毛玉の取り方|生地を削らずに取れるかは、根元を引いた動きで決まる

その毛玉を取っていいかどうかは、道具を選ぶ前に決まっています。
見るのは毛玉の側です。毛玉を指でつまんで1センチ持ち上げたときに生地ごと持ち上がるか、毛玉の直径が3ミリを超えているか、生地をつまんで糸の一本一本を感じ取れるか、表面に毛足が浮いているか。 この4つで、刃で刈る・ハサミで切る・ブラシで起こす・触らないの4つに分かれます。
生地に穴が空くのは、道具が悪かったからではありません。取ってはいけない毛玉に、取っていい毛玉用の道具を当てたからです。順番を入れ替えると、この失敗はほとんど起きなくなります。
判定の入口|見るのは毛玉ではなく、根元
毛玉は、生地から抜けかけた細い毛が、摩擦で寄り集まって玉になったものです。だから毛玉には必ず根元があり、その根元が生地のどこにつながっているかで、切っていいかどうかが変わります。
根元が細くくびれている毛玉は、すでに生地から離れかけています。ここを切っても、失われるのは抜けかけた毛だけです。
根元が太いまま生地に続いている毛玉は、まだ編み目の一部です。ここを切ると、生きている糸を切ることになります。糸が1本切れると、ニットはそこから編み目がほどけます。穴は、切った瞬間ではなく、次に着たときに広がります。
見た目の大きさだけでは、この二つは区別できません。触って確かめる必要があります。
測り方1|つまんで1センチ持ち上げる
いちばん大事な判定です。
毛玉を指の腹で軽くつまみ、生地の面から1センチほど、まっすぐ持ち上げます。 引きちぎろうとせず、そっと。見るのは、生地がどうなるかです。
- 毛玉だけが持ち上がり、下の生地は平らなまま:根元が離れかけています。切って安全な側です
- 毛玉と一緒に、周囲の生地が円錐状に持ち上がる:根元が生きています。刃を当てない
- 持ち上げると生地に糸のスジが浮く:編み目が引っ張られています。触らない側です
⚠️ 迷ったら、持ち上がるほうを採ってください。 生地が少しでも動いたら、その毛玉は「まだ取る時期ではない」だけです。1か月後に同じ場所を確かめると、根元が細くなっていることがあります。
測り方2|毛玉の直径|3ミリという線
次に大きさです。定規を当てなくても、指の腹と比べればわかります。
- 3ミリ未満:根元が生地の中に残っていることが多い。取ると繊維の断面が新しく増える
- 3ミリ以上、根元がくびれている:処理して安全な側
- 5ミリを超えて、複数の毛玉が地続きになっている:面で固まっています。個別には取れません
小さいうちに取るのがよい、という考え方はここでは当てはまりません。 切ると、繊維の断面が増えます。断面が増えると、そこから新しい毛羽が出て、次の毛玉が早くできます。取るたびに周期が短くなるのは、この仕組みのせいです。
3ミリ未満のうちは、切らずに寝かせ直すほうが、結果として取る回数が減ります。
測り方3|生地の厚み|糸を1本ずつ感じ取れるか
同じ大きさの毛玉でも、生地が薄いか厚いかで結果が変わります。
生地を親指と人差し指で挟んで、指の腹で軽くこすってください。
- 面としての厚みを感じ、糸の輪郭がわからない:厚手。刃を当てても下の編み目まで届きにくい
- 糸の一本一本を指で数えられる:薄手。刃の刈り取る深さが編み目に届きます
- 向こう側の指が透けて見える:極薄手。道具は使わない側です
薄い生地で毛玉取りの機械を使うと、生地が刃の穴に吸い込まれて張った状態になり、そのまま刈られます。穴が空くのは、たいていこのときです。 厚手のニットで同じ道具を使っても同じことは起きません。道具の評価が人によって割れるのは、当てている生地が違うからです。
測り方4|毛足|取ると風合いが変わる側
最後は表面です。編み地の面から浮いている毛の長さを見ます。
明るいほうへかざしたとき、輪郭がぼやけて見えるもの、なでると指に毛が絡んでくるものは、毛足が長い側です。この手の一枚は、刃が毛玉と毛足を区別できません。
取ったところだけ面が沈み、光の反射が変わって、遠目に「そこだけ色が違う」ように見えます。毛玉は消えたのに、前より目立つという失敗が起きるのはここです。
面が平らで、なでても何も絡まないものは、この判定では減点なしです。
4つを合わせて、道具を決める
| 見るところ | 刃で刈る | ハサミで切る | ブラシで起こす | 触らない |
|---|---|---|---|---|
| つまんで持ち上げる | 毛玉だけ動く | 毛玉だけ動く | どちらでも | 生地が動く |
| 直径 | 3ミリ以上 | 3ミリ以上 | 3ミリ未満 | 3ミリ未満 |
| 生地の厚み | 厚手 | 薄手・厚手とも可 | どちらでも | 透ける薄さ |
| 毛足 | 面が平ら | 5ミリ以上浮いている | 浮いている | どちらでも |
縦に読んで、4行とも当てはまる列だけを選んでください。 3行しか当てはまらないなら、その右隣の、より手数の少ない列に下げます。判定は常に弱いほうへ倒すのが安全です。刈って失敗したものは戻せませんが、ブラシで足りなかったものは、あとから刈れます。
刃で刈る|使える条件と、止める合図
条件が揃った一枚だけの話です。
平らな面の上に生地を広げます。膝の上や、着たままは避けてください。 生地が張っていないと、刃が編み目を巻き込みます。厚紙を1枚、生地の下に敷くと面が安定します。
動かし方は、一方向に、同じ場所を二度なでない。 往復させると、一度刈った断面をもう一度削ることになります。1か所につき2〜3回で切り上げてください。
止める合図は3つです。
- 手ごたえが急に重くなった:編み目を巻き込んでいます。すぐ離す
- 削りかすの中に、毛玉より長い糸が混じっている:生きている糸を切っています
- 同じ場所を4回なでても毛玉が減らない:その毛玉は根元が生きています。判定が間違っていました
⚠️ 袖口・脇の下・裾のリブは、面が丸まっていて刃が当たりにくい場所です。 ここだけは平らに伸ばし直してから当てるか、ハサミに切り替えてください。
ハサミで切る|根元を1ミリ残す
薄手のもの、毛足のあるもの、毛玉の数が少ないものは、こちらが確実です。
毛玉をつまんで軽く持ち上げ、生地の面から1ミリ上を切ります。 根元ぎりぎりで切らないのが要点です。1ミリ残すことで、まだ生きている糸に刃が届きません。残った1ミリは、数回着るうちに繊維の中に沈みます。
先の細いものを、刃を寝かせずに使ってください。刃を寝かせると、隣の毛足まで一緒に切ります。
数が多いときは、5個切るごとに、生地を明るいほうへかざして確かめる。 切り進むほど手元が雑になり、気づいたときには何か所も削れています。
ブラシで起こす|取るのではなく、寝かせ直す
3ミリ未満の毛玉と、毛足のあるものはここです。
毛の柔らかいブラシを、編み目に沿って一方向になでます。 目的は毛玉を引き抜くことではなく、絡んだ毛をほどいて、面に寝かせ直すことです。
- 往復させない。往復は新しい絡みを作ります
- 力を入れない。ブラシの重さだけで足りる
- 端から端まで、一続きになでる
これで消えるのは、まだ固まりきっていない毛玉だけです。それでも、着るたびに1分かけると、3ミリを超える毛玉の数が目に見えて減ります。 取る作業より、こちらのほうが生地は減りません。
触らない、という判定もある
4つの測り方で右端に入ったものは、そのままにしてください。
そのうえで、目立たなくする手はあります。濡らしたタオルを固く絞って、毛玉のある面を上から押さえる。 押さえるだけで、こすりません。乾いたあとに毛が寝て、遠目には落ち着きます。持続はしませんが、その日一日は保ちます。
もうひとつ、着る面を替えるという手もあります。カーディガンなら前後を入れ替えることはできませんが、ストールやマフラーは巻き方で毛玉の面を内側に回せます。
それでも気になる、かつ代えの利かない一枚なら、専門店に相談する段階です。家で削るより、そちらのほうが生地が残ります。
どちらとも取れるとき|見えない場所で1個だけ
判定が2対2で割れることがあります。根元は離れかけているが生地が薄い。毛足は平らだが毛玉が2ミリしかない。
このときの手順は3つです。
まず、見えない場所を選びます。 裾の内側、脇の縫い代の近く、袖の下側。着たときに視線が届かない面です。
次に、1個だけ処理します。 そこで手を止めて、生地を明るいほうへかざす。編み目に穴やスジが出ていないか、面が沈んでいないかを見ます。
最後に、一日置いてから同じ場所をもう一度見ます。 切った直後は問題なく見えても、一度着て動かすと、ほどけかけた編み目が浮いてきます。ここまで確かめてから、残りに進んでください。
⚠️ 割れたときに強いほうへ倒さないでください。 ブラシで足りなければ、あとから刈れます。刈って穴が空いたら、そこで終わりです。片側だけがやり直せます。
取ったあとに「増えた」と感じるとき
処理した数日後に、前より毛玉が多いように見えることがあります。錯覚ではありません。
切ることで、繊維の断面が新しく増えています。断面は毛羽の出口です。 出口が増えれば、同じだけ着ても抜け出す毛が増え、次の毛玉が早く現れます。
だから、毛玉の処理は「やるほどよい」ものではありません。周期をこう考えてください。
- 取る間隔が3か月以上あく:適切な頻度です
- 1か月ごとに気になる:処理のたびに断面が増えている可能性がある。次はブラシだけにする
- 2週間で戻る:取る側ではなく、摩擦の側に原因があります
同じ場所に何度もできるとき
毛玉が集まるのは、たいてい決まった4か所です。脇の下、袖口の内側、カバンの当たる腰、椅子の背に触れる背中。 どれも、動くたびに布と布、または布と物がこすれ続ける場所です。
ここに3回以上できるなら、取り方を変えても減りません。減らせるのは原因側です。
- カバンを掛ける肩を、日によって替える
- 袖をまくる位置を、いつも同じ折り目にしない
- 同じ一枚を続けて着ない。一日おくと繊維が元の位置に戻ります
- 座面や背もたれに当たる面が固いときは、上に一枚羽織る
取る技術より、この4つのほうが効きます。 毛玉は結果であって、原因ではありません。
頻度|何回着たら見るか
決まった回数はありませんが、目安は置けます。
肌に近い薄手のものは5回着たら一度、上に重ねる厚手のものは10回着たら一度、明るいほうへかざして確かめてください。かざすのは、面に対して斜めから光を入れるためです。真上からの光では、毛玉の影が出ません。
確かめるのは、季節の終わりでも構いません。仕舞う前に一度見ておくと、次に出したときの状態が変わります。 毛玉を抱えたまま長期間たたんでおくと、重なった圧力で毛玉が押し固まり、翌シーズンには取れる側から取れない側へ移っていることがあります。
まとめ|毛玉の側を測ってから、道具を持つ
- つまんで1センチ持ち上げる。 生地が動いたら、刃を当てない
- 直径3ミリ未満は切らない。 切ると断面が増え、次が早くなる
- 糸を1本ずつ指で感じられる薄さなら、機械は使わない
- 毛足が5ミリ以上浮いているものは、ハサミかブラシの二択
- 割れたら弱いほうへ。 ブラシで足りなければ、あとから刈れる
- 同じ場所に3回以上できるなら、取る問題ではなく、こすれる場所の問題
判定が付けば、道具は自動的に決まります。判定を飛ばして道具から入ると、穴が空いた理由が最後までわかりません。
関連記事
— メグラシ編集部
よくある問い
- Q. 毛玉取りの機械を当てたら、生地に穴が空きました。使い方が悪かったのですか
- 使い方より先に、当てた毛玉の側に原因があります。根元が生地とつながったまま太い毛玉は、刃が毛玉だけを切れず、下の編み目ごと持っていきます。判定の入口は、毛玉をつまんで1センチ持ち上げること。生地が一緒に持ち上がるなら、そこは刃を当てる場所ではありません。すでに空いてしまった穴は、広がる前に裏から同系色の糸で数目すくって止めると、それ以上は進みません。
- Q. 直径2ミリくらいの小さな毛玉がたくさんあります。全部取るべきですか
- 取らないほうがいい側です。3ミリ未満の毛玉は、まだ根元が生地の中に残っていて、切ると繊維の断面が新しく増えます。断面が増えると、次の毛玉はもっと早くできます。この大きさのうちは、毛の柔らかいブラシで一方向になでて寝かせ直すだけにしてください。3ミリを超えて根元がくびれてきたものだけを、まとめて処理するほうが生地は長く持ちます。
- Q. 毛足の長いふわふわしたニットにも、毛玉取りの刃を使っていいですか
- 使わない側です。毛足が編み地の面から5ミリ以上浮いているものは、刃が毛玉と毛足を区別できません。取ったところだけ面が沈み、光の当たり方が変わって、かえって目立ちます。この手の一枚は、毛玉が3ミリを超えていても、ハサミで一つずつ根元から1ミリ残して切るか、ブラシで起こすかの二択にしてください。時間はかかりますが、戻せる側の作業です。
- Q. 取ったばかりなのに、また同じところに毛玉ができます
- 取り方ではなく場所の問題です。同じ場所に3回以上できるなら、そこは常に何かとこすれています。多いのは、脇の下、袖口の内側、カバンの当たる腰、椅子の背に当たる背中の4か所。原因側を変えないかぎり、取る間隔が短くなるだけです。カバンを掛ける肩を替える、袖をまくる位置を変える、同じ服を続けて着ないといった対処のほうが、結果として取る回数が減ります。
- Q. 高い服ほど毛玉ができにくいと聞きました
- 値段ではなく糸の長さと撚りの強さで決まります。短い繊維をゆるく撚った糸は、摩擦で毛羽が抜け出しやすく、抜けた毛羽が絡んで玉になります。長い繊維を強く撚った糸は毛羽が出にくい。手元で確かめるなら、生地を明るいほうへかざして、面から立ち上がっている細い毛の量を見てください。立ち上がりが少ないものは、着る回数が増えても毛玉が遅く出ます。
— メグラシ編集部




