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抜け感とは|感覚的な言葉を、見せる場所・ゆとり・落ち感・色数の4つに翻訳する

メグラシ編集部//読了 13分
首元と手首に余白を残した、力の抜けた大人の装い

「抜け感を出すと垢抜けます」。ファッションの記事でよく見かける言い方ですが、これは状態の名前であって、手順の名前ではありません。 だから読んでも、明日の朝に何をすればいいかは分かりません。

この記事は、その翻訳をします。抜け感という感覚語を、実際に手を動かせる4つの道具に置き換えます。

先に結論です。抜け感とは、装いの隙のなさを、どこか一か所だけ意図的に崩した状態のこと。そして、崩すために使える道具は次の4つしかありません。

  1. 見せる場所(首・手首・足首のどれか一つ)
  2. シルエットのゆとり(どこか一か所に空気を入れる)
  3. 素材の落ち感(体から離れて、まっすぐ落ちる素材)
  4. 色数(三色までに絞る)

そして、いちばん大事な制約がひとつあります。抜きは一か所に絞ること。 重ねるほど軽くなるわけではありません。

この記事の要点

  • 抜け感とは、隙のなさを一か所だけ崩した状態。感覚語だが、具体は4つの道具に分解できる
  • 4つの道具は、見せる場所・シルエットのゆとり・素材の落ち感・色数
  • 抜きは一か所まで。二か所を超えると、抜けたのではなく崩れた状態に見え始める

道具1:見せる場所|首・手首・足首のどこか一つ

「三首を出すと抜ける」という言い方がありますが、三つ全部を出すのは抜け感ではありません。 それは肌の面積が増えただけの状態です。

開ける場所効きやすい状況具体的なやり方
首元下半身に量がある日、上が詰まって見える日ボタンを一つ開ける、Vネックにする、髪を上げる
手首羽織りを着ている日、上半身に情報が多い日袖を一回だけまくる、七分丈にする、腕時計を細いものに
足首全身が縦に詰まって見える日、上下とも量がある日裾を足首の見える丈にする、甲の開いた靴にする

選び方は簡単です。その日いちばん詰まって見える場所と、反対側を開ける。 上が重い日は足首、下が重い日は首元、羽織りで腕が覆われている日は手首。それだけです。

季節によって開けにくい場所があるときは、素直に別の場所へ振り替えてください。無理に首元を開けて寒い思いをする必要はありません。開ける場所が三つあるのは、そのためです。

首元の形と印象の関係はネックラインの種類、袖の形は袖の種類に整理しました。

道具2:シルエットのゆとり|空気をどこに入れるか

体に沿った服だけで全身を組むと、輪郭が硬く見えます。どこか一か所に空気を入れると、そこで輪郭がゆるみます。

ゆとりを入れる場所起きること釣り合わせ方
上半身(身幅・袖)肩から胸の輪郭がゆるむ下半身は細く。丈は短めか、ウエストを見せる
下半身(腰・脚まわり)脚の輪郭がゆるみ、動きが出る上半身は体に沿わせる。丈は腰が見える長さに
羽織り(前を開ける)縦の線が入り、中がゆるく見える中は上下とも整えておく

上下ともにゆとりを入れると、抜けたのではなく大きくなります。 ゆとりは片側だけ。これがいちばん間違えやすい場所です。

ゆとりの「量」については、体に触れない距離が指一本〜二本分あるかどうかを目安にしてください。それ以上離れると、輪郭が服の形になってしまい、体の存在が消えます。

道具3:素材の落ち感|垂らしたときにどう落ちるか

落ち感とは、手に持って垂らしたときに、角が立たずにまっすぐ下へ落ちる性質のことです。

素材落ち感装いへの効き方
レーヨン、キュプラ、テンセル強い体の線を拾わず、動くたびに輪郭が変わる
薄手のウール、シルク強い光をやわらかく返し、静かな印象になる
薄手のポリエステル(とろみ加工)中〜強扱いやすく、手入れも楽
綿(ブロード、天竺)弱い形を保つ。端正だが、硬く見えることがある
リネンほぼ無い立体的に張る。素朴な方向の魅力
厚手のポリエステル、化繊のツイル無い形が服の形のまま残る

落ち感が抜け感につながるのは、輪郭が固定されないからです。 立ち止まっているときと歩いているときで形が変わる。その変化が、力の抜けた印象を作ります。

逆に、張りのある素材が悪いわけではありません。張りのある素材は端正さを作ります。ただし、全身を張りのある素材で組むと隙がなくなるので、どこか一か所を落ち感のあるものに替えると、それだけで抜けます。

道具4:色数|視線の行き先を減らす

色が多いと、視線が全身のあちこちで止まります。止まる場所が多いほど、情報の多い状態に見えます。

色数見え方使いどころ
一色(同系濃淡)いちばん静か。縦の線がまっすぐ通る抜け感を最優先したい日
二色静かなまま、区切りができる日常でいちばん扱いやすい
三色変化があり、まだまとまる小物で一色足す配分に
四色以上視線の止まる場所が増え、情報が多く見える抜け感からは遠ざかる

同系色の濃淡は一色と数えて構いません。 ネイビーとライトブルー、チャコールとグレーは、数のうえでは一色です。これを知っていると、三色の枠の中でもかなり幅が出せます。

色を減らすと単調になると感じる場合は、素材の表情で変化をつけるのが解決策です。同じベージュでも、ニット・レザー・コットンでは光の返し方が違います。色ではなく表情の数を増やす、という考え方です。

「こなれ感」との違い

似た場所で使われる言葉ですが、指しているものが違います。

何を指しているか主語
抜け感装いの状態。隙のなさを一か所崩している服
こなれ感慣れて見える印象。無理をしていないように見える人
脱力感力が入っていない状態全般。だらしなさも含む人・服の両方
上品さ素材と色と丈の整い方服

抜け感は服の側の話、こなれ感は人の側の話です。だから、抜け感を作った結果としてこなれて見える、という順番になります。

逆に、抜けているのにこなれて見えないことはあります。その場合、たいてい原因は次のどちらかです。

  • 抜きが二か所以上ある:崩れた状態に見えている
  • 素材がへたっている:消耗した状態を抜け感と取り違えている

とくに二つめは見落とされがちです。毛玉、色あせ、のびた袖口は抜け感ではありません。新しくきちんとしたものを、一か所だけ崩すから抜け感になります。

系統としてのテイストの整理は服の系統12種にまとめました。

やりすぎたときの直し方

抜け感を意識するほど、抜きが増えていきます。よくある行き詰まりと、その出口です。

起きていること抜きが増えているところ戻す順番
だらしなく見える袖・裾・襟元・靴の複数を同時に崩している靴から戻す。足元が締まると全体が締まる
ぼやけて見える上下ともゆとりがある下半身を細くする
疲れて見える落ち感のある素材だけで全身を組んでいるどこか一か所に張りのある素材を入れる
部屋着に見える素材がへたっている状態のよくない一枚を外す
抜けているのに硬い色数が四色以上ある小物のどれかを既出の色に替える

戻すときは、いちばん下(足元)から。 足元が締まると全身が締まって見えるので、上の抜きを残したまま整えられます。

季節ごとの作り方

道具は同じですが、季節によって使いやすい道具が変わります。

季節使いやすい道具具体例
春見せる場所(手首)、色数袖を一回まくる。色を二色に絞る
夏見せる場所(足首)、シルエット足首の見える丈。上にゆとりを入れる
秋落ち感、色数落ち感のある羽織りを前を開けて着る
冬落ち感、シルエット首元をゆるく巻く。上下どちらかに空気を入れる

秋冬は、肌を見せる方向が使いにくくなります。 その分、落ち感と色数へ重心を移すのが現実的です。この二つは温度の制約を受けないので、どんな季節でも同じように効きます。

まとめ

抜け感とは、装いの隙のなさを一か所だけ崩した状態のことです。感覚的な言葉ですが、実際にやっていることは4つに分解できます。

見せる場所を一つ開ける。シルエットのどこか一か所にゆとりを入れる。素材のどこかを落ち感のあるものにする。色数を三色までに絞る。

そして、いちばん大事なのは一か所に絞ることです。重ねるほど軽くなるわけではありません。二か所を超えると、抜けた状態から崩れた状態へ移り始めます。

今日の装いで、どこか一か所だけ。それだけで、この言葉が指しているものは作れます。

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— メグラシ編集部

よくある問い

Q. 抜け感とはどういう意味ですか?
装いの隙のなさを、どこか一か所だけ意図的に崩した状態のことです。全身がきっちり整っていると硬く見えることがあり、そこに一点だけゆるみを作ると、力の抜けた印象になります。感覚的な言葉ですが、実際にやっていることは4つに分解できます。首・手首・足首のどこかを見せる、シルエットにゆとりを作る、落ち感のある素材を使う、色数を減らす。この4つのどれかを一か所に効かせているのが「抜け感がある」と言われる状態です。
Q. 抜け感とこなれ感の違いは何ですか?
抜け感は「整いすぎを崩すこと」、こなれ感は「慣れて見えること」を指します。抜け感は装いの状態を言い、こなれ感は着ている人の印象を言う言葉です。だから、抜け感を作った結果としてこなれて見える、という関係になります。逆に、抜けているのに慣れて見えないことはあります。その場合はたいてい、抜きの場所が二か所以上に増えています。
Q. 首・手首・足首のどこを見せればいいですか?
一か所です。三か所すべてを出すと、抜けたというより肌の面積が増えただけの状態になります。目安として、上半身に情報が多い日は足首、下半身に量がある日は首元、羽織りを着ている日は手首。その日いちばん詰まって見える場所と反対側を開ける、と考えると選びやすくなります。季節や気温で開けにくい場所があるときは、開ける場所を素直に変えて構いません。
Q. 落ち感のある素材とはどんなものですか?
手に持って垂らしたときに、角が立たずにまっすぐ下へ落ちる素材のことです。レーヨン、キュプラ、テンセル、薄手のウール、シルクなどが該当します。逆に、張りのある綿、リネン、厚手のポリエステルは、体から離れて形を保つので落ち感は出ません。落ち感のある素材は体の線を拾いすぎず、動くたびに輪郭が変わるので、それが力の抜けた印象につながります。
Q. 色数を減らすとなぜ抜けて見えるのですか?
目の行き先が減るからです。色が多いと、視線が全身のあちこちで止まり、情報の多い状態に見えます。三色までに絞ると視線の移動が少なくなり、その分だけ全体が静かに見えます。同系色の濃淡は一色と数えて構いません。色を減らすことに不安がある場合は、素材の表情で変化をつけると、静かなまま単調さを避けられます。
Q. 抜け感を出そうとすると、だらしなく見えてしまいます。
抜きが二か所以上になっていることが多いものです。袖をまくり、裾を出し、ボタンを開け、靴を軽くする。それぞれは有効ですが、全部やると崩れた状態になります。まず一つに戻してください。もうひとつよくある原因は、素材のへたりを抜け感と取り違えていることです。毛玉、色あせ、のびた袖口は抜け感ではなく、単に消耗した状態として見えます。
Q. 秋に抜け感を作るにはどうすればいいですか?
肌の見える場所が減る季節なので、素材と色数のほうへ重心を移すのが現実的です。落ち感のある羽織りを前を開けて着る、上下を同系色でまとめて色数を二色に絞る、袖を少しだけまくる。この三つのどれか一つで十分です。首元を開ける場合は、薄手のストールで温度を確保しながら、巻き方をゆるくすると開いた印象を残せます。
Q. 抜け感は年齢によって作り方が変わりますか?
道具は同じですが、効きやすい道具は変わる傾向があります。年齢が上がるほど、肌を見せる方向より、素材の落ち感と色数のほうが扱いやすくなります。理由は、落ち感と色数は温度や場面の制約を受けにくく、どんな場でも同じように効くからです。見せる場所を使う場合は、手首か足首のように、面積の小さいところから試すと調整しやすくなります。

— メグラシ編集部

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