けだまを取る日は、洗う前か後か|乾き切っているかで、取れる毛と切れる糸が入れ替わる

毛玉を取る作業がうまくいかない日があります。道具は同じ、毛玉の大きさも同じ。それでも結果が違う。
残っている変数は、作業そのものではなくその前後にあります。洗う前か洗ったあとか、生地が芯まで乾き切っているか、置いた面が平らかどうか。
この3つがそろっていると、同じ道具で取れる量が変わります。そろっていないと、抜けるはずの毛が途中で切れて、断面が生地の表面に残ります。
確かめるのに道具は要りません。手の甲を当てるだけです。
道具でも毛玉でもなく、順番
毛玉の作業は、たいてい道具の選び方として語られます。次に多いのが、その毛玉を取っていいかどうかの判定です。
どちらも決まっているのに結果が割れる日があります。そこで残るのが順番です。いつ取るか、どんな状態で取るか。 ここは手順書に書かれないので、意識しないと毎回ばらつきます。
順番は3つの問いに分かれます。洗濯との前後、乾き具合、面の平らさ。上から順に見ていきます。
先に決める|洗う前か、洗ったあとか
原則は洗う前です。理由は、着ているあいだに浮き上がった毛が、まだ表面に立っているからです。
立っている毛は、根元から動きます。刃でもハサミでもブラシでも、立っている状態なら、道具の当たる位置と根元の位置が近く、力がまっすぐ伝わります。
洗うと、この浮いた毛が水で寝て、繊維の中へ戻ります。戻ると、道具は毛玉の頭だけをつかんで、根元は動きません。 同じ作業でも、取れる量が減ります。
洗ったあとに取りたいとき
すでに洗ってしまった、あるいは洗ってからでないと汚れが気になる。そういうときは、置く時間で補います。
平らに置いて、丸一日以上おいてください。時間が経つと、寝た毛の一部がまた立ち上がってきます。完全には戻りませんが、当日よりはるかに動きます。
吊るしたままではなく、平らに置くこと。 吊るすと重さで縦に引かれ、毛が繊維に沿って寝たままになります。平らに置くと、繊維が元の向きへ戻る余地ができます。
乾き切っているかを、手の甲で見る
次に乾き具合です。表面が乾いていても、厚みのあるところは中に水が残ります。
手の甲を当ててください。手のひらより感覚が鋭いので、わずかな冷たさが分かります。当てて冷たさが伝わるうちは、繊維の中にまだ水があります。
当てる場所は、厚みのあるところを選びます。脇の下、襟の折り返し、袖口の重なり。いちばん厚い場所が乾いていれば、他は乾いています。
湿ったままだと、何が起きるか
繊維は水を含むとふくらみます。ふくらむと、隣の繊維とのからみが強くなります。
この状態で引くと、根元から抜けるかわりに途中で切れます。切れた断面は生地の表面に残り、そこから次の毛が出ます。取ったのに早く出るという結果は、たいていここから来ています。
乾いた状態なら、同じ力で根元から動きます。力を強くする必要も、道具を替える必要もありません。待つだけで結果が変わります。
面を平らにする
3つ目は、置いた面です。作業する前に、平らな台へ広げます。
見るのは浮きです。台に広げて、手を離したときに生地が浮いているところがないか。浮いていると、道具を当てたときに生地が持ち上がり、下の編み目まで一緒に動きます。
浮きが残るときは、たたみじわが原因のことが多いです。しわの山をいったん手で押さえて、平らにしてから作業してください。 浮きがゼロになれば、道具は表面だけを通ります。
3つの順番
| 見るところ | 確かめ方 | 満たしていないときの手 |
|---|---|---|
| 洗濯との前後 | 洗う前かどうか | 洗ったなら平らに丸一日おく |
| 乾き具合 | 厚い場所に手の甲を当てる | 冷たさが消えるまで待つ |
| 面の平らさ | 台に広げて浮きを見る | しわの山を手で押さえる |
この表は、作業に入る前の3秒で確かめるためのものです。3つとも満たしてから道具を持ちます。
どちらとも取れるとき①|仕舞う直前
季節の終わりに、仕舞う前の作業をすることがあります。
このとき順番は、洗う前に取る、洗う、平らに置いて乾かす、仕舞う、になります。取ってから洗うので、切れた短い毛が水で流れます。仕舞うときに表面がいちばんきれいな状態になります。
逆に、洗ってから取って仕舞うと、切れた短い毛が表面に載ったまま仕舞われます。仕舞っているあいだに、その毛が編み目の中へ入り込みます。 次の季節に出したとき、表面がざらついて感じられるのはこのためです。
どちらとも取れるとき②|着る直前に見つけた
朝、着ようとして目立つ毛玉を見つけることがあります。
このときは、その場で取るのを1つか2つまでにしてください。時間が無いと、面を平らにする手順が省かれます。浮いた面のまま作業すると、下の編み目まで一緒に持ち上がります。
目立つ位置にある1つだけを、指でつまんで根元から1ミリ残して切る。残りは帰ってから、平らな面でまとめて処理するほうが安全です。 朝は判断が急ぐぶん、生地に対して強く当たりがちです。
取ったあとに、洗うかどうか
取った直後の表面には、切れた短い毛が載っています。これは軽く払うか、乾いた布でひと方向になでれば落ちます。
落としてから仕舞えば、次に着るまでのあいだに毛が絡み直すことはありません。洗うのは、汚れが気になるときだけで構いません。
作業の直後に洗うと、短い毛が水を含んで編み目の中へ入り込むことがあります。払ってから、日をあけて洗う。 この順番のほうが、表面が長く落ち着きます。
干し方で、次の出方が変わる
洗ったあとの干し方は、次の毛玉の出方に効きます。
吊るして干すと、重さで繊維が縦に引かれます。引かれた繊維は元の向きへ戻りにくく、表面がわずかに毛羽立ちます。平らに置いて干すと、繊維が元の位置に戻る余地が残ります。
厚みのあるものほど差が出ます。厚いものは平らに、薄いものは吊るしても構いません。 平らに置く場所が無いときは、竿に二つ折りで掛けて、重さを分散させるだけでも違います。
部屋の湿り気も、乾き具合に入る
生地が乾いていても、部屋の空気が湿っていると、作業の途中で表面が湿り直すことがあります。
分かりやすいのは、雨の日に室内で干した直後です。窓を閉め切った部屋では、空気中の水が生地に戻ります。手の甲を当てて冷たくなくても、30分ほど作業しているうちに、途中から取れ方が変わることがあります。
取れ方が途中で変わったら、乾き具合を疑ってください。 作業をいったん止めて、風の通る場所へ移すだけで戻ります。道具を替える前に、置き場所を替えるほうが早いことがあります。
暖房の効いた部屋は逆で、乾きすぎて静電気が出ます。静電気が出ると、切れた短い毛が生地に張りついて払えません。この場合は、作業のあとに一度風を当てると落ちます。
何枚かまとめてやるとき
同じ日に何枚か処理するなら、乾いている順に並べてください。
厚いものほど乾くのに時間がかかるので、薄いものから始めて、厚いものを後ろに回します。並べておけば、待ち時間がそのまま乾き時間になります。
道具は、途中で拭いてください。取れた毛が刃やブラシの側に溜まると、次の1枚で表面をこすることになります。1枚ごとに拭くだけで、2枚目以降の仕上がりが変わります。
まとめてやる日は、台の上をいったん空にしてから始めるのがこつです。前の1枚の短い毛が台に残っていると、次の1枚を広げたときに拾います。
ひと季節の中で、いつ回すか
作業の回数は、着る回数で決まります。目安として、着た回数が10回を超えたあたりで一度見ます。
見るのは全体ではなく、こすれる場所だけです。脇の下、袖口の内側、腰のあたり、背中。この4か所を見て、毛が立ってきていれば、次に洗う前が作業のときです。
回数で決めると、季節や気温に左右されません。 「そろそろかな」と思ったときには、たいてい毛玉が育っています。着た回数を数えるほうが、早い段階で手が入ります。
まとめ
けだまを取る作業でうまくいかない日は、道具でも毛玉でもなく順番のことがあります。
洗う前に取る。洗ってしまったなら、平らに置いて丸一日以上おく。厚いところに手の甲を当てて、冷たさが消えてから始める。台に広げて、浮きをゼロにしてから道具を持つ。
この4行を先に置くと、同じ道具で取れる量が変わります。
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よくある問い
- Q. 毛玉を取るのは、洗う前と洗ったあとのどちらがいいですか
- 原則は洗う前です。着ているあいだに浮き上がった毛が、まだ表面に立っている状態だからです。洗うと、この浮いた毛が水で寝て、繊維の中へ戻ります。戻ってしまうと、取るときに毛玉の根元だけが引かれ、周りの毛は動きません。結果として、同じ作業で取れる量が減ります。洗ったあとにどうしても取りたい場合は、平らに置いて丸一日以上おいてから作業してください。
- Q. 乾いているかどうかは、どう確かめますか
- 手の甲を当ててください。手のひらより感覚が鋭いので、わずかな冷たさが分かります。当てて冷たさが伝わるうちは、繊維の中に水が残っています。表面が乾いていても、編み地の厚いところは中に残ります。厚みのある部分、たとえば脇の下や襟の折り返し、袖口の重なりを選んで当ててください。冷たさが消えていれば、作業に入って構いません。
- Q. 湿ったまま取ると、何が起きますか
- 抜けるはずの毛が途中で切れます。繊維は水を含むとふくらんで、隣の繊維とのからみが強くなります。この状態で引くと、根元から抜けるかわりに途中で切れ、切れた断面が生地の表面に残ります。断面は次の毛玉の始まりになるので、取ったのに早く出るという結果になります。乾いた状態なら、同じ力で根元から動きます。
- Q. 着る直前に毛玉を見つけたときは、どうすればいいですか
- その場で取るのは1つか2つまでにしてください。時間の無いときは、面を平らに置く手順が省かれます。浮いた面のまま作業すると、下の編み目まで一緒に持ち上がります。見つけた1つが目立つ位置にあるなら、そこだけを指でつまんで根元から1ミリ残して切る。残りは帰ってから、平らな面に置いてまとめて処理するほうが安全です。
- Q. 取ったあとに洗ってもいいですか
- 洗って構いませんが、その日のうちでなくて大丈夫です。取った直後の表面には、切れた短い毛が載っています。これは軽く払うか、乾いた布でひと方向になでれば落ちます。落としてから仕舞えば、次に着るまでのあいだに毛が絡み直すことはありません。作業の直後に洗うと、短い毛が水を含んで編み目の中へ入り込むことがあります。
— メグラシ編集部




