けだまができる前に|摩擦が集まる4か所と、休ませる日数で決まる

けだまは、服の全面に均等にはできません。決まった4か所に集まります。
脇の下、袖口の内側、カバンの当たる腰、椅子の背に触れる背中。 どれも、動くたびに布と布、または布と物がこすれ続ける場所です。
だから、取る技術を上げても追いつきません。取るたびに繊維の断面が増えて、次が早く出るからです。自分の一枚がどの場所に出ているかを数えると、原因が動作の側にあるのか、生地の側にあるのかが分かれます。
できる仕組み|抜けかけた毛が、摩擦で寄り集まる
けだまの正体は、生地から抜けかけた細い毛が、摩擦で寄り集まって固まったものです。
つまり必要な条件は2つ。毛羽が出ていることと、同じ場所がこすれ続けること。
生地の側は買った時点で決まっていますが、こすれる場所は着方で変わります。動かせるのは後者だけです。 だからこの記事は、後者に集中します。
場所1|脇の下|腕を振るたびに、布と布が触れる
いちばん出やすい場所です。
腕を振る動作のたびに、身頃と袖の布が接して離れます。一日歩けば、その回数は数千回になります。しかも脇は汗で湿りやすく、湿った繊維は乾いた繊維より摩擦が大きい。
確かめ方は、袖を持ち上げて脇の下の面を光にかざすこと。他の面より毛羽が立ち上がって見えたら、すでに始まっています。
減らす手は3つです。
- 間に一枚はさむ。 直接触れる面積が減ります
- 腕を体に付けて歩く時間を減らす。 カバンを腕に掛けたまま歩くと、脇が閉じたままになります
- 袖にゆとりのある一枚を選ぶ。 布と布の間に隙間があれば、こすれる回数が減ります
場所2|袖口の内側|机との間で起きること
見落とされやすい場所です。
机に腕を置いて作業すると、袖口の内側が机の面と自分の腕にはさまれます。動かなくても、圧がかかった状態が続くだけで毛羽は出ます。
さらに、袖をまくる習慣があると、折り返した部分の内と外がこすれます。いつも同じ位置で折っていると、その線に集中します。
減らす手は2つです。
- まくる位置を毎回変える。 同じ折り目を作らない
- 机に接する時間が長い日は、袖を通さない選択もある。 上に羽織るものを一枚替えるだけで変わります
場所3|腰まわり|カバンが当たる帯
肩から掛けたカバンの本体が当たる位置です。腰から少し上、体の側面に細い帯のように出ます。
ここは他の3か所と性質が違います。布と布ではなく、布と別の素材がこすれている。 カバンの素材が硬いほど、出る速さが上がります。
減らす手は3つです。
- 掛ける肩を、日によって替える。 片側に集中させない
- 本体が体に密着しない持ち方に替える。 手で持つ、前に回すなど
- 上に一枚羽織る。 当たる面を替えるだけで、下の一枚は守れます
場所4|背中|椅子の背に触れる面
座っている時間が長い人に出ます。肩甲骨の下あたりに、横に広がる形で現れます。
椅子の背もたれの素材が硬いほど、また前後に体を動かす回数が多いほど早い。
減らす手は2つです。
- 背もたれに厚みのある布を掛ける。 当たる相手を柔らかくする
- 上に羽織ったまま座る。 下の一枚を守れます
4か所を数えて、優先順位を決める
自分の一枚を明るいところで広げて、4か所を順に見てください。
| 出ている場所の数 | 何が起きているか | 先に動かすもの |
|---|---|---|
| 1か所だけ | その動作に原因が集中している | その場所の対処だけでよい |
| 2か所 | 動作の側に原因がある | 着る間隔と、当たる相手を替える |
| 3か所以上 | 生地の側の毛羽が多い | 着方より、洗い方と仕舞い方 |
| 全面に均等 | 洗いか収納で強い摩擦が起きている | 洗濯の設定と、重ね方 |
1〜2か所なら、その場所を狙えば減ります。3か所以上なら、動作を変えても追いつきません。 このとき先に見直すのは、洗い方と仕舞い方です。
休ませる日数|繊維が元の位置に戻るまで
いちばん手間がかからず、いちばん効く操作です。
着ているあいだ、繊維は押されたり引かれたりして、元の位置からずれています。脱いだあと、そのずれが戻るのに数時間から丸一日かかります。
戻りきらないうちにもう一度着ると、ずれた状態からさらに力がかかるので、毛羽が抜け出しやすくなります。
- 最低でも、間に一日はさむ
- 脱いだらすぐたたまず、ハンガーに掛けて風を通す。 戻りが早くなります
- 同じ役割の服を2〜3枚で回す。 一枚あたりの連続着用がなくなります
⚠️ これは着る回数を減らす話ではありません。 同じ回数を着ても、間隔が違えば結果が変わるという話です。
生地の側|光にかざして、毛羽の量を見る
買うときに測れる項目です。
生地を明るいほうへ斜めにかざして、面から立ち上がっている細い毛の量を見てください。
- 輪郭がはっきりして、面が平らに見える:毛羽が少ない。出るのが遅い
- 輪郭がぼやけて見える:毛羽が多い。着る回数が少ないうちから出ます
もうひとつ、指で強く数回こする方法もあります。その場で毛羽が寄り集まって小さな玉ができるなら、着用でも同じことが起きます。
短い繊維をゆるく撚った糸は毛羽が出やすく、長い繊維を強く撚った糸は出にくい。値段ではなく、この2つで判断してください。
洗い方で変わること
3か所以上に出ている一枚は、ここから見直します。
- 裏返して洗う。 外側の面が他の衣類とこすれる回数が減ります
- 袋に入れる。 袋の中で服が固まって動くので、面と面の相対的な動きが減ります
- 弱い設定を選ぶ。 回転の時間そのものを短くする
- 組み合わせを分ける。 面ファスナーのあるもの、開いたままのファスナー、タオル類と一緒に回さない
タオル類は自分から毛を出して相手に付けるので、一緒に回すと、けだまではなく他の繊維が乗った状態になります。見た目は似ていますが原因が違い、これはブラシで落ちます。
仕舞い方で変わること
意外に効きます。
重ねた圧力の下では、けだまが押し固まります。 上から重さがかかった状態で長期間置かれると、取れる側から取れない側へ移ります。
- 引き出しの中で、重い一枚の下に薄手を置かない
- 掛けて仕舞うなら、隣との間に指が入る余裕をつくる
- 圧縮する方法は、けだまが出ている一枚には使わない
仕舞う前に一度、4か所を見ておいてください。 出ているものは、その季節のうちに処理しておくほうが、翌年の状態が変わります。
薄手の一枚が、とくに出やすい理由
薄手のニットや、肌に近い位置で着る一枚は、厚手のものと同じ着方をしていても先に出ます。
理由は2つです。同じ面積を支える糸の量が少ないので、一本あたりにかかる力が大きい。 そして、腕や体の動きが直接伝わる位置で着ている。
だから、薄手の一枚では次の3つの効き目がとくに大きく出ます。
- 間に一枚はさむ
- 続けて着ない
- カバンを掛ける肩を替える
厚手で効かなかった対処が、薄手では効くことがあります。 一枚ごとに試してください。
できてしまったとき|取る回数には上限がある
処理そのものは別の判断ですが、頻度の上限だけはここで置きます。
切ると、そのたびに繊維の断面が新しく増えます。断面は毛羽の出口なので、取るほど次が早く現れます。
- 切る処理は、同じ一枚に対して季節に1回まで
- それより頻繁に気になるなら、原因側が動いていない証拠
- あいだの期間は、毛の柔らかいブラシで一方向になでて寝かせ直すだけ
ブラシは断面を増やしません。取る作業と寝かせ直す作業を分けて考えると、生地の減り方が変わります。
予防をやりすぎない線
対処を増やしすぎると、着るのが面倒になって、結局その服を着なくなります。それでは意味がありません。
線を引くならこうです。
- 1か所にしか出ていない一枚:その場所の対処だけ。他は何もしない
- 3か所以上に出ている一枚:洗い方と仕舞い方を一度だけ見直す。それで変わらなければ受け入れる
- 全面に均等に出ている一枚:生地の側の性質です。対処より、着る場面を選ぶほうが早い
けだまが出ること自体は、生地が使われている証拠でもあります。 出ない状態を目指すのではなく、出る速さを半分にすることを目標にしてください。
どちらとも取れるとき
出ている場所が2か所で、動作の側か生地の側か決めきれないことがあります。
まず、一つだけ変えて一か月見ます。 カバンを掛ける肩を替える、または間に一日はさむ。同時に複数を変えると、何が効いたのか分かりません。
次に、他の一枚と比べます。 同じ着方をしている別の服に出ていないなら、生地の側です。同じように出ているなら、動作の側です。
最後に、残りの寿命で判断します。 襟や袖口がすでに伸びていて、あと1シーズンで替えどきの一枚に、手間をかける必要はありません。手をかける価値があるのは、まだ長く着ける一枚のほうです。
まとめ|出る場所を数えてから、動かす
- けだまは全面には出ない。脇の下・袖口の内側・腰・背中の4か所に集まる
- 1〜2か所なら動作の側、3か所以上なら洗い方と仕舞い方
- 同じ一枚を続けて着ない。繊維が戻るのに丸一日かかる
- 買うときは、光にかざして毛羽の立ち上がりを見る
- 洗うときは、裏返し・袋・弱い設定・組み合わせを分けるの4つ
- 重なった圧力の下では、けだまが押し固まって取れなくなる
- 切る処理は季節に1回まで。あいだはブラシで寝かせ直す
取る技術ではなく、出る速さのほうを動かしてください。そちらのほうが、生地は長く残ります。
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— メグラシ編集部
よくある問い
- Q. けだまができやすい服とできにくい服は、買うときに見分けられますか
- 生地を明るいほうへ斜めにかざして、面から立ち上がっている細い毛の量を見てください。輪郭がぼやけて見えるほど毛羽が多い生地は、着る回数が少ないうちからけだまが出ます。輪郭がはっきりして、面が平らに見えるものは遅い。もうひとつ、生地を指で強くこすって、その場で毛羽が寄り集まるかを試す方法もあります。数回こすっただけで小さな玉ができるなら、着用でも同じことが起きます。値段ではなく、この2つで判断してください。
- Q. 同じ服を続けて着るとよくないと聞きました。何日あければいいですか
- 丸一日です。着ているあいだ、繊維は押されたり引かれたりして元の位置からずれています。脱いだあと、そのずれが戻るのに数時間から一日かかります。戻りきらないうちにもう一度着ると、ずれた状態からさらに力がかかるので、毛羽が抜け出しやすくなります。二日続けて着るくらいなら、間に一日はさむほうが、同じ着用回数でもけだまの出方が変わります。ハンガーに掛けて風を通しておくと、戻りが早くなります。
- Q. 洗濯機で洗うと、けだまが増えますか
- 回転の時間と、一緒に入れるものの組み合わせで変わります。裏返して袋に入れ、弱い設定にすると、外側の面が他の衣類とこすれる回数が減ります。避けたいのは、面ファスナーのあるもの、ファスナーを開けたままのもの、タオル類と一緒に回すこと。硬いものは毛羽を引き出し、タオル類は自分から毛を出して相手に付けます。裏返し・袋・弱い設定・組み合わせを分けるの4つで、洗いによる増加分はかなり減ります。
- Q. できてしまったけだまは、こまめに取ったほうがいいですか
- 回数に上限があります。切ると、そのたびに繊維の断面が新しく増えます。断面は毛羽の出口なので、取るほど次のけだまが早く現れます。目安として、同じ一枚に対して切る処理をするのは季節に1回まで。それより頻繁に気になるなら、原因側が動いていない証拠です。あいだの期間は、毛の柔らかいブラシで一方向になでて寝かせ直すだけにすると、断面を増やさずに見た目が落ち着きます。
- Q. 薄手のニットほどけだまが出やすいのはなぜですか
- 同じ面積を支える糸の量が少ないぶん、一本あたりにかかる力が大きくなるからです。さらに、薄手のものは肌に近い位置で着ることが多く、腕や体の動きが直接伝わります。脇の下や袖口の内側といった、布と布がこすれる場所の圧も高い。だから薄手の一枚は、厚手のものと同じ着方をしていても先にけだまが出ます。間に一枚はさむ、続けて着ない、カバンを掛ける肩を替える。この3つの効き目が、薄手ではとくに大きく出ます。
— メグラシ編集部




