ファッションの系統12種を図で見比べる──青文字系とは何かから、きれいめ・コンサバの中身まで

「青文字系って、結局どういう意味なのかしら」。言葉は見かけるのに、中身が説明されないまま使われている。系統の名前には、そういうものがいくつもあります。先に一問一答から始めます。
青文字系とは、1990年代から2000年代にかけての日本の女性ファッション誌が、表紙のロゴの色で語り分けられていたことに由来する呼び名です。ロゴが青系の雑誌が扱っていた、街の若者文化に近く個性を優先する装いを「青文字系」、ロゴが赤系の雑誌が扱っていた、やわらかく整った女性らしさを軸にする装いを「赤文字系」と呼び分けました。つまりこれは服の形の名前ではなく、どちらの側から出てきた装いかという出どころの名前です。
そして正直に書いておきたいことがあります。この呼び分けの前提は、もうほとんど残っていません。当時の雑誌は休刊したものも、性格を変えたものもあり、「あの雑誌の系統」と言われて同じものを思い浮かべられる人は減りました。言葉だけが残って、おおまかな雰囲気を指す語として使われているというのが現在地です。だから、この言葉で自分を分類しようとすると、うまくいかないのが当たり前なのです。
系統の名前が難しく感じられる理由は、実はここに全部あります。名前の出どころが一つに揃っていないのです。見た人が受ける印象から付いた名前、どこで誰として着るかという立場から付いた名前、そしてどの文化から広まったかという出どころから付いた名前。この三つが同じ棚に並んでいるので、比べようとしても比べられません。
この記事では、まず12の系統を一枚の図で見比べます。そのうえで名前の三つの出どころを整理し、青文字系と赤文字系を並べ、検索されることの多い「きれいめ」「カジュアル」「コンサバ」の中身を具体で説明します。後半では、同じ一着が別の系統に見える仕組み、ぽっちゃりや40代できれいめを作るときの現実的な手順まで進みます。
ファッションの系統12種を一枚で見比べる
名前を覚えるより先に、全身の空気を目で覚えてしまうほうが早いものです。並び順にも意味があります。はじめの6つは見た人が受ける印象から付いた呼び名、続く3つはどこで誰として着るかという立場から付いた呼び名、最後の3つはどの文化から広まったかという出どころから付いた呼び名です。
ファッションの系統12種を一枚で見比べる
系統の名前は「印象」「立場」「出どころ」のどれかから付いています。

きれいめ

カジュアル

フェミニン

ナチュラル

ガーリー

モード

コンサバ

トラッド

オフィスカジュアル

青文字系

赤文字系

ストリート
系統の家族分け
印象から付いた名前
見た人が受ける空気そのもの

きれいめ

カジュアル

フェミニン

ナチュラル

ガーリー

モード
立場から付いた名前
どこで誰として着るか

コンサバ

トラッド

オフィスカジュアル
出どころから付いた名前
雑誌や街から広まった呼び名

青文字系

赤文字系

ストリート
系統は服の形ではなく、全身が見せる空気につけられた名前です。
同じ一着でも、合わせ方しだいで別の系統に見えます。
並べてみると、系統の名前が一枚岩でないことが見えてきます。きれいめ・カジュアル・フェミニン・ナチュラル・ガーリー・モードは、見た人が受ける空気そのものを言っている。コンサバ・トラッド・オフィスカジュアルは、着ていく場と、そこで求められる立場を言っている。青文字系・赤文字系・ストリートは、どこから広まった装いかを言っている。
そしてもう一つ、他の図鑑と決定的に違うところがあります。襟や袖やパンツの図鑑なら、一枚の服を見れば名前が決まりました。けれど系統は、服単体では決まりません。全身の組み合わせが見せる空気に付いた名前なので、この図もコーディネート単位で並べています。ここが系統の話をややこしくしている最大の原因で、あとの節で具体的に見ていきます。
早見表:12系統の中身と手がかり
買い物の途中で見返すなら、ここだけで足ります。
| 系統 | 名前の出どころ | ひとことで言うと | 手がかりになるもの |
|---|---|---|---|
| きれいめ | 印象 | しわの出ない素材・直線の輪郭・少ない色数 | 無地のブラウス、細身のボトムス、革の靴 |
| カジュアル | 印象 | 格式ばらない、日常のための装い | デニム、スウェット、スニーカー |
| フェミニン | 印象 | 曲線とやわらかさを前に出した装い | 落ち感のある布、揺れる裾、丸みのある襟 |
| ナチュラル | 印象 | 素材の質感をそのまま見せる、ゆとりのある装い | 麻や綿、生成りの色、ゆるい輪郭 |
| ガーリー | 印象 | 少女らしさの記号をあえて残した装い | 丸襟、フリル、リボン、短めの丈 |
| モード | 印象 | 色を絞り、形そのものを見せる装い | 黒中心、左右非対称、大きさの落差 |
| コンサバ | 立場 | その場の多数派から外れない、外さない装い | 膝丈スカート、アンサンブル、落ち着いた色 |
| トラッド | 立場 | 英米の学生服・紳士服の型を借りた装い | 紺のブレザー、チェック、ローファー |
| オフィスカジュアル | 立場 | 職場で許される範囲まで崩したカジュアル | シャツ、テーパードパンツ、カーディガン |
| 青文字系 | 出どころ | 個性と街の文化を優先する装い | 古着、意外性のある配色、厚みのある靴 |
| 赤文字系 | 出どころ | やわらかく整った女性らしさを軸にする装い | 淡い色、体に沿うニット、ヒール |
| ストリート | 出どころ | 街の遊びの文化から生まれた装い | 大きめのフーディー、カーゴパンツ、スニーカー |
こうして並べると、判断に使っている材料が仲間ごとに違うことがわかります。印象の仲間は素材と輪郭、立場の仲間は場のきちんと感、出どころの仲間は文化の記号。どの材料を見ればいいかを先に決めてから写真を見ると、判断がぐっと速くなります。
系統の名前は、三つの出どころから来ている
この記事の背骨はここです。順番に見ていきます。
印象から付いた名前
きれいめ、カジュアル、フェミニン、ナチュラル、ガーリー、モード。この六つが指しているのは、見た人が受ける空気だけです。どこで着るかも、どの文化から来たかも、これらの名前は何も言っていません。
だから、この仲間の名前は素材と輪郭でほとんど決まります。しわが出るか出ないか、線が直線か曲線か、布が体に沿うか離れるか、色数が多いか少ないか。この四つの目盛りをどこに置くかで、印象の系統は動きます。
立場から付いた名前
コンサバ、トラッド、オフィスカジュアル。この三つは、どこで誰として着るかを含んだ名前です。コンサバは「その場の多数派から外れない」という関係の話ですし、オフィスカジュアルにいたっては、職場という場を抜きにしては意味が成立しません。
この仲間の特徴は、正解が場によって動くことです。同じ服が、ある職場ではオフィスカジュアルとして通り、別の職場では砕けすぎと見なされる。印象の仲間のように服の性質だけでは決まらないので、迷ったときは服ではなく場のほうを先に確認するのが早道になります。職場での線引きはスマートカジュアルとはにまとめました。
出どころから付いた名前
青文字系、赤文字系、ストリート。この三つは、どの文化から広まったかを指す名前です。だから中身は時代とともに変わりますし、当時を知らない人には伝わりにくい。青文字系という言葉がわかりにくいのは、この仲間だからです。
軸が違うから、重ねて使える
三つの軸が別々だということは、名前を重ねて使えるということでもあります。「きれいめカジュアル」は成立します。素材と輪郭はきれいめの条件を守りながら、格式は落とす。「オフィスカジュアルをコンサバ寄りにする」も成立します。職場という場を前提に、そのなかで多数派側に寄せる。
店頭やSNSで長い名前が並んでいたら、それぞれがどの軸の話をしているかを分けて読むと、意味が通ります。名前の軸を分けて読むという考え方は、パンツの種類やジャケット・アウターの種類でも同じように使えます。
青文字系と赤文字系──雑誌のロゴの色から生まれた呼び分け
冒頭に書いたとおり、この二つは表紙ロゴの色に由来する呼び分けです。もう少しくわしく見ておきます。
1990年代から2000年代にかけて、日本の女性ファッション誌は大きく二つの流れで語られていました。ロゴが赤系の雑誌が扱っていたのは、やわらかい色、体に沿うシルエット、ヒール、整えた髪。ロゴが青系の雑誌が扱っていたのは、古着、原色や補色の組み合わせ、厚みのある靴、短い丈と長い丈の落差。この二つを、読者も作り手も「赤文字」「青文字」と呼び分けるようになった、というのが広く共有されている経緯です。ただし、いつ誰が言い始めたかについては諸説あり、確かなところははっきりしません。
当時、赤文字系は「男性から好まれる装い」という文脈で説明されることが多くありました。これは事実として記録しておくべきことですが、それは当時の雑誌の売り方の話であって、服の良し悪しの基準ではありません。誰にどう見られるかを装いの目的にするかどうかは、その人がそのときに決めることです。この記事では、両方を「色と輪郭の傾向が違う二つの流れ」として扱います。
今、この言葉はどう使われているか
現在、この呼び分けの前提はかなり失われています。当時の雑誌は休刊したものが多く、残っているものも当時とは性格が変わりました。ウェブやSNSに情報の中心が移り、「どの雑誌を読んでいるか」で装いが分かれる構造そのものがなくなっています。
それでも言葉が生き残ったのは、便利だったからです。「青文字系っぽい」と言えば、色の組み合わせに意外性があって、甘さより面白さを取っている装いだと、だいたい伝わる。「赤文字系っぽい」と言えば、淡くやわらかくまとまった装いだと伝わる。中身が空洞化した代わりに、雰囲気の目印としては今も機能しています。
だからこの言葉との付き合い方は、こうなります。自分を分類する言葉としては使わない。人に雰囲気を伝える言葉としては使える。 検索してもすっきりしないのは、そもそも定義がある種類の言葉ではないからです。
青文字系の実際
装いとして取り出すなら、手がかりは三つあります。
一つめは配色です。色数を絞るのではなく、あえて隣り合わない色を並べる。赤と緑、青とオレンジのように、色の輪の反対側にある色を組み合わせて、視線が止まる場所を作ります。色の考え方そのものは色の名前の図鑑も参考になります。
二つめは足元です。厚みのあるソール、大きめのスニーカー、ソックスとサンダルの重ね履き。足元に重さを置いて、全身の重心を意図的に下げる組み立てが多く見られます。
三つめは古着です。既製の新品だけでそろえず、時代の違うものを混ぜる。年代の混在そのものが、この系統の面白さの中心にあります。
赤文字系の実際
こちらの手がかりも三つです。
一つめは色。淡いピンク、ベージュ、白、水色といった明度の高い色が中心で、全身の色数は少なめ。二つめはシルエット。体に沿う、あるいは腰の位置で切り替えてから広がる形が多く、輪郭に曲線が入ります。三つめは足元と小物。ヒールのある靴、小ぶりのバッグ、細いアクセサリー。
こう並べると、赤文字系の条件は、いま言うところの「フェミニン」とかなり重なることがわかります。実際、当時の呼び名が使われなくなった代わりに、フェミニンやきれいめといった印象の名前が同じ役割を引き受けている、と考えると整理しやすくなります。
「きれいめ」とは何か
「きれいめ」は、系統のなかでいちばん検索される言葉のひとつです。そして、いちばん説明が雑になりがちな言葉でもあります。「上品な感じ」「大人っぽい感じ」では、明日の朝に何を着ればいいかがわかりません。具体で言い切ります。
きれいめとは、次の三つがそろった装いのことです。
一つめ、しわの出にくい素材であること。 綿のシャツでもハリのある高密度のものならきれいめに寄り、洗いざらしのくたっとしたものならカジュアルに寄ります。とろみのあるレーヨン混、目の詰まったウール、表面が平らな化繊。触ったときに表面がなめらかで、たたんでも折り目が残りにくいものが該当します。逆に、麻、ワッフル、起毛したもの、洗い加工のデニムは、それだけでカジュアル側に振れます。
二つめ、輪郭の線が直線的であること。 肩から裾までがまっすぐ落ちる、裾に向かって細くなる、あるいは体に沿う。この三つのどれかであれば、全身に直線が通ります。逆に、たっぷりした布が波打つ形や、腰から大きく広がる形は、線が曲線になるぶんフェミニンやナチュラルに寄ります。
三つめ、全身の色数が少ないこと。 目安は靴とバッグを含めて三色以内、できれば二色。同じ形の服でも、色が四つ五つと増えると急に情報が増えて、きちんと感が落ちます。柄も色数のうちに数えます。
この三つがそろっているかどうかを見れば、きれいめかどうかはほぼ判定できます。手持ちの服で「なんとなくきれいめにならない」ときは、この三つのどれが崩れているのかを探すと、原因がすぐ見つかります。
きれいめとエレガントの違い
似た場所にある言葉ですが、指しているものが少し違います。きれいめは、いま書いた三つの条件を満たしていれば成立する、比較的技術的な言葉です。エレガントはそこに動きの優雅さや素材の格まで含む、もう少し広い言葉として使われます。エレガントとフェミニンの線引きはエレガントとフェミニンの違いにくわしくまとめました。
きれいめを作る、いちばん早い方法
三つの条件のうち、いちばん効くのは素材です。同じ形のパンツでも、生地が変わるだけで印象が一段動きます。手持ちの服できれいめに寄せたいときは、まず素材が上等に見えるものを一点、上半身に置いてみてください。顔に近い場所の素材は、全身の印象を大きく左右します。
次に効くのは、足元と小物です。全身がカジュアルでも、靴を革のものに替えるだけで、装い全体の格が一段上がります。逆に言えば、きれいめな服を着ていても足元がくたびれていると、そこで全部が崩れます。
「カジュアル」とは何か
カジュアル(casual)は、もともと英語で「格式ばらない」という意味です。ここが出発点で、ここを押さえておくと、あとの話が全部つながります。
大事なのは、カジュアル=手をかけていない、ではないということです。格式を落とすことと、手を抜くことは別の話です。英語のラフ(rough)が指すのは後者で、部屋着に近い状態まで含みます。「カジュアルな服装でお越しください」と案内された場に部屋着で行くと浮いてしまうのは、この二つが別の言葉だからです。カジュアルに寄りすぎて困ったときの直し方はカジュアルすぎると言われたらにまとめました。
カジュアルの段階
日本で使われる「カジュアル」には、実はいくつもの段階があります。改まった順に並べると、こうなります。
| 呼び方 | どのくらい改まっているか | 具体的なところ |
|---|---|---|
| スマートカジュアル | いちばん改まっている | ジャケット+きれいめのパンツかスカート、革の靴 |
| オフィスカジュアル | その次 | シャツやブラウス+テーパードパンツ、カーディガン |
| きれいめカジュアル | 中間 | デニムでも、素材と色を絞って上半身をきれいめに |
| カジュアル | 日常 | デニム、スウェット、スニーカー |
| ラフ | 格式の外 | 部屋着に近い。人前を想定していない |
同じ「カジュアル」という語が入っていても、上と下ではまったく別の装いです。案内文に「カジュアルで」と書いてあったとき、どの段階を指しているのかを場所から逆算する。それが失敗しないための唯一の方法になります。
カジュアルとナチュラルの違い
この二つはよく混同されます。どちらも改まっていないので、写真だと似て見えることがあるためです。
カジュアルは、活動のための服です。デニムもスウェットもスニーカーも、もとをたどれば動くために作られた服で、丈夫さと動きやすさが出発点にあります。だから輪郭は体の動きに沿い、素材は実用的なものが選ばれます。
ナチュラルは、素材の質感を見せる服です。麻、綿、生成りの色、染めていない糸。加工を減らして、布そのものの表情を前に出します。輪郭は体から離れてゆるく、布が落ちるままにしておくのが基本です。
見分ける一言は「布が体から離れているか」です。離れていればナチュラル寄り、沿っていればカジュアル寄り。素材で言えば、化繊やデニムが混ざればカジュアル、天然素材でそろえばナチュラルに寄ります。
「コンサバ」とは何か
コンサバは、英語のconservative(保守的)の略です。奇をてらわず、その場の多数派から大きく外れない服の選び方を指します。
具体的には、膝が隠れるか膝が見える程度のスカート、アンサンブルや薄手のニット、白・紺・ベージュ・グレーといった落ち着いた色、ヒールの高すぎないパンプス。装飾は控えめで、流行の形は取り入れても中心には置かない。そういう組み立てです。
悪口として使われることもある、という事実
正直に書いておきます。「コンサバ」は、褒め言葉として使われないことがあります。「面白みがない」「無難すぎる」という含みで使われる場面があるのは事実です。系統の名前のなかで、これほど評価がついて回る言葉は他にあまりありません。
それでも、この系統には明確な強みがあります。外さない、という強みです。
初めて訪ねる家、初対面の相手、格のわからない店、写真に残る場。こうした「相手が決まっていて、自分の好みより場の空気が優先される日」に、コンサバの組み立てはほとんど失敗しません。それは想像力の不足ではなく、場を読む力の現れです。装いの目的が「自分を表現すること」だけではない日には、この選択が最短距離になります。
言い換えれば、コンサバは引き出しのひとつとして持っておくと強い。毎日それを着る必要はまったくありませんが、その日が来たときに一式そろっていると、装いで迷う時間がゼロになります。
きれいめとコンサバはどう違うのか
この二つは近い場所にありますが、決まり方がまったく違います。
きれいめは、服の性質で決まります。素材・輪郭・色数という三つの条件を満たしていれば、どこで着てもきれいめです。
コンサバは、場との関係で決まります。その場の多数派から外れていないかどうかなので、同じ服でも場が変われば評価が変わる。会場によっては、きれいめだけどコンサバではない、という組み立てが十分に成立します。
実務的には、こう覚えておくと使えます。きれいめは自分の服の話、コンサバは周りとの距離の話。 だから「きれいめのコンサバ」という言い方も、矛盾せずに成立します。
残りの系統を一つずつ
フェミニン
曲線とやわらかさを前に出した装いです。落ち感のある布、揺れる裾、丸みのある襟、体の線に沿ってから広がる形。素材は薄手でなめらかなものが中心になります。
きれいめとの違いは、直線か曲線かの一点です。同じ淡い色でまとめても、輪郭が直線ならきれいめ、曲線ならフェミニンに寄ります。スカートの形で印象がどう変わるかはスカートの種類を見比べるとわかりやすくなります。
ナチュラル
素材の質感をそのまま見せる装いです。麻、綿、ウール。染めを抑えた生成りやくすんだ色。輪郭は体から離れて、布が落ちるままにします。
この系統の要は素材です。形をゆったりさせるだけでは、ただ大きい服になってしまう。生地に表情のあるものを選ぶことが、この系統の成立条件になります。逆に言えば、素材さえ合っていれば、形は驚くほど自由です。
ガーリー
少女らしさの記号をあえて残した装いです。丸襟、フリル、リボン、短めの丈、小花柄。フェミニンと近い場所にありますが、こちらのほうが記号がはっきりしています。
大人が取り入れるときは、記号の数を一つに絞ると馴染みます。丸襟を選ぶならフリルは足さない、リボンを付けるなら色は落ち着かせる。一点だけ残すと、甘さが装いのアクセントとして働きます。
モード
色を絞り、形そのものを見せる装いです。黒を中心にした少ない色数、左右非対称の裁ち方、大きさの落差。装飾ではなくシルエットで見せる、という考え方が根本にあります。
きれいめとの違いは、整えるか、崩すかです。きれいめは線をまっすぐ整えますが、モードはあえて崩したり、片側だけ長くしたりして、輪郭に引っかかりを作ります。全身が黒でもきれいめに見える組み立てとモードに見える組み立てがあるのは、この違いです。
トラッド
英米の学生服や紳士服の型を借りた装いです。紺のブレザー、チェックのプリーツスカート、ローファー、シャツ。トラディショナル(traditional=伝統的な)の略で、型がはっきり決まっているのが特徴になります。
型が決まっているぶん、一点でも入れると全身の空気が動きます。紺のブレザーを羽織るだけで、下がデニムでも装いが少し改まる。アウターの型についてはジャケット・アウターの種類にまとめました。
オフィスカジュアル
職場で許される範囲まで格式を落としたカジュアル、という意味の言葉です。他の系統と決定的に違うのは、正解が職場ごとに違うことです。
一般的な目安としては、デニムとスニーカーを外し、肌の露出を抑え、色数を絞る。この三つを守れば、多くの職場で浮きません。ただし、これはあくまで目安で、実際の線引きはその職場を見て決めるしかありません。判断に迷うときは、周りの人が何を着ているかを一週間観察するのがいちばん確実です。
ストリート
街の遊びの文化から生まれた装いです。大きめのフーディー、カーゴパンツ、ボリュームのあるスニーカー、キャップ。もともとスケートボードや音楽の文化と結びついて広まった系統で、体のサイズより大きい服を着ることが基本の考え方にあります。
青文字系と近い場所にありますが、青文字系のほうが古着や配色の面白さを軸にするのに対し、ストリートは大きさと動きやすさを軸にします。重なる部分は多く、はっきり線を引けるものでもありません。
系統は服ではなく、組み合わせで決まる
ここがこの記事でいちばん伝えたいことです。
同じ一着が、合わせるもの次第で別の系統に見えます。 白いシャツを例に見てみます。
きれいめに寄せるなら。 ハリのある綿の白シャツを、細身のスカートかパンツに入れて、革のパンプスを履く。アクセサリーは細い金属のものを一つ。全身の色は白・黒・金の三色で、輪郭は直線、素材にしわはない。きれいめの三条件がすべてそろいます。
ナチュラルに寄せるなら。 同じ白でも麻混のシャツを選び、ボタンを開けて裾は出したまま、ゆったりしたベージュのパンツに合わせ、革のサンダルを履く。素材に表情があり、布は体から離れ、色は生成りとベージュ。今度はナチュラルの条件がそろいます。
シャツはどちらも白です。違うのは、素材の表情、裾を入れるかどうか、合わせるボトムスの幅、靴の種類。この四つだけで系統が動きます。
だから、手持ちの服で系統を変えたいとき、買い足す必要はないことがほとんどです。順番としては、こう考えると早く動けます。
一つ、裾を入れるか出すか。入れれば改まり、出せば崩れます。
二つ、靴を替える。全身の格を決めているのは、実は足元であることが多いものです。
三つ、色数を減らすか増やすか。減らせばきれいめ・モード方向へ、増やせばカジュアル・青文字系方向へ動きます。
四つ、布が体に沿っているか離れているか。沿えばきれいめ・フェミニン方向、離れればナチュラル・ストリート方向へ動きます。
この四つの目盛りを動かすだけで、手持ちの服のまま系統は変えられます。
系統は一つに決めなくていい
「自分は何系なのか」を決めようとして、決まらずに困っている。そういう方は多いのですが、これは決まらなくて当たり前です。
実際の装いは、たいてい複数の系統が混ざっています。「きれいめカジュアル」「ナチュラル寄りのフェミニン」「コンサバをすこしトラッドに」。こうした言い方が自然に通じるのは、混ざっているのが普通だからです。
混ぜるときの目安はひとつだけあります。全身の7割を軸にする系統でそろえ、残りの3割で別の系統を混ぜる。 半々にすると、どちらの空気も立たずに散らかります。
たとえば、きれいめを軸にしてカジュアルを3割混ぜるなら、素材と色数はきれいめの条件を守ったまま、ボトムスだけデニムにする。ナチュラルを軸にしてフェミニンを3割混ぜるなら、素材は麻や綿のまま、スカートの裾だけ揺れる形にする。軸のほうを崩さないのがコツです。
軸を決めておくと、買い物のときにも効きます。店で迷ったら「これは自分の軸に足せるか」を一つ聞くだけで、答えが出ます。似合う色の軸まで決まっていると、さらに速くなります。4シーズンの比較も参考にしてみてください。
ぽっちゃりや40代で、きれいめを作るとき
「きれいめにしたいのに、なぜか野暮ったくなる」。この相談は、体型や年代を問わずとても多いものです。そして原因は、たいてい同じところにあります。隠そうとしていることです。
体を隠すために大きい服を選ぶと、布の量が増えて輪郭がぼやけ、全身が大きく見えます。きれいめの条件である「直線的な輪郭」からも遠ざかります。方向を変えます。
素材のハリで支える
やわらかい素材は体の線をそのまま拾います。かわりに、適度なハリのある素材を選ぶと、生地が自立して体との間に空気の層ができ、線が拾われません。厚ぼったいという意味ではなく、薄手でも張りのあるもの。とろみのある化繊混、目の詰まった綿、しっかりした織りのウール混。触ったときに、手を離してもすぐ形が戻るものが目安です。
縦の線を通す
全身に縦の線を一本作ると、輪郭が縦に整理されます。方法は三つあります。羽織りの前を開けて着る。上下を近い色でそろえる。首元をV字やスキッパーに開ける。どれか一つで十分に効きます。
サイズは大きくしない
ワンサイズ上げると楽になった気がしますが、肩の位置が落ちて全身が大きく見えます。合わせるべきは、いちばん張っている場所です。そこに合うサイズを選び、他が余るなら形のほうを選び直す。ゆとりが要るのは腰まわりで、肩と首元は合っていたほうがきれいに見えます。
色数は三色以内
きれいめの三条件のうち、体型に関係なく誰でも今日から実行できるのがこれです。靴とバッグを含めて三色以内。それだけで全身の情報量が減り、輪郭がすっきりします。
40代で気をつけること
素材の質が印象に直結し始める年代です。同じ形でも、生地が薄く光沢が単調なものは、輪郭が張って安っぽく見えることがあります。点数を減らして、一点あたりの質を上げるほうが結果的に整います。
もうひとつ、丈です。中途半端な丈は、上等な素材でも野暮ったく見えます。スカートもパンツも、脚のいちばん細い場所で切るか、しっかり長く落とすか、どちらかに寄せると輪郭が締まります。着痩せの考え方の全体像は着痩せの考え方にまとめました。
骨格タイプと系統の関係
体型を隠すのではなく、線を通して整えるという考え方で見ていきます。系統と骨格は別の軸なので、「この骨格はこの系統しか着られない」ということはありません。同じ系統のなかで、どの形を選ぶかが変わるだけです。
骨格ストレート
上半身に厚みがあってメリハリのある体型で、重心は上にあります。布が余ると厚みが出やすいので、体に沿うか、まっすぐ落ちる形が扱いやすくなります。
きれいめ、コンサバ、トラッドは、そのまま得意な系統です。ナチュラルを着たいときは、ゆったりした形より、素材の表情で見せる方向に寄せると馴染みます。麻のシャツをジャストサイズで着る、といった選び方です。
骨格ウェーブ
上半身が薄く華奢で曲線的、重心は下にあります。腰の位置を高く見せる工夫が効いてきます。
フェミニン、ガーリー、赤文字系は、そのまま得意な系統です。きれいめを作るときは、直線の輪郭のなかでも腰の位置に切り替えのあるものを選ぶと、体との相性がよくなります。
骨格ナチュラル
骨と関節が目立ち、肩幅や背中に枠のあるタイプです。布の量に負けにくいのが強みになります。
ナチュラル、ストリート、モード、青文字系は、そのまま得意な系統です。フェミニンやガーリーに寄せたいときは、薄くて体に張りつく素材より、少し厚みや表情のある素材で同じ形を探すと、骨感が目立ちにくくなります。
自分のタイプがわからないときは骨格診断とはから読んでみてください。
系統で迷ったときの決め方
最後に、店頭や画面の前で迷ったときの順序をまとめます。
ひとつ、その日の場を先に決める。 誰と会うのか、どこへ行くのか。立場の仲間(コンサバ・トラッド・オフィスカジュアル)が必要な日かどうかは、ここで決まります。場が決まらないうちに服を選ぶと、いつまでも決まりません。
ふたつ、素材を見る。 しわが出るか出ないか。表面が平らか、表情があるか。系統の半分は素材で決まります。
みっつ、輪郭を見る。 直線か曲線か。体に沿うか離れるか。この二つの掛け合わせで、印象の仲間はほとんど決まります。
よっつ、色数を数える。 靴とバッグを含めて何色あるか。三色以内ならきちんと側、四色以上ならカジュアル側に動きます。
いつつ、足元を最後に確認する。 全身の格を決めているのは、多くの場合いちばん下です。ここが合っていないと、上でどれだけ整えても揃いません。
系統の名前は、覚えられたら便利という程度のものです。大切なのは、自分が今日の装いに何を求めているのかを言葉にできること。場から浮きたくないのか、自分の好きな色を着たいのか、動きやすさが要るのか。それさえ決まっていれば、名前を知らなくても選べます。
そして冒頭の話に戻ります。青文字系という言葉が今もすっきり説明されないのは、もともと定義のある言葉ではなく、雑誌という入れ物の名前だったからです。入れ物がなくなっても、そこにあった「自分の好きな色を、人の目より先に選ぶ」という態度は残りました。言葉に自分を合わせる必要はありません。分からなくなったら、この記事の最初の図に戻ってきてください。
よくある問い
- Q. 青文字系とはどういう意味ですか?
- 1990年代から2000年代の日本の女性ファッション誌が、表紙のロゴの色で二つに分けて語られていたことに由来する呼び名です。ロゴが青系の雑誌が扱っていた、街の若者文化に近く個性を優先する装いを青文字系と呼びました。服の形を指す名前ではなく、どこから出てきた装いかという出どころの名前です。当時の雑誌の多くはすでに休刊したり性格を変えたりしているため、現在は言葉だけが残り、おおまかな雰囲気を表す語として使われています。
- Q. 青文字系と赤文字系の違いは何ですか?
- もとは雑誌の表紙ロゴの色による呼び分けで、青文字系は個性やストリート文化寄り、赤文字系はやわらかく整った女性らしさ寄り、という対比で語られました。当時の赤文字系は「男性から好まれる装い」という文脈で説明されることも多かったのですが、それは当時の雑誌の売り方の話であって、服の良し悪しの基準ではありません。今は両方とも、色の使い方やシルエットの傾向をざっくり指す言葉として使われています。
- Q. きれいめとはどんな服装のことですか?
- 具体的には三つの条件で説明できます。しわの出にくい素材であること、シルエットの線が直線的であること、全身の色数が少ないこと。この三つがそろうと、たいていの装いはきれいめに見えます。逆に、素材にしわや毛羽立ちがあり、輪郭がゆるく、色や柄が増えるほどカジュアルに寄ります。「上品な感じ」という言い換えではなく、この三点で判断すると迷いません。
- Q. コンサバとはどういう意味ですか?
- 英語のconservative(保守的)から来た言葉で、奇をてらわず、その場の多数派から大きく外れない服の選び方を指します。膝丈のスカート、アンサンブルのニット、落ち着いた色。「面白みがない」という意味合いで使われることもある語ですが、初めて行く場所や相手が決まっている日に、外さない選択ができるというのは実務的な強みです。
- Q. カジュアルとラフは同じ意味ですか?
- 違います。カジュアル(casual)はもともと「格式ばらない」という意味で、きちんと手をかけたうえで格式を落とした装いも含みます。ラフは手をかけていない状態を指す言葉で、部屋着に近いところまで含みます。「カジュアルな服装で」と案内された場に部屋着に近い格好で行くと浮いてしまうのは、この二つが別の言葉だからです。
- Q. 系統は一つに決めたほうがいいですか?
- 決める必要はありません。実際の装いは複数の系統が混ざっているのが普通で、「きれいめカジュアル」「ナチュラル寄りのフェミニン」といった言い方が成立するのはそのためです。目安としては、全身の7割を軸にする系統でそろえ、残りの3割で別の系統を混ぜると散らかりません。軸を決めておくと、買い物のときに迷う時間が減ります。
— メグラシ編集部







