シニア世代60代のファッションは、腕を前に上げて裾が3cm以上動かない服で決まる

60代のファッションで最初に見るのは、デザインでも色でもなく、腕を前に上げたときに裾が何cm動くかです。
一日着ていて疲れる服と、そうでない服の差は、着心地の柔らかさではなく、動くたびに服が体からずれるかどうかにあります。ずれる服は、無意識のうちに裾を直す動作が増え、その回数が積み重なります。この記事では、腕を上げて裾の動きを測るという1つの方法で、その差を試着の段階で見分ける手順を書きます。
最初の答え|腕を上げて裾が3cm以内
両腕を前にまっすぐ上げたとき、トップスの裾が3cm以上持ち上がらない服を選んでください。
3cm以内なら、一日を通して裾を直す動作がほとんど発生しません。3cmを超えると、腕を動かすたびに裾が上がり、下ろすたびに元に戻らないので、手で引き下げる回数が増えます。この回数が、夕方の疲れ方を分けます。
多くの方が着心地を判断するとき、生地の柔らかさや肌ざわりを基準にします。それも大切ですが、肌ざわりは着た瞬間に分かり、裾の動く量は一日過ごしてから分かります。試着室の数十秒で後者を確かめられるのが、この測り方の利点です。
判定①|指の本数で測る
道具は要りません。
鏡の前に立ち、トップスの裾の位置を指で押さえて覚えてください。そのまま両腕を前にまっすぐ上げます。裾が指からどれだけ離れたかを見て、指1本分ならおよそ2cm、指2本分ならおよそ3cmです。指2本分を超えていたら、判定は「動く」になります。
上げるのは前だけで足ります。横に広げる動作でも裾は動きますが、日常の回数は前に上げるほうが圧倒的に多いので、前で測っておけば実際の使い方に近い答えが出ます。
判定②|袖ぐりの深さと肩の縫い目
裾が動く量は、身幅ではなく、袖ぐりの深さと肩の縫い目の位置で決まります。
袖ぐりが浅い、つまり脇の下の位置が高い服は、腕を上げたときに脇の布が引っ張られ、その力が裾まで伝わります。脇の下に指が2本以上入る深さがあれば、腕を上げても布が余っているので、裾まで力が届きません。
肩の縫い目が肩先より内側にある服も、腕の付け根が縫い目に引っかかって同じことが起きます。縫い目が肩先か、それより外側にある形なら、腕を上げても布が回ってくれます。
早見表|腕を上げたときの裾の動きと対応
| 裾の動き | 指の本数 | 対応 |
|---|---|---|
| 動かない | 0本 | そのまま着られる |
| わずかに動く | 1本 | そのまま着られる |
| 指2本ぶん | 2本 | 境目。長い時間の日は下に1枚 |
| 指3本以上 | 3本以上 | 丈の長いインナーを入れる |
| 脇が突っ張る | ― | 袖ぐりが浅いので別の形を選ぶ |
境目にあたる指2本分の扱いを、次の項に書きます。
どちらとも取れる日|ちょうど3cm動く服
指2本分ちょうど動く服は、その日の過ごし方で扱いを変えてください。
座っている時間が長い日は、そのまま着て構いません。腕を上げる回数が少ないので、3cmの動きが積み重なりません。反対に、立って動く時間が長い日や、荷物を持ち上げる場面がある日は、丈の長いインナーを1枚下に入れておくほうが落ち着きます。
判定が境目のとき、服のほうを替えようとすると選択肢が減ります。中に足す一枚で調整できると考えておけば、境目の服も手持ちのまま使えます。
もう一つ、境目で答えが割れるのが素材です。伸びる素材は腕を上げた瞬間は3cm動いても、腕を下ろすと元の位置まで戻ります。伸びない素材は、上がったまま戻らないことがあります。腕を上げて下ろし、裾が元の位置に戻るかどうかまで見ると、境目の判断がつきます。戻るなら着られる側、戻らないなら中に一枚足す側です。
最後に、朝と夕方で結果が変わる服があります。朝は3cm以内でも、一日着ているうちに布が伸びて動く量が増えるものです。編み地のものに多く、夕方に裾を直す回数が増えていたら、その服は境目にあると考えてください。翌日からは中に一枚足しておくと、夕方まで同じ状態を保てます。
3cmを超える服を着るときの一手
好きな服が3cmを超えていても、手放す必要はありません。
丈の長いインナーを1枚下に入れてください。外側の裾が上がっても、中の一枚が腰の位置に残るので、肌が出ることも、裾を直す必要もなくなります。インナーの丈は、外側のトップスより5cm以上長ければ足ります。
インナーの色は、外側の裾から少し覗いても違和感のないものを選ぶと、覗いたときに直さずに済みます。同系色でそろえるか、外側より一段明るい色にしておくと、覗いた部分がそのまま重ね着の一部として見えます。
羽織りとアウターを重ねたら測り直す
トップス単体で3cm以内でも、上に羽織りを重ねると答えが変わることがあります。
外側の布が中の布に引っかかると、腕を上げたときに二枚が一緒に動きます。羽織りやアウターを着る日は、その一式を着た状態でもう一度腕を上げて測ってください。
引っかかるかどうかは、内側の素材の表面で決まります。表面のなめらかな素材は滑るので引っかからず、起毛した素材や編み地の粗い素材は引っかかります。羽織りの内側がなめらかであれば、重ねても単体のときと同じ結果になります。
季節ごとの目安
重ね着の枚数が増える時期ほど、測り直す価値があります。
薄手一枚で過ごす時期は、単体で測った結果がそのまま使えます。重ねる枚数が増えると、枚数のぶんだけ引っかかる箇所が増えるので、単体では3cm以内でも一式では4cm以上動くことがあります。
厚手の時期に楽に過ごすには、いちばん内側の一枚を表面のなめらかな素材にしておくのが確実です。内側が滑れば、外側が何枚重なっても、それぞれが独立して動きます。
袖の長さと裾の関係
袖が長い服ほど、腕を上げたときに裾が動きやすくなります。
袖の布が長いということは、腕を上げたときに引っ張られる布の量も多いということです。同じ形でも、七分袖と長袖では裾の動く量が変わります。長袖で3cmを超える場合は、袖をまくって手首を出すだけで、動く量が減ることがあります。
袖口が絞られている形も、腕を上げたときに袖口が手首で止まり、その力が肩から裾に伝わります。袖口の開いた形のほうが、裾は動きにくくなります。
袖の太さも関係します。細い袖は腕にぴったり沿うため、腕を上げると布が一緒に持ち上がります。袖にゆとりがあると、腕だけが上がって布は残るので、裾まで力が届きません。袖ぐりが深く、袖にゆとりがあり、袖口が開いている。この3つが揃った形が、いちばん裾の動かない形になります。
ボトムスとの合わせ方で動きを抑える
裾の動きは、ボトムス側の作りでも変わります。
ウエストにゴムやひもが入っていて、腰の位置で止まる形のボトムスは、トップスの裾が上がっても中の布が肌を覆ってくれます。反対に、腰骨より下で止まる形のボトムスは、トップスが3cm上がった時点で隙間ができます。同じトップスでも、合わせるボトムスによって直す回数が変わるということです。
トップスの裾をボトムスに入れる着方をすれば、動きの問題そのものが起きません。ただし入れた状態で腕を上げると、脇の下が引っ張られて窮屈に感じることがあります。入れる着方をする日ほど、袖ぐりの深さを先に確かめておいてください。
試着室での確認手順
試着室では、次の順で確認してください。
まず立って裾の位置を指で押さえます。次に両腕を前に上げて、裾が指から何本分離れるかを見ます。腕を下ろして、裾が元の位置に戻るかを見ます。最後に脇の下に指を入れ、2本以上入るかを確かめます。この4つで、一日着たときの結果がほぼ分かります。
かかる時間は20秒ほどです。買ってから気づくより、この20秒を先に使うほうが確実です。
試着室の鏡は正面しかないことが多いので、腕を上げた状態を横から確認したい場合は、写真を撮っておくと後から見返せます。正面からだと裾の動きは分かりますが、脇の下の突っ張りは横から見るほうがはっきり出ます。
同行者がいる日は、腕を上げた状態で背中側を見てもらうと、より確実です。背中側は自分では見えず、前が3cm以内でも背中だけ大きく上がっている形があります。肩の縫い目が後ろに回り込んでいる作りで起きやすい現象です。
買い足すときに見る順番
デザインを見る前に、袖ぐりの深さと肩の縫い目の位置を見てください。
この2つが条件を満たしていれば、腕を上げたときの動きはほぼ3cm以内に収まります。逆に、この2つが条件を外している服は、サイズを上げても解決しないことが多くあります。形が先、デザインは後、という順番にしておくと、試着の回数が減ります。
同じ条件を満たす形が見つかったら、色違いや素材違いで揃えておくと、以降の買い足しが楽になります。
よくある失敗|鏡の前で腕を上げずに決める
いちばん多いのが、着た姿を正面から見て、形と色だけで判断してしまう例です。
立っているだけの姿は、どの服でも整って見えます。差が出るのは動いたときで、動いた姿を試着室で確かめないと、家に帰ってから気づくことになります。腕を上げる動作だけは必ず入れてください。
もう一つは、下に着るインナーを変えて試着することです。試着室で薄いインナーを着ていて、実際には厚い一枚を下に着るなら、結果は変わります。ふだんと同じ枚数で試すか、少なくとも厚みの差を頭に入れて判定してください。
まとめ|3cmを覚えておく
60代のファッションで見るのは、デザインより先に腕を上げたときに裾が何cm動くかです。
両腕を前に上げて、裾が指2本分を超えて動かない。この1つを覚えておけば、試着室の20秒で一日の着心地が分かります。3cmを超える服も、丈の長いインナーを1枚下に入れれば、そのまま着られます。
好きなデザインを選ぶ幅は、この条件を持つことで狭まるのではなく広がります。着ていて楽な形が分かっていれば、色も柄も気兼ねなく選べるからです。
よくある問い
- Q. 3cmはどうやって測ればいいですか
- 鏡の前に立ち、裾がどこにあるかを指で押さえて覚えます。そのまま両腕を前にまっすぐ上げ、裾が指からどれだけ離れたかを見てください。指1本分がおよそ2cm、指2本分がおよそ3cmです。定規を当てる必要はなく、指の本数で判定して構いません。
- Q. なぜ腕を前に上げるのですか
- 日常でいちばん多い動作だからです。高い棚に手を伸ばす、電車のつり革を持つ、洗濯物を干すなど、腕を前や上に動かす場面は一日に何度もあります。横に広げる動作より前に上げる動作のほうが回数が多いので、こちらで測るほうが実際の着心地に近づきます。
- Q. 裾が上がってしまう服は着られないのですか
- 着られます。丈の長いインナーを下に1枚入れておけば、外側の裾が上がっても中の一枚が残るので、動作のたびに裾を直す必要がなくなります。手持ちの服を手放す前に、インナーの丈を変える方向を試してみてください。
- Q. サイズを大きくすれば解決しますか
- 解決しないことが多くあります。裾が上がるのは身幅の不足ではなく、袖ぐりが浅いことと、肩の縫い目が肩先より内側にあることが主な原因です。サイズを上げると身幅だけが増えて、袖ぐりの深さはあまり変わらない場合があります。判定は身幅ではなく、袖ぐりの深さと肩の縫い目の位置で行ってください。
- Q. 季節によって目安は変わりますか
- 重ね着が増える時期は、重ねた状態で測り直してください。中に1枚多く着ると、外側の布が中の布に引っかかって動きやすくなります。単体では3cm以内でも、重ねると4cm以上動く組み合わせがあるので、その日着る一式で確認するのが確実です。
— メグラシ編集部





