はっ水(撥水)コートと防水コートの違い|秋のレインコートは雨に当たる分数で選ぶ

去年の秋に着たレインコートを、また出す時期になりました。袖を通して駅まで歩いて、着いてから肩を見ると、そこだけ色が濃くなっている。裾では水が丸まって転がり落ちているのに、肩は吸っている。買ったばかりのころは、どこに落ちた雨も同じように玉になっていたはずでした。
秋の長雨は、夏の夕立とは降り方が違います。強くはないのに、何日も続く。傘をさしていても風で横から当たり、台風が近づけば下からも来ます。降る量が同じでも、一着が水に当たっている時間が夏とはまるで違うので、去年まで足りていたものが今年は足りなくなります。足りなくなっているのは、丈でも厚みでもなく、表面が水を弾く力のほうです。
結論:傘の外にいるのが20分までなら撥水、それを超えるなら防水
撥水と防水は、同じ売り場に並んでいて同じ場面で使われますが、別の性質を指す言葉です。
撥水は、生地の表面に施した加工です。水が生地になじまず、丸い玉のまま転がり落ちます。ただし生地そのものには、糸と糸のあいだの隙間が残っています。だから水の量が増えて玉が保てなくなると、最後は通ります。
防水は、生地の裏側に薄い膜を貼るか樹脂を塗って、その隙間をふさいだ作りです。水は通りません。そのかわり、内側から出ていく湿気も通りにくくなります。
つまり、上下の関係ではなく、得意な時間の長さが違います。 撥水は短い時間に強く、防水は長い時間に強い。だから決め手は、雨がどれだけ強いかではなく、傘の外で雨に当たっている時間が何分あるかになります。
早見表|傘の外にいる分数で、どちらが要るかが決まる
家を出てから屋根の下に入るまで、実際に雨が当たっている時間を数えてください。駅までの徒歩、園庭で待つ時間、車から玄関までの往復。その合計で読みます。
| 傘の外にいる時間 | 起きること | 向いている側 |
|---|---|---|
| 5分以内 | 水は玉のまま。生地はほぼ濡れない | 撥水で足りる。厚みより軽さを優先 |
| 5〜20分 | 肩と袖の外側に水が溜まりはじめる | 撥水。丈は膝が隠れるところまで |
| 20分以上 | 玉がつぶれ、生地が水を抱えて重くなる | 防水。縫い目の処理まで見る |
| 風を伴う雨・台風接近 | 横と下から当たり、生地に押し込まれる | 防水。裾が絞れる形を選ぶ |
20分という数字は目安です。風があると早まり、傘の下に入っている割合が高ければ延びます。
撥水が20分あたりで力を失うのには理由があります。表面に留まった玉は、数が増えるほど重くなり、自分の重さでつぶれて広がります。広がった水は隙間の上に居座ることになり、そこから少しずつ入っていきます。風はこれを加速させます。水を生地に押しつけるので、同じ降り方でも圧力が加わるからです。
効いているかを確かめる|水を一滴、5秒見る
いま手元にある一着が、まだ弾くのかどうか。これは着る前に判定できます。
乾いた状態で、肩の上に水を一滴だけ落とします。見るのは5秒後です。
- 丸い玉のまま残っている:撥水は生きています。傾ければ転がり落ちます
- 玉の輪郭が崩れて、生地の色が濃くなる:撥水は落ちています。そこはもう吸う側です
判定を肩でやるのには意味があります。落ちるのは一斉ではなく、順番があるからです。いちばん先に落ちるのは肩、次に袖の外側、そのあと背中です。 バッグの紐がこすれ、雨がまっすぐ当たる場所から順に減っていきます。裾がまだよく弾いているからといって、その一着が現役だとは限りません。
着ている最中にも同じことが読めます。袖を見て、水が筋になって落ちているなら効いています。布の色が部分的に濃くなっているなら、そこはすでに吸っています。色が濃くなるのは、水が繊維の隙間に入って光の通り方が変わったからです。表面に留まっているあいだは、色は変わりません。
撥水は洗うたびに落ちる|いつ効かなくなったと分かるか
撥水が落ちる原因は3つあります。洗うこと、こすれること、汚れることです。
洗濯では、加工そのものが少しずつ流れます。こすれでは、表面に立っている細かい毛が倒れたり擦り切れたりします。そして汚れは、いちばん見落とされます。皮脂やほこりが表面に積もると、水はその汚れになじんで広がるので、加工が残っていても弾かなくなります。
何回洗ったら効かなくなる、という数字は一着ごとに違うので言えません。そのかわり、確かめるタイミングを先に決めておくと迷いません。
- 季節の入り口(9月の初め):仕舞ってあった一着を出したとき、肩に一滴
- 本降りが続いた週のあと:2、3日続けて着たら、乾かしてから一滴
- 仕舞う前(11月の終わり):次の春に持ち越す状態を知っておく
この3回だけで、シーズンの途中で不意に濡れる日がほとんどなくなります。
熱を当てると戻る場合と、戻らない場合
弾かなくなった一着が、必ず寿命というわけではありません。戻ることがあります。
撥水の加工は、生地の表面にある細かい毛が立った状態でいちばん効きます。水の玉は、この立った毛の先端だけに触れ、その下の空気に支えられて丸くなっています。洗って乾かすと、この毛が寝ます。加工が残っているのに支えが崩れて玉が作れなくなる。これが、洗った直後にいきなり弾かなくなる正体です。
寝ているだけなら、低い温度の熱で並び直ります。やる前に、洗濯表示の乾燥とアイロンの記号を必ず見てください。熱がバツになっている一着には、この方法は使えません。
- 乾燥機が低温可:完全に乾いた状態から、低温で20分ほど回す
- 乾燥機が使えない:当て布をして、低温のアイロンを押しつけずに面の上を滑らせる
どちらも、濡れているうちにやっても効きません。先に完全に乾かしてから熱をかける、という順番です。
そのあと、もう一度肩へ一滴落とします。玉に戻れば、その一着はまだ何シーズンか使えます。戻らなければ、加工そのものが擦り減っています。このときは、あとから撥水を足す製品を使うか、防水の側へ替えるかの分かれ道です。足す場合は、生地の種類に合うかと色が変わらないかを、裾の内側で先に確かめてください。
着たあとの干し方|内側が濡れている理由は2つある
帰ってきた一着をどう扱うかで、次に着るときの弾き方が変わります。
玄関で軽く振って表面の水を落とし、肩幅の合う厚みのあるハンガーに掛け、前を全部開けて風の通る日陰に置きます。濡れたまま畳んで袋に入れると、折り目で生地どうしがこすれ、その線に沿って先に撥水が落ちます。
ここで迷うのが、内側が濡れているときです。外から入ったのか、内側にこもったのか。見分けは、濡れている場所でつきます。
- 縫い目のすぐ下や、ファスナーの脇が濡れている:外から入っています。針の穴と合わせの隙間が通り道です
- 背中の中央と脇の下が、うっすら全体に湿っている:内側の湿気です。体の熱で出た水分が、生地の内側で冷えて水に戻っています
後者は、防水の一着でよく起きます。水を通さないということは、湿気も抜けにくいということだからです。歩く距離が長い日は、内側に吸う素材を一枚入れておくと、肌に触れる感覚が変わります。
乾いたかどうかの判定は、脇と袖の内側でします。表の面が乾いていても、この2か所は遅れます。指で押して冷たさが残るならまだ途中で、乾いていれば10秒ほどで手のひらと同じ温度になります。直射日光は避けてください。低い温度を短くかけるのと、日に当て続けるのは別のことです。
場面ごとに、境目がずれる
同じ20分でも、当たり方が違えば結論が変わります。
通勤で駅まで歩く日は、傘があるぶん実際に当たるのは肩と袖の外側だけです。徒歩10分なら撥水で足ります。ただし電車を降りてからの道も足してください。往復で30分になっているなら、境目を越えています。
自転車に乗る日は、分数が同じでも撥水の側が先に負けます。走ることで風が生まれ、雨が正面から押しつけられるからです。距離が短くても、この日は防水の側で考えてください。
屋外で待つ時間がある日が、いちばん読み違えやすい場面です。 歩く時間は短いのに、受付の列や送り迎えで、動かないまま当たり続ける。立ち止まっている時間は、歩いている時間より生地に水が溜まります。20分を超えるなら防水です。
台風が近い日は、水が下から来ます。跳ね返りが裾の裏側に当たるので、表だけ弾いても内側が濡れます。裾が絞れる形か、丈が膝下まであるものを選ぶと、この道が塞がります。
よくある行き違い
「撥水と書いてあるから、雨の日はこれで足りる」
撥水という言葉は、その一着がどれだけ水を弾くかを表していますが、どれだけの時間弾き続けるかは表していません。同じ表示でも、5分向きと20分向きが同じ棚に並びます。見るのは表示ではなく、自分が傘の外にいる分数のほうです。
「内側が濡れたから、防水が壊れた」
濡れている場所を見てください。背中の中央と脇の下だけが湿っているなら、外から入った水ではなく、内側にこもった湿気が冷えて水に戻ったものです。生地は壊れていません。中に着るものを替えるほうが早く解決します。
「洗うと撥水が落ちるから、洗わないほうがいい」
汚れは、撥水を落とすのと同じ働きをします。泥はねの続く時期は、洗って熱で戻すほうが、汚れたまま置くより長く効きます。洗う・乾かす・熱をかけるの3つを一続きにしておくと迷いません。
装いに活かすなら
雨の日の一着を機能だけで選ぶと、着る日が減ります。20分を超える日が週に何度もあるなら防水の一枚が要りますが、それを毎日着ると晴れ間の出た帰り道で浮くので、長く外にいる日の防水と、駅までの距離に羽織る軽くて畳める撥水の、2枚で組むほうが現実的です。
どちらを先に足すか決めにくいときは、顧客プロフィールと在庫情報を踏まえて選定してもらう方法もあります。丈と色の候補が同時に手元にあると、鏡の前で比べながら自分の境目を決められます。
まとめ
- 撥水は生地の表面で水を玉にする性質、防水は生地そのものが水を通さない作り。得意な時間の長さが違う
- 決めるのは雨の強さではなく、傘の外で当たる分数。20分がおよその境目で、風があると手前にずれる
- 効きは乾いた肩に水を一滴落として5秒見る。玉のまま残れば生きている、色が濃くなれば落ちている
- 落ちるのは肩、袖の外側、背中の順。裾が弾いていても判定にならない
- 弾かなくなっても、完全に乾かしてから低い温度の熱をかけると戻ることがある
- 内側が濡れたときは場所で見分ける。縫い目の下なら浸水、背中と脇なら内側の湿気
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— メグラシ編集部
よくある問い
- Q. 撥水と防水は何が違うのですか
- 効いている場所が違います。撥水は生地の表面の加工で、水を玉にして転がり落ちさせる性質です。生地そのものには水の通る隙間が残っているので、長く当たれば最後は通ります。防水は生地の裏に薄い膜を貼るか樹脂を塗って、水の通り道そのものをふさいだ作りです。通さない代わりに、内側の湿気も抜けにくくなります。どちらが上という関係ではなく、雨に当たる時間の長さで使い分けるものです。
- Q. 撥水のレインコートは、どのくらいの雨まで持ちますか
- 強さよりも、当たっている時間で考えてください。傘の外に出ている時間が20分までなら、撥水で足ります。それを超えると、表面に残った玉が自分の重さでつぶれて、生地が水を抱え始めます。風があるとさらに早まります。風は水を生地に押しつけるので、同じ降り方でも隙間へ入る力が強くなるためです。台風が近い日や自転車に乗る日は、20分より手前で境目が来ると考えてください。
- Q. 洗ったら水を弾かなくなりました。もう戻りませんか
- 戻ることがあります。撥水の加工は、生地の表面の細かい毛が立っている状態でいちばん効きます。洗って乾かすとこの毛が寝るので、加工が残っていても弾かなくなります。洗濯表示で熱が使える一着なら、完全に乾かしたあとに低い温度の熱をかけると並び直ります。乾燥機が低温可なら20分ほど、使えないものは当て布をして低温のアイロンを押しつけずに滑らせてください。それでも染みるなら、加工そのものが擦り減っています。
- Q. 着たあとのレインコートは、どう干せばいいですか
- 玄関で軽く振って水を落としてから、肩幅の合う厚みのあるハンガーに掛け、前を全部開けて風の通る日陰に置きます。濡れたまま畳んで袋に入れると、折り目の場所から加工が傷みます。乾いたように見えても、脇と袖の内側は遅れて乾くので、そこを指で押して冷たさが残るならまだ途中です。直射日光は表面の加工を傷めるので、外に出すなら日の当たらない場所を選んでください。
— メグラシ編集部





