ニットの編み地の名前の違い|天竺・リブ・畦・ケーブルは、畝の幅とふくらみの2つで見分ける

ニットの棚の前で、同じような色の一枚が何枚も並んでいるのに、値札や説明の言葉だけが違う。天竺、リブ、畦、ケーブル、ワッフル。名前は並んでいても、どれが何を指しているのかは書かれていません。
けれど、この名前の並びは難しい分類ではありません。ほとんどが「縦に走る畝がどう並んでいるか」の呼び名です。
だから、指でなぞれば決まります。測るのは2か所だけです。
結論:畝の幅と、ふくらみの高さで決まる
編み地の名前を分けているのは、次の2つです。
- 縦に走る畝の幅が何ミリか(山から次の山までの距離)
- 畝が表に何ミリふくらんでいるか(山と谷の差)
この2つが決まれば、名前も、その編み地が得意なことも同時に決まります。模様の形を覚える必要はありません。
家で1分、手持ちのニットを測る
明るいところで、平らに置いて測ります。定規がなければ、指の腹の幅を目安にしてください。
- 胸の下あたりの平らな部分を選ぶ(裾のリブではなく、身頃の真ん中)
- 縦に走る筋が見えるかどうかを、まず目で見る
- 見えるなら、山から次の山までの幅を測る
- 指の腹を横に滑らせて、山と谷の段差を感じるか確かめる
- 交差する束が通っているかどうかを見る
筋が見えなければ、そこで終わりです。天竺の系統になります。
編み地の早見表
| 名前 | 畝の幅 | 山と谷の差 | 表情と得意なこと |
|---|---|---|---|
| 天竺 | 畝が見えない | ほぼ平ら | 面としてまっすぐ光を返す。薄手、すっきり |
| 細リブ | 1〜3mm | 浅い | 縦の線が細かく並ぶ。よく伸びて体に沿う |
| 太リブ | 4〜8mm | 中くらい | 縦の線がはっきり出る。線が縦に通って見える |
| 畦 | 4〜10mm | 深い | 厚みと空気の層。同じ糸でも重く見える |
| ワッフル | 3〜6mmの格子 | 中くらい | 縦だけでなく横にも段差。表面が立体になる |
| ケーブル | 束10mm以上 | 深い | 交差する束が影を作る。面の中に主役ができる |
| 透かし編み | 畝ではなく穴 | ― | 下に着るものが透ける。軽さが出る |
**畝が深くなるほど、編み地は面ではなく線の集まりとして見えます。**ここが、色より先に印象を決めている場所です。
天竺 ── 畝がない面
表から見ると、小さなV字が縦横に並んでいて、筋がほとんど見えません。裏返すと、横向きの半円が並んだ別の表情になります。
光を面として返すので、同じ色なら編み地のなかでいちばん明るく見えます。薄手に多く、秋の始まりに一枚で着る時期に向きます。
一方で、面が平らなぶん、体の形がそのまま表に出ます。中に着るものの縫い目や段差が出やすい編み地でもあるので、下に着るものの縫い目の位置を先に決めておくと落ち着きます。
リブ ── 縦の線が並ぶ
表と裏の畝が交互に並ぶ編み地です。横に引くとよく伸び、手を離すと戻ります。この戻る力があるので、袖口や裾の始末にもよく使われます。
見分けの目安は幅です。3mm未満なら細リブ、4mm以上なら太リブとして扱われることが多くなります。細いほど線が細かく並ぶので面に近づき、太いほど一本一本の線が独立して見えます。
**太リブは、縦に通る線の本数が少ないぶん、一本の線が長く見えます。**同じ丈でも、細リブより縦に伸びて見えるのはこのためです。
畦 ── 畝のあいだに空気が入る
リブと似た見た目ですが、畝のあいだに空気の層が入るので厚みが出ます。指でなぞると、山と谷の差がはっきり分かります。
伸び方も違います。リブが横にすっと伸びて戻るのに対して、畦はゆっくり伸びて、戻りも穏やかです。この違いは、平らに置いた状態で両端を持って、軽く横に引いてみると分かります。
厚みが出るぶん、同じ糸でも重く見えます。11月以降の気温に向く編み地です。
ケーブル ── 面のなかに主役を作る
束をよって交差させた編み地です。交差した場所に影ができるので、そこに視線が集まります。
見分けるときは、束の幅と本数を見てください。10mm以上の束が1〜2本だけ通っているなら、面のなかに主役が1つある状態です。面全体が束で埋まっているなら、面そのものが模様として働きます。
どちらを選ぶかは、合わせる相手で決まります。**束が1〜2本のものは、他に柄のある一枚と合わせても渋滞しません。**面全体が束のものは、それ自体が柄なので、合わせる下半身は無地の面に寄せると収まります。
ワッフル ── 縦だけでなく横にも段差が入る
ここまでの編み地は縦の畝で見分けましたが、ワッフルは横にも段差が入ります。表面に小さな格子が並び、そのひと枡ごとに浅いくぼみができます。
指でなぞると、縦に滑らせても横に滑らせても段差を感じます。この両方向の段差がある編み地は、ワッフルか、それに近い組織だと考えて構いません。
格子の一辺が3〜6mmのものが多く、細かいほど面に近づき、大きいほど立体に見えます。縦の線が通らないので、リブのように縦に伸びて見える働きはありませんが、そのぶん体に沿いすぎず、面が浮いたまま落ちます。10月の、一枚では寒く二枚では暑い時期に扱いやすい編み地です。
見分けに迷う組み合わせ
| 迷いやすい組 | 見るところ | 分かれ目 |
|---|---|---|
| 細リブと天竺 | 畝が目で見えるか | 1mmでも縦の筋が見えれば細リブ |
| 太リブと畦 | 山と谷の段差 | 指で段差をはっきり感じれば畦 |
| 畦とケーブル | 束が交差しているか | 交差があればケーブル |
| ワッフルと透かし編み | 穴が開いているか | 向こうが見えれば透かし編み |
**いちばん間違えやすいのは太リブと畦です。**平らに置くと同じに見えるので、必ず指でなぞって段差を確かめてください。厚みも重さも、ここで分かれます。
同じ色の2枚が、別の仕事をしている理由
手持ちに同じような色のニットが2枚あって、片方ばかり着ている、ということがあります。
たいていは色ではなく編み地の差です。畝の深い一枚は、影の線が増えるぶん、遠目に濃く見えます。畝のない一枚は、同じ色でも明るく、軽く見えます。つまり、色の名前は同じでも、置かれたときの重さが違います。
着ていない一枚は、合わない服ではなく、合わせる相手が決まっていない服であることが多くなります。畝の深さを測ってから、下半身を決め直すと動き出すことがあります。
組み直しの目安は、上下で畝の深さを揃えないことです。上半身の畝が深いなら、下半身は面のなめらかなものへ。上半身が天竺のように平らなら、下半身に段差のある素材を置いても渋滞しません。深い畝が上下に並ぶと、影の線が全身で増えて、一枚ずつの形が見えにくくなります。
季節と編み地の移り方
| 時期 | 向く編み地 | 理由 |
|---|---|---|
| 9月 | 天竺・細リブ | 面が薄く、一枚で着ても暑くなりにくい |
| 10月 | 太リブ・ワッフル | 畝が出て、下に一枚重ねても厚みが収まる |
| 11月以降 | 畦・ケーブル | 畝のなかの空気の層が効く |
屋内で過ごす時間が長い日は、この表より一段浅い畝に寄せておくと、室内で暑くなりすぎません。
移り方で迷ったときは、その日いちばん長くいる場所で決めてください。外にいる時間が長い日は畝の深いほうへ、室内が長い日は浅いほうへ。気温の数字より、滞在する場所のほうが体感を決めています。
畝の深さは、重ね方にも効きます。畝の深い一枚の上から上着を羽織ると、畝が押しつぶされて空気の層が減るので、思ったほど暖かくならないことがあります。上に厚いものを重ねる日は、中を浅い畝にして、外側で空気の層を作るほうが働きます。
よくある行き違い
「編み地の名前は模様の名前」 ── ほとんどは模様ではなく、畝の並び方の呼び名です。だから覚えるのではなく、測れば決まります。
「厚いニットほど暖かい」 ── 厚みを作っているのは糸の太さだけではなく、畝のなかに入る空気の層です。同じ厚みでも、畝の深いものと浅いものでは、体に近いところの温度の保たれ方が違います。
「名前は店ごとに違うから当てにならない」 ── 呼び名の幅はありますが、畝の幅とふくらみは誰が測っても同じです。名前が違っていても、測った2つの数字が同じなら、同じ仕事をする編み地です。
装いに活かすなら
手持ちのニットを3枚だけ出して、畝の幅と段差を測ってみてください。数字を書いておくと、次に選ぶときに「持っていない畝の深さ」が分かります。
同じ色を重ねて買ってしまうのは、色を見て選んでいるからです。畝で選ぶようにすると、手持ちのなかで役割が分かれていきます。
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よくある問い
- Q. リブ編みと畦編みは何が違うのですか
- どちらも縦に畝が走りますが、畝のふくらみ方が違います。リブは表と裏の畝が同じくらいの高さで交互に並び、横に引くとよく伸びて、手を離すと戻ります。畦は畝のあいだに空気の層が入るぶん厚みが出て、同じ畝幅でも表のふくらみが高くなります。指でなぞったとき、山と谷の差がはっきり感じられるほうが畦です。伸び方も畦のほうがゆっくりで、戻りは穏やかです。
- Q. 天竺とはどの編み地を指しますか
- 表から見たときに縦の畝がほとんど見えず、面が平らに続く編み地です。表側はV字が並んだ細かい目、裏側は横向きの半円が並んだ目になります。裏返すと表情が変わるので、どちらが表かを見分けたいときは目の形を見てください。畝がないぶん光が面としてまっすぐ返るので、同じ色でもいちばん明るく、すっきりと見えます。薄手のニットに多い編み地です。
- Q. ケーブル編みとアラン編みは同じものですか
- 重なっていますが、指している範囲が違います。ケーブルは縄をよったように束が交差する編み方そのものの呼び名で、アランはケーブルを含むいくつかの模様を組み合わせて面を構成する編み方の呼び名として使われます。つまりケーブルは部品、アランは構成の名前です。手持ちで見分けるなら、交差する束が1〜2本だけ通っていればケーブル、面全体がいくつもの模様で埋まっていればアランの系統と考えると見当がつきます。
- Q. 編み地によって、着られる時期は変わりますか
- 変わります。畝のふくらみが高いほど、編み地のなかに空気の層ができるので、同じ糸の太さでも体に近いところの温度が保たれます。9月から10月なら畝の浅い天竺や細リブ、11月以降は畦やケーブルのように畝の深いものへ移すと、気温の動きに合わせやすくなります。逆に暖かい室内で過ごす時間が長い日は、畝の深いものだと厚みが出すぎることがあります。
— メグラシ編集部





