ジャケット・アウターの種類12種を図で見比べる──名前と見分けどころ

「ジャケットとブルゾン、どこで線を引くのかしら」。「ステンカラーとチェスター、タグの名前は違うのに、写真ではどこが違うのかわからない」。アウターは、服のなかでいちばん名前の多いカテゴリです。しかも、その名前がどれも同じ種類の情報を指していないので、覚えようとするほど混乱します。
けれど、混乱の原因はひとつだけです。アウターの名前には、まったく別の4つの軸が混ざっているのです。襟の形から付いた名前、何でどう作るかから付いた名前、丈とシルエットから付いた名前、そして生まれた場所や用途から付いた名前。この4つが同じ棚に並んでいるので、比べようとしても比べられません。
だからこの記事は、最初にその整理を置きます。名前の軸がわかったら、12種類の形を一枚の図で見比べて、それぞれの見分けどころを一言ずつ。後半では、混同しやすいチェスターとステンカラーの違い、「定義」で探されることの多いトレンチコートの成り立ち、丈と体型の関係、骨格タイプ別の似合わせ、気温の目安、そして通勤に向くものと向かないものまでたどります。
アウター12種を一枚で見比べる
名前を覚えるより先に、形を目で覚えてしまうほうが早いものです。並び順にも意味があります。はじめの3つは襟の形を指す呼び名、次の3つは素材と作りを指す呼び名、続く3つは丈と形を指す呼び名、最後の3つは由来を指す呼び名です。
ジャケット・アウター12種を一枚で見比べる
アウターの名前は「襟」「素材と作り」「丈と形」「由来」の4種類が混ざっています。

テーラードジャケット

ノーカラージャケット

ステンカラーコート

ライダースジャケット

デニムジャケット

ダウンジャケット

チェスターコート

ガウンコート

ブルゾン

トレンチコート

ピーコート

モッズコート
アウターの家族分け
襟の仲間
襟の形から付いた名前

テーラードジャケット

ノーカラージャケット

ステンカラーコート
素材と作りの仲間
何でどう作るかから付いた名前

ライダースジャケット

デニムジャケット

ダウンジャケット
丈と形の仲間
シルエットから付いた名前

チェスターコート

ガウンコート

ブルゾン
由来の仲間
もとの用途や文化から付いた名前

トレンチコート

ピーコート

モッズコート
名前が何を指しているかが分かると、店頭の表示が読めるようになります。
襟の名前と丈の名前は、同じ一着に両方使われます。
名前が指しているものは、4種類ある
この記事の背骨はここです。アウターの名前を並べても混乱するのは、4つの違う軸の言葉が同じ列に並んでいるからでした。順番に見ていきます。
ひとつめは、襟の名前です。テーラードジャケット、ノーカラージャケット、ステンカラーコート。この3つが指しているのは、首元がどうなっているかという一点だけです。丈も素材も、この名前は何も言っていません。だから「ロング丈のステンカラーコート」も「薄手のノーカラージャケット」も、矛盾なく成立します。
ふたつめは、素材と作りの名前です。ライダースジャケット、デニムジャケット、ダウンジャケット。革で作る、デニムで作る、羽毛を詰める。何でどう作るかが名前になっています。だからこちらも、襟の形や丈は名前からは決まりません。ノーカラーのライダースもあれば、ロング丈のダウンもあります。
みっつめは、丈と形の名前です。チェスターコート、ガウンコート、ブルゾン。輪郭がどうなっているかを指しています。チェスターは膝下まで直線的に落ち、ガウンは前を留めずに羽織り、ブルゾンは裾と袖口を絞って上に膨らみを作る。シルエットそのものが名前になっている仲間です。
よっつめは、由来の名前です。トレンチコート、ピーコート、モッズコート。もともとどこで何のために着られていたか、あるいはどの文化で広まったかが、そのまま名前になりました。この仲間は、由来にひもづく特徴的なディテールを持っていることがほとんどなので、実は判別がいちばん簡単です。ベルトがあるか、二列のボタンか、フードと絞りひもか。
軸が違うということは、重ねて使えるということでもあります。「ノーカラーのダウンコート」も「ロング丈のトレンチコート」も、日本語として矛盾していません。店頭のタグに複数の言葉が並んでいたら、それぞれがどの軸の話をしているかを分けて読むと、意味が通ります。
早見表:12種の見分けどころを一言で
買い物の途中で見返すなら、ここだけで足ります。見分けどころは、1種類につき1つに絞りました。迷ったら、そのひとつだけを確認してください。
| アウター | 名前の軸 | 見分けどころ(ここだけ見る) |
|---|---|---|
| テーラードジャケット | 襟 | 上襟と下襟が分かれていて、胸元にV字ができる |
| ノーカラージャケット | 襟 | 襟がない。首の周りが縁取りだけで終わる |
| ステンカラーコート | 襟 | 一枚襟の後ろが高く、前に向かって低く倒れる |
| ライダースジャケット | 素材と作り | 前のジップが斜めに走る。革または革調の素材 |
| デニムジャケット | 素材と作り | 胸の切り替え線(ヨーク)と胸ポケットがある |
| ダウンジャケット | 素材と作り | 横に走るキルティングの区切りでふくらむ |
| チェスターコート | 丈と形 | 仕立て襟のまま、膝下まで直線的に落ちる |
| ガウンコート | 丈と形 | ボタンがなく、ベルトを結ぶか前を開けて羽織る |
| ブルゾン | 丈と形 | 裾と袖口がリブで絞られ、上に膨らみが出る |
| トレンチコート | 由来 | ベルト・肩当て・二重の打ち合わせの3点セット |
| ピーコート | 由来 | 太く大きな返り襟と、前を覆う二列のボタン |
| モッズコート | 由来 | フードがあり、腰や裾に絞りひもが通っている |
こうして並べると、判別に使っている場所が種類ごとに違うことがわかります。襟の仲間は首元、素材と作りの仲間は生地と表面、丈と形の仲間は全体の輪郭、由来の仲間は付属のディテール。見る場所を先に決めてから写真を見ると、判断がぐっと速くなります。
各アウターの特徴と見分けどころ
ここからは1種類ずつ見ていきます。探されることの多い形には、その形だけを抜き出した図を添えました。
テーラードジャケット
見分けどころは、下襟があることです。首の後ろから続く上襟と、胸元に向かって折り返る下襟が、縫い目で分かれている。この構造が「仕立て襟」で、前を開けたときに胸元にV字の開きができます。
印象は、端正できちんとした感じ。もともと紳士服の仕立てから来ている形なので、着るだけで場が少し改まります。肩に芯や小さなパッドが入っているものが多く、肩の線がまっすぐ出るのも特徴です。
ボタンは一列(シングル)と二列(ダブル)があり、一列のほうが軽く、二列のほうが格式が上がります。丈は腰骨のあたりで終わるものが標準で、これより長くなると印象が重くなります。
合わせやすいのは、首元がすっきりしたトップス。V字の開きに詰まった襟を重ねると首が窮屈に見えるので、開きのある形が馴染みます。首元の形ごとの違いはネックラインの種類にまとめました。
ノーカラージャケット
見分けどころは、襟がないことです。首のまわりが細い縁取りで終わっていて、立ち上がる布も折り返る布もありません。丸い衿ぐりのものが多く、四角く開いたもの、少しV字に開いたものもあります。
印象はやわらかく、軽やか。テーラードにある「仕事着の記号」が消えるぶん、私服にも寄せやすくなります。首が詰まって見えやすい方、肩まわりに厚みのある方にとって、襟の厚みがひとつ減ることは意外に大きな違いになります。
中に着るものを選ばないのも強みです。襟のあるシャツを重ねても衝突せず、タートルネックを重ねても首が渋滞しません。この自由度の高さが、この形の使いどころです。
丈は短めが多く、腰骨のあたりで終わります。中に着るトップスの丈がジャケットより長いと、下だけがはみ出して見えることがあるので、そこだけ鏡で確かめておくと安心です。
ステンカラーコート
見分けどころは、一枚の襟の後ろが高く、前に向かって低くなることです。首の後ろで襟が立ち上がり、肩に向かってなだらかに倒れていく。テーラードのように上襟と下襟が分かれていないので、前を開けても胸元にV字ができません。
前を留めれば首が包まれて防寒になり、開ければ襟が寝て顔まわりが軽くなる。ひとつの襟で二つの表情を持てるのが、この形の便利なところです。
もとは英国の軍用外套に由来する形といわれ、日本ではバルカラーコートという呼び方や、素材の名前から取ったステンカラーという呼び方が並んで使われています。呼び方には幅があるので、店の表記が違っても同じ形を指していることがあります。
癖の少ない輪郭なので、通勤にも私服にも寄せられます。薄手のものは春と秋の羽織りに、ライナーの付くものは冬まで使えます。迷ったときに買って後悔しにくい、静かな一着です。
ライダースジャケット
見分けどころは、前のジップが斜めに走ることです。まっすぐ縦に下りるのではなく、胸元から腰に向かって斜めに開く。この構造は「ダブルライダース」と呼ばれる形の特徴で、襟も片側に大きく折り返ります。ジップが真ん中をまっすぐ下りるシングルライダースもあり、こちらは襟が小さいか、襟のない立ち襟になっています。
素材は革または革調の合成素材が中心です。表面に光沢があり、生地が体に沿って落ちるので、輪郭がはっきりします。
印象は硬質で、少し攻めた感じ。全身の中で強い一点になるので、他をやわらかくすると釣り合います。スカートやワンピースの上に羽織ると、甘さが引き算されてちょうどよくなることが多いものです。組み合わせを考えるときはスカートの種類も見比べてみてください。
丈は腰より短いものが多く、ウエストの位置が高く見えます。重心が上がるので、下半身に長さのあるボトムスと相性がよい形です。
デニムジャケット
見分けどころは、胸のあたりを横切る切り替え線と、その下にある左右の胸ポケットです。この切り替えはヨークと呼ばれ、デニムジャケットの顔になっています。裾には幅を調整する留め具が付いていることが多く、袖口も同じように調整できます。
素材はデニム、つまり綿の厚手の生地です。洗うほど色が落ちて表情が変わるので、着るほどに手に馴染む性格を持っています。
印象は素直でカジュアル。改まった場には向きませんが、日常のほとんどの場面で使えます。丈は腰より上で終わるものが標準で、重心が上がるので、長い丈のスカートやワイドなパンツと合わせやすい形です。パンツとの組み合わせはパンツの種類にまとめました。
薄手のものは春と秋の羽織りに、裏起毛のものは冬の中間着にもなります。一枚で寒い季節は、中にニットを重ねるか、上にコートを重ねる使い方が現実的です。
ダウンジャケット
見分けどころは、横に走るキルティングの区切りです。中に詰めた羽毛が偏らないよう、生地を格子や横縞に縫い止めてある。この縫い目の線が、そのまま見た目の特徴になっています。
暖かさの理由は、羽毛が空気を抱えこむことにあります。だから、詰め物が多いほどふくらみ、ふくらむほど暖かい。そのかわり、輪郭は横に大きくなります。
近年は詰め物を薄くして、輪郭を細く保つタイプも増えました。真冬の外にいる時間が長いならふくらみのあるもの、通勤の行き帰りだけなら薄手のもの、と使う時間で選び分けると失敗が減ります。
合わせるボトムスは、細めのほうが釣り合います。上に量があるので、下も広いと全身が丸くなりがちです。丈は腰丈から膝下まで幅があり、長いほど暖かく、短いほど動きやすくなります。
チェスターコート
見分けどころは、テーラードジャケットと同じ仕立て襟のまま、丈が膝下まで伸びていることです。上襟と下襟が分かれていて、胸元にV字ができる。その状態で全身が縦に長く落ちるので、輪郭が直線的にまとまります。
名前の由来には諸説あり、英国の伯爵の名にちなむと言われていますが、確かなところははっきりしません。日本では丈の長い仕立て襟のコートを広くこう呼ぶ習慣が定着しています。
印象は端正で、都会的。縦の線が長く通るので、全身がすっきり見えるのがこの形のいちばんの強みです。中はニットでもシャツでも受け止めますが、V字の開きに合わせて首元をすっきりさせると、線がつながります。
素材はウールやウール混が中心で、厚みがあるほど暖かく、薄いほど春秋向きになります。前を開けて羽織ると縦の線が二重になり、留めると一本の柱のような輪郭になります。その日の気分で切り替えられるのも便利なところです。
ガウンコート
見分けどころは、ボタンなどの留め具がないことです。前を合わせる方法がベルトを結ぶか、そのまま羽織るかしかない。部屋着のガウンから発想された形なので、体を締めつける構造を持ちません。
印象はやわらかく、リラックスした感じ。肩の線もゆるやかで、全体が布に包まれるような輪郭になります。中に厚手のニットを着ても窮屈にならないのは、この構造ゆえです。
前を開けて着ると、体の中心に縦の線が二本できます。この線が全身を縦に割るので、意外にすっきり見えます。ベルトを結べば腰の位置が決まり、印象が引き締まります。
風の強い日と寒い日には、前が閉まらないぶん心もとない一着です。真冬の主力にはしにくいので、秋と春、あるいは冬の室内移動が中心の日に選ぶと持ち味が生きます。
ブルゾン
見分けどころは、裾と袖口がリブで絞られていることです。絞られているぶん、胴のあたりに空気がたまって上に膨らみが出ます。この「絞って膨らませる」構造が、ブルゾンという呼び名の中身です。
丈は腰より上で終わるものが標準です。重心が上がるので、脚が長く見えやすい。素材はナイロン、綿、スエードなど幅広く、素材が変わると印象もかなり変わります。
ブルゾンとジャンパー、ブルゾンとジャケット。どこで線を引くかは店によって違い、呼び方には幅があります。裾のリブがあるかどうかを見るのが、いちばん判別しやすい方法です。
印象は軽快で、日常寄り。動きを妨げないので、たくさん歩く日や子どもと過ごす日に頼りになります。中に厚手を着るとさらに膨らむので、下半身は細めにすると釣り合います。
トレンチコート
見分けどころは、3点セットです。ウエストを結ぶベルト、肩の上に重なった布、そして前を深く重ねる二列のボタン。この3つがそろっていれば、丈や素材が違ってもトレンチコートと呼ばれることがほとんどです。
なぜこの3つがあるのか。もとが軍用の防水コートだったからだといわれます。名前の由来は、塹壕を意味する英語のトレンチ。第一次世界大戦のころ、雨と泥のなかで長時間を過ごす将校のために作られた外套が原型とされています。
ベルトは風の吹き込みを止めるため。肩の上に重ねた布は、雨が肩から流れ落ちるようにするためと、装備を掛けるためだったといわれます。二列に深く重ねる打ち合わせも、正面からの風雨を防ぐための構造です。背中の上部にもう一枚布が重なっているものがありますが、これも雨を流すための仕組みだったと言われています。
つまり、トレンチコートの特徴はすべて機能から生まれています。いま私たちが「格好いい」と感じているディテールは、もとをたどれば全部が実用の跡です。細部の由来については諸説あり、断定できない部分もありますが、防水の軍用外套から来ているという大枠は広く共有されています。
素材はギャバジンと呼ばれる綿の綾織りが伝統的で、目が詰まっていて水を通しにくいのが特徴です。近年は化繊のもの、薄手のもの、裏に取り外せるライナーの付くものなど、幅が広がりました。ライナー付きなら、春と秋だけでなく冬の入り口まで使えます。
ベルトの結び方で印象が変わるのも、この形の面白いところです。前できっちり結べば端正に、後ろで結んで前を開ければ軽やかに、留めずに垂らせば力の抜けた感じになります。
ピーコート
見分けどころは、太く大きな返り襟と、前を覆う二列のボタンです。襟を立てると首がすっぽり包まれ、二列のボタンで胸の前が二重になります。丈は腰からお尻が隠れるあたりまでで、短めに収まっているのも特徴です。
名前の由来は、船員の上着を指す言葉から来ているといわれます。海の上の風は容赦がないので、首を包む大きな襟と、胸を二重にする打ち合わせが要りました。作業中に裾が邪魔にならないよう、丈も短く抑えられています。
素材は厚手のウールのメルトンが伝統的です。目の詰まった生地で、風を通しにくく、雨にもある程度耐えます。ずしりと重いのですが、その重みがそのまま暖かさになります。
丈が短いぶん重心が上がるので、脚が長く見えやすい形です。下半身に長さのあるボトムスと相性がよく、ロングスカートやワイドなパンツと合わせても全身がまとまります。
モッズコート
見分けどころは、フードと絞りひもです。頭を包むフードがあり、腰まわりや裾にひもが通っていて、絞ると輪郭が変えられる。裾が魚の尾のように後ろだけ長くなっているタイプもあります。
原型は軍の防寒用パーカで、寒冷地での使用を想定して作られたといわれます。それが1960年代の英国で、モッズと呼ばれる若者文化のなかで着られるようになり、名前が定着したと言われています。由来の細部には諸説あるので、そういう流れがあったらしい、という程度に受け止めておくのがよさそうです。
素材は綿やナイロンの丈夫な生地が中心で、裏に中綿やボアの入るものは真冬にも耐えます。ゆったりした作りが標準なので、中に厚手を重ねられるのも利点です。
量感のある形なので、下半身は細めにすると釣り合います。絞りひもで腰の位置を作れば、全身が間延びしません。カジュアル寄りの一着ですが、色を落ち着かせて素材の質感を上げると、大人の日常着として使えます。
チェスターコートとステンカラーコートの違い
この2つは、いちばん混同されるところです。どちらも膝前後の丈で、どちらも直線的な輪郭で、写真では似て見えます。でも、見る場所を首元に絞れば、判別は難しくありません。
チェスターコートの襟は、ジャケットと同じ構造です。上襟と下襟が縫い目で分かれていて、前を開けると左右の下襟が折り返り、胸元にV字の開きができます。この開きがあるぶん、きちんとした空気が出ます。
ステンカラーコートの襟は、一枚でつながっています。後ろが高く立ち、前に向かって低く倒れる。折り返る下襟がないので、前を開けても胸元にV字ができません。首元がなだらかにつながるので、印象はやわらかくなります。
使い分けの目安はこうです。改まった場や、きちんとした空気が求められる日はチェスター。癖を出さずに何にでも合わせたい日、あるいは首元を軽くしたい日はステンカラー。同じ丈でも、この首元の差だけで印象がひと目盛り動きます。
もうひとつ。ステンカラーは前を留めると襟が立って首を包むので、防寒の面で少し有利です。チェスターは襟を立てにくい構造なので、寒い日はマフラーの出番が増えます。
名前の由来を知ると、覚えやすくなる
由来の仲間は、成り立ちを知るといちばん記憶に残ります。理由があって付いたディテールなので、機能と形が結びついているからです。
トレンチコートは、塹壕を意味する英語から。雨と泥のなかで着るための防水外套で、ベルトも肩当ても二重の打ち合わせも、風雨を防ぐための工夫だったといわれます。
ピーコートは、船員の上着を指す言葉から来ているといわれます。海風から首を守る大きな襟、胸を二重にする打ち合わせ、作業の邪魔にならない短い丈。すべて海の上の条件から生まれた形です。
モッズコートは、軍の防寒パーカが、1960年代の英国で若者文化のなかに広まったことから名前が付いたと言われています。フードも絞りひもも、もとは寒冷地で体温を逃さないための仕組みでした。
3つに共通しているのは、どれも「守るための服」だったということです。装飾のように見えるディテールが、実は全部意味を持っている。そう思って見ると、店頭でアウターを眺める時間が少し楽しくなります。なお、由来の細部については資料によって説が分かれるところもあるので、大枠として受け止めてください。
丈で変わること
形と同じくらい、いや、場合によっては形より効いてくるのが丈です。同じチェスターコートでも、腰丈と膝下丈では別の服のように見えます。呼び方には幅がありますが、おおよそ次のように使われています。
| 丈の呼び方 | だいたいの位置 | 見え方の傾向 |
|---|---|---|
| ショート丈 | 腰骨より上 | 重心が上がり、脚が長く見えやすい |
| ヒップ丈 | お尻が隠れるあたり | 使い勝手がよく、場面を選ばない |
| ミドル丈 | 太ももの中ほど〜膝上 | きちんと感と動きやすさの中間 |
| ロング丈 | 膝下 | 縦に長く落ち、静かで端正な印象 |
| マキシ丈 | ふくらはぎ〜くるぶし | 存在感が強い。中の服がほとんど隠れる |
丈を選ぶときの目安はひとつです。中に着る服の裾より、アウターの裾が長いか短いかをはっきりさせること。中途半端に数センチだけ短いと、下から服がのぞいて全身が散らかって見えます。しっかり隠すか、はっきり短くするか、どちらかに寄せると整います。
身長との関係も見ておきます。同じ「ロング丈」と書かれた商品でも、身長が150センチの人と170センチの人では、裾が来る場所がまるで違います。商品ページの着丈の数字を、自分の肩から測って確かめておくと、次から失敗が減ります。低めの身長で長い丈を着たいときの考え方は低身長さんの着こなしも参考になります。
重心の話も付け加えます。短い丈は腰の位置を高く見せ、長い丈は全身に縦の線を通します。どちらが正解ということはなく、その日のボトムスの丈と組み合わせて決まります。長いボトムスに長いアウターを重ねると縦に長くなりすぎることがあるので、そんな日は前を開けて中の線を見せると軽くなります。
骨格タイプ別の似合わせ
体型を隠すのではなく、線を通して整えるという考え方で見ていきます。自分のタイプがわからないときは骨格診断とはから、判断に迷うときは骨格タイプがわからないときをどうぞ。
骨格ストレート
上半身に厚みがあってメリハリのある体型で、肌に弾力があり、重心は上にあります。上半身に布が重なると厚みが増して見えやすいので、余分な量を持たない形が扱いやすくなります。
得意なのは、テーラードジャケット、チェスターコート、トレンチコート、ステンカラーコート。肩の線がまっすぐ出て、体に沿って落ちる形です。前を開けて縦の線を作ると、上半身の厚みが目立ちにくくなります。
苦手が出やすいのは、量感のあるダウンやモッズコート、大きく膨らむブルゾンです。選ぶなら、詰め物が薄いもの、絞りが控えめなもの、肩の位置が自分の肩に合っているものを探してみてください。
丈は、腰丈から膝下丈までが使いやすい範囲です。素材はハリのあるものが似合いますが、量が出ないよう厚みは控えめに。
骨格ウェーブ
上半身が薄く華奢で曲線的、重心は下にあります。上半身に少し布を足す工夫と、下半身を重くしすぎない工夫が、両方効いてきます。
得意なのは、短めの丈で腰の位置がはっきりするもの。ノーカラージャケット、コンパクトなブルゾン、ピーコート、ベルトで腰を作れるトレンチコート。ウエストの位置が高く見えると、全身の釣り合いが取れます。
苦手が出やすいのは、重い素材の長い丈です。厚手のロングコートは布の重さが下半身に集まりやすい。長い丈を着たいときは、薄手で落ち感のあるものを選び、ベルトで腰の位置を作ると軽くなります。
丈は、腰丈からヒップ丈が使いやすい範囲です。首元にボリュームのあるものや、装飾のある襟も似合います。
骨格ナチュラル
骨と関節が目立ち、肩幅や背中が広めで、体に厚みより枠のあるタイプです。布の量に負けにくいので、量感のある形をそのまま着られるのが強みになります。
得意なのは、モッズコート、ロング丈のガウンコート、大きめのブルゾン、厚手のトレンチコート。肩が落ちたデザインや、たっぷりしたシルエットが自然に馴染みます。
苦手が出やすいのは、体に張りつく薄い素材と、肩にぴたりと合った小さいジャケットです。少しゆとりのあるサイズを選び、素材に厚みや表情のあるものを探すと骨感が目立ちにくくなります。
丈は長めが得意で、マキシ丈も着こなせるタイプ。輪郭で遊びやすいのが持ち味です。
気温の目安──何度から何が要るか
アウター選びで最初に決まるのは、実は形ではなく気温です。目安を表にまとめました。体感には個人差があり、風の強さや日照でも変わるので、幅を持たせて読んでください。
| 気温の目安 | 向くアウター | 補足 |
|---|---|---|
| 25度以上 | 基本は不要 | 冷房対策に薄手の羽織りを一枚 |
| 20〜24度 | 薄手のジャケット、デニムジャケット、ガウンコート | 朝晩だけ必要になることが多い |
| 15〜19度 | テーラードジャケット、トレンチコート、ライダース | 一日を通してあると安心な帯 |
| 10〜14度 | ステンカラーコート、ライナー付きトレンチ、薄手のチェスター | 中に一枚重ねると余裕が出る |
| 5〜9度 | ウールのチェスター、ピーコート、中綿入りのコート | マフラーとの併用が効いてくる |
| 5度未満 | ダウン、モッズコート、厚手のウールコート | 風の強い日は防風性も見ておく |
同じ気温でも、朝と夕方で体感はかなり違います。日中の最高気温だけで決めると、帰り道で寒い思いをすることがあるので、最低気温のほうを基準にして、暑ければ脱ぐという考え方が現実的です。気温ごとの服装の組み立て方は気温別の服装にくわしくまとめました。
季節の変わり目は、一枚で決めようとしないほうが楽です。中に着るものを調整できる形、たとえばライナーの外せるトレンチや、前を開けて着られるガウンコートは、対応できる気温の幅が広くなります。夏から秋への移り変わりの整理は夏物の着まわしにも書きました。
通勤に向くもの、向かないもの
毎日着るものだからこそ、向き不向きははっきり出ます。判断の材料は3つ。場に合うか、動きを妨げないか、手入れが続けられるか。
向いているのは、テーラードジャケット、ノーカラージャケット、ステンカラーコート、チェスターコート、トレンチコート。どれも輪郭が直線的で、中にきちんとした服を着ても釣り合います。色を落ち着かせれば、ほとんどの職場で浮きません。職場の空気に合わせた線引きはスマートカジュアルとはも参考になります。
向きにくいのは、ライダースジャケット、デニムジャケット、モッズコート。カジュアルの記号が強いので、職場によっては浮きます。着るとしたら、色を黒や濃紺に寄せて、中と足元をきちんとさせると馴染みます。
判断が分かれるのが、ダウンジャケットとブルゾンです。防寒としては優秀ですが、輪郭が膨らむのでジャケットの上に重ねると窮屈になります。通勤で使うなら、詰め物が薄く、丈が長めで、表面につやのない黒や濃色のものを選ぶと収まりがよくなります。
もうひとつ、電車での移動が長い方は、脱いだあとに畳めるかどうかも見ておくと快適です。厚手のウールはかさばり、薄手のダウンは小さくなります。毎日のことなので、この差は思うより大きく効いてきます。
素材と手入れのこと
長く着るなら、素材の性格を知っておくと扱いが楽になります。
ウールは暖かく、しわが戻りやすく、形が保ちやすい素材です。そのかわり水に弱く、家庭では洗いにくい。着たあとはブラシで表面のほこりを落とし、一日休ませてからしまうと長持ちします。
綿は丈夫で扱いやすい反面、しわが残りやすく、水を含むと重くなります。トレンチコートに使われるギャバジンのように目の詰まった織りなら、しわも水も気になりにくくなります。
化繊は軽く、乾きが早く、価格も抑えられます。静電気が起きやすいのと、熱に弱いのが弱点なので、アイロンの温度には気をつけてください。
ダウンは、詰め物が偏ると暖かさが落ちます。しまうときに強く圧縮しないこと、シーズンの終わりに一度手入れをすることで、翌年の膨らみが変わります。
革は乾燥とかびの両方に弱い素材です。着たあとに乾いた布で拭き、風の通る場所で保管すると、表情が育っていきます。
色の選び方
アウターは面積が大きく、しかも屋外では全身のほとんどを覆います。だから、色の影響が服のなかでいちばん強く出ます。
一着目に選ぶなら、黒、濃紺、チャコールグレー、ベージュ、キャメルあたりが扱いやすいところです。中に着る服を選ばず、通勤にも私服にも寄せられます。
顔まわりに来る色でもあるので、似合う色を知っていると選びやすくなります。イエベ春・ブルベ夏・イエベ秋・ブルベ冬という4つの分け方の考え方は4シーズンの比較にまとめました。色の名前そのものに迷ったときは色の名前の図鑑もどうぞ。
明るい色のアウターは全身を軽く見せますが、汚れが目立ちやすいという現実もあります。毎日着るものなら、手入れの手間まで含めて決めると、結局そのほうが長く着られます。
迷ったときの決め方
最後に、店頭や画面の前で迷ったときの順序をまとめます。
ひとつ、その服が要る気温を決める。15度で着たいのか、5度で着たいのか。ここが決まると、候補は半分以下に減ります。
ふたつ、着ていく場面を決める。通勤か、週末か、改まった日か。場面が決まると、襟の仲間から選ぶのか、素材と作りの仲間から選ぶのかが見えてきます。
みっつ、中に何を着るかを思い浮かべる。厚手のニットを着る予定があるなら、袖と肩に余裕のあるサイズが要ります。試着のときに、実際に着る予定の厚みで確かめておくと安心です。
よっつ、裾がどこに来るかを見る。中の服の裾と、アウターの裾。この2つの関係だけで、全身の印象の半分が決まります。
名前は、覚えられたら便利という程度のものです。大切なのは、自分がその一着に何を求めているのかを言葉にできること。首元を軽くしたいのか、縦の線を通したいのか、寒さから守ってほしいのか。それが決まっていれば、名前を知らなくても選べます。
下半身との釣り合いを考えたいときはパンツの種類とスカートの種類を、一枚で完成する服を探しているときはワンピース・ドレスの種類を、足元まで含めて整えたいときは靴下・レッグウェアの丈を見比べてみてください。袖の形は袖の種類に、着痩せの考え方の全体像は着痩せの考え方にまとめています。診断を受けてみたい方には骨格タイプ診断とパーソナルカラー診断もご用意しています。分からなくなったら、この記事の最初の図に戻ってきてください。
よくある問い
- Q. ジャケットとコートの違いは何ですか?
- 明確な境界はありませんが、一般には丈の長さと厚みで呼び分けられています。腰まわりで終わる短い上着をジャケット、腰から下へ伸びる長い上着をコートと呼ぶことが多い傾向です。ただしショート丈のコートもロング丈のジャケットもあるため、名前だけで長さを判断せず、商品ページの着丈の数字を見るのが確実です。
- Q. トレンチコートの定義を教えてください。
- もとは軍用に作られた防水のコートで、名前は塹壕を意味する英語のトレンチに由来するといわれます。見分けどころは、ウエストを結ぶベルト、肩に重ねた布(肩当て)、前を二列のボタンで深く重ねる打ち合わせの3点です。この3つがそろっていればトレンチコートと呼ばれることがほとんどで、丈や素材には幅があります。
- Q. チェスターコートとステンカラーコートはどう違いますか?
- 襟の形が違います。チェスターコートはジャケットと同じように上襟と下襟が分かれた仕立て襟で、前を開けるとV字の開きができます。ステンカラーコートは一枚の襟が後ろで高く立ち、前に向かって低く倒れる形で、下襟にあたる部分がありません。首元だけを見比べれば、ほぼ確実に判別できます。
- Q. ステンカラーコートとはどんなコートですか?
- 襟の後ろが高く、前に向かって低くなる一枚襟のコートです。前を留めると首が包まれ、開けると襟が寝て顔まわりが軽くなります。もとは英国の軍用外套に由来する形といわれ、日本ではバルカラーコートや、素材から取ったステンカラーという呼び方が広く使われています。癖が少なく、通勤にも私服にも寄せやすい一着です。
- Q. ノーカラージャケットとテーラードジャケットはどちらが使いやすいですか?
- 場面によります。テーラードジャケットは下襟があるぶん胸元にV字ができ、きちんとした空気が出ます。ノーカラージャケットは襟がないので首まわりが軽く、中に着るものを選びません。改まった場や来客のある日はテーラード、やわらかい印象にしたい日や首が詰まって見えやすい方はノーカラー、という選び方が扱いやすいところです。
- Q. 何度からコートが必要になりますか?
- 目安として、20度を下回るあたりから薄手のジャケットが、15度を下回るとトレンチやテーラードなどの中厚のアウターが、10度を下回るとウールのコートが欲しくなります。5度を下回ると、ダウンなど中綿の入ったものが現実的な選択になります。体感には個人差があり、風の強さや日照でも変わるので、幅を持たせて考えてください。
- Q. 骨格ナチュラルに向くアウターはどれですか?
- 骨と関節が目立ち、肩幅や背中に枠のあるタイプなので、布の量に負けにくいのが強みです。モッズコート、ロング丈のガウンコート、大きめのブルゾン、厚手のトレンチなど、量感のある形をそのまま着られます。逆に体に張りつく薄い素材や、肩にぴたりと合った小さいジャケットは骨感が出やすいので、少しゆとりのあるサイズを選ぶとまとまります。
— メグラシ編集部







