スラックスの裾上げ|丈は靴のかかと、仕上げは裾幅で決める

**あなたがそのスラックスに、いちばん多く合わせる靴を1足だけ思い浮かべてください。**裾上げの丈は、その靴のかかとの高さで決まります。
先に結論を言い切ると、こうです。丈は、その1足を履いて、後ろの裾が靴の履き口から何cm下に来るかで決める。シングルかダブルかは、裾を平らに置いたときの片側の幅で決める。19cm未満ならシングル、22cmを超えるならダブルも選べる、その間は生地の厚みで分ける。
もしまだ迷っているなら、生地は切らずに折り込んだまま仕上げてもらう。これで、あとから靴が変わっても丈を戻せます。
ズボン全般の簡単な直し方はズボンの裾上げを簡単に|縫わずに片足15分に、詰める長さの目安はズボンの丈つめは何cm?にあります。ここでは、センターの折り目が付いたスラックスならではの決め方に絞ります。
結論|丈は「1足のかかと」で、仕上げは「裾幅」で決める
スラックスの裾上げで決めることは、実は2つしかありません。どの長さで止めるかと、裾をどう仕上げるかです。この2つは、測るものが別々です。
丈は、靴で決まります。同じスラックスでも、かかと1cmの革靴と、かかと5cmのパンプスでは、ちょうどいい裾の位置が4cm近く変わります。靴を決めずに丈だけ決めることはできません。
仕上げは、裾幅で決まります。細いスラックスを厚く折り返すと、足首まわりに重さが寄って、裾が靴の上でつかえます。太いスラックスを薄く1回だけ折ると、裾が軽すぎて風にあおられ、センターの折り目が途中で曲がって見えます。
| 裾幅(平置きで片側) | 向く仕上げ | 理由 |
|---|---|---|
| 19cm未満 | シングル | 折り返しの重さが足首に寄って、もたつく |
| 19〜22cm | 生地の厚みで分ける | 薄手ならダブル、厚手ならシングル |
| 22cmを超える | ダブルも選べる | 裾に重みが出て、折り目がまっすぐ落ちる |
この表はあくまで出発点です。境目のあたりに入った人がどうするかは、後半の「どちらとも取れるとき」で詳しく書きます。
先に測る3つ|かかとの高さ・裾幅・残っている折り代
お直しの売り場に行く前でも、自分で縫う前でも、家で3つだけ測っておくと判断が速くなります。巻き尺が1本あれば足ります。
1つ目は、いちばん合わせる靴のかかとの高さです。靴を床に置いて、かかとの後ろ側で、床からかかとの付け根までを測ります。中敷きの厚みは含めなくてかまいません。低い革靴なら1〜2cm、ローファーで2〜3cm、きれいめのパンプスで4〜6cmあたりに入ることが多いはずです。
2つ目は、裾幅です。スラックスを平らな台の上に置き、センターの折り目どおりにたたんで、裾の端から端までをまっすぐ測ります。この片側の数字が、さきほどの表の数字です。
3つ目は、いまの裾の内側に残っている折り代です。裾を裏返して、折り返しの深さを測ります。買ったばかりの未裾上げのスラックスなら、裾は切りっぱなしか仮止めのはずなので、ここは「いまの長さ全体」を測っておきます。この数字が、あとでダブルにできるかどうかを決めます。
センターの折り目がどこで終わっているかも見ておいてください。アイロンでつけた線が裾までまっすぐ通っているか、途中で消えているか。消えているなら、裾上げのあとに折り目を付け直す手間が増えます。
丈の決め方|後ろの裾が、靴の履き口から何cm下に来るか
丈を決めるときに見る場所は、前ではなく後ろです。前は甲の高さで裾が持ち上がるので、同じ長さでも見え方が揺れます。後ろの裾と、靴の履き口の縁との距離で決めると、靴が変わっても同じ物差しで考えられます。
裾の落ち方には、大きく3つの段階があります。
いちばん短いのは、前の裾が甲に触れずに、まっすぐ下に落ちる丈です。後ろの裾は、靴の履き口の縁と同じ高さか、そこから1cmほど下に来ます。細身のスラックスと低い革靴の組み合わせで、足首がすっきり見えます。
まん中は、前の裾が甲に軽く乗って、小さなたるみが1つできる丈です。後ろの裾は、履き口の縁から1.5〜2cm下。いちばん多くの人に合う、迷ったときの基準です。
いちばん長いのは、前の裾がはっきり折れて、たるみが1段できる丈です。後ろの裾は、かかとの半分くらいまで下がります。太めのスラックスとかかとのあるパンプスの組み合わせで、脚が床までつながって見えます。
どの段階を選ぶかは、スラックスの細さで決めてください。裾幅19cm未満の細いスラックスで一番長い丈にすると、たるみが逃げ場を失って、足首のまわりでしわが何本も重なります。逆に22cmを超える太いスラックスで一番短い丈にすると、裾が浮いて見え、足首だけが急に細く見えます。
前を少し短く、後ろを少し長くする斜めの裾という仕上げもあります。前後の差は1〜1.5cmほど。細身のスラックスで、前のたるみをなくしつつ、後ろはかかとを隠したいときに使います。太いスラックスには向きません。裾が広いぶん、斜めの線が目立って、裾だけ形が崩れて見えるからです。
靴が2足以上あるとき|かかとの差が2cmを超えたら、1本で兼ねない
通勤で低い革靴、雨の日はかかとのあるブーツ、休日はスニーカー。1本のスラックスに何足も合わせる人は多いと思います。
まず、合わせる靴のかかとを全部測ってください。いちばん高い靴といちばん低い靴の差が2cm以内なら、高い方に合わせて丈を決めて大丈夫です。低い靴の日は、後ろの裾が少しだけかかとにかかりますが、ほとんど気づかれません。
差が2cmを超える場合、1本ですべての靴に合わせようとすると、どの靴でもしっくりこない丈になります。この場合は、いちばん長く履く靴に合わせて丈を決め、それ以外の靴は「このスラックスとは合わせない」と割り切ってください。
どうしても割り切れないときは、高い方の靴に合わせて丈を決め、低い方の日だけ一番長い段階になることを受け入れる方法があります。逆はだめです。低い方に合わせた丈で高い靴を履くと、足首がはっきり見えて、スラックスが縮んだように見えます。長すぎる裾は「わざと」に見えても、短すぎる裾は「間違い」に見えやすいのです。
秋から冬にかけては、ショートブーツを合わせる日が増えます。ブーツの筒がスラックスの裾に隠れるかどうかも、ここで確かめておいてください。筒の上端が裾から見えると、そこで脚が切れて見えます。
シングルかダブルか|裾幅と生地の厚みで分ける
シングルは、裾を内側に1回折り込んで、表からは折り返しが見えない仕上げです。ダブルは、裾を外側に折り返して、表に折り返しの帯が見える仕上げです。
ダブルの役目は、裾に重みを足すことです。重みがあると、裾が下に引っぱられて、センターの折り目が腰から裾まで一本の線で落ちます。太いスラックスほど裾が広がって揺れやすいので、ダブルの重みが効きます。
逆に、細いスラックスに重みを足すと、足首のまわりに布が寄るだけになります。裾幅が19cmを切るスラックスでダブルにすると、靴の甲に当たる位置で折り返しが持ち上がり、そこだけ厚く見えます。
生地の厚みも見てください。指で生地をつまんで、2枚重ねた厚みが2mmを超えるような秋冬の厚手のウールは、ダブルにすると折り返しが4枚重なって、裾がかなり重くなります。裾幅が広くても、厚手ならシングルの方がすっきり落ちることがあります。
反対に、薄手の生地はダブルが向いています。薄い布は軽くて揺れやすいので、折り返しの重さが落ち方を助けてくれます。
改まった場について一つだけ。式典や弔事に履くスラックスは、シングルにしておくのが無難です。ダブルは、もともと泥はねを防ぐための折り返しから来ていて、少しだけくだけた印象が残ります。普段の仕事なら、どちらでも問題ありません。
ダブルの折り幅|身長と裾幅で3cmから4cmの間で選ぶ
ダブルに決めたら、次は折り返しの幅です。女性のスラックスなら、3cmから4cmの間で選ぶのが基本です。
身長が155cm前後なら3cm、160cm台なら3.5cm、170cm前後なら4cmを出発点にしてください。背が高いのに折り幅が細いと、裾が軽く見えます。背が低いのに折り幅が太いと、折り返しの帯が目立って、脚の長さが短く見えます。
裾幅でも調整します。裾幅が25cmを超えるような太いスラックスなら、出発点より0.5cm太く。22cm前後なら出発点のままで大丈夫です。
ここで必ず確かめてほしいのが、残っている長さです。ダブルにするには、折り幅の2倍に、内側に縫い込む分を足した長さが、仕上がりの裾から下に必要です。折り幅4cmなら、4cm×2に内側の縫い代を3〜4cm足して、11〜12cmほどです。
未裾上げのスラックスなら、たいていこの余りは残っています。いちど裾上げしてあるスラックスを、あとからダブルにしたいときは、さきほど測った「残っている折り代」を見てください。4cm程度しかなければ、ダブルにはできません。
センターの折り目を、裾まで一本で通す
スラックスがズボン一般と違うのは、前と後ろにアイロンでつけた折り目があることです。裾上げで丈を変えると、この折り目の終わり方が変わります。
裾上げをしたら、折り目を裾の真ん中まで通し直してください。裾の折り返しの部分で折り目がずれると、そこから下だけ線が曲がって見えます。
付け直すときは、スラックスを片足ずつ台に置き、内側の縫い目と外側の縫い目を重ねます。重ねたときにできる前と後ろの山が、折り目の位置です。上の方に残っている元の折り目と、裾の山がまっすぐ一本につながるかを目で追ってから、アイロンを当てます。
ウールの生地には、必ず当て布をしてください。直接アイロンを当てると、繊維がつぶれて光る跡が残ります。いちど光ってしまうと、ブラシをかけても完全には戻りません。スチームを当てて、浮かせたまま手で軽く押さえ、冷めるまで動かさないのが、跡を残さずに折り目をつけるコツです。
洗えるポリエステルのスラックスは、折り目が熱で固定されていることが多いので、強く当てすぎないでください。一度ついた折り目は、位置を変えようとしても元の線がうっすら残ります。
生地ごとに変えるところ
同じスラックスでも、生地によって裾上げで気をつけるところが変わります。秋冬に手に取ることの多い生地から順に見ていきます。
ウールや、ウールが多く入った生地は、熱と湿気で形を整えやすい反面、アイロンの当て方を間違えると光ります。折り代を折るときも、まつったあとに押さえるときも、必ず当て布をしてください。厚手のウールは、折り代を4cmより少し短い3cmにすると、裾の厚みが抑えられます。
ポリエステルが中心の、家で洗えるスラックスは、熱に弱いものがあります。アイロンの温度は洗濯表示の上限を守り、低めから始めてください。強く当てると、生地の表面がつぶれて光ったり、折り目が二重についたりします。糸は、ポリエステルの細い糸を使うと、まつった跡が表に出にくくなります。
伸びる糸が入ったスラックスは、まつり縫いの糸を引きすぎると、履いて伸びたときに糸が切れます。糸を少しゆるめに渡し、間隔を5〜6mmと短めにしておくと、伸びに付いていけます。
起毛した生地や、畝のある厚い綿の生地は、表に毛足や畝の向きがあります。折り代を折るときに、毛足をつぶさないよう、アイロンは浮かせてスチームだけを当て、手で押さえて形をつけてください。
裾上げのあとで確かめる3つの角度
仕上がったら、合わせる靴を履いて、鏡の前で3つの角度から確かめます。
前から見るときは、左右の裾が同じ高さで靴の甲に触れているかを見ます。片方だけたるみが大きいなら、左右の長さかベルトの傾きを疑ってください。
横から見るときは、センターの折り目が腰から裾まで一本の線で落ちているかを見ます。裾の手前で線が前に折れているなら丈が長く、後ろに逃げているなら裾の仕上げが重すぎるか軽すぎます。
後ろから見るときは、後ろの裾が履き口から決めた位置に来ているかを、手鏡を使って確かめます。後ろは自分では見えにくいので、ここを確かめずに終える人が多いのですが、立っているときにいちばん人から見られるのは、実は後ろの裾です。
3つの角度で問題がなければ、最後に階段を2〜3段上り下りしてみてください。上るときに裾が靴に引っかからないか、下りるときに裾がかかとを踏まないか。動いたときに気にならなければ、その裾上げは仕上がりです。
自分でやるか、お直しに出すか|3つに当てはまるなら出す
シングルの裾上げは、手でまつり縫いをすれば、家でも十分きれいに仕上がります。表に糸がほとんど出ないので、近くで見られてもわかりません。
お直しの売り場に出した方がいいのは、次の3つのどれかに当てはまるときです。
1つ目は、ダブルにしたいとき。折り返しの帯を左右で同じ幅に、まっすぐ仕上げるのは、家のアイロンと手縫いでは難しい作業です。帯がわずかに斜めになると、それだけで裾全体が歪んで見えます。
2つ目は、裏地が付いているとき。秋冬のウールのスラックスには、膝まで、または裾まで裏地が付いていることがあります。表の布と裏地をそれぞれ別の長さで切りそろえる必要があり、手間が一段増えます。
3つ目は、前を少し短くする斜めの裾にしたいとき。前と後ろで長さを変えながら、左右をそろえるのは、慣れていないと何度もやり直すことになります。
それ以外、つまり裏地がなく、シングルで、前後同じ長さで仕上げるなら、家でやってみる価値があります。
自分で縫う手順|印を付けて、折って、まつる
用意するものは、巻き尺、待ち針、布用のチャコ、裁ちばさみ、手縫いの針、生地の色に近い糸、アイロンと当て布です。
手順1。いちばん合わせる靴を履いて、ベルトを締め、ポケットの中を空にしてから、鏡の前にまっすぐ立ちます。後ろの裾が履き口から何cm下に来るかを決め、その位置で裾を内側に折り込んで、待ち針で留めます。片足だけで構いません。
手順2。スラックスを脱いで台に置き、留めた位置を測ります。もう片方の足も、同じ数字で折り込みます。左右の脚の長さは少し違うことがありますが、床から測るのではなく、いまの裾から何cm折ったかで左右をそろえると、ずれが少なくなります。
手順3。仕上がりの線にチャコで印を付け、そこから下に4cmを残して、余りを切ります。迷っている人は、ここで切らなくて大丈夫です。後で書く「切らずに折り込む」方法を使ってください。
手順4。切り口がほつれないように、端を一度細く折るか、ジグザグに縫っておきます。
手順5。仕上がりの線で折り、アイロンで折り目を付けます。当て布を忘れずに。
手順6。まつり縫いで留めます。表の布は、糸1〜2本分だけをすくうのがコツです。すくう量が多いと、表に点々と縫い目が出ます。間隔は7〜8mmくらいで、糸は強く引きすぎないこと。引きすぎると、表に小さなくぼみが並んで見えます。
手順7。最後に、センターの折り目を裾まで通し直して終わりです。
お直しの売り場で印を付けてもらうとき|立ち方で丈が変わる
お直しに出す人も、印の付け方を知っておくと、仕上がりの失敗が減ります。印を付ける数分間の立ち方で、丈は1cm以上変わるからです。
必ず、いちばん合わせる靴を持っていくか、履いていってください。売り場の試し履き用の靴は、かかとの高さが自分の靴と違うことが多く、合わない靴で決めた丈は、家に帰ってから必ずずれます。
ベルトを普段どおりの位置で締めてください。ウエストの位置が1cm上がれば、裾も1cm上がります。ベルトを付けずに印を付けて、普段はベルトを締めているなら、仕上がりは短く感じます。
立つときは、両足を肩幅より少し狭く開いて、体重を左右均等にかけ、まっすぐ前を見ます。下を向いて自分の裾を見ようとすると、背中が丸まって、ウエストが下がり、裾が長く見えます。印を付ける人に、後ろの裾が履き口から何cm下に来るようにしたいかを、数字で伝えてください。「ハーフくらいで」のような言い方より、ずっと確実です。
ダブルにする場合は、折り幅も数字で伝えます。シングルかダブルか迷っていることも、その場で相談して構いません。
預けるときに伝える4つ
お直しの売り場で印を付けてもらったら、預ける前に、次の4つを言葉で伝えておくと、受け取ったときの「思っていたのと違う」が減ります。
1つ目は、仕上げの種類です。シングルか、ダブルか、前を少し短くする斜めの裾か。ダブルなら折り幅も数字で伝えます。
2つ目は、余りの布を切るか、切らずに折り込むかです。言わなければ、たいていは決まった折り代を残して切られます。あとで丈を戻したいなら、ここで必ず伝えてください。
3つ目は、センターの折り目を付け直してほしいかどうかです。裾上げと一緒に、折り目まで整えてもらえることが多いので、遠慮せずに頼んでください。
4つ目は、裏地の扱いです。裏地が付いているなら、表の布と同じ長さで切るのか、少し短くするのかを確かめておきます。
受け取ったら、その場で一度だけ履く
仕上がりを受け取ったら、できればその場で、合わせる靴を履いて一度だけ立ってみてください。家に帰ってから違和感に気づくと、もう一度持っていく手間がかかります。
見るのは、左右の長さと、後ろの裾の位置の2つだけで十分です。合っていれば、そのまま持ち帰ります。
どちらとも取れるとき①|かかと3cm前後の靴と、ぺたんこの靴を同じくらい履く
かかとの差が2cmを少しだけ超えるくらいで、2足を同じくらいの回数で履く。いちばん判断が割れるのがこの場合です。
ここで勧めるのは、高い方の靴に合わせつつ、丈の段階をひとつ短くする方法です。高い靴では、前の裾が甲に触れずにまっすぐ落ちる丈。そうすると、ぺたんこの靴の日は、前の裾が甲に軽く乗って小さなたるみが1つできる丈になります。どちらの靴でも、3段階のどれかに収まります。
この方法は、裾幅が19〜22cmくらいの、ごく普通の太さのスラックスでよく効きます。極端に細いスラックスだと、ぺたんこの日にたるみが足首にまとわりつき、極端に太いスラックスだと、高い靴の日に裾が浮いて見えます。そういうときは、2足のうちどちらかを、このスラックスと合わせる靴から外してください。
それでも決めきれないなら、印を付けてもらうときに、両方の靴を持っていって、2回立ってみることです。2回立って、どちらの靴でも「気にならない」と思える長さがあれば、それが答えです。どちらかで必ず気になるなら、1本で2足を兼ねるのは難しいということです。
どちらとも取れるとき②|裾幅が19〜22cmで、シングルかダブルか迷う
表のまん中の帯に入った人です。ここは生地の厚みと、合わせる靴で分けます。
生地をつまんで2枚重ねたとき、厚みが2mm未満の薄手なら、ダブルに寄せて構いません。薄い布ほど裾が揺れやすいので、折り返しの重さが落ち方を助けます。2mmを超える厚手なら、シングルに寄せてください。
靴でも分かれます。甲が深く覆われる靴、たとえばひもで留める革靴やショートブーツを合わせるなら、ダブルでも裾が靴に当たって持ち上がりにくくなります。甲が大きく開いたパンプスを合わせるなら、シングルの方が足の甲との境目がすっきりします。
それでも迷うときは、ダブルにできる長さを残したまま、シングルで仕上げてもらう方法があります。余りの布を切らずに、内側に折り込んだまま縫ってもらうのです。こうしておけば、しばらく履いてみて、やはりダブルにしたいと思ったときに、ほどいて折り返せます。
内側に布がたくさん残るので、裾が少しだけ重く、厚くなります。それが気になるかどうかを、ひと月ほど履いて確かめてから、切るかどうかを決めても遅くありません。
どちらとも取れるとき③|洗って縮むかもしれない、あとで靴が変わるかもしれない
家で洗えるスラックスのうち、綿や麻が多く入ったものは、最初の何回かの洗濯で縮むことがあります。裾上げをしたあとで縮むと、ちょうどだった丈が1cmほど短くなることがあります。
こうしたスラックスは、裾上げの前に一度洗って乾かしてから丈を決めるのが確実です。洗濯表示で家で洗えるとなっていて、綿の割合が多いものほど、この順番を守ってください。ポリエステルが中心のものや、クリーニングに出すウールのものは、この心配はあまりありません。
もう一つの迷いが、「この秋はぺたんこの靴が多いけれど、来年はかかとのある靴に戻るかもしれない」というものです。靴の流行や、自分の働き方が変わると、合わせる靴も変わります。
この場合も、答えは同じです。切らずに、折り込んで仕上げてもらう。内側の余りが長く残っていれば、ほどいて丈を伸ばせます。一度切ってしまうと、伸ばす方向にはもう戻せません。
丈を伸ばしたとき、元の折り目の跡が表に線として残ることは覚えておいてください。濃い色のウールなら、スチームとブラシでほとんど目立たなくなりますが、薄い色や化繊の生地だと、うっすら線が残ることがあります。
秋冬のスラックスは、靴下の厚みも足す
寒くなってくると、薄い靴下から厚手の靴下やタイツに変わります。靴下が厚くなると、足が靴の中でわずかに持ち上がり、甲の高さも少し上がります。
その差は数mmですが、ちょうど前の裾が甲に触れるか触れないかの境目にいる人には、見え方の差として出ます。薄い靴下で決めた丈が、厚い靴下の日には、前で小さなたるみを作ることがあります。
秋の始めに裾上げをするなら、印を付けるときに、冬に履くつもりの靴下を履いていってください。逆に、真冬に厚手の靴下で丈を決めたスラックスは、春に薄い靴下に戻したとき、ほんの少し長く感じることがあります。どちらの季節に多く履くかで、靴下を選んで測るのが確実です。
もう一つ、秋冬はコートを羽織ります。丈の長いコートの裾とスラックスの裾の間に、どれくらい脚が見えるかも、鏡の前で一度確かめておくと、全身の釣り合いがつかみやすくなります。
裾上げの前に、ウエストと股上を確かめる
裾上げの丈は、ウエストがどこで止まるかで決まります。そのウエストの位置が合っていないと、裾をいくら正しく測っても、履くたびに丈が変わります。
ウエストに指が2本以上入るほどゆるいスラックスは、履いているうちに腰の位置まで下がってきます。下がった分だけ裾が長くなり、朝はちょうどだった丈が、昼過ぎには靴の上でたるむことがあります。こういうスラックスは、裾上げの前にウエストを詰めるか、ベルトで留める位置を決めてから丈を測ってください。
股上が深いスラックスと浅いスラックスでも、ウエストの止まる位置が違います。股上の深いものはおへその高さで、浅いものは腰骨のあたりで止まります。同じ股下の長さでも、止まる位置が違えば、裾の位置も変わります。印を付けるときは、そのスラックスが自然に止まる高さで履いていることを、鏡で確かめてからにしてください。
よくある失敗と、その場での直し方
裾上げのあとに「なんだか違う」と感じたときに、よくある失敗と直し方をまとめておきます。
片足だけ長く見える。まず、ベルトの位置が左右で傾いていないかを確かめてください。腰の片側が上がっているだけで、裾は片方だけ長く見えます。それでも違うなら、実際に左右の長さを台の上で比べます。差が5mm以内なら、立ち方の癖であることが多く、直すほどではありません。
裾が靴の上で横にしわになる。丈が長すぎるか、細いスラックスに対して丈の段階が長すぎます。1cm短くするだけで、しわが1本減ります。
センターの折り目が裾で曲がる。裾上げのあとに折り目を付け直していないか、付け直したときに内と外の縫い目を重ねていません。もう一度、縫い目を重ねて、上の折り目と一本でつながるようにアイロンを当ててください。
ダブルの帯が左右で違う幅になる。帯の上端と下端を、それぞれ待ち針で何か所か留めてから縫い直します。家で直すのが難しければ、お直しの売り場に出してください。
まつった縫い目が表に点々と出る。表の布をすくう量が多すぎるか、糸を強く引きすぎています。いったんほどいて、すくう量を糸1本分に減らし、糸をゆるめに引いて縫い直します。
アイロンの跡が光る。当て布をせずに当てたか、温度が高すぎました。軽い光りなら、スチームを浮かせて当て、ブラシで毛を起こすと目立たなくなります。
まとめ|1足を決めて、測って、迷ったら切らない
スラックスの裾上げで決めるのは、丈と仕上げの2つです。
丈は、いちばん合わせる靴を1足決めて、その靴を履いて、後ろの裾が履き口から何cm下に来るかで決めます。靴が2足以上あって、かかとの差が2cmを超えるなら、高い方に合わせて丈の段階をひとつ短くするか、どちらかの靴を外します。
仕上げは、裾幅で決めます。19cm未満はシングル、22cmを超えるならダブルも選べる。その間は、生地の厚みと合わせる靴で分けます。
そして、どれにも決めきれないときは、生地を切らずに折り込んだまま仕上げてもらってください。それだけで、あとからの変更がきく1本になります。
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よくある問い
- Q. スラックスの裾上げは、何の靴を履いて測ればいいですか
- そのスラックスに合わせる回数がいちばん多い靴を1足だけ選んで、それを履いて測ってください。かかとの高さが2cm違うと、同じ丈でも裾の落ち方がはっきり変わります。通勤で低い革靴、休日にスニーカーというように2足を行き来するなら、かかとの高い方に合わせ、低い方の日は裾がわずかに長いことを受け入れるのが失敗の少ない決め方です。
- Q. シングルとダブル、どちらが仕事向きですか
- どちらも仕事で問題なく履けます。決め手は裾幅で、細身で裾幅が19cm未満ならシングルの方が裾がもたつきません。裾幅が22cmを超える太めのスラックスは、ダブルにすると裾に重みが出て、折り目の線がまっすぐ落ちやすくなります。式典など改まった場に限って履くなら、シングルを選んでおくと迷いません。
- Q. 一度シングルで切ってしまったスラックスを、ダブルに変えられますか
- 切ったあとの残りの長さ次第です。ダブルには折り幅の2倍に縫い代を足した長さが必要で、折り幅4cmなら裾から下に11〜12cmほどの余りが要ります。シングルで4cm程度の折り代しか残していない場合は、ダブルにはできません。迷っている段階なら、切らずに折り込んで仮に仕上げてもらってください。
- Q. 自分で裾上げしても、お直しに出したように見えますか
- シングルの手まつりなら、表に縫い目がほとんど出ないので十分きれいに仕上がります。難しいのはダブルと、裏地の付いたスラックスと、前を少し短くする斜めの裾です。この3つのどれかに当てはまるなら、お直しの売り場に出す方が安心です。
— メグラシ編集部





