ニットの毛羽立ち|何回目の着用で出たかで原因を分けて防ぐ

**毛羽立ったニットを1枚、手元に出してください。**そして、その1枚を買ってから何回目に着た日に毛羽が気になったかを思い出してみてください。
ニットの毛羽立ちは、出た時期と出た場所で原因がほぼ決まります。**着て3回目までに全体から出たなら素材、4〜15回目に一部分から出たなら着方、洗った直後に表面全体がぼやけたなら洗い方。**この3つは防ぎ方がまったく違うので、どれに当たるかを先に決めると、同じ1枚が何度も毛羽立つのを止められます。
予定の前夜に今ある毛羽をどう整えるかはセーターの毛羽立ちを直すに、整えたつもりで薄くなったりテカったりしたときの戻し方は毛羽立ったニットの復活に失敗したらにまとめてあります。この記事は、その手前の「なぜ出たか」と「次に出さないには」の話です。
結論|何回目に出たかで、原因は3つに分かれる
| 出た時期 | 出た場所 | 原因 | 防ぐ手 |
|---|---|---|---|
| 着て1〜3回目 | 全体から均一に | 素材の性質 | 着る前後のブラシ。5回目までに落ち着くか見る |
| 着て4〜15回目 | 脇・袖の内側・前身頃の下など一部 | 着方の摩擦 | こすっている物を特定して、その1つを外す |
| 洗った直後 | 表面全体がぼやける | 洗い方 | 回転・脱水・干し方を1つずつ変える |
表は、どこを見れば分かれるかを示すためのものです。実際には2つが重なっている1枚もあります。重なっているときの見分け方は、後半の「どちらとも取れるとき」に4つの場合で書きました。
先に覚えておいてほしいのは、毛羽が出ること自体は、ニットが傷んだ印ではないということです。問題になるのは、毛羽が一部分にだけ出て周りとの差が見えるとき、そして毛羽が絡まって毛玉に進むときです。
毛羽立ちと毛玉は、同じ道の途中にある
ニットの糸は、たくさんの短い繊維を撚り合わせてできています。こすれたり、水の中でもまれたりすると、撚りの中に入っていた繊維の端が少しずつ表に出てきます。これが毛羽です。
表に出た繊維の端は、さらにこすられると隣の繊維の端と絡まります。絡まった繊維が丸くまとまり、根元の繊維が切れずに生地につながったまま残ると、それが毛玉です。つまり毛羽は毛玉の手前の段階で、毛羽のうちに止めれば、毛玉には進みません。
指先で確かめる方法があります。気になる場所を指の腹でつまんで、軽く転がしてください。指の下で粒がころころ動くなら、もう毛玉の段階です。粒にならず、繊維が倒れるだけなら毛羽の段階です。この記事が扱うのは後者です。すでに粒になっているものの取り方は毛玉の取り方|生地を削らずに取れるかは、根元を引いた動きで決まるを見てください。
数え方|「何回目」は、着た日と洗った日を分けて数える
何回目に出たかを決めるとき、着た日と洗った日を一緒に数えると、原因が見えなくなります。着た回数は摩擦の回数で、洗った回数は水と回転の回数だからです。
いちばん簡単なのは、洗濯表示のタグの裏に、着た日は鉛筆で小さく線を1本、洗った日は丸を1つ書いていく方法です。タグに書くのに抵抗があるなら、クローゼットの扉の内側に紙を貼って、ニットごとに線と丸を付けても同じです。
覚えていない1枚は、ここから数え始めてください。今日を0回目にして、次に着た日から線を付けます。毛羽がいったん落ち着いてから再び出るまでの回数が分かれば、それでも原因は分けられます。
数えるときの単位は「1日着たら1回」です。朝から夜まで着た日も、2時間だけ着た日も1回に数えます。ただし、上に何も羽織らずに一日中着た日と、コートの下に着て通勤の往復だけ表に出た日では、こすれ方が違います。気になるなら、線の横に「外」「中」と書き分けておくと、あとで場所を特定するときの手がかりになります。
1〜3回目に全体から出た|素材の性質
買ってから3回目までに、表面全体から均一に毛羽が出たなら、まず素材の性質を疑ってください。全体から均一に、というのが大事なところです。一部だけが目立つなら、それは素材ではなく摩擦の側です。
素材で毛羽が出やすいのは、次のような糸や生地です。短い繊維を甘く撚った、ふっくらした糸。毛足の長い獣毛を混ぜた糸。表面をブラシで起こして仕上げた生地。それから、柔らかさを出すために撚りを少なくした糸です。こうした糸は、もともと表に出る準備ができている繊維の端を多く持っています。最初の数回の着用で、それが一斉に浮いてきます。
素材の毛羽は、出る量に上限があります。表に出る準備ができていた繊維の端が出きってしまえば、それ以上は出にくくなるからです。だから、素材が原因のときに見るべきは「出たかどうか」ではなく「減っていくかどうか」です。
確かめ方はこうです。黒っぽい布か、濃い色の紙を1枚用意します。ニットを平らに置き、前身頃の真ん中に布を手のひらで5秒押し当ててから、そっと離します。布に付いた繊維の量を、1回目・3回目・5回目の着用のあとで比べてください。回を追うごとに減っていれば、素材の毛羽が落ち着いていく途中です。
素材の毛羽は、5回目までに落ち着くかで見る
5回目のあとに押し当てた布の繊維が、1回目の半分くらいまで減っていれば、その1枚は落ち着く側です。手入れは、着る前と脱いだあとのブラシだけで足ります。
ブラシは、毛の柔らかい衣類用のものを使います。かける方向は、肩から裾へ、上から下への一方向です。往復させると、寝かせたはずの繊維がまた起きます。前身頃と後ろ身頃をそれぞれ5〜6回ずつ、力を入れずに表面をなでる程度で十分です。脱いだあとにかけておくと、着ている間に立った繊維がその日のうちに寝て、翌日に絡まりにくくなります。
5回目でも1回目と同じくらい布に付く、あるいは増えているときは、素材だけが原因ではありません。素材の毛羽に、着方か洗い方の毛羽が重なっています。この場合は、次の2つの節を読んで、どちらが重なっているかを探してください。
もう1つ、素材の毛羽で気をつけたいのは、毛羽が出ている間は毛玉にも進みやすいということです。浮いた繊維の端が多いぶん、絡まる相手も多いからです。最初の5回は、リュックや斜めがけのバッグなど、同じ場所を強くこする物と組み合わせないでください。
4〜15回目に一部から出た|着方の摩擦
最初の数回は何ともなかったのに、何回か着たあとで一部分にだけ毛羽が出てきた。これは着方による摩擦です。素材の毛羽が全体から出るのに対して、摩擦の毛羽は、こすれた場所にだけ出ます。
摩擦の毛羽は、出た場所がそのまま原因を教えてくれます。同じ場所が繰り返しこすられるから、その場所だけが毛羽立つのです。逆に言えば、こすっている物を1つ外せば、その場所の毛羽は止まります。
数え方のところで「4〜15回目」と書いたのは、摩擦の毛羽が目に見えるまでに、ある程度の回数がかかるからです。強くこする物と組み合わせた日が続けば4回目くらいで出ますし、軽くこする程度なら15回目くらいまで目立ちません。15回を過ぎてから初めて出た一部分の毛羽は、摩擦の回数が積み重なったもので、原因は同じく着方です。
場所から、こすっている物を特定する
ニットを平らに置いて、毛羽が出ている場所を確かめてください。そのうえで、下の表の「こすっている物」の列を見ます。
| 毛羽の場所 | こすっている物 | 外し方 |
|---|---|---|
| 脇の下・袖の内側 | 歩くときに振る自分の腕と身頃 | 身幅か袖幅に余裕のある1枚を選ぶ。脇に縫い目の厚い服を重ねない |
| 前身頃の下・おなかの前 | 机の縁、カウンター、キッチンの天板 | 座るときに椅子を引いて、机との間に握りこぶし1つ空ける |
| 片方の腰・脇腹 | 肩に掛けたバッグの本体 | 反対の肩に替える日を作るか、手に持つバッグにする |
| 片方の肩から胸へ斜め | 斜めがけの紐、シートベルト | 紐の当たる面にストールを1枚挟むか、紐の太さを変える |
| 背中・両肩 | リュック、椅子の背もたれ | リュックの日は上に1枚羽織る。背もたれに深く寄りかからない |
| 肘 | 机に肘をつく癖 | 肘をつく面に柔らかい布を置くか、袖をまくる |
| 袖口 | 腕時計、ブレスレット、机の天板 | 腕時計を反対の手首にするか、袖口を1回折る |
| 首まわり・襟 | 髪、コートの襟、マフラー | 髪をまとめる、マフラーの素材を替える |
場所が2つ以上ある場合は、どちらか片方を先に外してください。両方を一度に外すと、どちらが効いたか分からなくなります。1つ外して5回着て、その場所の毛羽が増えていなければ、それが原因だったということです。
脇の下と袖の内側は、ほとんどのニットで最初に毛羽立つ場所です。腕を振るたびに、身頃と袖が向かい合ってこすれるからです。この場所が毛羽立つのはある程度は避けられませんが、身幅が体にぴったりした1枚ほど強くこすれます。手持ちのニットで脇だけがいつも毛羽立つなら、次に選ぶときに身幅に指3本ぶんほどの余裕がある形を選ぶと、こすれる回数が減ります。
前身頃の下は、座って仕事をする人に多い場所です。机の縁と体の間が狭いと、腕を動かすたびにおなかの前のニットが天板の縁とこすれます。椅子を少し引くだけで止まることが多い場所なので、まずここから試してみてください。
洗った直後に全体が変わった|洗い方
着ている間は何ともなかったのに、洗って乾かしたら表面全体が白っぽくぼやけた。手で触ると、前よりふわっとしているけれど、編み目の輪郭が見えにくくなっている。これは洗い方による毛羽です。
洗い方の毛羽は、水の中で繊維同士がこすれることで起きます。回転が強い、洗う時間が長い、脱水が長い、ほかの洗濯物とこすれる。どれも表面全体に同じように効くので、毛羽も全体に出ます。摩擦の毛羽が一部分に出るのと、ここで分かれます。
防ぐには、変えられるところを1つずつ変えて確かめます。一度に全部変えると、次にまたぼやけたときに、どれを戻したのかが分からなくなるからです。変える順番は、効きやすいほうから次のとおりです。
1つ目は、裏返してネットに入れることです。ネットは、ニットを畳んで入れたときに中で動く余裕が指2本ぶんくらいの大きさを選びます。大きすぎると中で回ってしまい、ネットに入れた意味が薄くなります。
2つ目は、洗濯機の回転を弱いコースにすることです。手洗い表示のあるニットなら、洗濯機の手洗いコースか、たらいでの押し洗いにします。押し洗いは、ニットを沈めて手のひらで底に向かって押し、離す。これを20回ほど繰り返すだけで、こすり合わせません。
3つ目は、脱水の時間です。長く脱水すると、ニットが洗濯槽の壁に押し付けられて表面がこすれます。30秒ほどで止めて、残りはバスタオルに挟んで手で押して水を取ってください。
4つ目は、干し方です。濡れたまま吊るすと、水の重さで伸びるうえに、乾くまでの間に表面の繊維が乾いた順に立ち上がります。平らな場所に広げて形を整え、乾ききる前に一度ブラシで表面をなでておくと、立ち上がった繊維が寝た状態で乾きます。
どちらとも取れるとき①|3回目に、脇だけに出た
3回目というのは素材の時期ですが、場所は脇だけ。素材なら全体から出るはずなのに、一部分です。この場合は、素材の毛羽と摩擦の毛羽が同時に始まったと考えてください。
見分けるには、前身頃の真ん中と脇の下で、黒い布の押し当てを比べます。前身頃の真ん中にもそれなりに繊維が付くなら、素材の毛羽が全体に出ていて、脇はそこに摩擦が重なって目立っているだけです。前身頃の真ん中にはほとんど付かず、脇だけに付くなら、素材は関係なく、摩擦が強い着方をしています。
前者なら、5回目まではブラシで全体を寝かせながら、脇には特に念入りにブラシをかけます。後者なら、その1枚は身幅が体に対して狭いか、上に重ねている服の脇の縫い目が厚いかのどちらかです。上に重ねている服を替えて3回着てみて、脇の毛羽が増えなければ、重ねていた服が原因です。
どちらとも取れるとき②|素材の毛羽と思ったが、10回目でも止まらない
最初から全体に出ていたので素材だと思っていたのに、10回目になっても減らない。押し当てた布に付く繊維が、むしろ増えている。この場合は、洗うたびに新しい毛羽が起きている可能性が高いです。
数え方で付けた線と丸を見返してください。毛羽が増えたのが、洗った丸のすぐあとに集中しているなら、洗い方が素材の毛羽を後押ししています。洗い方の節の1つ目から順に変えてください。
洗った回数が少ないのに増えているなら、着方の摩擦が全体に効いています。全体に効く摩擦というのは、たとえば上に毛足の長いコートを着ている、裏地のないジャケットを重ねている、静電気でほかの服がまとわりついている、といった場合です。上に重ねる物を1つ替えて5回着てみてください。
どちらにも当てはまらず、それでも増えるなら、その1枚は素材として毛羽が出続けるタイプです。撚りがとても甘い糸や、毛足の長い獣毛を多く含む糸では、いつまでも少しずつ出続けることがあります。そういう1枚は、着る前後のブラシを習慣にして、強くこする物と組み合わせない日に着る1枚として扱ってください。
どちらとも取れるとき③|洗っていないのに、全体がぼやけてきた
洗っていないのに、表面全体が少しずつぼやけてきた。全体に出ているから素材か洗い方のように見えますが、洗っていないなら洗い方ではありません。そして着た回数が多いなら、素材の時期は過ぎています。
この場合に多いのは、上に重ねた服との摩擦が全体に効いているケースです。コートの裏地が滑りにくい素材だと、腕を動かすたびにニットの表面全体が裏地とこすれます。通勤でコートを着ている時間が長い人ほど、この毛羽が出やすくなります。
確かめるには、そのコートの裏地を手のひらでなでてみてください。手のひらが引っかかるように感じるなら、ニットの表面も同じように引っかかっています。その場合は、コートの下に着るニットを、表面が滑らかに詰まった編みのものに替えるか、ニットの上にシャツを1枚挟んでからコートを着ます。
もう1つ、室内で静電気が起きやすい季節には、ほかの服や毛布、ソファの布地がニットにまとわりついて、表面全体をこすることがあります。部屋で長く過ごす日にだけ着ているニットが全体にぼやけるなら、座る場所の布地を確かめてください。
どちらとも取れるとき④|何回着たか覚えていない1枚
すでに毛羽立っていて、何回目に出たかも分からない。こういう1枚がいちばん多いと思います。この場合は、時期で分けるのをいったんやめて、場所だけで判断します。
まずブラシで全体を上から下へなでて、毛羽をいったん寝かせます。そのうえで今日を0回目にして、線と丸を付け始めます。次に毛羽が目立ってきたとき、それが何回目で、どこから出たかを見れば、ここまでの3つの分け方がそのまま使えます。
寝かせたあと、1〜2回着ただけで全体がまた毛羽立つなら、素材の側です。数回着たあとで一部分だけが毛羽立つなら、着方の側です。洗ったあとだけ全体がぼやけるなら、洗い方の側です。最初の時期は分からなくても、寝かせたあとの「次の1回目」からは数えられます。
覚えていない1枚の中には、すでに毛玉まで進んでいる場所がある1枚もあると思います。毛玉はブラシでは寝ないので、先に毛玉だけを取ってから0回目にしてください。素材ごとに取り方が違う点はセーターの毛玉の取り方は素材で変わるにあります。
毛羽を寝かせる手入れ|ブラシの向きと回数
どの原因でも、出てしまった毛羽を寝かせる手入れは同じです。ここでは、毎回の手入れとして続けられる最小の手順だけを書きます。
脱いだら、ニットをハンガーには掛けず、平らな場所に広げます。衣類用の柔らかいブラシで、肩から裾へ、一方向に5〜6回なでます。袖は、肩から袖口へ同じように。毛羽が出やすい脇の下は、腕を上げた形に広げて、脇の縫い目に沿って3回ほど追加します。
力は、ブラシの毛先が少したわむくらいで止めてください。押し付けると、寝かせるのではなく繊維を引き出してしまいます。ブラシをかけ終わったら、そのまま半日ほど平らなまま置いて、着ていた間の湿気を抜きます。湿気が残ったまま畳むと、繊維が起きた状態で固まります。
この手入れは、毛羽が目立ってからではなく、目立つ前からやるほうが効きます。着るたびの1分で、毛羽が絡まって毛玉に進むのをかなり遅らせられます。
刈るか、寝かせるか|毛玉取り器を当てる前の境目
毛羽立った表面を見ると、毛玉取り器で刈ってしまいたくなるかもしれません。でも毛羽の段階では、刈らずに寝かせてください。刈ると、表に出ていた繊維の端が切れて、その下から次の繊維の端がまた出てきます。刈るたびに生地が少しずつ薄くなり、最後は編み目の向こうが透けるようになります。
刈る側に回すのは、次の2つのどちらかに当てはまるものだけです。1つは、指でつまんで転がしたときに粒になっているもの。もう1つは、ブラシで3回なでても寝ない、繊維同士が絡まった塊です。
迷ったときの目安は、浮いている繊維の長さです。定規を当てて、浮いた部分がおおよそ3mm未満で、ブラシで倒れるなら寝かせる側。3mmを超えて絡まり、ブラシで倒れないなら刈る側です。刈るときも、毛玉の部分だけに当てて、周りの毛羽は刈らないでください。
次の1枚を選ぶときに、売り場で見るところ
手持ちの1枚の原因が分かったら、次に選ぶ1枚でそこを避けられます。売り場では、次の3つを確かめてください。
1つ目は糸の撚りです。ニットの裾の内側など目立たないところで、糸を指で軽くひねってみます。撚りが強く締まっていて、ひねっても糸がほどけにくい1枚は、繊維の端が表に出にくい側です。ひねるとすぐにふわっと広がる1枚は、柔らかい代わりに毛羽が出やすい側です。
2つ目はこすったときの表面です。前身頃の目立たないところを、手のひらで同じ方向に10回こすってみてください。手のひらに繊維が付く、あるいはこすった跡が白っぽくぼやけるなら、着ているうちに同じことが起きます。
3つ目は編み目の詰まり方です。ニットを光にかざして、編み目の向こうがどれくらい透けるかを見ます。詰まっている1枚ほど、繊維が動く余地が少なく、毛羽が出にくくなります。
素材が原因だった人は1つ目と2つ目を、着方が原因だった人は身幅と袖幅の余裕を、洗い方が原因だった人は洗濯表示が自分の洗い方に合っているかを、とくに確かめてください。柔らかさを優先して毛羽の出やすい1枚を選ぶのは悪いことではありません。その場合は、手入れの回数を増やす前提で選べば、買ったあとで困りません。
手入れの回数を、季節の中で配分する
秋冬のあいだ、同じニットを何回着るかを考えると、手入れの回数も見えてきます。週に1回着る1枚なら、ひと季節でおよそ20回前後。素材の毛羽が落ち着く最初の5回は、着るたびにブラシをかけ、そのあとは着たあとのブラシだけで足ります。
洗う回数は、着る回数ほど多くなくて構いません。汗をかいた日や、食べこぼしがあった日を除けば、ひと季節に数回で十分なニットも多いです。洗う回数が少ないほど、洗い方の毛羽は出にくくなります。
しまう前と、出した直後の1回
毛羽は、着ている季節だけの話ではありません。しまう前の扱いと、出した直後の扱いでも変わります。
しまう前には、ブラシで全体を寝かせ、汚れが残っていないことを確かめてから畳みます。毛羽が立ったまま畳むと、重なった面同士が触れ合って、しまっている間に毛羽が絡まります。重ねる順番や置き方はニットの保管方法を参考にしてください。
出した直後の1回目は、着る前にブラシを一方向に5〜6回かけておきます。畳み皺の山の部分は繊維が起きやすいので、そこを重点に。この1回で、出した季節の最初の数回に出る毛羽の量がかなり変わります。
秋のはじめに出したニットの毛羽が、全体の印象をどう変えるかは秋の清潔感は素材の毛羽立ちで決まるに書いています。毛羽は、整えてあれば柔らかさに見え、整っていなければくたびれに見えます。その差を分けているのは、どの原因で出たかを知って、そこを1つ外せているかどうかです。
素材ごとに、毛羽の出方の癖がある
素材が原因かどうかを判断するとき、その素材がもともとどう毛羽立つかを知っておくと迷いが減ります。ここでは、洗濯表示の混率でよく見る素材ごとに、出方の癖だけを書いておきます。
ふつうのウールは、最初の数回に全体から細かい毛羽が出て、5回目あたりで落ち着くことが多い素材です。羊毛のなかでも細く柔らかい毛を使った糸は、そのぶん繊維が短く、落ち着くまでに少し回数がかかります。
カシミヤは、繊維がとても細く、表面にうっすらとした毛羽が出るのが持ち味です。出ること自体は傷みではありませんが、こすれに弱いので、着方の摩擦の毛羽が素材の毛羽に重なりやすい素材です。脇や袖の内側は、ほかの素材より早く目立ってきます。
モヘアやアンゴラのように毛足の長い獣毛は、最初から毛羽をまとった見え方の素材です。毛羽が出るのは当たり前なので、見るべきは「抜けて落ちる量」が減っていくかどうかです。黒い布の押し当てで、5回目までに半分ほどに減っていれば落ち着く側です。
アクリルやポリエステルを混ぜた糸は、繊維が強いぶん、毛羽が出たあとに切れずに残って絡まりやすく、毛玉に進むのが早い傾向があります。混紡のニットは、毛羽の段階で早めにブラシをかけてください。
綿のニットは、獣毛ほど毛羽は出ませんが、洗うたびに表面が白っぽくなりやすい素材です。全体のぼやけが洗った直後に出るなら、洗い方の節の4つを試してください。
重ね着で変わる|下に着る1枚、上に着る1枚
ニットの毛羽は、ニットそのものの扱いだけでなく、一緒に着る服でも変わります。とくに見落としやすいのが、ニットの下に着る1枚です。
ニットの下に襟付きのシャツを着ると、シャツの襟とカフスがニットの首まわりと袖口の内側をこすります。襟まわりや袖口だけが毛羽立つなら、シャツの襟の角や、カフスのボタンが当たっていないかを確かめてください。襟の柔らかいシャツに替えるか、カフスを1回折ってニットの袖口の中に入れないようにすると、こすれる面が減ります。
上に着る1枚では、裏地のないジャケットやコートが全体の毛羽の元になることは、どちらとも取れるときの③に書きました。もう1つ、ショルダーバッグの紐が上着の上から当たっていても、上着越しに同じ場所が押されて、ニットの肩から胸にかけてが毛羽立つことがあります。上着を着ている日でも、紐の位置は毎日同じ場所にならないようにしてください。
3つの原因を、1枚の紙で整理する
最後に、ここまでの見分け方を、手元に残せる形でまとめておきます。ニットが3枚以上あるなら、1枚ずつ次の4つの欄を埋めてみてください。
1つ目の欄は、毛羽に気づいたのが何回目だったか。分からなければ「不明」と書き、今日から数え始めます。2つ目の欄は、毛羽がある場所。全体か、一部分か、一部分ならどこか。3つ目の欄は、その1枚と一緒によく使う物。バッグの種類、上に着るコート、座る椅子。4つ目の欄は、洗った回数と洗い方です。
4つの欄を埋めると、多くの1枚は原因が1つに絞れます。絞れなかった1枚は、どちらとも取れるときの4つのどれかに当たるはずです。そこに書いた確かめ方を、1つずつ試してください。
毛羽を直す手順は、すでにいくつもあります。でも、同じ1枚が同じ場所から何度も毛羽立つなら、直すより先に原因を外したほうが、手入れの手間は減ります。何回目にどこから出たか。この2つを数えることが、いちばん手間の少ない防ぎ方です。
よくある問い
- Q. 新品のニットが1回目から毛羽立ちました。不良品ですか
- 全体から均一に出ていて、ブラシをかけると寝るなら、ほとんどは素材の性質です。短い繊維を甘く撚った糸や、表面を起こして仕上げた生地は、最初の数回で表に出ている繊維の端が浮いてきます。黒っぽい布を表面に軽く押し当てて離し、付いた繊維の量を1回目・3回目・5回目で比べてください。回を追うごとに減っていれば、落ち着いていく途中です。5回目でも1回目と同じだけ付く、あるいは一部だけ地の編み目が見えるほど薄くなっているときは、素材以外の原因が重なっています。
- Q. 毛羽立ちは毛玉取り器で取ってもいいですか
- 毛羽の段階では、刈らずに寝かせるほうが長持ちします。毛羽は繊維の端が立っているだけなので、ブラシで毛並みをそろえれば表に出る量が減ります。刈ると、その下から次の繊維の端がまた出てきて、生地が少しずつ薄くなります。刈る側に回すのは、指でつまんだときに繊維同士が絡んで粒になっているものだけです。目安は、粒が指先で転がるかどうか。転がるなら毛玉、転がらずに倒れるだけなら毛羽です。
- Q. 毛羽立ちにくいニットを選ぶには、何を見ればいいですか
- 売り場で3つ確かめてください。糸を指でほどくように少しひねって、撚りが強く締まっているか。表面を手のひらで同じ方向に10回こすって、手のひらに繊維が付くか、表面が白っぽくぼやけるか。編み目が詰まっていて、地の向こうが透けにくいか。撚りが甘く、10回で手のひらに繊維が付く1枚は、着方に気をつけても毛羽が出やすい側です。柔らかさを優先して選ぶなら、それを承知で手入れの回数を増やす前提で選びます。
- Q. 毛羽立ったニットは、もう仕事に着ていけませんか
- 毛羽が全体に均一で、ブラシで寝る程度なら、着ていって構いません。目立つのは、一部だけが白っぽく浮いていて、周りとの差が見えるときです。脇や前身頃の下だけが浮いているなら、前夜にその部分だけブラシで寝かせ、上に羽織るものを1枚足すと差が隠れます。予定の前日に整える手順は、別の記事にまとめてあります。
— メグラシ編集部





