撥水ロングコートの選び方|ショート丈との違いは、傘の影から出る裾と、地面からの跳ね返り

秋の長雨に、久しぶりにロングを出した日
傘を差して駅まで歩いて、着いたときにコートを脱いだら、肩はまだ乾いているのに、膝から下だけ色が濃くなっている。撥水と書いてあった一着なのに、と思う。
けれど、これは生地が負けたのではありません。丈が長くなると、濡れる方向が上から下へ入れ替わるからです。
ショート丈のときに効いていた守り方が、ロングではそのまま使えません。9月後半から11月にかけて、雨に当たる日が増える前に、一度だけ確かめておくと、出す一着が変わります。
結論:ロングで濡れるのは、傘の影から出た裾と、地面から跳ね上がった分
上から落ちてくる雨は、肩と背中に当たります。ここは撥水が効いていれば玉になって転がり、丈が長くても短くても同じです。
ロングで先に濡れるのは、その下です。決めているのは2つあります。傘の影が足元でどれだけ横にずれるかと、地面からの跳ね返りが床上何cmまで上がるかです。
| 決める場所 | 目安 | 外したときに出ること |
|---|---|---|
| 傘の影のずれ | 風のある日で足元は横に約90cm | 肩は影の中でも、膝から下は影の外 |
| 跳ね返りの高さ | 床上0〜35cm | 裾がこの帯に入ると、下から濡れる |
| 裾の床からの高さ | 40cm以上なら帯の上に出る | 25cmを切ると帯の真ん中に入る |
| 裾の始末 | 縫い代が内側へ折り込まれているか | 切りっぱなしの端から吸い上げる |
生地の性能は、この4つのどれにも関係していません。だから撥水の強い一着に買い替えても、同じ場所が濡れます。
傘の影は、足元では真下にない
雨が真下に落ちているなら、傘の真下はどこまでも安全です。けれど風がある日の雨は斜めに落ちます。
落下の速さに対して横向きの風がその半分ほどあると、雨筋はおよそ27度傾きます。傘を差している高さを1.8mとすると、傘の縁が作る影は、地面に届くころには横に90cmほどずれています。
- 頭と肩 ── 影の中心に近く、ほぼ守られる
- 腰から膝 ── 影の縁にかかり、半分ほど出る
- 膝から下 ── 影の外。傘は関係していない
傘を進行方向へ傾けると、顔と肩は守れます。かわりに足元の影はさらに後ろへずれ、膝から下は前から濡れます。ロングを着る日は、傘で足元まで守るという前提を外してください。
地面からの跳ね返りは、床上35cmまで
もう1つは下からです。落ちた雨粒は路面で砕けて、細かい粒になって跳ね上がります。歩道の舗装で、この粒がおよそ床上30〜35cmまで届きます。車の通る道の脇では、さらに上まで上がります。
ここで丈が効いてきます。床から裾までの高さを出すと、どの丈が帯の中に入るかが見えます。
| 着丈の目安 | 床から裾まで(身長160cm前後) | 下から受けるか |
|---|---|---|
| 80cm前後(腰から太もも) | 55cm前後 | 帯の上。受けない |
| 95〜100cm(膝前後) | 40cm前後 | 帯の上端に触れる |
| 110cm前後(ふくらはぎ) | 25cm前後 | 帯の中。受ける |
| 120cm以上(くるぶし) | 15cm前後 | 帯の中。水たまりもすくう |
雨の日に出る回数が多い一着なら、裾を床上40cm以上に置ける丈が扱いやすい範囲です。それより長い丈を選ぶなら、丈ではなく次の裾の始末のほうで決めてください。
裾の始末|吸い上げるのは、表ではなく端
撥水は生地の表面にかかっています。ところが裾の端は、生地を切った断面です。断面には加工が乗っていません。
ここに水が触れると、表面を転がるのではなく、繊維のあいだを上へ伝います。いったん伝い始めると、表がまだ弾いていても、内側だけが濡れていきます。脱いだときに裏地の下半分が冷たい、という状態はこれです。
家で確かめるのは2つです。
- 裾をめくって、切った端がそのまま出ていないか。縫い代が内側へ折り込まれて、押さえのステッチが入っていれば伝いにくい
- 裏地が裾まで付いているか。裏地が途中で終わっていると、表から伝った水が直接、中の服に触れる
折り込みの幅は3cm前後あれば十分です。ここを見るだけで、同じ丈の2着でも、脱いだあとの重さが変わります。
背中のベンツは、歩幅と引き換えに開く
ロングには、歩幅を確保するために背中や脇に深い切れ込みが入っています。歩くたび、ここが開きます。開いた隙間は、ちょうど跳ね返りが当たる高さにあります。
深さの目安は、床から裾までの高さの半分以内です。裾が床上25cmなら、切れ込みは12cm程度まで。これを超えると、止まっているときも閉じきらず、常に開いた線が残ります。
自転車に乗る日は、この切れ込みが前後に引かれてさらに開きます。ペダルを踏む日に出す一着は、切れ込みが浅いものか、前の重なりが深いものにしてください。
裾だけ先に弾かなくなる理由
撥水は面で均一に落ちません。線で先に落ちます。
ロングの裾には、2つのことが同時に起きています。跳ね返りが運んでくる細かい泥が乗ること。そして、歩くたびに脚が内側から当たって、表面をこすること。泥は水の粒が丸くなるのを邪魔し、摩擦は表面の繊維を寝かせます。
だから、肩がまだ玉を作っているのに、裾だけ色が濃くなる、ということが起きます。これは加工の寿命ではなく、落ち方の順番です。
弾かなくなったときの手当ては、順番を間違えると戻るものも戻りません。汚れを落とさずに熱をかけると、汚れごと定着することがあります。洗う、完全に乾かす、それから低い熱を当てる。熱を当てていい一着かどうかの見分けと、戻らないときの切り替えどきは、レインコートの撥水が効かなくなったときにまとめてあります。ロングの場合は、全体ではなく裾から確かめてください。弾かなくなったと感じる最初の場所が、たいていそこです。
選ぶ前に、その場で確かめられる3つ
見た目の丈は、着てみないと床からの高さに変わりません。確かめる順番は次の3つです。
- **鏡の前で、裾が床から何cmに来るかを見る。**膝の皿の下端がおよそ床上45cmなので、そこを基準にすると測らなくても見当がつきます。膝より下に5cm下りていれば床上40cm、ふくらはぎの真ん中なら25cm前後です
- **裾をめくって、端の始末と裏地の下端を見る。**縫い代が3cm前後折り込まれていて、裏地が裾まで届いていれば、同じ丈でも中まで届く水が減ります
- **背中の切れ込みに指を入れて、深さを測る。**指を縦に並べて、床から裾までの高さの半分を超えていないかだけ見ます
この3つは、雨の降っていない日にしか落ち着いて確かめられません。手持ちの一着でも同じ順番で見ておくと、次に雨の予報が出た朝に迷わなくなります。
場面で変わるところ
**通勤で、駅まで10分歩く日。**傘の外にいる時間は短いのですが、跳ね返りを受ける時間はそのまま10分です。裾が床上40cm以上に来る丈を選んでください。ホームや階段で止まるたび、裾が床の水の上に置かれます。
**子どもと一緒に歩く日。**歩幅が合わないぶん、立ち止まる回数が増えます。止まっているあいだ、裾は水たまりの上で静止しています。吸い上げる量は時間に比例するので、この日はいちばん長い丈を避けるほうが確実です。
**電車やバスに長く乗る日。**座ると、裾が座面と床のあいだで折れ、濡れた面どうしが重なります。重なったところは乾きません。座る前に、裾を一度ひざの上へ持ち上げてから腰を下ろすと、この重なりが減ります。
**旅先で、1日出たままの日。**替えがありません。乾かす時間も取れません。この日は丈より、裏地が裾まで付いているかを優先してください。表が湿っても、中の服まで届かなければ1日もちます。
よくある行き違い
**「撥水が強い一着なら、丈は長くても大丈夫」。**強さは、水が触れた表面での話です。傘の影の外に出ていることと、跳ね返りが当たる高さにあることは、どちらも強さでは変わりません。長い丈を選ぶなら、強さではなく裾の始末で補ってください。
**「濡れたのは裏地が薄いから」。**裏地の厚みではなく、裾まで届いているかどうかです。厚い裏地でも、膝の高さで終わっていれば、その下から伝ってきた水はそのまま中の服に触れます。めくって、裏地の下端がどこにあるかを見てください。
**「雨の日は短い丈にすればいい」。**短くすれば下からは受けませんが、そのかわり脚そのものが傘の影から出ます。守る対象をコートから脚に移しただけです。決めるのは長短ではなく、その日に傘の外で過ごす時間と、止まっている時間の配分です。
装いに活かすなら
秋から冬にかけて、雨の日と長い丈が重なる機会は増えていきます。そのたびに迷うのは、どれが強いかを比べているからです。
比べる相手を変えてください。**その日、裾が床から何cmのところにあって、傘の外に何分いるか。**この2つだけなら、玄関を出る前に決められます。丈は選べるものが複数あって初めて選択になるので、手持ちの中で床上40cmに来る一着がどれかを、雨の降っていない日に一度測っておくのが早道です。
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よくある問い
- Q. 撥水のロングコートは、ショート丈より雨に強いのですか
- 覆う面積は広くなりますが、雨に強いかどうかは別の話です。丈が伸びると、濡れる方向そのものが入れ替わります。ショート丈の裾は傘の影の内側にあり、地面からの跳ね返りも届きません。ロングの裾は傘の外に出ていて、しかも跳ね返りが当たる高さに入ります。つまりロングは、上からの雨を防ぐかわりに、下からの水を受ける面を増やしています。守れる範囲が広いのではなく、守るべき場所が変わると考えてください。選ぶときに見るのは撥水の有無だけでなく、裾が床から何cmのところに来るかです。
- Q. 傘を差しているのに、裾が濡れるのはなぜですか
- 雨が真下に落ちていないからです。風がある日の雨は斜めに落ちます。落下の速さに対して横向きの風が半分ほどあると、雨筋はおよそ27度傾きます。傘の高さを1.8mとすると、傘が作る影は足元では横に90cmほどずれています。頭と肩は影の中に入っていても、膝から下は影の外に出ている、という状態です。傘を進行方向へ少し傾けると肩は守れますが、その分だけ足元の影はさらに後ろへずれます。ロングを着る日は、傘で足元まで守るという前提を一度外してください。
- Q. 撥水のロングコートは、どのくらいの着丈を選べばよいですか
- 着丈そのものより、床から裾までの高さで決めてください。目安として、身長160cm前後の方が着丈110cmを着ると、裾は床上25cm前後に来ます。着丈120cmなら床上15cm前後です。地面からの跳ね返りは床上35cmまで上がるので、この2つはどちらも跳ね返りの帯の中に入ります。雨の日に出る回数が多い一着なら、裾を床上40cm以上に置ける着丈、身長160cm前後なら95〜100cm前後が扱いやすい範囲です。長さを優先したい日は、丈ではなく裾の始末のほうを見てください。
- Q. 裾だけ先に弾かなくなるのは、なぜですか
- 撥水は面で均一に落ちるのではなく、線で先に落ちるからです。裾には、跳ね返りの泥と、歩くたびに脚が内側から当たる摩擦の2つが集中します。泥は水の粒が丸くなるのを邪魔し、摩擦は生地の表面を寝かせます。だから同じ一着でも、肩がまだ弾いているのに裾だけ色が濃くなる、ということが起きます。手入れも裾から始めてください。汚れを落とさずに熱をかけると、汚れごと定着して戻りにくくなることがあります。順番と、熱を当てていいかどうかの見分けは、撥水を戻す記事のほうにまとめてあります。
- Q. 自転車に乗る日や、子どもと歩く日はどう選べばいいですか
- どちらも、裾が動く量が増える日です。自転車はペダルを踏むたびに裾が前後に開き、開いた隙間から水が内側へ回ります。この日は背中のベンツが浅いか、または前が深く重なるものを選んでください。子どもと歩く日は、歩幅が合わないぶん立ち止まる回数が増え、裾が地面の水たまりの上で止まる時間が長くなります。裾を床上40cm以上に置ける丈にするか、同じ丈でも裾の縫い代が内側に折り込まれているものを選ぶと、吸い上げる量が減ります。どちらの日も、裾が動く量と止まる時間の両方が増えると考えてください。
— メグラシ編集部





