骨格ウェーブのスーツ|肩先の出とジャケット着丈、2か所で決まる

骨格ウェーブのスーツは、色でも形の名前でもなく、肩の縫い目の位置と、着丈が止まる高さの2か所で決まります。
肩の縫い目が、肩の骨の出っぱりより外へ1.5cm以上出ていないこと。着丈が、ヒップのいちばん高い位置より上で止まっていること。この2つが揃っていれば、あとの調整はボトムスと中に着るもので効きます。
逆に、この2つを外した一着は、素材を上げても色を変えても戻りません。上半身の布が浮き、腰から下に布が集まり、体の縦の線が途中で切れるからです。
まず測る|手元の一着で3分、当てるのは2か所だけ
鏡の前で、着たまま測ります。必要なのは定規かメジャー1本です。
1か所目は肩です。肩の先に指を滑らせると、骨が出っぱって止まる場所があります。そこに人差し指を置いたまま、ジャケットの肩と袖の縫い目がどこにあるかを見ます。指の真上なら0cm、外へずれているならその距離を測ります。
2か所目は着丈です。横向きで鏡に立ち、お尻のいちばん高く出ている高さに手を当てます。ジャケットの裾がその高さより上で止まっているか、同じ高さか、下まで覆っているかを見ます。
この2つの数字が出れば、その一着に何が言えるかはもう決まっています。
軸1|肩先の出は0〜1cm。1.5cmを超えると胸の上に布が浮く
骨格ウェーブと呼ばれる体は、肩から胸にかけての厚みが前後方向に薄く出ることが多いタイプです。薄いこと自体はまったく問題ではありません。問題になるのは、既製のジャケットの肩の作りが、その薄さを前提にしていないときです。
肩の縫い目が骨より外に出ると、その分だけ布が体から離れます。離れた布は支えるものがないので、肩先から胸の上にかけて空洞ができ、腕を下ろすと縦のしわが1本入ります。これが「ジャケットに着られている」と感じるときの正体です。
目安はこうです。
- 0〜1cm:成立。腕を上げ下げしても、肩の布が独立して動かない
- 1〜1.5cm:条件つき。肩に厚みのあるものを内側に着るか、袖を通したときの空洞を確かめてから
- 1.5cm以上:外れる。ここは詰めるしかない場所で、着方では戻らない
もうひとつ、肩の中に入っている芯の厚みも見てください。指でつまんで5mmを超える厚みがあると、薄い上半身の上に段ができます。芯を抜ける作りなら、抜くだけで印象が変わります。
判定を確かなものにするには、腕を上げ下げしてみてください。腕を下ろしたときに、肩先の布が体より遅れて落ちてくるなら、そこに空洞があります。同時に落ちるなら、布は肩に乗っています。動かしたときの時間差は、静止した鏡では見えない情報です。試着室では必ずこれをやってください。
軸2|着丈はヒップの高い位置より上。覆う丈は腰から下に布が集まる
着丈は、長い短いではなく「どこで止まるか」で見ます。
基準はヒップのいちばん高い位置です。ここより上で止まる丈なら、上半身と下半身の切り替えがその高さで起き、そこから下は一続きの縦になります。ヒップ全体を覆う丈になると、切り替えが見えなくなり、腰から下の布の面積が増えます。
ウエストの細い位置から測って8〜16cmのあいだで止まる着丈が、扱いやすい範囲です。この範囲は身長で動きます。身長が低めなら8〜12cm、高めなら12〜16cmで考えてください。
長い丈が絶対に成立しないわけではありません。成立させるには、ボトムスの留め位置をへその高さまで上げて、下に見える縦の長さをジャケットの着丈より長くする必要があります。この条件を満たせないなら、丈を詰めるほうが確実です。
軸3|下襟の幅は6〜8cm。胸の面と釣り合わせる
下襟(ラペル)の幅は、胸の上にどれだけの面積を置くかを決めています。
薄い上半身に幅の広い下襟を置くと、胸から肩にかけての面が襟に占領され、そこだけが重くなります。逆に細すぎると、体と襟の間に間延びした空きが出ます。
- 6〜8cm:釣り合う
- 8〜10cm:条件つき。中の首まわりを開けて縦を作る
- 10cm以上:外れやすい
測るのは、下襟のいちばん広いところの幅です。左右の襟の内側の距離ではありません。
軸4|留め位置の高さは、体のいちばん細い位置から上に0〜5cm
前を留めたときに、いちばん上の留め位置がどこに来るかを見ます。
ウェーブと呼ばれる体は、胴のいちばん細い位置が比較的高いところに出ます。ここより下で留まるジャケットは、細い位置を布で通り過ぎてしまうので、体の形が服に反映されません。
指標は簡単で、体のいちばん細い高さに手を当て、留め位置がその高さから上へ0〜5cmの範囲にあるかです。5cmより下で留まるなら、その一着は前を開けて着て、中に着るもので細い位置を見せるほうが早く決まります。
軸5|上下の丈の比。ジャケットの下に見える縦が、着丈より長いか
ここまでの4つが単品の話だとすれば、5つ目は組み合わせの話です。
ジャケットの裾から靴までの縦の長さを、ジャケットの着丈と比べます。下のほうが長ければ縦が続き、同じか短ければ二段に割れます。
同じジャケットでも、ボトムスの留め位置を3cm上げるだけでこの比は変わります。手元の一着が微妙だと感じるとき、直すのはジャケットではなくボトムスの位置であることが多いです。
4つの軸を組み合わせる|成立・条件つき・戻せない
| 軸 | 成立する範囲 | 条件つき | 戻せない |
|---|---|---|---|
| 肩先の出 | 0〜1cm | 1〜1.5cm | 1.5cm以上 |
| 着丈(細い位置から) | 8〜16cm | 16〜20cm | 20cm以上 |
| 下襟の幅 | 6〜8cm | 8〜10cm | 10cm以上 |
| 留め位置の高さ | 細い位置+0〜5cm | +5〜8cm | +8cm以上 |
読み方は、成立が3つ以上なら買う、条件つきが2つまでなら直して使う、戻せないが1つでもあれば見送るです。とくに肩の「戻せない」は、ほかの3つがすべて成立していても覆せません。
割れたとき①|肩は合うのに、着丈が長い
いちばん多い組み合わせです。肩で選ぶと丈が余ります。
このときは丈のほうを動かします。順番は3つあります。まず、裾を詰められる作りかを見ます。裏地の始末が単純で、裾の内側に折り返しの余りがあるなら、数センチは詰められます。次に、ボトムスの留め位置を上げて比を戻します。最後に、内側に着るものを裾から出さないようにします。
3つとも打てないなら、その一着は前を開けて着る一着として扱ってください。前を開けると、体の中央に縦の空きができ、覆っている面積が視覚的に減ります。
割れたとき②|着丈は合うのに、肩が浮く
こちらは着方では戻りません。ただし、打てる手はあります。
肩の芯が入っている作りなら、抜いてもらうと縫い目の位置は変わらないまま厚みだけ落ちます。それでも1.5cm以上出ているなら、肩を詰める直しになります。肩の直しは袖を一度外す作業になるので、直す前に、その一着を今後どのくらい着るかを先に決めてください。
直さない選択もあります。中に着るものを、肩に丸みの出るものに替える方法です。空洞の底が上がるので、しわが1本減ります。応急ですが、年に数回しか着ない一着ならこれで足ります。
ボトムスの側で決める2つ|上端の高さと、丈の止まる位置
ジャケットが決まったあと、結果を左右するのはボトムスです。ここは2つしか見ません。
上端の高さは、体のいちばん細い位置に合わせます。細い位置より3cm以上下に上端があると、腰の丸みの始まる場所に布が乗るので、そこが横に広がる面になります。ウェーブと呼ばれる体は、細い位置が比較的高いところに出るぶん、この差が生まれやすいのです。
丈の止まる位置は、スカートなら膝の皿の中心から上下5cmの帯を避けてください。膝の皿の真ん中で止まると、脚の線がその高さで一度切れます。上へ外すか下へ外すか、どちらでも構いません。パンツなら、くるぶしの骨が見えるか、完全に隠れて靴の甲に触れるかの二択にします。中途半端に骨の上で止まる丈が、いちばん線が途切れます。
この2つを守れば、ジャケットの着丈が多少長くても、全身の比は戻せます。逆にこの2つを外すと、ジャケットが完璧でも上下が別々に見えます。
中に着るもので変わること|首の開きと、裾の収め方
スーツは3枚で1つの姿になります。中の一枚をどう扱うかで、同じ組み合わせが別のものに見えます。
首の開きは、ジャケットの襟の開きと同じ方向へ揃えます。 襟が深く開く一着なら、中も開ける。襟が高い位置で閉じる一着なら、中も首に沿わせる。方向がぶつかると、胸元だけに情報が集まって、そこで視線が止まります。
裾は、原則として内側に収めます。ウェーブと呼ばれる体では、上端の高さが体の細い位置に来ていることが多いので、収めるとその高さが見えます。外に出す場合は、出した長さがジャケットの着丈の半分以下になるようにしてください。半分を超えると、ジャケットの下に二段目の裾ができて、横の線が2本並びます。
割れたとき③|すべて合うのに、着ると気持ちが乗らない
寸法が全部合っているのに違和感が残るときは、たいてい表面の性質が原因です。
布が硬く、体に触れずに立っているときは、薄い上半身との間に空気の層ができます。手のひらで押して、離したときに戻る速さを見てください。1秒以内に元の形へ戻る布は、体に沿うより先に自分の形を保とうとします。
このときは、中に着るものを柔らかいものにして、ジャケットとの間の落差を埋めます。落差が小さくなると、硬い布でも体の側に寄ってきます。
場面で動かす|行事、通勤、人前で話す日
同じ一着でも、場面によって効かせる場所が変わります。
行事の日は、前を留めて着る時間が長くなります。留め位置の高さと、留めたときの横しわの有無を先に確かめてください。長時間留めるなら、留めたまま座って、留め位置の左右に布が引かれないかを見ます。
通勤で毎日着るなら、優先は着丈です。座る時間が長いほど、丈が長い一着はしわの寄る位置が固定されます。
人前で話す日は、上半身が正面から見られます。下襟の幅と、中に着るものの首の開きを揃えてください。
上下を分けて買う判断|揃いにこだわらない
肩と着丈の両方が合う上が見つからないなら、上下を分けて組むほうが結果は良くなります。
分けるときの条件は2つです。色の濃さが近いことと、布の表面の光り方が近いことです。屋外の光の下で並べて、片方だけ光るなら別物に見えます。逆にこの2つが揃っていれば、織り方が多少違っても揃いに見えます。
分けて組む利点は、上下それぞれで丈と幅を選べることです。上の着丈が短めなら、下は幅を細めにして縦を伸ばす、という調整が同時にできます。
3分で決める手順|売り場でも、家の鏡の前でも
- 肩の骨に指を当て、縫い目の出を測る(1.5cm以上なら、ここで終わり)
- 横向きになり、裾がヒップの高い位置より上か下かを見る
- 下襟の幅を測る
- 前を留め、いちばん上の留め位置が細い位置からどれだけ上かを見る
- 座って、留め位置の左右に横しわが出ないかを見る
この順番が大事です。戻せない場所から先に見ると、時間を使う前に終わります。
まとめ|持ち帰るのは、2つの数字
覚えて帰るのは、肩先の出の数字と、着丈がヒップの高い位置より上かどうか。この2つです。
下襟と留め位置は、その2つが揃ってから効いてくる調整です。上下の比は、買ったあとにボトムスで動かせます。
つまり、選ぶときに全部を見る必要はありません。戻せない2か所だけを先に確かめて、あとは手元で動かす。 スーツはそういう買い方をしたほうが、結果として長く着られます。
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よくある問い
- Q. ジャケットの肩が合うサイズだと、胸まわりが窮屈になります。どちらを優先しますか
- 肩を優先してください。肩の縫い目の位置は、着てしまうと直せる幅がいちばん狭い場所です。胸まわりは、留め具を上から2番目だけにする、前を開けて着る、内側に着るものを薄いものに替える、の3つで数センチぶんの余裕が作れます。ただし前を留めたときに留め位置の左右に横方向のしわが出るなら、それは布の量が足りていない合図なので、そのサイズは前を開けて着る一着として扱ってください。
- Q. 着丈が長いジャケットしか手元にありません。どう着ればいいですか
- ボトムスの腰の位置を上げて、上下の丈の比を戻します。ジャケットの裾が太ももの上に乗る長さなら、ボトムスの留め位置をへその高さに置き、内側のものを外に出さずに収めてください。ジャケットの下に見えている布の縦の長さが、ジャケットの着丈と同じかそれより長くなると、上下が二段に割れて見えます。裾を数センチ詰められる作りなら、詰めるほうが早く決まります。
- Q. パンツとスカート、どちらのほうが合わせやすいですか
- ジャケットの着丈で決まります。着丈が短めで腰の位置が高く見えている一着なら、どちらでも成立します。着丈が長めの一着に合わせるなら、縦が続くほうが釣り合うので、細めのパンツか、膝下で止まる細身のスカートのほうが扱いやすくなります。広がるスカートを長めのジャケットに合わせると、腰から下に布が二重に集まるので、その組み合わせだけは避けてください。
- Q. 上下を別で買っても大丈夫ですか
- 肩と着丈が合う上が見つからないときは、別で買うほうが結果は良くなります。分けて買う条件は2つ、色の濃さが近いことと、布の表面の光り方が近いことです。同じ濃さの黒でも、片方だけ表面が光ると別の一着に見えます。屋外の光で並べて確かめてから決めてください。
- Q. 中に着るものは何を基準に選びますか
- 首の詰まり具合を、ジャケットの襟の開きより浅くするか深くするかで決めます。ジャケットの襟が開いている一着なら、中の首まわりも同じ方向に開けたほうが縦が続きます。逆に襟が高い位置で閉じる一着なら、中は首に沿うものを選んでください。開きの向きが上下でぶつかると、胸元だけが騒がしく見えます。
— メグラシ編集部




