柔らかい帯の結び方|秋冬は帯の張りと胴の長さで結びを分ける

**柔らかい帯がゆるむ・つぶれる・下がる人は、結び方を練習する前に、帯の張りと自分の胴の長さを測ってください。**結びはその2つの組み合わせで決まります。
帯が柔らかいのは、薄くて軽いからの場合と、何度も締めて張りが抜けたからの場合があります。どちらも「柔らかい帯」ですが、同じ結びは向きません。そして同じ帯でも、胴が長い人と短い人では、結び目に要る量が違います。ここを分けずに結び方だけを真似ると、動画の通りに結べても、出かけて1時間で形が変わります。
秋から冬は、帯の上に羽織やコートが重なります。結び目の厚みがそのまま背中の形になり、座って立つたびに押されるので、夏の浴衣のときより条件がひとつ増えます。この記事は、帯の張りと胴の長さの測り方から、4つの組み合わせごとの結び、どちらとも取れるときの決め方、出先でゆるんだときの直し方までを、自分で確かめられる基準で書いていきます。
結論:先に帯の張りを測り、次に胴の長さで結びを決める
帯の張りが残っているか、胴が長いか短いか。この2つで4通りに分けると、向く結びがひとつに絞れます。
| 帯の張り | 胴の長さ | 向く結び | 気をつける所 |
|---|---|---|---|
| 残っている | 長い(指6本以上) | 貝の口を腰骨の高さに低く | 帯板を入れ、結び目を背中の中心に |
| 残っている | 短い(指4本まで) | 片ばさみ、帯幅を1cm折って細く | 結び目の上端を帯の上端から出さない |
| 抜けている | 長い | リボン返しで結び目に量を足す | 羽根は背中の幅の半分まで |
| 抜けている | 短い | 前で結ぶカルタ結び、たれを2回折って厚みを作る | 回すときは帯だけを滑らせる |
結び方の名前は、ここでは入口にすぎません。大事なのは、張りが残っている帯は帯そのものの力で形を保ち、張りが抜けた帯は結び目に重ねた量で形を保つという違いです。胴の長さは、その結び目をどの大きさにするかを決めます。
柔らかい帯で起きること|ゆるむ・つぶれる・下がる
柔らかい帯の困りごとは3つに分かれます。胴に巻いた部分がゆるんで帯全体が回る。結び目が座っているうちに平らにつぶれる。たれや手先が時間とともに下に落ちる。
3つは原因が違います。ゆるむのは、胴に巻いた2周が互いに滑っているからです。つぶれるのは、結び目が帯の張りで立っていたのに、張りが足りないからです。下がるのは、挟んだ手先やたれを押さえる力が、帯の重さに負けているからです。
自分の帯がどれで困っているかを先に見ておくと、あとの章で読む所が決まります。出かけた帰りに帯を外す前、鏡の前で後ろ姿を一度だけ見て、どこが変わっていたかを覚えておいてください。
測ること①|帯の張り:机の端から20cm出して垂れる角度
帯を幅のまま二つ折りにし、机の端から20cm出して手を離します。先がどこまで垂れるかを見ます。
机の面から45度より上で止まるなら、張りは残っています。真下に近く、70度より下まで垂れるなら、張りは抜けています。間で止まる帯は「どちらとも取れるとき①」で扱います。
兵児帯のように薄く柔らかい帯は、測らなくても張りがない側です。半幅帯は、新しいうちは張りがあり、何年も締めると芯の張りから抜けていきます。同じ帯でも年ごとに変わるので、季節の最初に一度測り直してください。
測ること②|胴の長さ:みぞおちから腰骨までの指の本数
着物を着る前に、みぞおちの一番くぼんだ所に指を横に当て、腰骨の上端まで指を何本並べられるかを数えます。手の大きさで差は出ますが、指4本までなら胴が短い側、6本以上なら長い側です。5本は「どちらとも取れるとき②」です。
胴が長い人は、帯を結んだあと、帯の上にも下にも着物の面が広く残ります。結び目に高さや量がないと、背中の真ん中に細い線だけが通って、帯が貧相に見えます。胴が短い人は逆で、帯の上下に余りがありません。結び目が大きいと、そこだけ盛り上がって、羽織の背中に出ます。
同じ「柔らかい帯」を結んでも、胴の長い人は量を足す方向、短い人は量を減らす方向に調整が入ります。ここを飛ばして結び方だけを揃えると、どちらかが合いません。
張りが残っていて胴が長い人|貝の口を腰骨の高さに低く
張りが残っている帯なら、貝の口が使えます。胴が長い人は、結び目の位置を腰骨の上端に合わせて、ふだんより低く結んでください。帯の上に残る着物の面が広がり、胴の長さが帯の上の部分に吸われて、帯だけが細く見えることがなくなります。
帯板は入れます。柔らかくなりかけた帯でも、帯板が胴の2周を平らに保つので、結び目を締めたときに胴が引っ張られてゆるみません。帯板は帯の幅より1cm狭いものを選び、前の中心ではなく、左の脇寄りに入れると、座ったときに当たりません。
結び目は背中の中心に置きます。胴が長い人は結び目を少し脇に寄せると背中が広く見えるので、中心を外さないでください。
張りが残っていて胴が短い人|片ばさみで、帯幅を1cm折って細く
胴が短い人は、結び目の上端が帯の上端から出ると、そこだけが盛り上がります。手順がいちばん少なく、結び目が平らな片ばさみが向きます。
結ぶ前に、帯の上端を1cmだけ内側に折って、帯幅を細くしておきます。半幅帯は幅15cm前後が多く、胴が短い人にはこの幅が肋骨の下から腰骨までを埋めてしまいます。1cm細くするだけで、帯の上に着物の面が指1本ぶん戻り、胴に余りが生まれます。
片ばさみはたれを胴の帯のあいだに挟むだけなので、張りが残っている帯なら、挟んだたれが帯同士の張りで止まります。張りが抜けていると落ちてくるので、この結びは張りが残っている帯だけに使ってください。
張りが抜けていて胴が長い人|リボン返しで結び目に量を足す
張りが抜けた帯は、結び目の中に帯の量を重ねて、その重なりで形を保ちます。胴が長い人は、その量を多めに取れます。
手先を長めに取って一度結び、たれを羽根の形に折って結び目の上に重ね、手先を上からかぶせて下に通します。羽根の幅は背中の幅の半分まで。それより広げると、羽織の背中で羽根の端が折れて、脱いだときに羽根だけが曲がっています。
結び目の高さは、帯の上端から指2本ぶん上までです。胴が長い人はここまで上げてよく、帯の上の面に結び目が少しかかることで、胴の長さが縮んで見えます。
張りが抜けていて胴が短い人|前で結ぶカルタ結び、たれを2回折る
胴が短く、しかも帯に張りがない組み合わせは、いちばん崩れやすい組み合わせです。結び目に量を足せば盛り上がり、足さなければつぶれるからです。
答えは、平らだけれど厚みのある結びです。カルタ結びを前で結び、たれを2回折って四角の中に重ねます。1回折りではつぶれるので、2回折って厚みを2cm前後にします。結んだあと右回りに後ろへ回しますが、張りがない帯は回すときに胴の帯がよじれるので、片手で着物の脇を押さえ、もう片手で帯だけを滑らせてください。
結び目の四角は、縦を帯幅と同じ、横を帯幅の1.5倍までに収めます。それより横に広げると、胴の短い背中では四角の端が脇に回ります。
秋冬だけの条件|羽織とコートの下で、結び目はどうなるか
羽織やコートを重ねると、結び目は背中と羽織のあいだで押されます。座れば背もたれに、歩けば羽織の重みに、脱ぎ着すれば袖を通す腕の動きに、1日に何十回も当たります。
ここで決まるのは、結び目の厚みです。厚みが3cmを超えると、羽織の背中が結び目の上でつっぱって、羽織の裾が後ろだけ上がります。前から見ても羽織の衿が後ろに引かれて、首の後ろが抜けます。
逆に、張りが抜けた帯を平らに結んで羽織を重ねると、結び目は押されるたびにつぶれて、羽織を脱いだときに帯だけが崩れています。だから秋冬の柔らかい帯は、厚み2cm前後で、押されても戻る結びに寄せます。この記事の4つの結びはすべてその範囲で書いてあります。羽根を何枚も重ねる結びは、浴衣の季節に戻しておいてください。
どちらとも取れるとき①|垂れる角度が45度と70度の間
机の端から垂らして、45度と70度の間で止まる帯は、張りがあるともないとも言えません。この帯は、半幅帯なら帯板を入れて「張りがある側」として結び、帯板を入れられない薄い帯なら「張りがない側」として結んでください。
判断に迷うなら、帯板を入れた状態で、もう一度机の端で測ります。帯板を入れた胴の2周は帯板の張りで保てますが、結び目の部分は帯そのものの張りで決まるからです。結び目に使う手先とたれだけを垂らして、45度より上で止まれば張りがある側の結びが使えます。
それでも迷うときは、張りがない側の結びを選んでください。張りがある帯で量を足す結びをしても崩れませんが、張りがない帯で張りを前提にした結びをすると、必ずつぶれます。間違えて損が小さい方に寄せます。
どちらとも取れるとき②|胴の長さが指5本
指5本は、長いとも短いとも言えない胴です。この人は、帯の位置で寄せ方を変えられます。
帯を腰骨の高さに低く締めれば、帯の上に面が残って胴が長い側として結べます。みぞおちに近く高く締めれば、胴が短い側の結びが合います。どちらに寄せるかは、着物の柄と羽織で決めてください。柄が肩から胸に多い着物なら帯を低くして上の面を見せ、裾に柄が多い着物なら帯を高くして下の面を見せます。羽織を着る日は、羽織の丈が膝下まであるなら帯の位置は見えにくいので、結びやすい側で構いません。
どちらとも取れるとき③|柔らかい帯しか手元になく、長く座る日
食事や観劇で長く座る日に、張りが抜けた帯しかないことがあります。この日は、結びを変えるより、帯の下に仮紐を1本足してください。
胴に帯を2周巻いたあと、帯の上端に沿って細い紐を1周回し、前で結んで帯のあいだに押し込みます。この紐が、座ったときに帯が下にずれるのを止めます。結び目は張りがない側の結びで、厚みを2cmに収めます。背もたれに当たっても、紐で胴が止まっていれば結び目だけがつぶれて、立ち上がったときに手を回して戻せます。
仮紐は腰紐でなく、幅2cm以下の細いものにしてください。幅があると帯の上端から紐の線が出ます。
出先でゆるんだとき|柔らかい帯は締め直さず、挟み直す
出先で帯がゆるんだとき、張りがある帯なら結び目を締め直せますが、張りがない帯は締め直すと結び目がさらにつぶれます。やることは、結び目を触らずに、たれと手先を挟み直すことだけです。
トイレの個室で、後ろに手を回し、落ちてきたたれの先を、胴に巻いた帯の2周目と1周目のあいだに、指1本ぶん深く差し込みます。差し込む位置は、前より少し中心寄りに。帯が1日で少し回っているので、元の位置に戻すとまたゆるみます。
胴の帯そのものが回ってしまったときは、前に回して直さず、羽織の上から両手で帯の脇を押さえて、腰骨の高さに戻すだけにしてください。それ以上は家に帰ってから直します。個室で帯を前に回すと、着物の上前が開きます。
よくある行き違い
柔らかい帯は締めればなんとかなる、という考えが最初の行き違いです。張りが抜けた帯を強く締めると、胴の帯は止まりますが、結び目には張りが戻りません。結び目は帯の量で保ってください。
もうひとつは、動画で見た結びをそのまま結ぶことです。動画の帯は新しくて張りがあり、結んでいる人の胴の長さはあなたと違います。同じ手順で結んでも、結び目の高さと量を自分の胴に合わせなければ、同じ形にはなりません。
最後に、羽織を着るから結び目は見えない、という考え方です。見えなくても、厚みは羽織の背中の形になります。秋冬は見えない結び目のほうに、気を使う季節です。
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よくある問い
- Q. 柔らかい帯だと、どんな結び方でもゆるんでしまいます
- ゆるむ原因は結びの名前ではなく、帯の張りが抜けているのに、張りを前提にした結びを選んでいることです。貝の口や片ばさみは、帯そのものの張りで形を保つ結びなので、張りが抜けた帯だと時間とともに平らにつぶれて、たれが落ちます。張りがない帯は、結び目に帯の量を足して形を保つ結び、リボン返しや、たれを一度折り返して結び目に重ねる結びに替えてください。それでもゆるむときは、胴に巻く2周目を1周目より指1本ぶん上に重ねると、帯同士の摩擦で止まります。
- Q. 帯の張りがあるかないか、自分では分かりません
- 帯を幅のまま二つ折りにして、机の端から20cm出して手を離してください。先が机の面から45度より下に垂れなければ張りが残っています。真下に近く垂れるなら張りは抜けています。間の角度で止まる帯は、この記事の「どちらとも取れるとき①」の扱いになります。半幅帯なら帯板を入れれば張りがある側として結べますし、兵児帯のように薄く柔らかい帯は、角度を測らなくても張りがない側です。
- Q. 胴が長いか短いかは、どこで見ればいいですか
- 着物を着る前に、みぞおちの一番くぼんだところに指を横に当て、そこから腰骨の上端まで、指を何本並べられるかを数えてください。手の大きさで差は出ますが、指4本までなら胴が短い側、6本以上なら胴が長い側と考えてください。胴が長い人は、帯を結んだあとに帯の上と下に着物の面が広く残るので、結び目に高さや量がないと帯だけが細く見えます。胴が短い人は帯の上下に余りがないので、結び目が大きいとそこだけ盛り上がって、羽織の背中に響きます。
- Q. 羽織を着るなら、結び目はどうでもいいのではないですか
- 羽織やコートの下に入っても、結び目の厚みはそのまま背中の形になります。厚みが3cmを超える結びは、羽織の背中が結び目の上でつっぱり、裾が後ろだけ上がります。逆に、張りがない帯を平らに結んで羽織を重ねると、座って立つたびに結び目がつぶれて、脱いだときに帯だけが崩れていることになります。秋冬は、結び目の厚みを2cm前後に収めたうえで、つぶれても形が戻る結びを選ぶのが、羽織の下での答えです。
— メグラシ編集部





