メグラシ
編集部から

着たい服がわからない|手放せない3枚から選ぶ軸を測る

メグラシ編集部//読了 11分
平らな場所に並べた数枚の服と、その上に置いた手。色と生地を手ざわりで確かめている場面

クローゼットの前で、着るものは選べる。でも「今日はこれが着たい」という感じが出てこない。似合うかどうかなら答えられるのに、着たいかどうかだけ答えが出てこない。

この状態は、感性が無いから起きるのではありません。選ぶ回数が足りていないだけです。

「着たい」は生まれつき持っているものではなく、選んだ回数の分だけ形になっていくものです。仕事と生活の都合で「無難」「失礼のない」「浮かない」を優先する日が続けば、選ぶ回数はそのぶん減ります。回数が減れば、輪郭は薄くなります。それだけのことです。

この記事は、その輪郭を手持ちの服から測り直す手順です。買い足しは要りません。使うのはクローゼットにある6枚だけです。

結論:着たい服がわからないのは、選ぶ回数が足りていないだけ

「似合う」は診断で答えが出ます。骨格・色・顔立ちを測れば、範囲が返ってきます。外から見える情報なので、自分以外の人にも測れます。

「着たい」は診断では出ません。測れる人が自分しかいないからです。そして自分で測るには、選んだ記録が要ります。記録は、選んだ回数の分だけしか貯まりません。

仕事の場に合わせる、家族の予定に合わせる、その場で浮かないほうを取る。どれも必要な判断です。ただ、この判断が続いた期間は、自分がどちらを取るかの記録がほとんど増えません。わからなくなるのは、そのためです。

そして、記録がゼロということはまずありません。理由は説明できないのに手放せない服が、たいてい何枚か残っています。あれが記録です。この記事では、その残り方から軸を読み取ります。

「似合う」と「着たい」は、出どころが違う

2つは似た言葉ですが、出てくる方向が逆です。

「似合う」は外から来ます。顔の下に置いた色が肌とどう並ぶか、肩の線が骨のどこに乗るか。見る人の側で起きることなので、鏡と他人の目で確かめられます。

「着たい」は内から出ます。袖に腕を通したときの手首の感じ、歩いたときに裾が脚に当たる回数、脱いだあとに肩へ残る軽さ。着ている本人にしか届かない情報です。鏡には映りません。

だから、鏡の前でどれだけ長く立っても「着たい」は出てきません。出てくるのは似合うか似合わないかの判定だけです。探していた場所が違っただけで、無いわけではありません。

診断を集めるほど「着たい」が見えにくくなることがある

診断の結果を持っている方ほど、この状態になりやすい面があります。

理由は単純で、診断は精度が高いからです。迷ったときに「範囲の中かどうか」で判断できると、朝にかかる時間が減り、失敗も減ります。便利なので、使う回数が増えます。

使う回数が増えると、選ぶ基準がそちら側に寄ります。範囲の中でいちばん無難なものを取る日が続くと、内側から出てくるほうの記録は増えません。診断そのものに問題があるわけではなく、便利さの副作用です。

メグラシは診断を扱っている媒体なので、この副作用は書いておく責任があると考えています。診断は範囲を返してくれますが、範囲の中のどこに立つかまでは決めてくれません。そこは選ぶ側の仕事として残ります。

準備:クローゼットから6枚を出す

用意するのは2つの束です。

束Aは、理由は説明できないが手放せない服を3枚。着る回数が多いかどうかは関係ありません。「もう着ないかも」と思いながら、処分の箱に入れられなかった服が該当します。

束Bは、買ったのに着ていない服を3枚。買った時点では気に入っていたのに、袖を通した回数が数えるほどしかない服です。

出したら、ハンガーから外して平らな場所に並べます。壁に掛けたままだと影が落ちて、色と生地の判定が変わります。

ここから先は、束Aと束Bを同じ5か所で比べます。印象の言葉は使いません。「かわいい」「落ち着く」「大人っぽい」は、比べた結果が出たあとに付ける名前であって、比べるための道具にはなりません。

測る①:顔の下に来る色の明度

服を顔の下に当てて、肌との境目を見ます。見るのは色の名前ではなく、明るさの差です。

手の甲を布の上に置いてください。境目がくっきり出るなら明度差が大きい状態、にじんで見えるなら明度差が小さい状態です。判定はこの2つだけで足ります。

束Aの3枚と束Bの3枚を、順に同じやり方で見ます。Aがそろって「にじむ」側、Bがそろって「くっきり」側に寄ることがあります。逆に寄ることもあります。どちらでも構いません。差が出たかどうかだけを記録してください。

測る②:襟の形と開きの深さ

襟は、形と深さの2つを見ます。形は、丸い・角がある・立っている・襟がない、の4つで足ります。

深さは、鎖骨のくぼみから開きの底までを指の本数で測ります。指1本、指2本、指3本以上。定規は要りません。毎回同じ指で測れば、比べるには十分な精度が出ます。

束Aの3枚がすべて指2本前後に集まる、という形で出ることがあります。形のほうも、Aが丸襟に寄る、Bが角のある襟に寄る、といった偏りが見えることがあります。

測る③:袖の長さと手首の見え方

袖は、手首の外側にある骨の出っ張りを基準にします。骨が完全に隠れる、骨の上に袖口が乗る、骨より上で終わる。この3段階です。

腕を下ろした状態と、前に出した状態の両方で見てください。動かすと袖口の位置が大きく変わる服と、ほとんど変わらない服があります。この違いは生地の性質と袖の作りから来るもので、着ているあいだの感じ方に直接つながります。

測る④:生地の音と重さ

生地は、目ではなく手と耳で見ます。

音は、布を握って離したときに出ます。しゃりっと鳴る、こすれる音がする、ほとんど鳴らない。この3つで分けます。鳴らない布は、動いても存在を主張しません。よく鳴る布は、歩くたびに自分の耳へ届きます。

重さは、片手で持ち上げて、肩にかかる感じで測ります。数字は要りません。軽い、中くらい、ずしりと来る、の3つで十分です。同じ厚みでも、繊維によって重さは変わります。

束Aが「鳴らない・軽い」に集まり、束Bが「鳴る・重い」に集まる、という出方はよくあります。逆のこともあります。ここでも、差が出たかどうかだけを見ます。

6枚の比較表

5か所を並べると、こういう形になります。値は例です。ご自身の6枚で埋めてください。

測る場所判定の書き方束A(手放せない3枚)束B(着ていない3枚)
顔の下の明度にじむ/くっきりにじむ・にじむ・にじむくっきり・くっきり・にじむ出た
襟の深さ指1/2/3本以上2・2・21・1・2出た
襟の形丸/角/立ち/なし丸・丸・なし角・立ち・角出た
袖と手首の骨隠れる/乗る/上乗る・乗る・上隠れる・乗る・隠れる少し出た
生地の音と重さ鳴る鳴らない/軽中重鳴らない軽・鳴らない軽・鳴らない中鳴る中・鳴る重・鳴らない重出た

差が出た場所が、あなたが実際に選んでいる軸

読み方は1つだけです。AとBで揃って別の値が出た場所が、あなたが実際に選んでいる軸です。

上の例なら、明度・襟の深さ・襟の形・生地の音と重さの4か所で差が出ました。この人は、顔まわりの境目が静かで、指2本ぶんの開きがあり、音を立てない軽い布を選び続けています。誰に教わったわけでもなく、選ぶたびにその方向へ寄っていた、ということです。

ここで出てくるのは好みではなく、選択の傾向です。好みは言葉なので、その日の気分で変わります。傾向は行動の跡なので、変わりにくい。「着たい」の輪郭は、こちら側から出てきます

束Bの3枚が悪い服だったわけでもありません。買った時点の判断は、その日の場面に対しては正しかったはずです。ただ、この5か所のどこかが自分の傾向とずれていたので、着る回数が伸びなかった。それだけです。

差が出なかったときにどうするか

5か所すべてで差が出ないことがあります。原因はだいたい3つです。

1つめは、束Bの3枚が「着ていない」ではなく「まだ出番が来ていない」だった場合です。季節の合っていない服や、行く予定のなくなった場面の服は、比べる材料には向きません。日常で使える範囲の服に入れ替えてください。

2つめは、束Aの3枚に、思い出の重みが強い服が混ざっている場合です。贈られた服や、大きな出来事の日に着た服は、選択の跡ではなく記憶で残っています。1枚なら残していいですが、3枚とも該当するなら選び直しです。

3つめは、測る場所が足りていない場合です。丈と膝の位置関係、ウエストの位置、ポケットの有無を足すと、差が出ることがあります。足すのは、自分で測れるものだけにしてください。

「似合う」と「着たい」がぶつかったとき、両方満たす必要はない

ここからが、実際にいちばん困る場面です。

測った結果、自分が選び続けている軸が、診断で出た範囲と一致しないことがあります。範囲は「境目がはっきり出る色」と言っているのに、手放せない3枚はどれも境目がにじむ側だった、というような状態です。

このとき、多くの方が「どちらが正しいのか」を決めようとします。決める必要はありません。1枚の服の中で、両方を同時に満たす必要がないからです。

装いは1枚ではなく、頭から足元までの積み重ねでできています。範囲を守る場所と、自分の軸を通す場所は、別々の場所に置けます。同じ服の同じ部分で争わせているから、二択に見えているだけです。

顔から遠い場所ほど「着たい」を優先していい

線引きは距離で引けます。理由は単純で、顔から離れるほど、顔映りへの影響が小さくなるからです。

顔からの距離具体的な場所優先していいほう
0〜30cm襟まわり・首元・耳もと・顔の横に来る髪「似合う」を優先
30〜60cm上半身の身頃・羽織るもの・胸元の柄半々。迷ったら「似合う」
60cm以上裾まわり・靴・バッグ・手もと「着たい」を優先していい

顔から60cm以上離れた場所は、相手が顔を見ているあいだ、視野の端にしか入りません。ここで範囲の外の色や形を使っても、顔映りはほとんど動きません。逆に言えば、ここは自分の軸をそのまま通せる場所です

「着たい」が強く出ている方ほど、この距離を使うと装いが動きます。靴と手もとを自分の軸で選び、顔まわりだけ範囲の中に置く。これで、鏡の前の判定と、着ているあいだの感じが、両方とも成立します。

顔の近くで「着たい」を通したいときの3つの逃がし方

とはいえ、いちばん着たい色や形が顔まわりに来ることもあります。諦めなくて構いません。逃がし方が3つあります。

1つめは、面積を減らすことです。範囲の外の色を、首元の全面ではなく、結び目や襟の内側だけに置きます。面積が小さいと肌との境目の長さが短くなり、影響もそのぶん小さくなります。

2つめは、あいだに1枚挟むことです。範囲の中の色を顔のすぐ下に1cmだけ見せて、その外側に着たい色を置きます。境目は範囲の中の色とのあいだで起きるので、外側は自由になります。

3つめは、光の条件を選ぶことです。同じ色でも、日中の屋外と夜の室内では境目の出方が変わります。範囲から外れた色を顔の近くで使いたい日は、照明のやわらかい場面に寄せると成立しやすくなります。

どれも、服を買い足さずに試せます。1つずつ試して、鏡の前で自分の目がどこへ行くか見てください。顔に行くなら、その組み合わせは成立しています。

「似合う」は範囲であって、命令ではない

ここまでの前提を、最後に置き直しておきます。

診断が返すのは範囲です。範囲は「この中なら顔映りで失敗しにくい」という地図であって、「この中から出るな」という指示ではありません。地図は歩ける場所を教えてくれますが、どこへ行きたいかまでは決めません。

範囲を外れた服が、いつも失敗するわけでもありません。外れているとわかったうえで、面積・距離・光の3つで調整して着るなら、それは失敗ではなく設計です。知らずに外れるのと、わかって外すのは別のことです。

診断の結果を捨てる必要はまったくありません。むしろ、範囲を知っているほうが、どこで自分の軸を通すかを決めやすくなります。範囲は制限ではなく、判断の材料が1つ増えたということです。

今日の一歩:1つだけ、理由をつけずに選ぶ

最後に、選ぶ回数を1回増やすための小さな手順を置きます。

明日の朝、顔から60cm以上離れた場所のものを1つだけ、理由をつけずに選んでください。靴でも、バッグでも、靴下でも構いません。似合うかどうかも、範囲に入っているかも考えません。手が伸びたほうを取るだけです。

夜、帰ってきたら1行だけ書きます。「今日のあれは、よかった」か「よくなかった」か。理由は書かなくて構いません。理由を書こうとすると、説明のつく答えのほうへ寄ってしまいます。

これを2週間続けると、選んだ記録が14件貯まります。14件あれば、この記事の5か所で測り直したときに、傾向が読み取れる量になります。「着たい」は思い出すものではなく、貯めるものです。

わからなかったのは、貯まっていなかっただけです。今日から1件ずつ増やせます。

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— メグラシ編集部

よくある問い

Q. 着たい服がわからないのは、自分の感性が無いということですか?
違います。「着たい」は生まれつき持っているものではなく、自分で選んだ回数の分だけ形になっていくものです。仕事や家族の予定に合わせる判断が続いた期間は、自分がどちらを取るかの記録がほとんど増えません。わからなくなるのは、そのためです。感性の有無とは関係がありません。
Q. 「似合う服がわからない」とは、どう違いますか?
出どころが違います。「似合う」は顔の下に置いた色と肌の並び方など、外から見える情報なので他人にも測れます。だから診断で答えが出ます。「着たい」は袖に腕を通したときの手首の感じや、脱いだあとに肩へ残る軽さなど、着ている本人にしか届かない情報です。鏡には映らないので、診断では出ません。
Q. 診断の結果を持っているのに、着たい服がわからなくなりました
診断は精度が高く便利なので、使う回数が増えるほど「範囲の中でいちばん無難なもの」を取る日が続きやすくなります。そのぶん、内側から出てくるほうの記録は増えません。診断そのものの問題ではなく、便利さの副作用です。範囲は返ってきても、範囲の中のどこに立つかは選ぶ側に残ります。
Q. 「似合う」と「着たい」がぶつかったら、どちらを取ればいいですか?
1枚の服の中で両方を同時に満たす必要はありません。線引きは顔からの距離で引けます。顔まわり0〜30cmは「似合う」を優先し、60cm以上離れた靴・バッグ・裾は「着たい」を優先して構いません。離れるほど顔映りへの影響が小さくなるからです。
Q. 手持ちの服が少なくても試せますか?
6枚あれば足ります。手放せない服3枚と、買ったのに着ていない服3枚です。着る回数の多さは関係ありません。買い足しは要らず、比べるのはクローゼットにあるものだけです。

— メグラシ編集部

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