ズボンの裾上げをミシンで|秋冬の厚い生地は脇の段差の枚数で決める

**裾を折った状態で、脇の縫い目の所を指でつまんでみてください。**そこで何枚の布が重なっているかが、家のミシンでそのまま縫えるかどうかの答えです。
ズボンの裾上げをミシンでやろうとして手が止まるのは、ほとんどの場合、まっすぐの部分ではありません。脇の縫い目と内股の縫い目、この2か所の上です。まっすぐの部分は表と裏の2枚を折っただけなので、三つ折りでも6枚にしかなりません。ところが脇には、もともと縫い代が左右に2枚ずつ付いています。そこを三つ折りにすると、枚数は一気に倍以上になります。
秋冬のズボンは、ウール、コーデュロイ、厚手のデニム、裏起毛と、もともと1枚が厚い生地が多くなります。春夏のズボンでは問題なく越えられた段差が、同じミシン、同じ針で越えられなくなるのはそのためです。
裾上げの方法そのものの選び分けはズボン裾上げの4つの方法の違いに、洗って縮む生地をどれだけ長めに残すかはパンツの裾上げ|洗って縮む素材は、何cm長めに残すかにまとめてあります。この記事は、ミシンで縫うと決めたあと、脇の段差をどう越えるかだけを扱います。
結論|脇の縫い目で何枚重なるかで、縫い方は3つに分かれる
先に答えを置いておきます。裾を仕上がりの形に折ったとき、脇の縫い目の上で重なる布の枚数を数えます。
6枚までなら、家のミシンで最初から最後まで直線で縫えます。特別な準備はいりません。
8枚から10枚なら、縫えます。ただし段差の手前で押さえが斜めに傾くので、押さえの後ろ側に同じ厚さの布を噛ませて水平に戻してから越えます。この一手間を省くと、段差の上で針が跳んで縫い目が飛びます。
12枚を超えたら、その場所だけはミシンで縫いません。脇の縫い目の前後2cmずつを手で縫い、残りの部分だけをミシンで縫います。家庭用のミシンで無理に越えようとすると、針が折れるか、送り歯が布を噛んだまま止まります。
枚数を数えるのに道具はいりません。指でつまんで、端をめくりながら数えれば1分で終わります。生地の厚さを測るより、ずっと正確に縫えるかどうかが分かります。
数える|裾を折って、脇の縫い目の所で何枚重なるか
数える前に、丈を決めて折り線を付けておきます。まだ決めていない場合は、靴を履いて立ち、裾が靴の甲に軽く触れる位置で、まち針を1本だけ前中心に打ちます。脱いでから、前中心のまち針の位置を基準に、一周同じ長さで折り線を付けます。
次に、仕上がりの形に折ります。三つ折りにするなら、まず端を1cm内側に折り、その上から折り線で折り上げます。二つ折りにするなら、端をジグザグで始末する前提で、折り線で1回だけ折ります。
折ったら、脇の縫い目の上を親指と人差し指でつまみます。つまんだまま、外側から1枚ずつ指先でめくって数えます。脇の縫い代が割ってある(左右に開いてアイロンで寝かせてある)ズボンなら、縫い代は左右に1枚ずつなので、三つ折りで表地3枚と縫い代が合わせて6枚、全部で8枚前後になります。縫い代が片側に倒してあるズボンなら、片側だけに縫い代が4枚重なり、10枚前後になります。
内股の縫い目も同じように数えます。デニムやチノのように内股を伏せ縫いにしてあるズボンは、内股のほうが脇より厚いことがあります。2か所のうち、多いほうの枚数を、そのズボンの枚数として扱ってください。
数えにくいときは、つまんだ部分を明るい窓にかざして、端から見ると層の線が見えます。厚手のデニムやコーデュロイは、この見方のほうが早く数えられます。
6枚までなら、そのまま直線で縫える
薄手のウールのスラックス、秋口のチノ、ポリエステル混の通勤用のズボンは、脇で6枚に収まることが多い服です。
このときは、普段の直線縫いのまま縫って構いません。縫い始めは脇の縫い目から5cmほど離れた後ろ側にします。段差を縫い始めにすると、最初の数針が安定せずに糸が絡みやすいからです。脇から離れた位置で縫い始めて、一周して戻ってきたら、縫い始めに1cmほど重ねて止めます。
段差の上では、足踏みやスピードを半分に落とします。家庭用のミシンは、速く回しているときほど段差で押さえが浮きやすく、浮いた瞬間に送りが止まって同じ場所に何針も入ります。段差に差しかかったら速度を落とし、越えたら戻す。これだけで6枚までは十分にきれいに越えられます。
6枚までの生地で目が飛ぶ場合は、段差より針の側に原因があることが多いです。針の先が丸くなっていないか、前の作業で使った細い針のままになっていないかを先に見てください。
8枚から10枚は、段差の手前で押さえを水平に保つ
ウールの厚手のスラックス、太畝のコーデュロイ、普通の厚さのデニムは、脇で8枚から10枚になります。ここが家のミシンで縫う人がいちばん多く止まる帯です。
止まる理由は、厚さそのものではなく、押さえの傾きです。押さえは前から段差に乗り上げるので、段差の手前では前が高く後ろが低い状態になります。この傾いた状態では、押さえが布を下に押す力が弱まり、送り歯が布を運べなくなります。結果として、同じ場所に針が落ち続けるか、針が布を突き抜けられずに跳ねます。
対処は、押さえの後ろ側に同じ高さの台を作ることです。縫っている裾と同じ生地の端切れ、なければ厚紙を、段差と同じ厚さになるまで重ねて、押さえの後ろ半分の下に差し込みます。押さえが水平に戻ったら、針を手で回して1針ずつ段差の上を越えます。越えたら今度は押さえの前側が下がるので、端切れを前側に移して、また水平にして数針進めます。
ミシンに押さえの角度を固定するボタンが付いているなら、段差の手前でそれを押してから越えると、端切れなしでも水平が保てます。付いていない機種のほうが多いので、端切れを1枚用意しておくのが確実です。
もう一つ効くのが、段差そのものを薄くすることです。脇の縫い代が厚く盛り上がっているときは、縫う前に当て布をして、アイロンで強めに押さえておきます。デニムのように硬い生地なら、当て布の上から木づちや金づちの平らな面で軽く叩くと、繊維がつぶれて層が締まります。叩くのは裾の脇の数cmだけで十分です。
12枚を超えたら、ミシンでは縫わない部分を作る
厚手のデニム、裏起毛のパンツ、ウールの裏地付きのズボンは、脇で12枚を超えることがあります。デニムの内股の伏せ縫いの上は、14枚から16枚になることもあります。
ここまで重なると、家庭用のミシンで越えられるかどうかは機種によりますが、越えられたとしても針に大きな負担がかかります。針が曲がったまま次の針目に入ると、釜の部分を傷つけることもあります。
この帯では、最初から「ミシンで縫わない場所」を決めておきます。脇の縫い目と内股の縫い目、それぞれの前後2cmずつです。この合わせて4cmを2か所、計8cmだけを手で縫い、残りの部分をミシンで縫います。
縫う順番は、ミシンが先です。脇の手前2cmで止めて糸を長めに残し、反対側の脇の手前2cmから再開します。一周したら、残した糸を使って、手縫いの区間を同じ糸で埋めます。表に縫い目を出すズボンなら、手縫いの区間も表から見える針目の長さをミシンと揃えて、並縫いではなく返し縫いで縫います。表から見ると、ミシンの縫い目と見分けがつかない程度に揃えられます。
この方法なら、ミシンにも針にも無理をかけずに済みます。8cmの手縫いは、慣れていなくても10分あれば終わります。
秋冬の生地ごとに、段差が増える場所が違う
秋冬のズボンの生地は、段差の出方がそれぞれ違います。ここでは、縫う前に知っておくと止まらずに済む点を生地ごとに書きます。
ウールのスラックスは、1枚は薄くても毛足があるので、重なるとふくらみます。アイロンで押さえると半分近くまで沈むので、縫う前に必ず当て布をしてアイロンで折り山を固めてください。スチームを当てて折り線を付けておくと、縫っている間に折り幅がずれません。
コーデュロイは、畝の向きで押さえの滑り方が変わります。畝に沿って縫う方向は滑りやすく、畝を横切る方向は引っかかります。裾は畝を横切る方向に縫うことになるので、押さえの圧を少し弱められる機種なら弱めると、畝がつぶれずに済みます。太畝ほど段差が高くなるので、8枚でも10枚の扱いにしてください。
厚手のデニムは、脇よりも内股が厚いことが多い生地です。伏せ縫いの上は折る前から4枚重なっているので、三つ折りにすると12枚になります。デニムは叩くと締まる生地なので、内股だけは縫う前に叩いておく価値があります。
裏起毛のパンツは、起毛が層と層の間で滑らず、押さえの下で布が送られにくくなります。段差の高さだけでなく、送りの重さも増えるので、縫い目の長さを普段より半段長くすると進みやすくなります。起毛をつぶしたくないなら、アイロンは表から当て布をして軽くかける程度にします。
裏地付きのズボンは、表地と裏地を別々に仕上げるのが基本です。裏地は表地より1cmから2cm短く仕上げ、裏地の裾は本体に縫い留めずに、脇だけで糸ループでつなぎます。表地と裏地を一緒に三つ折りにして縫うと、脇の枚数が増えるうえ、歩いたときに裏地が突っ張ります。
針と糸は、布の枚数ではなく一番厚い所で選ぶ
針と糸は、まっすぐの部分の厚さではなく、脇の段差の厚さに合わせて選びます。まっすぐの部分に合わせると、段差の上で針が負けて目が飛びます。
| 脇の枚数 | 針の太さ | 糸の太さ |
|---|---|---|
| 6枚まで | 普通地用(11番) | 普通地用(60番) |
| 8〜10枚 | 厚地用(14番) | 普通地用か厚地用(30〜60番) |
| 12枚以上 | 厚地用(16番)、手縫い区間を作る | 厚地用(30番) |
針の太さは、数字が大きくなるほど太くなります。デニム用と書かれた針は先が鋭く、目の詰まった生地を突き抜けやすくなっています。デニム以外の厚手の生地にも使えます。
糸は、表に縫い目を出すかどうかで太さを変えます。表に出すなら、厚地用の太い糸のほうが縫い目がはっきりして、元の縫製と並べたときに馴染みます。表に出さないなら、普通地用の細い糸のほうが目立ちません。
針は、縫い始める前に必ず新しいものに替えてください。前の作業で使った針は、先端がわずかに丸くなっていることが多く、厚手の段差で最初に負けるのはその針です。
縫い目の長さは、表に出すか出さないかで変える
縫い目の長さは、表から見える仕上げにするかどうかで決めます。
表に縫い目を出すズボン、つまりデニムやチノ、カジュアルなコーデュロイは、元の裾の縫い目の長さに揃えます。裾を折り上げる前に、元の裾の縫い目を1cmの中に何針入っているか数えておきます。1cmに3針なら約3.3mm、4針なら2.5mmです。ミシンの縫い目の長さをそれに合わせると、元の縫製と並べたときに違和感が出ません。
表に縫い目を出さないズボン、つまりスラックスやきれいめのウールパンツは、ミシンだけで仕上げるのが難しい服です。ミシンにまつり縫い用の押さえと模様があればそれを使い、なければ端の始末だけをミシンでやって、本体への留めは手でまつります。
どうしてもミシンの直線で留めたいなら、縫い目の長さを3.5mm前後まで伸ばし、上糸を生地の色より半段暗い色にします。縫い目が長くて色が沈んでいると、表から見たときに線が細い影のように見え、目立ちにくくなります。
三つ折りか二つ折りか|ほつれる生地と厚い生地で分かれる
折り方は、生地がほつれやすいかと、生地が厚いかの2つで決めます。
ほつれやすくて薄い生地、たとえば織りの粗いウールや、薄手のコットンは、三つ折りが向いています。端を内側に巻き込むので、ジグザグなどの始末がいりません。
ほつれにくくて厚い生地、たとえば厚手のデニムや、裏起毛のパンツは、二つ折りが向いています。三つ折りにすると脇で12枚を超えやすいので、二つ折りにして端をジグザグで始末します。二つ折りなら、脇の枚数は三つ折りの3分の2程度に減ります。
迷うのは、ほつれやすくて厚い生地です。ツイードやざっくりしたウール、厚手のコーデュロイがここに入ります。この場合は、端だけを1cmほど細く折り、その上から折り線で折る「端だけ三つ折り」にします。普通の三つ折りより1枚分少なくなり、端も巻き込まれます。脇でだけ枚数を減らしたいときは、脇の縫い代の端を斜めに切り落としてから折ると、さらに1〜2枚分薄くなります。
どちらとも取れるとき|段差は越えたのに、目が飛んだ
段差の手前で押さえを水平にして、針も厚地用に替えた。それでも段差の上で縫い目が1〜2針飛ぶことがあります。このときは、次の3つを順に確かめてください。
1つ目は、上糸の調子です。厚い所では、上糸が引っ張られすぎて、下糸との結び目ができる前に針が上がってしまうことがあります。上糸の調子のダイヤルを、普段より1段弱めて、段差の上だけを試し縫いしてください。
2つ目は、針の向きです。厚い生地を縫うと、針がわずかにたわみます。たわんだ状態で釜の近くを通ると、糸を拾い損ねます。針が奥まで差し込まれているか、平らな面の向きが正しいかを見直します。
3つ目は、速度です。8枚から10枚の段差は、手で針を回して1針ずつ越えるのがいちばん確実です。足踏みで越えようとすると、どうしても勢いがつきます。
この3つを確かめても飛ぶなら、そのミシンにとってその段差は限界を超えています。12枚以上の扱いに切り替えて、段差の前後だけ手縫いにしてください。
どちらとも取れるとき|表に縫い目を出したくないが、手まつりの時間が無い
スラックスの裾を、手でまつる時間はないけれど、表に直線の縫い目を出したくない。この場合は、仕上げの見え方と時間のどちらを優先するかを先に決めます。
時間を優先するなら、裾上げテープを使います。アイロンで貼るテープは、表に縫い目が出ず、15分程度で終わります。ただし、ウールのスラックスに使うと、洗ったり蒸気を当てたりしたときに剥がれやすくなります。秋冬に毎週クリーニングに出すズボンなら、テープは仮留めと割り切ってください。
見え方を優先するなら、ミシンでまつり縫いの模様を使います。専用の押さえがなくても、模様が入っている機種は多いので、取扱説明書の模様の一覧を見てみてください。押さえがない場合は、折り山を手前に少しだけ出して、模様の横に振れる針が折り山をわずかに拾うように位置を合わせます。最初の数cmは試し布で練習してから本番に入ります。
両方を半分ずつにする方法もあります。前側の、人から見える半周だけを手でまつり、後ろ側の半周をミシンの直線で留める。歩いているときに見られるのは前と横なので、後ろが直線でも気づかれることはほとんどありません。
どちらとも取れるとき|筒がミシンの腕に入らない
裾を筒のまま縫うには、ミシンの腕(フリーアーム)に裾を通す必要があります。ところが、細いズボンは腕に入らず、太いズボンは入っても回しにくいことがあります。
ここで測るのは2つです。裾の一周の長さと、ミシンの腕の一周の長さです。腕の一周は、メジャーを腕に巻きつけて測ります。
裾の一周が腕の一周より5cm以上長ければ、筒のまま腕に通して縫えます。回すたびに生地が突っ張らず、縫い目もまっすぐになります。
差が5cmより小さいと、腕には入っても、縫い進めるたびに筒が腕にこすれて引っ張られ、縫い目が曲がります。この場合は腕を使わず、平らな台の上で、筒の内側から縫います。裾を裏返し、内側を上にして押さえの下に入れ、縫い進めながら残りの部分を手前に送ります。筒の反対側の布を一緒に縫い込まないように、左手で下の布を常に押し下げながら進めてください。
裾幅が広いワイドパンツでは逆に、筒が大きすぎて重さで垂れ下がり、送りが不安定になります。縫っている間、筒の残りを机の上に乗せて重さを逃がすと、送りが安定します。
縫う前に、丈と折り幅をもう一度確かめる
脇の段差に気を取られていると、丈の確認を飛ばしがちです。ミシンの前に座る前に、もう一度だけ確かめてください。
確かめるのは、左右の脚で丈が揃っているかと、折り幅が一周で揃っているかの2つです。丈は、ズボンを二つ折りにして左右の裾を重ね、端が揃っているかで見ます。折り幅は、脇・前中心・内股・後ろ中心の4か所で、折り山から端までをメジャーで測ります。4か所の差が3mm以内なら、そのまま縫って構いません。それ以上ずれていたら、ずれている場所だけ折り直します。
秋冬のズボンは、タイツや厚手の靴下と合わせることを前提に丈を決めます。素足や薄い靴下で丈を決めると、厚い靴下を履いたときに裾が持ち上がって短く見えます。丈を決めるときは、その冬いちばん履くつもりの靴と靴下で立ってください。
失敗したときの戻し方
縫い目が曲がった、段差の上で糸が絡んだ、丈を間違えた。どれも、一度ほどいてやり直せます。
ほどくときは、表から見える糸を3〜4cmおきに糸切りばさみで切り、裏から下糸を引きます。上糸と下糸を両方引っ張ると生地が縮むので、片方を切ってからもう片方を引くのがこつです。段差の上で絡んだ糸は、無理に引かず、絡んだ部分の糸を細かく切ってから、ピンセットで抜きます。
ほどいたあとの針穴は、生地によって残り方が違います。ウールとコットンは、スチームを当てると針穴がほとんど閉じます。ポリエステルの比率が高い生地や、表面に光沢のある生地は、針穴が残りやすい生地です。こうした生地は、最初の1周を縫い目の長さを長めにして仮縫いし、仕上がりを確かめてから本縫いすると、やり直しの跡を減らせます。
お店に頼むほうがいい3つの場合
家のミシンで十分に仕上がるズボンは多いのですが、次の3つに当てはまるなら、お店に頼むほうが仕上がりが安定します。
1つ目は、脇の重なりが12枚を超え、しかも表に縫い目を出さない仕上げにしたい場合です。手縫いの区間と見えない仕上げを両立させるのは、慣れていないと時間がかかります。
2つ目は、裏地が付いていて、表地と裏地を別々の長さに仕上げる必要がある場合です。裏地の丈を間違えると、歩くたびに裏地が裾から覗くか、表地が引っ張られて裾が上がります。
3つ目は、裾にすでにダブルの折り返しやスリット、ボタンが付いている場合です。こうした裾は、元の形を一度ほどいてから組み直す作業になり、折り幅の計算も変わります。
どれにも当てはまらず、表に縫い目が出てもよいズボンなら、家のミシンで十分にきれいに仕上がります。最初の1本は、脇の枚数が6枚に収まる薄手のズボンで試してから、厚手のズボンに進むと失敗が少なくなります。
縫い終わったら、段差の上だけを確かめる
縫い終わったら、まず脇の段差の上を表と裏の両方から見てください。縫い目が飛んでいないか、糸が浮いていないか、段差の前後で縫い目の長さが揃っているか。
次に、当て布をしてアイロンをかけます。ウールはスチームを当てて、折り山を手のひらで押さえて冷ますと、折り線がしっかり付きます。デニムやコーデュロイは、裏から高めの温度でかけます。裏起毛は、起毛側に当て布を厚めにしてかけ、起毛をつぶさないようにします。
最後に、靴を履いて立って、鏡で横から裾の落ち方を見ます。脇の段差のところだけ裾が外に跳ねていたら、段差の縫い代が厚すぎて裾が外側に押されています。その場合は、脇の縫い代を内側から斜めに切り落とし、もう一度アイロンで押さえると落ち着きます。
縫い始める前に、手元に揃えておくもの
ミシンの前に座ってから道具を探しに立つと、そのたびに折り幅がずれたり、まち針が抜けたりします。厚手の秋冬のズボンを縫う日は、次のものを先に手元に揃えておいてください。
針は、普通地用と厚地用を1本ずつ、新しいものを用意します。どちらを使うかは脇の枚数で決まりますが、縫っている途中で目が飛んだときに、すぐ太い針に替えられるようにしておくためです。
糸は、上糸と下糸を同じ色で揃えます。下糸を巻くのを後回しにすると、段差の途中で下糸が切れたときに、そこから縫い直すことになります。厚手のズボンは下糸の減りが早いので、1本縫う前に下糸を満タンにしておくと安心です。
端切れは、縫う生地と同じ厚さのものを2〜3枚用意します。押さえを水平に保つために使うものです。手元に同じ生地がなければ、厚紙を細長く切ったものでも代わりになります。
ほかに、まち針の代わりに使うクリップ、当て布、メジャー、糸切りばさみ、それにアイロンを近くに置いておきます。厚手の生地はまち針が刺さりにくく、刺さっても段差の上で押さえに当たるので、洗濯ばさみのような小さなクリップで折り山を留めるほうが、縫いながら外しやすくなります。
試し縫いは、端切れを重ねて段差を作ってから
本番の裾に針を入れる前に、試し縫いをしておくと失敗が減ります。ただし、端切れを1枚か2枚重ねて縫うだけの試し縫いでは、まっすぐの部分の確かめにしかなりません。
試し縫いでは、実際の脇と同じ枚数になるまで端切れを重ね、その途中に段差を作ります。たとえば、4枚重ねた端切れの真ん中に、さらに6枚重ねた部分を作れば、6枚から10枚に上がって6枚に下がる段差ができます。その段差を、本番と同じ針、同じ糸、同じ縫い目の長さで越えてみてください。
段差の上で目が飛ばずに越えられたら、本番でもほぼ同じように越えられます。目が飛んだら、針を太くする、上糸の調子を弱める、端切れで押さえを水平に保つ、のどれかを試してから、もう一度同じ段差を縫います。試し縫いの段差で越え方が決まってから本番に入ると、裾の上でほどき直す回数がほとんどなくなります。
何本かまとめて縫う日は、薄いほうから順に縫う
衣替えのあとは、秋冬のズボンを何本かまとめて裾上げすることがあります。このときは、脇の枚数が少ないズボンから順に縫ってください。
理由は、針と糸の替え方にあります。6枚までのズボンを普通地用の針で縫い、次に8枚から10枚のズボンに移るときに厚地用の針に替え、最後に12枚以上のズボンを縫う。この順番なら、針を替えるのは2回で済みます。逆の順番で縫うと、厚地用の針で薄い生地を縫うことになり、針穴が大きく目立ってしまいます。
糸も同じ考え方です。表に縫い目を出すズボンと出さないズボンが混ざっているなら、出さないズボンを先に細い糸でまとめて縫い、出すズボンを後から太い糸で縫います。糸を替えるたびに上糸と下糸の両方を替えることになるので、替える回数を減らすだけで作業時間が半分近くになります。
もう一つ、まとめて縫う日は、1本縫い終えるごとにミシンの針の下の糸くずを払ってください。厚手のウールやコーデュロイは、縫っている間に細かい毛が出て、送り歯の間にたまります。たまったまま次のズボンを縫うと、送りが重くなって、段差の手前で止まりやすくなります。
縫ったあとの最初の洗濯で、段差の上を見る
家で裾上げしたズボンは、最初の洗濯のあとに、脇の段差の上だけをもう一度確かめてください。
洗うと、縫い目の糸と生地がそれぞれ少しずつ縮みます。脇の段差の上は、縫い目が布に深く食い込んでいるので、ほかの場所より糸が引っ張られやすく、糸が切れていたり、縫い目が浮いていたりすることがあります。
もし段差の上で糸が切れていたら、その部分だけを手で縫い直します。前後1cmずつ元の縫い目に重ねて縫い、糸の端を裏で結んで止めます。ミシンで縫い直すと、もう一度段差を越えることになるので、手縫いのほうが早くて確実です。
ウールのスラックスはクリーニングに出すことが多いと思いますが、家で縫った裾は、受け取ったあとに同じように確かめてください。プレスの熱と圧で、段差の上の糸が切れていることがあります。
裾直しを自分でやるかを決める、最後の目安
ここまでの内容を、自分でやるかどうかの判断にまとめます。
脇の枚数が10枚以内で、表に縫い目が出てもよいズボンなら、家のミシンで最初から最後まで仕上げられます。脇の枚数が12枚を超えていても、表に縫い目が出てよいなら、段差の前後だけ手縫いにして仕上げられます。表に縫い目を出したくないズボンは、まつり縫いの模様か手まつりが必要になるので、時間を取れる日にだけ自分でやります。
迷ったときは、ズボンを1本だけ、片足だけ縫ってみてください。片足を縫い終えたところで、脇の段差がきれいに越えられたか、縫い目の長さが揃っているか、表から見て気にならないかを確かめます。3つとも大丈夫なら、もう片足とほかのズボンに進みます。1つでも気になるなら、そこで止めて、ほどいてお店に持って行っても、生地はほとんど傷んでいません。
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よくある問い
- Q. 家庭用のミシンで、厚手のデニムの裾上げはできますか
- まっすぐの部分はほとんどの家庭用ミシンで縫えます。止まるのは脇の縫い目と、内股の縫い目が重なる2か所です。裾を三つ折りにした状態で、その2か所を指でつまんで枚数を数えてください。10枚までなら、段差の手前で押さえの後ろに同じ厚さの布を噛ませて水平にすると越えられます。12枚を超えるなら、その2か所の前後2cmずつだけを手で縫い、残りをミシンで縫うほうが針も機械も傷めません。全部をミシンで通そうとしないことが、厚手のデニムを家で仕上げるいちばんの近道です。
- Q. ウールのスラックスの裾をミシンで縫うと、表に線が出てしまいます
- スラックスの裾は、表に縫い目を出さない仕上げが前提になっていることが多い服です。ミシンで縫う場合は、裾を二つ折りにして端をジグザグで始末し、本体への留めは手でまつるか、ミシンにまつり縫いの押さえと模様があればそれを使います。どちらもない場合、直線で縫うなら縫い目の長さを3.5mm前後に伸ばし、上糸を生地の色より半段暗い色にすると線が沈みます。それでも気になるなら、そのスラックスだけはお店に頼むほうが早いです。ウールは針穴が戻りやすいので、一度縫ってみて気に入らなければ、ほどいてやり直しても跡はほとんど残りません。
- Q. 裾幅が広いズボンや、細いズボンがミシンの腕に通りません
- 裾の一周の長さを測って、ミシンの腕(フリーアーム)の一周と比べてください。裾の一周が腕の一周より5cm以上長ければ、筒のまま腕に通して回しながら縫えます。差が5cmより小さいと、回すたびに生地が突っ張って縫い目が曲がります。その場合は腕に通さず、平らな台の上で筒の内側から縫います。裾を裏返して内側を上にし、片側ずつ押さえの下に入れて、縫い進めながら残りを手前に送ります。細いズボンほど、この内側から縫うやり方のほうがきれいにまとまります。
- Q. 縫い終わってから丈が違うと気づいたら、どうすればいいですか
- 短すぎた場合は、折り代が残っていれば一度ほどいて折り幅を狭くし、縫い直せます。三つ折りで4cm取っていたなら、二つ折りに変えると1.5cm程度は戻ります。長すぎた場合は、ほどかずに上からもう一段折り上げて縫うのではなく、必ず一度ほどいてから折り直してください。重ねて縫うと脇の段差がさらに増え、次に縫うときにミシンが止まります。ほどくときは、表側の糸を数cmおきに切ってから裏の糸を引くと、生地を傷めずに早く抜けます。
- Q. 自分でやるか、お店に頼むかの目安はありますか
- 脇の重なりが12枚を超える、裏地が付いていて表地と裏地を別々の長さに仕上げる必要がある、裾にすでにダブルの折り返しやスリットが付いている。この3つのどれかに当てはまるなら、お店に頼むほうが仕上がりが安定します。どれにも当てはまらず、表に縫い目が出てもよいズボンなら、家のミシンで十分に仕上がります。迷うときは、まず片方の脚だけ縫ってみて、脇の段差がきれいに越えられたかを見てから、もう片方に進んでください。
— メグラシ編集部





