撥水ダウンコート|表地の撥水と中のふくらみは別の話。雨で先に湿る3か所の違い

雨に当たった日の帰り、玄関でコートを脱いだとき、肩のところだけひんやりしている。翌朝ハンガーに掛けたまま触ると、片側だけ薄くなった気がする。
これは、表地の撥水が負けたのではありません。水は面から入るのではなく、線から入っているからです。
ダウンは、中に空気の層を抱えている上着です。他のコートと違うのは、濡れたときに困るのが表地ではなく、この層のほうだという点です。秋の長雨に入る前に、どこから入るのか、どう確かめるのかを整理しておきます。
結論:守るのは表地ではなく、中のふくらみ
撥水の加工は、表地の表面で水を玉にして転がすためのものです。ここまでは、他の上着と同じです。撥水と防水の違いや、傘の外にいる時間で選び分ける話は撥水コートと防水コートの記事にまとめてあります。
ダウンで話が変わるのは、その先です。表地を1滴通されると、中の空気の層がつぶれます。 一度つぶれると、水が抜けて完全に乾くまで戻りません。
つまり、ダウンにとっての濡れは「冷たい」ではなく「暖かくなくなる」ことです。同じ気温でも、乾いているときと湿っているときでは体感が変わります。だから見る場所も、表がどれだけ弾いたかではなく、中まで届いたかどうかに置きます。
早見表|先に湿る3か所と、家で確かめること
| 場所 | なぜそこから入るのか | 家で確かめること | 通る側 |
|---|---|---|---|
| 肩の上 | 面が水平になり、水が転がらない | 平らに置いて、肩の面が何cm水平か見る | 水平な帯が5cm以内 |
| キルトの縫い目 | 糸を通した穴が並んでいる | 縫い目を明るい方へ向けて透かす | 穴が点として見えない |
| フードの縁 | 布が折り返って溝になる | 縁を指でなぞり、溝に指が入るか | 溝が浅く、指が沈まない |
| ポケットの口 | 上向きに開いた線がある | 口の上にひさしの布があるか見る | 口の上に布がかぶる |
| 袖口 | 腕を下ろすと上側が受ける面になる | 腕を下ろして袖口の傾きを見る | 口が下を向く |
読み方はこうです。
- 5か所すべて通る|傘と併用すれば、長雨の時期でも中まで届きません
- 3〜4か所通る|30分程度までなら大丈夫です。それ以上は上に1枚要ります
- 2か所以下|雨の日は別の上着にしてください。ダウンは乾いた日に回します
① 肩の上|面が水平になる、唯一の場所
体に着いた上着のうち、水平になるのは肩だけです。ほかの面はすべて傾いているので、水は転がって落ちます。肩だけが受け皿になります。
平らな場所に広げて、肩の縫い目のあたりを横から見てください。水平に近い帯が何cm続いているかを見ます。
- 5cm以内|水がすぐ前後へ転がります
- 8cm以上|水が留まります。留まった時間の分だけ、生地の中へ押し込まれます
肩の帯が広くなるのは、肩に当て布や切り替えが入っている形です。見た目の落ち着きとは引き換えになるところなので、雨の日に着る一枚として選ぶなら、帯が狭いほうを見てください。
⚠️ 傘をさしていても、肩は濡れます。傘の縁から落ちた水が、いちばん当たるのが肩の外側だからです。傘があるから肩は大丈夫、とはなりません。
② キルトの縫い目|糸が通っている穴が並んでいる
ダウンには、中身が片寄らないように仕切りが入っています。表地ごと縫って仕切る作りだと、その縫い目に糸の穴が並びます。
撥水の加工は、生地の表面に乗っています。糸の穴は生地ではないので、加工が乗りません。 ここが、面がどれだけ弾いていても水が入る理由です。
確かめ方は、縫い目を明るいほうへ向けて透かすだけです。
- 穴が点として見えない|糸が太く、穴が埋まっています
- 穴が点の列として見える|そこから入ります。雨の日の時間を短くしてください
仕切りを表地とは別に作ってある形は、外側の縫い目が中まで貫通しません。ここは外から完全には見分けられませんが、縫い目を指でつまんで、中の空気がその線で切れているかどうかである程度分かります。線の上でも厚みが残っていれば、別に作ってある可能性が高いほうです。
③ フードの縁とポケットの口|布が折り返って溝になる場所
3つめは、布が二重に折り返っている場所です。折り返しの内側は溝になっていて、そこに水がたまります。
フードの縁は、指でなぞると分かります。溝に指の腹が沈むなら、雨のあいだそこに水の線ができます。かぶっていない状態のフードは背中の上で水平になるので、肩と同じ条件が背中にもう1つ増えることになります。
ポケットの口は、上を向いて開いている線です。口の上にひさしの布がかぶっているかどうかだけ見てください。かぶっていなければ、手を入れたときに指先が湿ります。ここは中身が直接濡れる場所なので、確認の価値があります。
袖口も同じ理屈です。腕を下ろしたとき、袖口の縁が下を向いていれば水は落ちます。上を向く角度で止まる形は、袖の中へ伝います。
撥水が効いているかは、濡れ色で分かる
効きの判定というと、水を落として玉になるかを見る方法がよく知られています。ダウンの場合は、もう1つ見るところがあります。濡れ色です。
水が当たったところの色が、周りより濃くなっていないか。ここを見ます。
- 色が変わらない|表面で留まっています。効いています
- 玉にはなるが、あとで色が残る|効きが落ちかけています。時間が長いと入ります
- すぐに色が濃くなる|すでに生地の中に入っています
見る場所は、肩と袖の上側です。ここがいちばん先に落ちます。着ているあいだ、いちばん多く物と擦れる場所だからです。面の真ん中はまだ効いていても、肩だけ落ちている、ということが普通に起きます。
効きは、洗うたびに少しずつ落ちます。着ている摩擦でも落ちます。シーズンの初めに肩だけ確かめておくと、その冬の使い方を先に決められます。
効きが落ちたときにできること
いくつか手はありますが、どれも確実ではありません。順番に書きます。
まず、洗って汚れを落とすだけで戻ることがあります。 表面に皮脂や埃が乗っていると、加工が生きていても水を引き込みます。洗える表示があるなら、洗ってしっかり乾かす。これが先です。
次に、低い温度の熱を当てる方法があります。加工の向きが整って戻る場合があると言われています。ただし、熱は表地や中の素材を傷めることがあります。 特にダウンは中が乾きにくいので、外側だけ温めて中に湿りが残ると、かえって良くありません。試すなら、洗濯表示を確認したうえで、裾の内側など目立たない場所で小さく試してから広げてください。戻らない生地もあります。
市販の撥水剤を使う方法もあります。これも、中まで完全に乾いてからでないと、湿りを閉じ込めることになります。手順そのものは製品の指示に従ってください。
⚠️ どの方法も、新品の状態まで戻るとは限りません。戻らなかったときのために、雨の日は別の上着を持っておくほうが確かです。 洗い方そのものはダウンを家で洗うときの記事に分けてあります。
秋の長雨に、ダウンを出すかどうか
9月の後半から10月にかけて、雨の続く時期があります。ここでダウンを出すかどうかは、気温ではなく濡れる回数で決めてください。
まだ最低気温が15度を超えているうちは、撥水の上着で足ります。この時期にダウンを出すと、寒さの役に立たないまま、濡らす回数だけが増えます。 効きは濡らした回数で落ちるので、本当に寒くなる頃に肩だけ落ちている、ということが起きます。
コートを出す気温の区切りそのものは気温とコートの境目の記事にあります。雨の日の上着の順番としては、長雨の時期は撥水の一枚で通し、ダウンは気温が下がってから出す。この順にすると、シーズンを通した持ちが変わります。
よくある行き違い
「撥水と書いてあるから、雨の日に着てよい」
書いてあるのは、表地の面の話です。縫い目の穴と、肩の水平な帯には及びません。
面の性能と、その一枚が雨の日に使えるかは別の判断です。 面が強くても、縫い目が貫通していて肩の帯が広ければ、30分で中まで届きます。逆に、面の性能が普通でも縫い目が別仕立てで肩の帯が狭ければ、同じ雨で中は乾いたままです。
「濡れたら、すぐ乾燥機にかければいい」
中に空気の層があるぶん、外側と内側で乾く速さが大きく違います。外側が乾いた時点で止めると、中は湿ったまま残ります。
そのまま仕舞うと、湿りが抜けないまま形が落ち着いて、次に出したときにふくらみが戻りにくくなります。乾かすなら、外側が乾いてからさらに時間をかけて、平らに置いたときに厚みが左右でそろうまで見てください。
「ふくらみが戻らないのは、中身が寿命だから」
一度で寿命にはなりません。濡れてつぶれた層は、完全に乾けばかなり戻ります。
戻らないときは、まだ中に湿りが残っているか、乾かすあいだに片側へ寄ってしまっているかのどちらかです。平らに置いて、手のひらで軽くたたきながら全体に散らしてから、もう一度乾かしてみてください。
まとめ
- ダウンで守るのは表地ではなく、中のふくらみ
- 水が入るのは面ではなく線。肩の上・キルトの縫い目・折り返しの溝
- 肩の水平な帯は5cm以内、縫い目の穴が点として見えないものを選ぶ
- 効きの判定は、弾くかどうかより濡れ色。肩と袖の上側を見る
- 効きが落ちたら、まず洗う。熱や撥水剤は素材を傷めることがあるので、小さく試してから
- 秋の長雨のあいだは撥水の上着で通し、ダウンは気温が下がってから出す
装いに活かすなら
線から入るという見方は、ダウンだけの話ではありません。縫い目・折り返し・水平になる面。この3つは、どの上着でも同じ場所にあります。手持ちの一枚を広げて、この3つがどうなっているかを見ておくと、雨の日にどれを着るかで迷わなくなります。
秋は、上着の順番を決める時期でもあります。雨の多い数週間をどの一枚で通し、どこからダウンに替えるか。先に決めておくと、濡らす回数が減って、冬のあいだの暖かさがそのまま残ります。
手持ちの上着をどう並べるかまで踏み込みたいときは、スタイリストが顧客プロフィールと在庫情報を踏まえて選定する形もあります。持っている数枚の役割を分けてもらう使い方です。
関連記事
— メグラシ編集部
よくある問い
- Q. 撥水のダウンなのに、なぜ中まで湿るのですか
- 水が入るのは生地の面ではなく、縫い目の線だからです。キルトの縫い目には糸を通した穴が並んでいて、そこは撥水の加工が効きません。加えて、肩の上は面が水平になるので水が転がらず、同じ場所に留まります。表地が弾いていても、線と水平面から少しずつ入るので、長く当たれば中に届きます。
- Q. 撥水が効いているかは、どう確かめればいいですか
- 水をかけて弾くかを見るより、濡れ色のほうが確かです。水が当たったところの色が濃く変わっていれば、すでに生地の中に入っています。玉になって転がっていても、あとで色が残るなら効きは落ちかけています。肩と袖の上側を、明るい場所で見比べてください。
- Q. 撥水が落ちたら、家で戻せますか
- 戻ることもありますが、確実ではありません。低い温度の熱を当てると加工の向きが整って戻る場合がある一方、熱は表地や中の素材を傷めることもあります。まず洗濯表示を確認し、目立たない場所で小さく試してから広げてください。市販の撥水剤を使う場合も、中に空気の層があるぶん乾きにくいので、完全に乾かしてから仕舞うことが前提になります。
- Q. 秋の長雨の時期に、ダウンを着てもいいですか
- 雨に当たる時間が短ければ問題ありません。ただし、まだ気温が下がりきらない時期にダウンを出すと、濡らす機会だけ増えて、本当に寒くなる頃に効きが落ちていることがあります。長雨の時期は撥水の上着で通し、ダウンは気温が下がってから出すほうが、シーズンを通した持ちが良くなります。
— メグラシ編集部





