浴衣の着方と帯|秋に着るなら、半衿と足袋の有無で帯の位置を決める

**あなたが秋に浴衣を着るなら、最初に決めるのは、半衿と足袋を足すかどうかです。**半衿をのぞかせて足袋をはくなら、帯の上の線をアンダーバストに置いて、着物に近い高さで締めます。素足で浴衣として着るなら、みぞおちとおへその中間に帯の中心が来る高さにします。この2つで、衿の合わせ方も帯の位置も変わります。
浴衣の着方を調べると、たいていは夏の花火大会や夏祭りに向けた手順が出てきます。けれど、秋祭りや紅葉の散歩、旅先の宿で過ごす時間に浴衣を着たいこともあります。秋に浴衣を着るときは、夏と同じ着方をそのまま使うより、少しだけ着物に寄せたほうが、季節の空気になじみます。
この記事では、秋に浴衣を自分で着る手順を、半衿と足袋を足す着方と、足さない着方の2つに分けて書きます。帯の結び方そのものは浴衣の帯の結び方に、秋の半幅帯の変わり結びは半幅帯 変わり結び 大人|秋の着物は、羽織の下に収まる厚みで選ぶにまとめています。ここでは、秋に浴衣を着るときの、衿と帯の位置に絞ります。
結論:半衿と足袋を足すかどうかで、衿と帯の位置が変わる
秋の浴衣の着方は、次の2つに分かれます。
| 着方 | 首元と足元 | 衿の合わせ | 帯の位置 |
|---|---|---|---|
| 着物風に着る | 半衿をのぞかせ、足袋をはく | 喉のくぼみが隠れる深さ | 帯の上の線をアンダーバストに |
| 浴衣として着る | 素足、半衿なし | 喉のくぼみが見える深さ | みぞおちとおへその中間に帯の中心 |
**どちらを選ぶかで、帯を締める高さが変わります。**着物風に着るなら、首元に半衿の白や色が入るぶん、上半身の重心が上がります。帯もそれに合わせて高めに締めると、首元から帯までの間がすっきりまとまります。
浴衣として着るなら、首元が軽く開いて、肌が少し見えます。帯を高く締めすぎると、首元と帯の間が詰まって見えるので、少し低めの位置に置きます。
どちらがよいということはありません。気温、行き先、一緒に行く人の装いで選んでください。迷ったときの決め方は、あとの「どちらとも取れるとき」で書きます。
先に決めること|浴衣として着るか、着物風に着るか
着る前に、どちらの着方にするかを決めておきます。決める手がかりは、気温、行き先、一緒に行く人の3つです。
気温が高く、日中に汗ばむくらいの日なら、浴衣として着るほうが涼しく過ごせます。半衿をつけた襦袢を中に着ると、1枚ぶん暖かくなるので、暑い日にはかえって汗をかきます。
気温が下がって、朝晩に肌寒さを感じる日なら、着物風に着るほうが体が冷えにくくなります。襦袢を1枚重ねるだけで、首元と腕まわりの冷えがかなり変わります。足袋をはくと、足先の冷えも防げます。
行き先も手がかりになります。秋祭りや宿の中なら、浴衣として着ても浮きません。紅葉の名所を歩いたり、食事の店に入ったりするなら、着物風に寄せておくと落ち着いて見えます。
一緒に行く人が着物を着るなら、自分も着物風に寄せると並んだときにそろいます。一緒に行く人が洋服なら、どちらで着ても構いません。
秋の行き先ごとの決め方
秋に浴衣を着る場面は、だいたい次の4つに分かれます。それぞれで、どちらの着方が合うかを挙げておきます。
秋祭りは、浴衣で出かける人が多い場面です。浴衣として着ても、まわりから浮くことはありません。夜まで外にいるなら、夕方からの冷えに備えて、足袋をバッグに入れておきます。
紅葉の散歩は、昼間の明るい光の中を歩く場面です。地色の濃い浴衣を着物風に着ると、紅葉の色とよくなじみます。歩く距離が長いなら、下駄より草履のほうが足が疲れにくく、足袋をはいたほうが鼻緒で指の間を痛めにくくなります。
食事の店に入るときは、着物風に寄せておくと落ち着いて見えます。座敷に上がることもあるので、足袋をはいておくと、素足で上がるより安心です。
旅先の宿で過ごすときは、浴衣として着るのが気楽です。部屋や館内でくつろぐなら、半衿や足袋は省いても構いません。宿の外に出かけるなら、着物風に寄せて、羽織を1枚足しておきます。
秋に浴衣を着てよい目安|気温と生地
秋に浴衣を着るかどうか迷ったら、当日の最高気温と、浴衣の生地を見てください。
最高気温が25度を超える日は、浴衣として着ても季節外れには見えません。半衿と足袋を足すかどうかは好みで選べます。
最高気温が20度から25度の日は、着物風に寄せるのがおすすめです。半衿をつけた襦袢を中に着て、足袋をはきます。浴衣だけだと、夕方から肌寒く感じ始めます。
最高気温が20度を下回る日は、浴衣1枚では寒くなります。着物風に着たうえで、羽織や薄手のコート、ストールを足してください。それでも寒そうなら、浴衣ではなく、木綿やウールの着物を選ぶほうが楽です。
生地も見ておきます。浴衣には、透け感のある薄い生地から、しっかり目の詰まった生地までいろいろあります。光にかざしたとき、向こうが透けて見える薄い生地は、夏の印象が強く出ます。秋に着るなら、目の詰まった綿の生地や、少し厚みのある生地の浴衣を選ぶと、季節に合いやすくなります。
色や柄も、季節の印象を左右します。白地に涼しげな柄の浴衣は、夏の印象が強くなります。秋に着るなら、藍や紺、えんじ、深い緑、茶色など、地色が濃いめの浴衣が合います。柄も、秋草や紅葉、幾何学模様など、季節を限定しないものが使いやすいです。
着る前にそろえる物
着る前に、必要な物をそろえておきます。着物風に着るか、浴衣として着るかで、少し変わります。
どちらの着方でも使う物は、次の通りです。
- 浴衣
- 半幅帯
- 腰ひも2本
- 伊達締め1本
- 帯板1枚
- 和装用の肌着、または襟ぐりの広い肌着
着物風に着るときは、これに次の物を足します。
- 半衿をつけた襦袢、または半衿つきの肌着
- 衿芯
- 足袋
腰ひもは、浴衣の裾の長さを決めるときと、おはしょりを整えるときに使います。伊達締めは、衿を合わせたあとに胸のあたりで押さえるために使います。帯板は、帯の前側に入れて、帯の幅をまっすぐに保ちます。
衿芯は、半衿の中に入れて衿の形を保つための細長い板です。着物風に着るときは、衿芯を入れると首元がきれいに立ちます。浴衣として着るときは、衿芯は使わないことが多いです。
足元は、着物風なら足袋に草履か下駄、浴衣としてなら素足に下駄を合わせます。秋は、素足の下駄だと足先が冷えやすいので、迷ったら足袋をはいておくと安心です。
バッグも、季節に合わせて見直しておきます。夏の浴衣でよく使うかごのバッグは、秋になると少し涼しげに見えすぎることがあります。秋に着るなら、布や革の小さめのバッグ、ちりめんのような柔らかい布の巾着を合わせると、季節の空気になじみます。羽織やストールを持ち歩く日は、それが入る大きさのものを選んでおくと、脱いだあとの置き場所に困りません。
着方①|肌着と、半衿をつけた襦袢
ここからは、実際に着る手順です。まずは肌着と、着物風にするなら半衿をつけた襦袢から着ます。
肌着は、和装用のものか、襟ぐりが広く開いた肌着を選びます。首元から肌着が見えないように、襟ぐりは浴衣の衿より深く開いているものを選んでください。
着物風に着るなら、肌着の上に半衿をつけた襦袢を着ます。半衿の中に衿芯を入れておきます。襦袢は、背中の中心を体の中心に合わせ、衿を首の後ろで少し下げます。これを衣紋を抜く、といいます。抜く量は、首の後ろの骨から、こぶし1つぶんくらいが目安です。
衿を前で合わせるときは、右の衿を先に体に沿わせ、その上に左の衿を重ねます。合わせる深さは、喉のくぼみが隠れるくらいです。半衿は、あとで浴衣を着たときに、浴衣の衿から指1本から2本ぶんのぞく程度になるようにします。
襦袢の衿を合わせたら、胸の下あたりで細いひもか伊達締めを締めて押さえます。ここでしっかり押さえておくと、浴衣を着たあとも半衿の見え方が崩れにくくなります。
浴衣として着るなら、この手順は省きます。肌着の上に、そのまま浴衣を羽織ります。
襦袢がないときは、付け衿か半衿つきの肌着で代える
着物風に着たいけれど、襦袢を持っていないという人も多いと思います。その場合は、首元に半衿が見えれば十分なので、襦袢を一式そろえなくても代わりの方法があります。
1つは、半衿があらかじめ縫いつけられた肌着です。上半身用の肌着の衿に半衿がついていて、肌着を着るだけで首元に半衿が入ります。襦袢を着るより1枚少ないので、気温が高めの日でも暑くなりにくいのが利点です。
もう1つは、衿の部分だけを首にかけて使う付け衿です。肌着の上から首にかけ、ひもで胸の下に留めるだけで、半衿が見える形になります。手持ちの肌着をそのまま使えるので、まず試してみたいときに向いています。
どちらの場合も、衿芯を入れて首元の形を保つと、着物風の印象がしっかり出ます。浴衣の衿から半衿がのぞく幅は、指1本から2本ぶん。のぞく幅が広すぎると首元が重く見え、狭すぎると半衿を足した印象が出にくくなります。鏡を見ながら、浴衣の衿を合わせるときに調整してください。
胸元やウエストのくびれが大きいときは、タオルで平らにする
着物も浴衣も、体の凹凸が少ないほうが、衿や帯がきれいに収まります。胸元が豊かな人や、ウエストのくびれがはっきりしている人は、帯を締めると帯の上の端が胸に押されて折れたり、帯がくびれに沿って斜めになったりしやすくなります。
その場合は、薄手のタオルを1枚、ウエストのくびれに巻いてから浴衣を着ると、帯がまっすぐ収まります。タオルは、二つ折りにしてウエストに巻き、ひもで軽く留めておくだけで十分です。胸元が気になるなら、胸の下のくぼみに薄いタオルを当てておくと、衿の合わせが崩れにくくなります。
体型を補うことは、体を隠すためではなく、帯と衿をきれいに保つための下準備です。着物風に着るときほど、この下準備が効いてきます。
着方②|浴衣を羽織って、背中の中心と裾の長さを決める
次に浴衣を羽織ります。袖に腕を通したら、両方の衿先をそろえて持ち、背中の縫い目が体の中心に来るように合わせます。
背中の中心が合ったら、裾の長さを決めます。両方の衿先を持ったまま、浴衣を少し持ち上げて、裾がくるぶしの骨が隠れるくらいの高さに来るようにします。
ここで、着物風か浴衣としてかで、裾の長さが少し変わります。着物風に着るときは、裾をくるぶしの骨が隠れるくらいにして、足袋の上に少しかかる程度にします。浴衣として着るときは、くるぶしの骨が少し見えるくらいにすると、軽やかに見えます。
長さが決まったら、まず右側の身ごろを左の腰骨に向けて合わせます。次に左側の身ごろを、その上から右の腰骨に向けて重ねます。左の身ごろの裾は、右の身ごろの裾より、こぶし半分ほど持ち上げておくと、歩いたときに裾が開きにくくなります。
身ごろを重ねたら、腰骨の少し上で腰ひもを締めます。腰ひもは、体の前から後ろに回して交差させ、前に戻して結びます。きつく締めすぎず、手のひらが1枚入るくらいのゆとりを残します。
着方③|衿を合わせる:喉のくぼみと衣紋の抜き
腰ひもを締めたら、衿を合わせます。ここが、着物風か浴衣としてかで、もっとも違いが出る場所です。
着物風に着るときは、浴衣の衿を、襦袢の半衿に沿わせるように重ねます。半衿が浴衣の衿から指1本から2本ぶんのぞくようにします。衿を合わせる深さは、襦袢と同じく、喉のくぼみが隠れるくらいです。首の後ろの抜きも、襦袢の衣紋に合わせて、こぶし1つぶんくらいにします。
浴衣として着るときは、衿を少し浅めに合わせます。喉のくぼみが見えるくらいの深さにすると、首元が軽く開いて、浴衣らしい印象になります。首の後ろの抜きは、こぶし1つぶんより少し少なめでも構いません。抜きすぎると、首元が開きすぎて見えます。
衿を合わせたら、胸の下あたりで伊達締めを締めて押さえます。伊達締めは、衿が動かないように、胸の下に沿わせて締めます。
衿の合わせ方で迷ったら、鏡を正面から見て、首元の衿がアルファベットのYの形に見えるかを確かめてください。左右の衿が首の中心で交わり、そこから下へまっすぐ伸びていれば、きれいに合っています。左右の衿の角度がそろっていないと、首元が傾いて見えます。
着方④|おはしょりを整える
衿を押さえたら、おはしょりを整えます。おはしょりは、腰ひもの上に出ている浴衣の余り部分のことです。
身八つ口という、脇の下の開いた部分から手を入れて、前と後ろのおはしょりを下に向けてなでおろします。しわが寄っているところは、手のひらで横に引いて伸ばします。
おはしょりの長さは、人差し指の長さくらいが目安です。長すぎるときは、腰ひもの位置で内側に折り上げて調整します。短すぎるときは、腰ひもを少し下げて締め直します。
着物風に着るときは、おはしょりをまっすぐ平らに整えると、帯の下の線がきれいに見えます。浴衣として着るときも同じですが、少しくらい斜めになっていても、浴衣の軽さに合って気になりにくいです。
おはしょりを整えたら、背中のしわを脇へ寄せます。両手を背中に回して、背中の中心から脇に向けて布をなでつけます。脇に寄せたしわは、帯の下に収まります。
帯の位置の境目|みぞおちとおへその間のどこで締めるか
おはしょりが整ったら、帯を締めます。ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。
帯の位置は、みぞおちとおへその間のどこで締めるかで決まります。まず、自分のみぞおちとおへその位置を確かめ、その間の長さを指で測ってみてください。多くの人で、指を横に並べて4本から6本ぶんくらいです。
着物風に着るときは、帯の上の線をアンダーバストのあたりに置きます。帯の中心は、みぞおちから指2本ぶんほど下になります。首元の半衿と、高めの帯がつり合って、上半身がすっきり見えます。
浴衣として着るときは、帯の中心を、みぞおちとおへその中間に置きます。着物風よりも指1本から2本ぶん低い位置です。首元が軽く開いているので、帯を少し低めにすると、上半身の間がほどよく保たれます。
どちらの場合も、帯の前側に帯板を入れて、帯の幅をまっすぐ保ちます。帯板がないと、帯が体のくびれに沿って曲がり、上の端が折れて細く見えます。
鏡の横向きで、帯が水平になっているか見る
帯の高さが決まったら、鏡に対して横を向いて、帯の線を確かめてください。正面から見ると気づきにくいのですが、横から見ると、帯の前側と後ろ側の高さの違いがよく分かります。
着物も浴衣も、帯は前側を少し下げ、後ろ側を少し上げて、横から見るとわずかに前下がりになるのがきれいな形です。前と後ろの高さの差は、指1本ぶんほどが目安です。前側が上がりすぎていると、お腹が前に出て見え、後ろ側が下がりすぎていると、帯の結び目が腰のあたりまで下がって見えます。
手鏡を使って後ろ姿も確かめておくと、結び目の位置まで分かります。結び目は、背中の中心で、肩甲骨の下のあたりに来ると、後ろ姿がすっきり見えます。
帯を締めるときは、体の前で帯の端を持ち、背中に回して2周巻きます。1周目で帯板を入れ、2周目で締めます。締める強さは、指が2本入るくらいのゆとりを残します。きつく締めすぎると、座ったときや食事のときに苦しくなります。
帯の結び方|秋は結び目の大きさを控える
帯の結び方は、夏の浴衣と同じ結び方を使えます。ただ、秋に着るときは、結び目の大きさを少し控えると、季節に合いやすくなります。
夏の浴衣でよく見る、大きく羽根を広げた華やかな結び方は、秋の落ち着いた空気の中では少し目立ちすぎることがあります。秋は、羽根を小さめにまとめたり、平たく背中に沿わせる結び方を選んだりすると、全体が落ち着いて見えます。
よく使われるのは、文庫結びを小さめにした形や、貝の口のように平たく結ぶ形です。どちらも結び目が背中から大きく飛び出さないので、羽織を上に重ねても形が崩れにくいです。
秋は、夕方から冷えてきて羽織を重ねることも多くなります。羽織の下に収まる結び方を選んでおくと、上着を足したときにも背中がもたつきません。羽織に収まる結び方のくわしい選び方は、半幅帯の変わり結びの記事で扱っています。
帯締めと帯揚げを足すと、着物風に一歩近づく
着物風に着るときは、半幅帯の上に細い帯締めを1本足すだけで、ぐっと着物らしい印象になります。帯締めは、帯の幅の真ん中あたりを通して、体の前で結ぶか、前で金具を留めるだけの簡単なものでも構いません。
帯締めの色は、帯の色と浴衣の地色のどちらにも合う色を選びます。迷ったら、浴衣の柄の中に入っている色を1つ拾うと、全体がまとまります。秋なら、からし色や深い赤、くすんだ緑など、季節の色を差し色にすると、季節の装いらしさが出ます。
帯揚げは、本来はお太鼓結びの帯枕を包むためのものですが、半幅帯でも、帯の上の端に細く見せる形で使うことがあります。帯の上から指1本ぶんほどのぞかせると、首元の半衿と帯の間に色がつながって、上半身に統一感が生まれます。帯揚げまで足すと、着物にかなり近い印象になるので、行き先が食事の店や紅葉の名所など、少しあらたまった場面で使ってみてください。
兵児帯を合わせる場合は、柔らかく広がる帯なので、結び目をふんわりさせすぎないようにします。兵児帯の長さの測り方は兵児帯の結び方 大人を、半幅帯と兵児帯を重ねる結び方は浴衣帯と兵児帯の重ね結び|秋は半幅帯から何cm見せるかで決めるを見てください。
どちらとも取れるとき①|半衿だけ、または足袋だけ足したい
着物風にするほどでもないけれど、浴衣のままだと少し季節外れに見える気がする、ということがあります。このときは、半衿だけ、または足袋だけを足す方法があります。
半衿だけを足すときは、首元に半衿が入るので、上半身の印象は着物風に近くなります。帯の位置は、着物風の高さに合わせて、帯の上の線をアンダーバストに置きます。首元に重心が上がっているのに、帯を低く締めると、上半身の間が間延びして見えるからです。足元は素足に下駄でも構いません。
足袋だけを足すときは、首元は浴衣のまま軽く開けておきます。帯の位置は、浴衣として着るときの高さ、みぞおちとおへその中間にします。足袋は、白より色足袋や柄の入った足袋を選ぶと、浴衣の軽さとつり合います。
迷ったら、半衿だけを足してください。首元は顔のすぐ下にあるので、相手の目にいちばん入る場所です。足元は、当日の気温で決めればよいので、出かける直前まで選べます。
どちらとも取れるとき②|帯が、浴衣用の柔らかい半幅帯しかない
着物風に着たいけれど、持っている帯が浴衣用の柔らかい半幅帯しかない、ということもあります。柔らかい帯でも、着物風に着ることはできます。
柔らかい帯は、締めているうちに上の端が折れて、帯が細く見えやすくなります。着物風に着るときは、帯の幅がまっすぐ保たれていることが大切なので、帯板を必ず入れてください。前側だけでなく、体の脇まで回る長めの帯板を使うと、帯の幅がきれいに保たれます。
結び方は、平たくまとまる形を選びます。柔らかい帯で大きな羽根をつくると、時間がたつにつれて羽根がしぼんで、背中で垂れ下がってきます。小さめにまとめると、形が長く保ちやすくなります。
帯の色も見ておきます。浴衣用の帯は、明るい色やはっきりした柄のものが多くあります。秋に着物風に着るなら、浴衣の地色と同じ系統で、少し落ち着いた色の帯を選ぶと、全体がまとまります。手持ちの帯が明るい色しかないなら、帯の上に細い帯締めを1本足すと、帯の印象が締まります。
どちらとも取れるとき③|夕方から冷えてきたら
秋の浴衣で困りやすいのが、夕方からの冷えです。日中は暖かくても、日が傾くと急に肌寒くなります。
出かける前に、夕方の気温も見ておいてください。夕方の気温が20度を下回りそうなら、羽織か薄手のストールを持っていきます。羽織は、帯の結び目を覆う丈のものなら、背中の冷えも防げます。
羽織がない場合は、大判のストールを肩から掛けるだけでも、首元と肩の冷えがかなり防げます。ストールの色は、浴衣か帯の色に合わせると、羽織らないときに手に持っていても違和感がありません。
足元の冷えも忘れないでください。素足に下駄で出かけた日に冷えてきたら、足袋をバッグに入れておくと、途中ではくことができます。足袋をはくと、浴衣として着ていた装いが、着物風に近づきます。そのときは、帯の位置はそのままで構いません。途中で帯を締め直すのは難しいので、足元だけの変更にとどめます。
半衿をつけた襦袢を中に着ている着物風の着方なら、浴衣だけで着るより、夕方の冷えにはずっと強くなります。秋の浴衣で迷ったら、着物風に寄せておくと、夕方まで安心して過ごせます。
どちらとも取れるとき④|旅館で浴衣を着るとき
秋の旅で、宿の浴衣を着ることもあります。宿の浴衣は、自分で持っていく浴衣とは少し事情が違います。
宿の浴衣は、くつろぐための服として用意されていることが多く、帯も細くて柔らかいものが添えられています。部屋や館内で過ごすなら、帯の位置は浴衣として着るときの高さ、みぞおちとおへその中間で十分です。
宿の浴衣で館内を歩くとき、秋は廊下が冷えていることがあります。宿で用意している羽織があれば、それを上に重ねてください。首元が開きすぎていると寒いので、衿をいつもより少し深めに合わせておくと、首元の冷えが防げます。
宿の浴衣のまま外を散歩する場合は、宿の案内を確かめてください。宿のまわりの散歩なら浴衣で歩いてよいところもあれば、館内だけにとどめるよう案内しているところもあります。外を歩くときは、宿の羽織と足袋か靴下を合わせると、秋の夕方でも冷えにくくなります。
自分の浴衣を持っていって、宿で着替えて出かける場合は、ここまでの着方をそのまま使えます。宿の部屋の鏡は小さいことが多いので、出かける前に一度、全身が映る鏡で帯の位置を確かめておくと安心です。
年代で変わるところ
半衿と足袋の有無で帯の位置を決める、という考え方は、年代で変わりません。変わるのは、帯の高さの微調整と、首元の開き方です。
20代から30代前半は、浴衣として着ても、着物風に着ても、どちらでも似合います。浴衣として着るなら、帯の位置を少し低めにして、首元を軽く開けると、若々しい印象になります。着物風に着るなら、半衿に色や柄の入ったものを選ぶと、季節の装いを楽しめます。
30代後半から40代は、着物風に寄せると、落ち着いた印象になります。帯の位置は、着物風の高さを基本にして、首元の衿は喉のくぼみが隠れるくらいに合わせます。半衿は白か、浴衣の地色に近い落ち着いた色を選ぶと、品よくまとまります。
50代以降は、帯の位置を少し高めにすると、上半身がすっきり見えます。着物風の高さよりも、さらに指1本ぶん高めにしても構いません。首元は、衿をやや深めに合わせて、衣紋の抜きも控えめにすると、落ち着いた印象になります。
どの年代でも、無理に若く見せようとしたり、年齢に合わせようとしたりする必要はありません。秋に浴衣を楽しむこと自体が、季節を味わう装いです。
着崩れを直す
最後に、出かけた先での着崩れの直し方をまとめておきます。秋の浴衣は、歩いたり座ったりするうちに、少しずつ崩れてきます。
衿元が開いてきたら、おはしょりの下から手を入れて、下前の衿を引き下げます。次に、上前の衿を同じように引き下げます。これで衿元が締まります。
帯が下がってきたら、帯の上から両手で軽く持ち上げます。帯の位置が大きくずれた場合は、無理に直さず、帯の下に指を入れて、おはしょりを整えるだけでも見た目が戻ります。
裾が開いてきたら、帯の下のおはしょりをめくって、腰ひもの下の上前を引き上げます。上前の裾が少し上がると、歩くときに開きにくくなります。
半衿がのぞく幅が変わってきたときは、身八つ口から手を入れて、襦袢の衿を下に引きます。半衿が浴衣の衿の奥に隠れてしまったら襦袢の衿を少し引き出し、のぞきすぎていたら浴衣の衿を少し重ね直します。人目のある場所で直すのが気になるなら、化粧室の鏡の前で、30秒ほどで済ませられます。
直すための道具として、小さな洗濯ばさみのような和装用のクリップを1つバッグに入れておくと便利です。衿元や袖を一時的に留めておけるので、食事のときに袖をまとめておいたり、着崩れを直す間に衿を押さえておいたりできます。
**秋の浴衣は、着る前に半衿と足袋を決めることから始めてください。**それが決まれば、衿の合わせ方も、帯の位置も、自然に決まります。
よくある問い
- Q. 秋に浴衣を着るのはおかしくありませんか
- 気温が高めの日や、秋祭り、旅館でくつろぐ時間なら、浴衣を着ても浮きません。気になるなら、半衿をつけた襦袢を中に着て、足袋をはいて着物風にすると、季節の境目でも落ち着いて見えます。日中の最高気温が20度を下回る日は、浴衣だけでは寒いので、羽織か薄手のストールを足してください。
- Q. 浴衣の帯はどの高さで締めればいいですか
- 着方によって変わります。半衿と足袋を足して着物風に着るなら、帯の上の線をアンダーバストのあたりに置きます。素足で浴衣として着るなら、みぞおちとおへその中間くらいに帯の中心が来る高さにします。年齢が上がるほど、少し高めに締めると落ち着いて見えます。
- Q. 半衿をつける襦袢を持っていません。どうすればいいですか
- 半衿を縫いつけられる肌着や、衿だけを首にかけて使う付け衿があります。襦袢を一式そろえなくても、首元に半衿が見えれば着物風の印象になります。まずは衿だけを試して、気に入ったら襦袢をそろえる、という順でも十分です。
- Q. 浴衣用の柔らかい半幅帯で、着物風に着ても大丈夫ですか
- 大丈夫ですが、柔らかい帯は締めているうちに上の端が折れて、帯が細く見えやすくなります。帯の中に薄い帯板を入れると、帯の幅がまっすぐ保たれて、着物風の装いに合いやすくなります。結び目は大きく広げず、平たく小さめにまとめるほうが、秋の装いに落ち着きます。
— メグラシ編集部





