貝の口で車を運転する|背もたれに当たるか帯が上がるかで分ける

**運転席に座って、背中と背もたれの間に手のひらを差し込んでみてください。**手のひらが入らないなら、あなたは結び目が背もたれに当たっている人です。結び目を背中の真ん中から指4本ぶん横へずらしてから走り出せば、背中を背もたれにつけて座れます。
手のひらは入るのに、座ったとたんにみぞおちが詰まる人は、帯が上がっている人です。こちらは結び目の位置ではなく、胴に巻く高さを直します。腰骨の上まで帯を下げて巻き、運転席に座ってから脇で帯をひと下げしてください。
両方とも起きる人は、先に帯を下げ、そのあとで結び目を横へずらします。秋冬は羽織とコートで背中が厚くなるので、それらを脱いで助手席に置いてから座る、という順番も大事です。この記事では、どちらの人かの見分け方と、それぞれの直し方を順に書きます。
結論:当たる人は結び目を横へ、上がる人は帯を下へ
貝の口は結び目が平たく、お太鼓や文庫に比べると背もたれに当たりにくい結び方です。それでも車の座席は家の椅子より背もたれが深く、腰の部分が前へ張り出しているものが多いため、結び目の厚み1〜2cmが背中を前へ押し出します。
一方で、帯が上がるのは座ったときにお腹まわりの形が変わるからです。立って締めたときの帯の位置が、座ると数センチ上へ押し上げられます。
| 起きていること | 運転席での見え方 | 直す場所 |
|---|---|---|
| 結び目が当たる | 背中と背もたれの間に手が入らない | 結び目の位置と厚み |
| 帯が上がる | 帯の上端がみぞおちに近づく | 胴に巻く高さ |
| 両方 | 手も入らず、みぞおちも詰まる | 帯を下げてから結び目を横へ |
直す場所が違うので、片方の直し方だけ試して「変わらない」と感じた人は、もう片方の人だった可能性があります。
先に測る|運転席で、手のひらと指で確かめる
着付けが終わったら、走り出す前に運転席で2つ確かめます。
1つめは背中です。シートを普段の運転の位置に合わせ、背中を背もたれにつけるつもりで座ります。そのまま右手を腰の後ろへ回して、背中と背もたれの間に手のひらを差し込みます。手のひらが平らに入らないなら、結び目が当たっています。指先だけが入る程度も、当たっている側に数えてください。
2つめはお腹です。立った状態で帯の上端に人差し指を横に当て、そこから座ります。座ったあと、帯の上端が指の位置から指2本ぶん以上上へ動いたなら、帯が上がっています。指1本ぶんまでなら、座れば誰でも起きる範囲です。
この2つは1分もかかりません。家の椅子で測っても答えが出ないことが多いので、必ず乗る車の運転席で測ってください。
背もたれに当たる人|結び目を、背中の真ん中から指4本ぶん横へ
当たる人がまず試すのは、結び目の位置をずらすことです。帯の上下を両手で持ち、胴に巻いた帯ごと時計回りか反時計回りに回して、結び目を背中の真ん中から**指4本ぶん(6〜7cm)**横へ動かします。
背骨の両脇には、背中の筋肉が盛り上がった間に浅いくぼみがあります。結び目をそこへ逃がすと、背もたれの張り出しと結び目が重ならなくなります。どちらへずらすかは、シートベルトの金具と反対側にすると、ベルトを締めるときに手が結び目に触れません。
ずらしすぎて脇まで行くと、今度は座ったときに体の横で結び目が腕に当たります。手のひらを差し込んで平らに入る位置まで動かしたら、そこで止めてください。

背もたれに当たる人|たれを短く、結び目を薄く作る
ずらしても当たる場合は、結び目そのものの厚みを減らします。車で出かける日だけ、結び方を少し変えます。
- 手先を二つ折りにせず、一枚のまま結ぶ。折ると厚みが倍になります
- たれを結び目から出す長さを、普段より短めにする。目安は結び目の幅と同じくらい
- 帯板は前だけに入れ、背中には何も入れない
結び目の厚みは、指でつまんで測れます。親指と人差し指でつまんで、指の間が1cmを超えるなら厚い側です。秋冬の博多織や紬の半幅帯は、浴衣の頃に使っていた柔らかい帯より厚みが出るので、同じ結び方でも当たりやすくなります。
帯が上がる人|胴に巻く位置を、腰骨の上まで下げる
帯が上がる人は、立って締めたときの位置が、座る人にとっては高すぎるのが原因です。胴の帯の下端を、腰骨の出っぱりに指1本ぶんかかる高さまで下げて巻きます。
立っているときの見た目は、少し低めに感じるかもしれません。それでも座ると上へ押し上げられるので、車を降りて歩くころにはちょうどよい高さに戻ります。運転中と降りてからの両方で苦しくない位置は、立って合わせた高さより低いところにあります。
腰ひもの位置も一緒に見てください。腰ひもが高いと、その上に巻く帯も下げられません。腰ひもは腰骨のすぐ上で、前を少し下げ気味に結ぶと、帯の下端の居場所ができます。
帯が上がる人|座ってから、脇でひと下げする
低く巻いても、座ると少しは上がります。そこで、運転席に座ってシートベルトを締める前に、帯の両脇を親指で下へひと押しします。
両手の親指を帯の上端の脇(体の横の線)に掛け、帯ごと1〜2cm押し下げてください。前の真ん中を下げると帯の形が崩れますが、脇なら見えません。帯の下の着物が少したるむので、そのたるみを背中側へ送ってから背もたれに体をつけます。
1時間以上運転する日は、休憩で車を降りたときにもう一度、立ったまま帯の上端の位置を見てください。上がっていれば同じように脇で下げます。
シートベルトは、帯の下の腰骨に通す
腰のベルトは帯の上ではなく、帯の下の腰骨の高さに通します。帯の上を通すと、ブレーキのたびにベルトが帯ごとお腹を押し、上がる人はさらに上がります。
肩のベルトは胸の真ん中を通るように合わせ、帯締めや帯揚げをしている日は、その結び目にベルトが乗らないよう少し横を通します。貝の口に帯締めを通している人は、結び目を横へずらすと帯締めの結び目も一緒に動くので、ベルトと重ならないか座ってから見直してください。
秋冬は、羽織とコートで背中が厚くなる
秋冬の着物で運転するとき、浴衣の頃と大きく違うのは背中の厚みです。羽織を着たまま座ると、結び目の上に羽織の生地が1枚かぶり、背中と背もたれの間が詰まります。道中着や着物用のコートなら、さらに厚くなります。
- 羽織とコートは、運転席に座る前に脱いで助手席か後ろの席に置く
- 車内が温まるまでは、膝にショールを掛ける。肩に掛けると背中がまた厚くなります
- 着いたら、降りる前に羽織を着るのではなく、車の外で立ってから着る
羽織を着ると、結び目は羽織の下で少し潰れます。運転のために結び目を横へずらした人は、着いたら真ん中へ戻してから羽織を着てください。羽織を着る日の結び目の高さについては、貝の口がゆるむときの締め直し方に詳しく書いています。

どちらとも取れるとき①|当たるうえに、上がる
手のひらが入らず、帯も指2本以上上がる人は、順番を守ってください。先に帯を下げ、そのあとで結び目を横へずらします。
逆にすると、横へずらした結び目が、帯を下げたときにさらに下へ動いて腰に当たります。帯を下げてから座って手のひらを差し込み、まだ入らなければ結び目を横へ。これで両方が片づく人がほとんどです。
それでも当たる人は、背もたれの角度を見直します。背もたれを1段だけ後ろへ倒すと、腰の張り出しと結び目の位置がずれます。ただし倒しすぎるとハンドルが遠くなるので、肘が軽く曲がる範囲で止めてください。
どちらとも取れるとき②|車によって答えが変わる
自分の車では平気なのに、家族の車では当たる、ということがあります。座面が深く腰の張り出しが強い座席ほど当たりやすく、座面が高く背もたれが立った座席ほど帯は上がりにくくなります。
| 座席の形 | 起きやすいこと | 先にすること |
|---|---|---|
| 座面が低く、腰の部分が張り出している | 結び目が当たる | 結び目を横へ |
| 座面が高く、背もたれが立っている | 帯が上がりにくい | 確認だけでよい |
| 座面が柔らかく、体が沈む | 帯が上がる | 帯を下げる |
乗る車が日によって違う人は、毎回同じ締め方をせず、乗る前に手のひらと指で測ってから決めてください。
どちらとも取れるとき③|15分の運転と、1時間の運転
近所への15分なら、当たっていても腰が浮いたまま我慢できてしまいます。ところが1時間を超えると、背中が浮いた姿勢のまま肩と首に力が入り、着いたころには疲れが出ます。
15分以内なら結び目を横へずらすだけで足ります。1時間を超える日は、結び目を横へ、たれを短く、帯を低くの三つを全部やってから出かけてください。年末年始の帰省や、少し遠くの初詣のように長く座る日は、こちらの側です。初詣の服装そのものは初詣の服装|並ぶ時間が長い日の決め方にまとめています。
袖と足元|ハンドルと足もとで引っかかる所
帯とは別に、運転で気をつけたいのが袖と足元です。
袖は、ハンドルを回したときにシフトレバーやウインカーのレバーに掛かることがあります。袖口を膝の上に寄せて、たもとが体の横に垂れないようにまとめてください。長い距離なら、たすきを掛けて袖を上げておく方法もあります。
足元は、草履や下駄のままではペダルの踏み込みが安定しません。運転用の平たい靴を車に置いておき、乗るときに履き替えます。地域の決まりで運転に向かない履物が定められていることもあるので、履き替えるのを前提にしてください。足袋のままでも履ける、甲が浅めの靴が扱いやすいです。

着いてから、降りる前に直す順番
着いたら、降りる前に車の中で次の順に直します。
- シートベルトを外し、横へずらした結び目を背中の真ん中へ戻す
- 帯の上端を両脇で整え、前の帯板がずれていないかを見る
- 履物を草履に履き替え、外へ出てから立って裾を整える
- 羽織とコートは、外で立ってから着る
結び目を戻すときは、帯の上下を両手で持ち、体の前で帯をほんの少し持ち上げながら回します。持ち上げずに回すと、帯の下の着物の背縫いまで一緒にずれます。外に出たら、背縫いが背中の真ん中に来ているかを手で触って確かめてください。
よくある質問
Q. 貝の口以外の結び方なら、運転は楽になりますか 片ばさみや角出しのように、結び目が平たく背中に沿う結び方は当たりにくくなります。ただし帯が上がる人は、結び方を変えても上がり方は同じです。先に、どちらの人かを測ってください。
Q. 結び目を前で結んでから後ろへ回しています。運転のときも同じでいいですか 同じで構いません。後ろへ回すときに真ん中で止めず、指4本ぶん手前で止めればそのまま運転できます。着いてから残りを回して真ん中に合わせます。
Q. 帯を低く巻くと、立ったときにだらしなく見えませんか 腰骨に指1本かかる高さなら、立ったときは「少し低め」に見える程度です。座る時間が長い日は、座っているときの楽さを優先して、降りてから脇で帯を少し持ち上げて整えてください。
関連記事
— メグラシ編集部





