法事の服装 女性|自宅で営む日は台所に立つかどうかで選ぶ

**当日、あなたが台所に何回立つかを、先に数えてください。**お坊さんと親戚が来てから帰るまでのあいだに、お茶を淹れる、料理を並べる、湯のみを下げて洗う。その回数が0回なら喪服のまま、1〜2回なら袖が上がる喪服、3回以上なら上下の分かれた黒の服に前掛け。自宅で営む法事の服は、これで決まります。
お寺や斎場に出向く法事なら、参列する人はみな同じ側にいます。ところが自宅で営む法事では、同じ家の中に、座って手を合わせる人と、裏で動き回る人がいます。同じ「法事の服装」でも、この2人に合う服は違います。
この記事では、自宅の法事で台所に立つ人の服を、袖・裾・足元・前掛けの順に決めていきます。座敷で正座する時間の服は正座する座敷では、座った裾と脱いだ足元で選ぶに、迎える家として参列者とどれだけ差をつけるかは法事の服装 施主側の女性にまとめています。この記事はその2つのあいだ、迎える家の中で手を動かす人のための記事です。
結論:台所に立つ回数で、3つの服に分かれる
先に表で示します。表は回数ごとの服の分かれ目で、細かな選び方は後の見出しで書きます。
| 台所に立つ回数 | 服の形 | 気をつける場所 |
|---|---|---|
| 0回(座っている側) | 喪服のワンピースかアンサンブル | 正座したときの裾と、脱いだ足元 |
| 1〜2回(お茶を出す程度) | 喪服のアンサンブル。袖がひじの下まで上がるもの | 袖口と、前かがみになったときの胸元 |
| 3回以上(料理を回す) | 黒の上下に分かれた服と、無地の前掛け | 袖・裾・前掛けの付け外し |
数えるのは、お坊さんが家に着いてから帰るまで、そして会食があるなら親戚が帰るまでのあいだです。前日の準備や、朝早くの掃除は数えません。その時間は、ふだんの服で動いて、人が来る前に着替えればいいからです。
数えてみて0回の人は、ふつうの法事の服で問題ありません。ここから先は、1回以上台所に立つ人のための話です。
1〜2回と3回以上で分けているのは、袖と裾が汚れる確率が、3回目から急に上がるからです。お茶を1〜2回出すだけなら、湯のみを盆に乗せて運ぶ程度で、水に手を入れることはほとんどありません。3回目からは、湯のみを洗う、料理を取り分ける、器を拭くといった水仕事と、前かがみの作業が入ってきます。
前日までに確かめる3つ
台所に何回立つかは、前日までに決まっていることが多いはずです。分からなければ、施主か、台所を取り仕切る人に、次の3つを聞いておいてください。
ひとつめは、会食の料理が仕出しか、手料理かです。仕出しなら、届いたものを器ごと並べるだけなので、台所に立つ回数は少なくなります。手料理なら、温め直す、盛り付ける、取り分けるといった作業が入り、立つ回数は3回を超えます。会食がない法事もあり、その場合はお茶とお菓子だけになります。
ふたつめは、お茶を誰が出すかです。お坊さんにお茶を出す役、親戚にお茶を出す役、湯のみを下げる役が、それぞれ誰なのか。ひとりで全部をする家もあれば、何人かで分ける家もあります。あなたがどの役に入るかで、回数が変わります。
みっつめは、お坊さんが着く時間と、読経の長さです。お坊さんが着いてから読経が始まるまでに、お茶を一度出すことが多いはずです。読経は30分から1時間ほどが多く、そのあいだは座敷に入って手を合わせます。読経が終わると、もう一度お茶か、お膳を出します。この時間割が分かると、座る時間と立つ時間の割合が見えてきます。
聞くときは、「何を着ればいいか」と聞くより、「当日は台所で何をすればいいか」と聞く方が、答えが具体的に返ってきます。服の段を聞くと、多くの人は「いつもの法事の服でいい」と答えます。でも、何をするかを聞けば、「お茶だけお願い」「お膳を運ぶのを手伝って」「洗い物を頼みたい」と、回数につながる答えが返ってきます。その答えを、前の表の回数に当てはめてください。
この3つが分かれば、自分の回数を数えられます。分からないまま当日を迎えると、座る側のつもりで喪服のワンピースを着ていったのに、台所に呼ばれて一日立ちっぱなし、ということが起こります。
台所に立たない人|座る時間の服でいい
0回の人は、座る時間の服を選べば十分です。自宅の法事は、多くの場合、和室か、座卓を置いた部屋で営みます。座布団に正座するか、椅子を用意しているかで、裾の選び方が変わります。
正座するなら、スカートの丈は座ったときに膝が隠れる長さにします。立ったときに膝下10cmほどの丈なら、正座しても膝が出ません。パンツを選ぶなら、座ったときに膝の後ろで布が食い込まない、ゆとりのある形を選んでください。
座る側の人でも、自宅の法事では、帰りぎわに湯のみを下げるのを手伝う、という場面があるかもしれません。それくらいなら、喪服の袖を少したくし上げれば足ります。座る側の人まで前掛けを持っていく必要はありません。
お茶を出す程度の人|袖口と前かがみの胸元
1〜2回の人は、喪服のアンサンブル、つまりワンピースの上に揃いの上着を重ねる形か、上下に分かれた喪服を選びます。ワンピース1枚より、上着を脱ぎ着できる形の方が、台所に立つときと座敷に戻るときで、調整がしやすいからです。
お茶を出すときに気をつけるのは、袖口と、前かがみになったときの胸元です。
袖口は、盆を両手で持って座卓の上に湯のみを置くときに、湯のみや茶托に触れやすい場所です。袖口が広がった形や、手首より長い袖は、湯のみに当たって倒すことがあります。袖口が手首に沿う形か、手首の骨が見えるくらいの袖丈なら、当たりにくくなります。
前かがみの胸元は、正座した人の前に湯のみを置くとき、上半身を深く前に倒すので、襟ぐりが開いて見えやすくなります。襟ぐりが詰まった形か、前にボタンのある上着を羽織っていれば、気になりません。襟ぐりの開いたワンピースの上に上着を重ねている場合は、お茶を出すときだけ上着の前を留めておきます。
お茶を1〜2回出すだけなら、前掛けは要りません。湯のみを洗う役でなければ、水に手を入れる場面がないからです。ただ、急に洗い物を頼まれたときのために、たたんだ前掛けをかばんに入れておくと、その場で困りません。
料理を回す人|上下の分かれた黒の服と前掛け
3回以上の人は、喪服のワンピースを選ばず、黒の上下に分かれた服にしてください。黒のブラウスかニットに、黒のスカートかパンツ。上には黒のカーディガンか、喪服の上着を重ねます。
上下に分けるのは、汚れたときに片方だけ替えられるからです。料理を盛り付けているうちに、袖に汁がはねる、スカートに油が飛ぶ、ということがあります。ワンピースだと全部を替えることになりますが、上下に分かれていれば、汚れた方だけを替えられます。上か下のどちらかの替えを、もう1枚持っていくと安心です。
パンツかスカートかは、立ち座りの回数で決めます。台所と座敷を何度も行き来して、座ったり立ったりを繰り返すなら、パンツの方が裾を気にせずに動けます。読経のあいだだけ座って、あとは台所で立っているなら、スカートでもかまいません。法事でパンツを選ぶときの考え方は一周忌の服装、女性はパンツでいい?でも扱っています。
この服装は、座敷に入ったときにも、喪服と並んで違和感がないことが大切です。黒の色の深さが喪服とあまり違わないもの、光沢の少ない生地を選んでください。ニットを選ぶなら、目の詰まった細い糸のものにします。太い糸のざっくりしたニットは、喪服の隣に座ると、急にふだん着に見えるからです。
袖|ひじの下まで押し上げて、落ちてこないかで選ぶ
台所に立つ人の服で、いちばん大事なのが袖です。
選ぶときに確かめてほしいのは、袖をひじの下まで押し上げて、そのまま落ちてこないかです。手首から10cmほど上まで袖を押し上げ、腕を下に向けて軽く振ってみてください。袖が手首まで落ちてこなければ、水仕事のあいだずっと袖を上げておけます。
袖が落ちてくる服は、袖口が広いか、生地が滑りやすいかのどちらかです。袖口が手首より大きく開いている形は、押し上げても重さで落ちてきます。光沢のある生地や、薄く柔らかい生地も、すぐに滑ります。そういう服を着て湯のみを洗うと、袖口が必ず濡れます。
袖がひじの下まで上がらない服もあります。袖が細すぎて、手首から5cmも押し上げられない場合です。こういう服は、ニットの袖のように伸びる素材でなければ、水仕事には向きません。
いちばん楽なのは、七分袖か、ひじ下までの袖の服です。もともと手首が出ているので、押し上げる必要がありません。喪服の上着の下に七分袖の黒のブラウスを着ておけば、台所では上着を脱いで七分袖になり、座敷では上着を着て長袖に戻れます。
手持ちの服で袖を確かめるときは、前日に一度、台所の流しの前に立って、実際に湯のみを洗うしぐさをしてみてください。蛇口に手を伸ばす、湯のみを裏返して水を切る、布巾で拭く。この3つの動きのあいだに袖が落ちてこなければ、当日もそのまま使えます。途中で一度でも袖が落ちてきたら、袖口が広すぎるか、生地が滑りやすすぎます。その服は座る時間用にして、台所では別の服を中に着ておくのが安心です。
袖を留めるために、輪ゴムや髪ゴムを使う人もいます。袖の上から手首より少し上で留めると、袖が落ちてきません。ただし、座敷に戻る前に外し忘れると目立つので、外す場所と、外したゴムを入れる場所を決めておいてください。前掛けを置く場所に、ゴムも一緒に置いておくと忘れにくくなります。
秋冬は、七分袖だと腕が寒いことがあります。その場合は、袖の伸びる黒のニットを中に着て、台所では袖を押し上げる形にします。ニットの袖は伸びるので、ひじの下まで上げても落ちてきにくく、下ろせば手首まで戻ります。
お坊さんにお茶を出すとき|座敷の入口で整える3つ
台所に立つ人がいちばん人目に触れるのは、お坊さんにお茶を出すときです。お坊さんが着いて読経が始まるまでのあいだと、読経が終わってから帰るまでのあいだ、多くの家で一度ずつお茶を出します。このとき、台所の服のまま座敷に入ってしまわないよう、座敷の入口で整えることを3つに決めておいてください。
ひとつめは、前掛けを外すこと。台所の入口か、座敷の手前の廊下で外して、決めておいた場所にかけます。ふたつめは、袖を下ろすこと。押し上げていた袖を手首まで下ろし、七分袖の上に上着を着ている場合は、上着の前を留めます。みっつめは、靴下を脱ぐこと。ストッキングの上に重ねていた厚手の靴下を脱いで、座敷にはストッキングの足で入ります。
この3つは、慣れれば30秒ほどで終わります。盆にお茶を用意してから整えると、そのあいだにお茶が冷めてしまうので、お湯を注ぐ前に整えておき、整ってからお茶を淹れて運ぶ順番にしてください。
お茶を出すとき、正座しているお坊さんの前に湯のみを置くには、自分も座敷に膝をつくことになります。そのとき、スカートなら裾を膝の下に整えながら座り、パンツなら膝の布を軽く引き上げてから座ると、立ったときにしわが残りにくくなります。お茶を出したら、すぐに台所へ戻らず、一礼してから下がります。服のことを考えずに所作に集中できるよう、整える3つは入口で済ませておくのがいちばんです。
前掛け|無地の暗い色、読経のあいだは外す
料理を回す人は、前掛けを1枚持っていってください。法事の日に前掛けをしてもいいのかと迷う人もいますが、台所にいるあいだなら問題ありません。
色は黒、濃紺、濃い灰の無地にします。柄のあるものや、明るい色、白のものは、台所から座敷に呼ばれたときに目立ちます。生地は、光沢のない綿や麻が扱いやすいです。
形は、首からかけるものより、腰に巻くものの方が向いています。腰に巻く形なら、座敷に入る直前にひもをほどくだけで外せます。首からかける形は、外すときに髪や襟に引っかかることがあり、急いでいると手間取ります。丈は、膝の少し上で止まるものにしてください。膝より長いと、床に置いた盆を取るときにしゃがむと、前掛けの裾が床につきます。
前掛けを外すのは、読経と焼香のあいだと、お坊さんや親戚の前に出るときです。お茶を座敷に運ぶときも、座敷の入口で外して、台所の入口近くにかけておくと決めておくと迷いません。外した前掛けを置く場所は、前日に決めておきます。椅子の背や、台所の入口のフックなど、すぐ手が届いて、座敷からは見えない場所がいいでしょう。
前掛けをするのは、家族の中でも台所を回す人だけで十分です。座る側の親戚まで前掛けをする必要はありません。
足元|ストッキングと、秋冬の床の冷え
自宅の法事では、靴を脱いで過ごします。足元は、座敷で人に見られる場所であり、台所の床に立ち続ける場所でもあります。
座敷で読経に加わるなら、薄手の黒いストッキングが基本です。肌がうっすら透ける、30デニール前後の薄さが、喪服の足元として落ち着きます。素足で座敷に入るのは避けてください。
秋冬の自宅は、台所の床が冷えます。薄いストッキング1枚で台所に長く立っていると、足が冷えてつらくなります。そのときは、ストッキングの上に厚手の黒い靴下を重ねて台所に立ち、座敷に入る前に靴下だけ脱ぐ形にしてください。靴下を脱ぐ場所も、前掛けと同じく台所の入口に決めておきます。
台所で室内履きを使う家なら、黒か濃い色の、音の出ない室内履きにします。かかとのある室内履きは、台所と座敷の行き来で脱ぎ履きが面倒なので、かかとのない形が便利です。座敷の入口で脱いで、そろえて置いておきます。
家族だけの法事で、施主が「暖かくしてかまわない」と言っているなら、60デニール前後の黒いタイツを履いてもかまいません。透けない黒いタイツは、ストッキングよりふだん着に近く見えますが、家族だけの席では気にする人も少ないはずです。親戚が来る法事なら、ストッキングと靴下の重ね方の方が無難です。
秋冬の暖房と、重ねる1枚
秋から冬にかけての自宅の法事では、部屋によって温度が大きく違います。人が集まる座敷は暖房で暖かく、台所は火を使っていても足元が冷え、廊下や玄関は寒い。一日のうちに、この3つの場所を何度も行き来することになります。
この温度差には、脱ぎ着しやすい黒の上着を1枚重ねて対応します。喪服の上着でも、黒のカーディガンでもかまいません。座敷に入るときは着て、台所で火の前に立つときは脱ぐ、という使い方をします。
カーディガンを選ぶなら、前にボタンのある、目の詰まった細い糸のものにします。ボタンが黒か、光らない色のものを選んでください。金色や銀色の光るボタンは、喪の席には向きません。
火の前に立つときは、上着を必ず脱いでください。袖口の広い上着や、裾の長いカーディガンは、コンロの火に近づくと危ないからです。脱いだ上着は、台所の外の椅子の背などにかけておき、座敷に戻る前に着直します。
中に着るものでも温度を調整できます。座敷の暖房が強い家なら、中は薄手のブラウスにして、上着で寒さを足す形にします。座敷も寒い古い家なら、中に薄手の黒い肌着を1枚重ねて、上着を脱いでも寒くないようにしておきます。肌着は、襟ぐりと袖口から見えない形を選んでください。前かがみでお茶を出すときに、襟ぐりから白い肌着がのぞくと、黒い服の中でとても目立ちます。
厚手の上着や、毛足の長い素材は避けます。座敷では暖房で暑くなりやすく、脱ぐ機会も多いので、薄手のものを重ねる方が調整しやすいはずです。
どちらとも取れる立場|迎える側か、手伝う側か
自宅の法事で、いちばん迷うのが、自分が迎える側なのか、手伝う側なのか分からない場合です。たとえば、施主の妻の妹として手伝いに来た人、嫁いだ先の義実家で営む法事に出る人、実家で営む親の法事に、結婚して家を出てから帰ってくる人。こうした立場の人は、座敷に座る親戚の一人でもあり、台所を手伝う家族の一人でもあります。
決め方は、迎える側の服を着て、前掛けを1枚持っていくことです。
迎える側の服、つまり喪服のアンサンブルか、黒の上下に上着を重ねた服を着ていけば、座敷に座る側に回っても、参列者より軽く見えることはありません。手伝いを頼まれたら、上着を脱ぎ、袖を押し上げ、前掛けをすれば台所に立てます。逆に、手伝う側のつもりで黒のニットとパンツだけで行くと、座敷に呼ばれたときに、喪服の親戚の中で一人だけ軽く見えてしまいます。
そのうえで、当日の動きで分けてください。着いてすぐ台所を任されたら、手伝う側として動き、読経の時間だけ座敷に入る。着いても台所に呼ばれなければ、座る側として過ごし、帰りぎわに片付けを手伝う。どちらに転んでも、服は同じで済みます。
義実家の法事で、台所に入っていいのか分からない場合もあります。その場合は、着いてすぐに、台所を取り仕切っている人に「何か手伝えることはありますか」と聞いてください。頼まれたら前掛けを出し、頼まれなければ座る側で過ごします。前掛けを持っていることは、聞いたときに相手にも伝わるので、頼みやすくなるはずです。
親戚の家で営む法事に、手伝いとして呼ばれた場合も同じです。手伝いに呼ばれたからといって、最初から前掛けをして玄関を入ると、ほかの親戚と顔を合わせたときに、どの立場で来たのかが分かりにくくなります。玄関では迎える側に近い服で挨拶をして、台所に入ってから前掛けをする。この順番を守れば、親戚として来たことも、手伝いに来たことも、両方が伝わります。
立場が決まらないときにもうひとつ役に立つのが、上着を持っていくかどうかの判断です。迎える側の服を着ていく場合でも、上着だけは脱ぎ着しやすいカーディガンにしておくと、台所でも座敷でも使えます。喪服の上着は形がしっかりしている分、台所で脱いでおく場所に困ることがあります。カーディガンなら、たたんで手提げ袋に入れておけます。
もうひとつ、実家の法事に帰ってくる娘の立場では、親が施主として座敷にいるあいだ、台所を回すのが自分になることがあります。この場合は、事前に親と相談して、自分が台所の役になると分かっているなら、最初から料理を回す人の服で行ってください。
施主の妻か娘か|段をどこまで上げるか
施主の妻や娘として、迎える家の中心にいる人は、台所に立つ回数が多くても、座敷では参列者より一段上の服でいることが望まれます。
そのためには、座敷に入るときの服を、参列者の服と同じか、それより一段上にそろえることを先に決めます。参列者が喪服で来るなら、あなたも喪服。参列者が略喪服で来るなら、あなたは喪服か、略喪服のいちばん上。台所に立つための工夫は、その服の上に足すか、その服を脱いで足すかで行います。
具体的には、喪服のアンサンブルの上着を、座敷では着て、台所では脱ぐ形がいちばん合わせやすいはずです。上着の下に、七分袖か、袖の上がる黒のブラウスを着ておけば、台所では十分に動けます。座敷に戻るときは、前掛けを外し、上着を着て、靴下を脱ぐ。この3つで、迎える家の服に戻れます。
迎える家として参列者とどれだけ差をつけるかは、法事の服装 施主側の女性で詳しく書いています。
家族だけか、親戚も来るかで、色の下限が変わる
自宅の法事には、家族だけで営むものと、親戚を招いて営むものがあります。どちらかによって、台所に立つ人の服の色の下限が変わります。
親戚を招く法事なら、台所に立つ人も黒を基本にします。喪服と並んで座敷に入ることがあるので、上下とも黒にして、上着も黒にそろえてください。紺や灰色を混ぜると、喪服の黒の中で浮いて見えます。
家族だけで営む法事なら、黒・濃紺・濃い灰まで広げてかまいません。台所に立つ人は、濃紺のニットに黒のスカート、濃い灰のカーディガンに黒のパンツ、という組み方でも大丈夫です。ただ、お坊さんを招くなら、読経のあいだだけは上着を黒にそろえておくと落ち着きます。家族だけの席でどこまで下げられるかは法事の服装 家族のみに、黒以外の色を選ぶときの濃さの目安は法事の服装 カジュアルにまとめています。
回忌によっても変わります。一周忌や三回忌までは、家族だけでも喪服に近い服を着ることが多く、七回忌以降になると、平服で営む家も増えてきます。案内状や施主の言葉で服の段を見分ける方法は七回忌の服装 女性で扱っています。
黒い服に付くものと、その場での落とし方
台所に立つと、黒い服にはいろいろなものが付きます。座敷に戻る前に気づけるよう、付きやすいものを知っておいてください。
いちばん多いのは、白い粉や細かな糸くずです。布巾で器を拭いたとき、ふきんの繊維が袖や前身頃に付きます。小麦粉や片栗粉を使う料理なら、粉が飛びます。黒い服には、こうした白いものがとても目立ちます。
次に多いのが、水はねと油はねです。洗い物の水がはねて、黒い服に白い水じみが残ることがあります。油がはねると、黒い服でも光って見える跡が残ります。
線香の灰も付きます。焼香のあとに台所へ戻り、また座敷に入る、という行き来の中で、灰が袖口や膝に付くことがあります。
これらに備えて、粘着式の小さな衣類用クリーナーを1本、台所の入口に置いておいてください。座敷に戻る前に、袖口、前身頃、膝の3か所をさっと転がせば、糸くずと粉はほとんど取れます。水じみは、乾いたタオルで軽くたたいておけば、乾くと目立たなくなることが多いです。油はねは、その場で落とすのは難しいので、上下に分かれた服の替えを持っていって、汚れた方だけ替えるのが確実です。
ペットのいる家では、毛も付きやすくなります。座敷に入る前のクリーナーを、とくに念入りにかけてください。
付いたものに気づきやすくするために、台所の入口に小さな鏡を1枚置いておく家もあります。座敷に入る前に、自分の前身頃と袖口を鏡で一度だけ見る。それだけで、白い粉や糸くずの多くは見つけられます。黒い服は、明るい台所の照明の下では汚れが見えにくく、座敷の柔らかい光の下で急に目立つことがあります。鏡を置くなら、座敷に近い場所に置いて、座敷と同じくらいの明るさで見るようにしてください。
着替えるかどうかは、時間割で決める
台所に立つ回数が多い人の中には、途中で服を着替えたいと考える人もいるはずです。読経のあいだは喪服で、会食の準備からは動きやすい服で、という形です。
着替えていいかどうかは、時間割で決めます。お坊さんが着いてから帰るまでのあいだは、着替えずにいるのが落ち着きます。お坊さんが帰り、親戚との会食に移るところで、着替えてもかまいません。ただし、親戚が帰る前に、迎えたときと同じ服に戻れる時間があるかも、考えておいてください。
着替えるときは、色の段を下げずに、形だけを変えるのがいいでしょう。喪服のアンサンブルから、黒のニットと黒のパンツに替える、という程度です。会食のあいだに急に明るい色の服に着替えると、親戚の目には、法事が終わったように見えてしまいます。
会食のあとの片付けは、着替える時間としていちばん使いやすい時間です。親戚の多くが帰り、残っているのが家族と近い親戚だけになったら、洗い物の多い片付けに備えて、上を黒のニットに替えるなどして動きやすくしてかまいません。そのときも、最後の親戚を玄関で見送るまでは、色は黒のままにしておきます。見送りのときだけ上着を羽織り直せば、迎えたときと同じ印象で送り出せます。
着替えるための部屋と時間を、前日のうちに家の人と決めておいてください。当日になって、着替える部屋がない、着替える時間がない、ということにならないためです。
前日の準備と、当日手元に置くもの
最後に、前日に準備しておくものと、当日に手元に置いておくものをまとめます。
前日に決めておくのは、台所に立つ回数、着る服、前掛けと靴下と上着を置く場所です。台所に立つ回数は、施主か台所を取り仕切る人に聞いて数えます。着る服は、回数に合わせて、喪服のアンサンブルか、黒の上下に分かれた服かを選びます。前掛けと靴下と上着を置く場所は、台所の入口近くで、座敷から見えないところに決めておきます。
当日、手元に置いておくのは、次のものです。前掛け1枚、厚手の黒い靴下1足、黒の上着かカーディガン1枚、粘着式の衣類用クリーナー1本、乾いたタオル1枚。料理を回す人は、上か下の替えを1枚。これらを、小さな手提げ袋にまとめて、台所の入口に置いておきます。
当日の朝は、袖を押し上げて落ちてこないか、前掛けがすぐに外せるか、靴下をすぐに脱げるかを、一度だけ確かめてください。人が来てから慌てないために、動きを先に試しておくのがいちばんの準備です。
自宅で法事を営む日は、迎える人も、手伝う人も、座る人も、同じ家の中で一日を過ごします。台所に立つ回数を先に数えておけば、その一日のあいだ、服のことで手を止めることはなくなります。
よくある問い
- Q. 自宅で法事をするとき、家族の女性も喪服を着るべきですか
- 一周忌や三回忌までは、迎える家の女性は喪服を着ることが多く、親戚もそれに合わせて来ます。七回忌以降や、家族だけで営む場合は、黒や濃紺の落ち着いた服に下げることもあります。ただ、台所に立つ人は、喪服のワンピースだと袖と裾が動きにくいので、黒の上下に分かれた服にして、前掛けを合わせると一日を通して困りません。
- Q. 法事の日にエプロンをしてもいいですか
- 台所でお茶や料理を準備するあいだは、黒・濃紺・濃い灰の無地の前掛けなら問題ありません。柄や明るい色のものは避けてください。読経や焼香のあいだは外して、台所の入口近くにかけておきます。お坊さんや親戚の前に出るときに外すと覚えておけば、迷いません。
- Q. 自宅の床が冷えるので、黒いタイツを履いてもいいですか
- 読経のあいだ座敷に座るなら、薄手の黒いストッキングが基本です。家族だけの法事で、施主がよいと言っているなら、60デニール前後の黒いタイツでもかまいません。迷うなら、ストッキングの上に厚手の黒い靴下を重ねて台所に立ち、座敷に入る前に靴下だけ脱ぐ形にすると、両方に対応できます。
- Q. 法事の途中で服を着替えてもいいですか
- 読経と焼香が終わって、会食の準備に移る時間なら、着替えてもかまいません。ただし、お坊さんが帰る前と、親戚が帰る前は、迎えたときと同じ服でいるのが落ち着きます。着替えるなら、上だけを黒のカーディガンからニットに替えるなど、色の段は下げずに動きやすさだけを変えてください。
— メグラシ編集部





