を着ないままにすると、あのときの判断が間違っていたと認めるようで落ち着かない。けれど、判断がずれていたことに気づけるのは、次の1枚を選ぶうえでいちばん役に立つ情報です。
どれが自分の「着なきゃ」に近いかを、メモに1行だけ書いておいてください。3回目の夜、記録の結果と気持ちがぶつかったときに、そのメモが「いま自分を引き止めているのは服ではなく、この理由だ」と気づかせてくれます。
気に入らないのは、服か、組み合わせか、場面か
「この服が気に入らない」と思っているとき、実際に引っかかっている場所は3つのうちどれかです。服そのものなのか、合わせている相手なのか、着ていく場面なのか。ここを分けずに3回着ると、組み合わせのせいで嫌いになっている服を、服のせいだと思い込んだまま手放してしまうことがあります。
分け方は簡単です。まず、その服だけをベッドや床の上に広げて、少し離れたところから10秒ほど眺めてください。単体で見ても気持ちが動かない、色や形がどうしても好きになれない、と感じるなら、引っかかっているのは服そのものです。
単体で見ると悪くない、むしろ買ったときの気持ちを少し思い出す、という場合は、いつも合わせている相手か、着ていく場面のほうが原因かもしれません。次に、その服をいちばんよく合わせているボトムや上着と一緒に並べます。並べたとたんに気分が落ちるなら、組み合わせです。
組み合わせを変えても家の中では悪くないのに、外に出ると落ち着かない場合は、場面が合っていません。たとえば、通勤では浮く気がするけれど、休日の買い物ならちょうどいい。そういう服は、服そのものが悪いのではなく、着ていく場所を間違えているだけです。
この3つのうちどれだったかを、記録の最初の行に書いておきます。服そのものが原因なら、3回の試しは短めの気持ちで構いません。組み合わせか場面が原因なら、1回目と2回目でそこを変えてみることが、3回の試しのいちばん大事な仕事になります。
測るもの1|鏡の前の3秒で、視線が止まる場所
1つ目に測るのは、鏡の前に立ったときに、自分の視線が最初にどこへ行くかです。SNSで「試着室で着替えたあと、自分の顔に目が行く→似合ってる/服に目が行く→似合ってない」という見分け方が広く共有されていました。これは、そのまま家の鏡で使えます。
やり方を決めておきます。全身が映る鏡から、2歩ほど下がって立ちます。いったん目を閉じて、開けた瞬間から3秒だけ、目が最初に止まった場所を覚えてください。考えて見るのではなく、勝手に目が行った場所を拾うのがこつです。
結果は3つに分けて記録します。最初に顔に目が行ったなら○。服全体がぼんやり目に入って、どこにも止まらなかったなら△。服の特定の場所、たとえば裾、肩、胸もとの色、袖口などに目が止まったら×で、その場所の名前も書いておきます。
×で場所が書けた場合、それは服を手放す理由というより、どこを直せば変わるかの手がかりです。裾に目が止まったなら丈が合っていない可能性があります。胸もとの色に目が止まったなら、顔のすぐ下にその色が来ていることが合っていないのかもしれません。肩に目が止まったなら、肩の線が体のどこで落ちているかを見直します。
この3秒は、朝の支度で一度、帰ってきてから一度、合計2回測ると、より確かになります。朝は髪や顔を整えたあと、夜は少し疲れた状態です。朝が○で夜が×なら、その服は長い一日には向いていない、ということがわかります。
鏡の置き場所と明るさも、3回とも同じにそろえてください。窓のそばの鏡で朝の光を受けて見る日と、廊下の暗い鏡で見る日が混ざると、服ではなく光の違いを測ってしまいます。家に全身が映る鏡がなければ、スマートフォンを棚に立てかけて、2歩下がった位置から全身を1枚撮り、画面を開いた瞬間の3秒で同じように見てもかまいません。写真なら3回分を横に並べて比べられるので、記録の確かさはむしろ上がります。
もう1つ、鏡の前では表情をつくらないことです。笑顔をつくると、それだけで顔に目が行きやすくなります。支度の途中のふつうの顔で、ふだん通りに立ってください。測りたいのは、特別な日の自分ではなく、その服を着て過ごすふつうの日の自分だからです。
測るもの2|着ている間に、手で直した回数
2つ目は、その服を着ているあいだに、手で直した回数です。裾を引っ張る、襟を戻す、袖を上げ下げする、肩の位置をずらす。こうした小さな動きは、自分ではほとんど意識していません。だからこそ、数えると服と体の相性がはっきり出ます。
数え方は、手首にヘアゴムを1本はめておき、直すたびに反対の手首へ移す、といった簡単な方法で十分です。スマートフォンのメモに正の字を書いてもかまいません。半日、だいたい家を出てから昼過ぎまでを1区切りにして数えてください。
目安は次の通りです。半日で0〜2回なら、その服は動きに合っています。3〜5回なら、どこか1か所が体の動きに合っていません。直した場所がいつも同じなら、そこが原因です。6回以上なら、その服はあなたの一日の動き方そのものに合っていない可能性が高くなります。
| 測るもの | ○ | △ | × |
|---|---|---|---|
| 鏡の前の3秒 | 顔に目が行く | どこにも止まらない | 服の一部に止まる |
| 半日で直した回数 | 0〜2回 | 3〜5回 | 6回以上 |
| 帰ってから脱ぐまで | 好きな服と同じくらい | 好きな服より早い | 帰ってすぐ脱ぐ |
直した回数が多い服は、見た目の問題より先に、気持ちの問題になります。何度も裾を引っ張っていると、それだけで「今日の自分は落ち着かない」という感覚が残ります。服が気に入らないと感じている理由の何割かは、実はこの小さな直しの積み重ねだったりします。
測るもの3|帰ってから脱ぐまでの時間
3つ目は、帰宅してから、その服を脱ぐまでの時間です。これは比べる相手が必要なので、先に「いちばん好きな服を着た日に、帰ってから何分くらいで着替えているか」を思い出しておいてください。おそらく、そのままご飯を食べたり、少しくつろいだりして、お風呂の前まで着ていることが多いはずです。
気に入らない服の日は、玄関で靴を脱いだあと、ほかのことより先に着替えたくなります。帰ってから5分以内に脱いでいたら、体がその服から早く離れたがっているという合図です。好きな服と同じくらいの時間着ていられたなら、少なくとも着心地や締めつけの面では問題が少ないと考えられます。
この測り方のよいところは、気持ちをごまかしにくいことです。鏡の3秒は、見方によって迷うことがありますし、直した回数は数え忘れることもあります。けれど「帰ってすぐ脱いだかどうか」は、あとから思い出してもはっきりしています。
時間を正確に測る必要はありません。好きな服と同じくらい、好きな服より早い、帰ってすぐ、の3段階で十分です。3回分の記録を並べたとき、この欄がずっと「帰ってすぐ」なら、ほかの2つが良くても、その服はあなたの毎日にはなじんでいないと受け止めてください。
3回の着方:1回目は、いちばん合う相手と
3回の試しは、ただ3回着るのではなく、毎回条件を少しずつ変えます。服にとっていちばん有利な条件から始めるのがこつです。最初から不利な条件で着て「やっぱり駄目だった」と決めると、あとで迷いが残ります。
1回目は、手持ちの中で、その服といちばん合いそうな相手を選んで着てください。迷うなら、自分がいちばんよく着ているボトムか、いちばん気に入っている靴と合わせるのが近道です。よく着ているものは、すでにあなたの体と生活に合っているので、試す服の良し悪しが見えやすくなります。
1回目の日は、大事な予定がない、ふつうの平日がよいでしょう。会議や行事がある日は、服以外のことで気持ちが動くので、記録がぶれます。
2回目は、1回目と違う場面で着てみます。1回目が通勤なら2回目は休日の外出、1回目が休日なら2回目は仕事の日。場面を変えると、服の持っている性格が見えてきます。どちらかの場面でだけ記録が良くなるなら、その服はその場面専用として残す道が出てきます。
3回目は、人に会う日に着てください。大事な会食や初対面の場ではなく、気心の知れた友人と会う日や、近所への用事くらいがちょうどいい場面です。人と会うと、自分の目だけでなく、相手の目を意識した自分がどう感じるかもわかります。
ここで覚えておいてほしいのは、SNSで共感を集めていた「職場のひとが昨日何着てたかまったく覚えてない」という言葉です。人は、他人の服をそれほど覚えていません。3回目で見るのは、相手の反応そのものより、相手と過ごしているあいだに自分が何回裾を直したか、どれだけ服のことを忘れていられたか、のほうです。
3回のあとの行き先は3つ
3回目の夜、3回分の記録を並べます。記録は1回あたり3つなので、全部で9つの○△×が並ぶはずです。そこから行き先を3つのうちどれかに決めます。
| 3回の結果 | 行き先 | 次にすること |
|---|---|---|
| 3つのうち2つ以上が○の回が2回以上 | 残す | 合った相手と場面をメモし、その組み合わせで着る |
| ○はあるが、決まった条件の回だけ | 役を変える | 良かった条件だけで着る札をつける |
| 3回とも○が1つ以下 | 手放す | ×が出た場所を1行書いてから手放す |
残すと決めた服は、もう「気に入らない服」ではありません。合った相手と場面がわかったので、次からはその組み合わせで迷わず着られます。メモはハンガーにかけた紙1枚でも、スマートフォンの写真1枚でもかまいません。
役を変えると決めた服には、「休日の買い物の日だけ」「上着の下に着るときだけ」「家で過ごす日だけ」のように、着てよい条件をはっきり書きます。条件が書けない服は、まだ役が見つかっていないので、もう一度だけ組み合わせを変えて試してもかまいません。
手放すと決めた服は、その前に、×が出た場所を1行だけ書いてください。「胸もとの色に目が止まる」「裾を半日で7回直した」「帰ってすぐ脱いだ」。この1行が、次に服を選ぶときに同じずれを避ける手がかりになります。
記録の書き方は、1回につき1行で足ります。「1回目・通勤・いつもの黒いパンツと・鏡○・直し2回・脱ぐの遅い」のように、日付の代わりに回数、場面、合わせた相手、3つの結果を並べるだけです。3行そろえば、表をつくらなくても行き先は自然に見えてきます。書くのは夜、着替えたあとの1分で十分です。朝に書こうとすると、支度の時間を圧迫して、また服のことで疲れてしまいます。
決めた行き先は、その服のハンガーか、畳んだ服の上に紙で示しておくと、翌朝迷いません。「残す・黒いパンツと」「休日の買い物だけ」「手放す・週末に出す」。行き先が目に見えると、クローゼットを開けるたびに同じ服の前で考え直すことがなくなります。考え直さずに済む服が1着増えるたびに、朝の判断は確実に軽くなっていきます。
どちらとも取れるとき(1):3つの結果が割れた
いちばん多いのは、3つの測るものの結果が割れることです。鏡では顔に目が行くのに、直した回数は多い。あるいは着心地はいいのに、鏡では服に目が止まる。こういうときにどうするかを、よくある組み合わせごとに書いておきます。
鏡は○で、直した回数が×の場合。形や色はあなたに合っているのに、動きに合っていない服です。たとえば、立っているときはきれいでも、座ると裾が上がる、腕を上げると脇が引っ張られる、といった具合です。この場合は、動きの少ない日、座っている時間が短い日に着る、という役に変えるのがよいでしょう。上に1枚重ねて、動いたときのずれを隠すのも一つの方法です。
鏡は×で、直した回数が○、脱ぐのも遅い場合。着心地はとてもいいのに、見た目があなたの思う自分と違う服です。こういう服は、家で過ごす日の服や、顔から遠い位置で使う服に回すと生きます。トップスなら、上に羽織りを重ねて顔のすぐ下に来る面積を減らすと、鏡の結果が変わることがあります。
鏡も直した回数も○なのに、帰ってすぐ脱いでいる場合。見た目も動きも合っているのに、なぜか早く脱ぎたくなる。これは素材の肌ざわりや、首まわり、ウエストの締めつけなど、外からは見えない部分が合っていないことが多いです。中に1枚、肌ざわりのいいものを着るだけで変わるなら、残す側に入れてかまいません。
3回のうち1回だけ結果が大きく違った場合。たとえば、1回目と3回目は良かったのに、2回目だけ全部×だった。こういうときは、その日の天気や体調、予定の重さを思い出してください。服以外の理由が思い当たるなら、4回目を1回だけ足してよいことにします。ただし5回目はつくりません。4回目でも決まらないなら、その服は「役を変える」に入れて、良かった条件だけで着ます。
どちらとも取れるとき(2):人に褒められたけど、自分は好きになれない
3回目に人と会ったとき、その服を褒められることがあります。自分では好きになれないのに、人からは「似合うね」と言われる。この食い違いは、気持ちをいちばん揺らします。
まず、褒め言葉は大事に受け取ってください。人の目には、自分では気づけない良さが映っていることがあります。けれど、毎朝その服を選ぶのは自分です。人に褒められた回数より、自分が着ていて落ち着いていられたかのほうが、その服と長く付き合えるかどうかを決めます。
判断の目安を決めておきます。褒められたうえに、自分の3つの記録のうち鏡が○なら、その服は「人に会う日用」として、ひと季節だけ残してください。次の衣替えでもう一度だけ3つを測り、そのときに決めます。
褒められたけれど、自分の記録がほとんど×だった場合は、褒め言葉で判断を覆さなくてかまいません。人に会う日はそう多くありません。残りの大半の日に気分が下がる服を手元に置き続けるより、自分が落ち着ける服で人に会うほうが、結果としていい顔で過ごせます。
逆に、自分では好きなのに、人の反応が薄かった服もあります。この場合は、自分の記録を優先して残してください。人は他人の服をそれほど覚えていない、という話をもう一度思い出しておくと、気持ちが楽になります。
どちらとも取れるとき(3):高かった服、もらった服
「着なきゃ」の出どころで多いのが、値段の高かった服と、人からもらった服です。この2つは、3つの記録が悪くても手放す決心がつきにくいので、先に扱い方を決めておきます。
高かった服は、3回の試しを「いちばん高く使える場面」で行ってください。たとえば上質なコートやニットなら、ふだんの通勤ではなく、少しきちんとした外出の日に着てみる。高い服は、ふだん使いでは良さが出ず、特定の場面でだけ力を発揮することがよくあります。そこで○が出れば、その場面専用として残す理由になります。
それでも×が並ぶなら、払った分はもう戻らないことを、静かに受け止めてください。気が進まないまま着続けても、その服の値打ちは上がりません。むしろ、気に入って着てくれる人の手に渡ったときに、その服はいちばん働きます。
もらった服は、「贈ってくれた人と会う日だけ着る」という役にしてかまいません。年に数回でも、相手の前でその服を着ることには、服の良し悪しを超えた意味があります。それ以外の日に無理に着る必要はありません。
もらった服の記録が3回とも×で、贈った人と会う機会もない場合は、写真を1枚撮ってから手放してください。贈った人が望んでいたのは、その服が引き出しの奥に残ることではなく、受け取ったあなたが気持ちよく過ごすことだったはずです。
どちらとも取れるとき(4):前ほどしっくりこなくなった服
以前は好きだったのに、最近しっくりこない。そういう服も「気に入らない服」の中に混ざっています。この場合、変わったのは服の見え方と、あなたの好みや暮らし方のどちらか、あるいは両方です。どちらが悪いという話ではありません。
まず、直した回数の記録で、いつも直している場所を確かめてください。肩、ウエスト、裾など、決まった場所があるなら、そこで服とあなたの今の暮らしがずれています。ベルトを外す、前を開けて羽織る、袖を一度折るなど、着方を1つ変えるだけで記録が良くなる服もあります。
好きな服をやめるか迷うとき、年齢を理由にしていることもあります。「この服はもう若すぎるかもしれない」という不安があるなら、若作りに見えるか不安|好きな服をやめる前に、3か所だけ測るを先に読んでください。年齢のせいだと思っていた違和感が、実は丈や色の位置の問題だった、ということはよくあります。
着方を変えても記録が戻らない服は、いまのあなたの毎日には役目が終わった服です。手放すのは、その服を否定することではありません。以前のあなたをしっかり支えた服として、区切りをつけてください。
秋冬に「着なきゃ」が強くなる理由
この悩みは、秋から冬にかけて強くなりがちです。理由はいくつかあります。
1つは、衣替えで、しばらく見なかった服が一度に出てくることです。春に片付けたときは「来季は着よう」と思っていた服が、そろって目の前に並びます。数着ならまだしも、5着、6着と並ぶと、それぞれに「着なきゃ」が生まれて、毎朝の判断が重くなります。
もう1つは、秋冬の服が、春や夏の服より値段も存在感も大きいことです。コートやニット、厚手のパンツは、手放すときの心の負担が大きく、そのぶん「せめて着なければ」と感じやすくなります。
さらに、秋冬は重ねて着るので、1回のコーディネートに使う服の数が増えます。そこに気に入らない1着が混ざると、組み合わせ全体が落ち着かなくなり、ほかの好きな服の良さまで目減りしてしまいます。
そこで、衣替えで出てきた服のうち、気に入らない服は「試す枠」として、クローゼットの手前の一角にまとめてください。枠に入れるのは、一度に3着までです。3着の試しが終わって行き先が決まったら、次の3着を入れます。全部をいっぺんに試そうとすると、また「満遍なく」に戻ってしまうからです。クローゼットの配置そのものを見直したい人は、衣類収納クローゼット|吊る服と畳む服を、パイプ1mの着数で分けるが参考になります。
好きな服ばかり着ることへの罪悪感
気に入らない服を区切っていくと、当然、好きな服を着る日が増えます。すると今度は「好きな服ばかり着ていいのだろうか」「すぐ傷んでしまうのでは」という別の罪悪感が出てくることがあります。
好きな服が先に傷むのは、よく働いた結果です。満遍なく着てすべてを少しずつ傷めるより、よく着る服がしっかり働いて、傷んだ時点で次の1枚に交代するほうが、手持ちの服は少しずつあなたに合う方向へ育っていきます。
好きな服が傷んできたら、どこが傷んだかを1行メモしておいてください。肘、裾、脇、膝。傷んだ場所は、あなたの体がよく動く場所でもあります。次に同じ役の服を選ぶときに、その場所が丈夫なものを選べば、もっと長く付き合えます。
好きな服を続けて着る日が増えたら、洗う間隔と休ませる間隔も少しだけ意識してください。ニットなら一度着たら1日休ませる、シャツなら着るたびに洗う、といった具合に、服の種類ごとに休み方を決めておけば、好きな服を何度着ても長持ちします。満遍なく着るのは服を守るための方法の1つでしたが、休ませ方を整えるのも、同じくらい服を守る方法です。罪悪感を抱えながら気に入らない服を着る代わりに、好きな服の休ませ方を工夫するほうへ、気持ちの向きを変えてみてください。
それから、好きな服ばかり着ていても、周りはほとんど気にしていません。毎日違う服を着なければ、という感覚は、多くの場合、自分の中だけにあるものです。好きな服を繰り返し着る人は、周りから見ると「その人らしい服を着ている人」に映ります。
手放すと決めた服の、気持ちの置き場
3回の試しを経て手放すと決めても、最後の最後で手が止まることがあります。そのときのために、気持ちの置き場を用意しておきます。
1つ目は、その服に1行だけ言葉を残すことです。「店で見たときの色がきれいだった」「あの日の外出のために選んだ」。服を買ったときの気持ちは、間違いではありません。その気持ちを言葉にして残しておくと、服そのものを手元に置いておかなくても、思い出は手放さずに済みます。
2つ目は、写真を1枚撮ることです。着た姿でも、畳んだ状態でもかまいません。写真があると、「あの服を持っていた自分」をいつでも振り返れます。
3つ目は、行き先を決めることです。着てくれそうな人に譲る、引き取りの窓口に出す、地域の回収に出す。行き先がはっきりしていると、「捨てる」という言葉に引っかからずに手放せます。
そして、×が出た場所の1行は、手放したあとも残しておいてください。「胸もとに明るい黄色が来ると、鏡で服に目が止まる」「腰で止まる丈は、半日で何度も裾を直す」。こうした記録が3着、4着とたまっていくと、売り場で迷ったときに、自分だけの判断の基準になります。
まとめ:今週やるのは、1着選んで1回目を着ることだけ
気に入らない服を満遍なく着なきゃ、という気持ちは、服を大切にしたい気持ちから生まれています。その気持ちはそのままにして、やり方だけを変えてください。均等に回すのではなく、1着ずつ、いちばんいい条件で3回だけ着て区切る。
今週やることは1つだけです。クローゼットを開けて、いちばん「着なきゃ」が強い服を1着選び、手持ちでいちばん合いそうな相手と合わせて、ふつうの平日に着てください。鏡の前の3秒、半日で直した回数、帰ってから脱ぐまでの時間を、メモに3行書けば1回目は終わりです。
3回目の夜に行き先が決まると、その服は「着なきゃ」の服ではなくなります。残すなら合った条件で迷わず着られる服に、役を変えるならその場面の頼れる1着に、手放すなら次の1枚を選ぶための記録に変わります。朝のクローゼットの前で引っかかる服が1着減るだけで、支度の時間は思っているより軽くなります。
よくある問い
- Q. 気に入っていない服を着ないのは、もったいないと思ってしまいます
- 着ないことより、気に入らないまま何十回も着て朝の気分を下げ続けるほうが、服にも自分にも損が大きくなります。1着につき、いちばん合う組み合わせで3回だけ着てみてください。3回で好きになれなかった服は、役を変えるか、着てくれる人に渡すほうが、その服の値打ちを生かせます。
- Q. 3回着ても、好きか嫌いか決められません
- 鏡の前の3秒、着ている間に直した回数、帰ってから脱ぐまでの時間の3つを並べて、2つ以上が良い側なら残してください。1つだけ良い場合は、その良かった条件に合わせて役を変えます。3つが割れて決めきれないときだけ、4回目を1回足してよいことにします。5回目はつくりません。
- Q. 好きな服ばかり着ていると、すぐ傷んでしまいそうで不安です
- 好きな服が先に傷むのは、よく働いた結果です。満遍なく着て全部を少しずつ減らすより、よく着る服が傷んだ時点で、同じ役の1枚を探すほうが、手持ちが自分に合う方向へ育っていきます。傷んだ場所をメモしておくと、次の1枚を選ぶときの手がかりになります。
- Q. 人からもらった服は、気に入らなくても手放しにくいです
- もらった服は、贈ってくれた人と会う日だけ着る、という役にしてかまいません。それでも3回の記録が全部悪い側なら、写真を1枚残してから手放してください。贈った人が望んでいたのは、服が引き出しに残ることではなく、あなたが気持ちよく過ごすことのはずです。
— メグラシ編集部





