子どもの卒業式で気づいた「親としての装い」|40代の節目の物語

末っ子の卒業式まで、あと2週間
ある2月の朝、リビングのテーブルに、小学校から届いた一枚のプリントが置いてあった。
「卒業式のお知らせ」
末っ子の小学校生活が、もう終わろうとしていた。長男の入学式から数えれば、私が「卒業式や入学式に出る親」をやってきた年月は、ちょうど12年。
そのプリントを手に、私はしばらくクローゼットの前に立っていた。「何を着ていこう」と装いを選びかけて、なぜか手が止まった。
ふと、口の中でつぶやいていた。「親としての装いって、何だろう」。
12年間の「無難な親」を、振り返ってみた
考えてみると、私はこの12年間、ずっと「無難な親」をやってきた。
入学式、卒業式、運動会、保護者会、参観日。どの装いも、紺かグレーか、ベージュ。デザインは、控えめ。アクセサリーは小さなパールだけ。
それは、「目立たないこと」が正解だと、勝手に思い込んでいたから。子どもの晴れ舞台で親が目立ったら、子どもがやりにくいだろう。他のお母さんたちと並んだとき、浮きたくない。
そういう、消極的な選択を重ねてきた12年だった。
でもその朝、私は気づいてしまった。「無難」は「自分らしさを諦めること」と紙一重だったことに。
20代の私は、深い色と質感が好きだった。30代の半ばまでは、好きな色を選んで装いを楽しんでいた。それが、子どもの行事に出るようになってから、いつの間にか「自分の好み」を一度しまい込むようになっていた。
末っ子の卒業式は、私にとって「親の装いの最終章」でもある。これからは、子の行事のために装いを選ぶ機会が、少しずつ減っていく。
その最後の節目を、「無難な親」のままで終えていいのだろうか。
答えはシンプルだった
問いを持って、その夜、私は紙に書き出してみた。
「親としての品」とは、どんな装い?
- 上品さ
- 清潔感
- 年齢相応
「自分らしさ」とは、どんな装い?
- 好きな色(深いネイビー)
- 好きな質感(艶のある素材)
- 好きなシルエット(Iライン、すっきり)
書き出してみて、私はようやくわかった。この2つは、ちっとも対立していなかった。
「上品さ」を諦めて「自分らしさ」を取るか、「自分らしさ」を諦めて「親としての品」を取るか。私はずっと二者択一だと思い込んでいた。
でも本当は、両方を一着の中に重ねればいいだけだった。「品のある装いの中に、自分らしさの一筆を入れる」。それだけで、両立する。
プロのスタイリストに相談した
翌週、私はプロのスタイリストに相談した。「12年ぶりに、自分らしい卒業式の装いがしたい」と。
スタイリストは、私のパーソナルカラーと骨格を確認してから、いくつかの候補を選んでくれた。
最終的に決めたのは、深みのあるネイビーのIラインワンピース。
膝下丈で、首回りはクリーンに開いていて、素材は上質なシルクジョーゼット。歩くと、生地がふわりと揺れる。
紺は「親らしい品」の色。Iラインと膝下丈は「年齢相応の清潔感」。そして、シルクの艶と首回りの開きは、私の「好きな質感」と「好きなシルエット」。
鏡の前に立ったとき、私はようやく思った。「あ、これが、私らしい『親としての装い』だ」。
20代から好きだった「深い色と質感」が、40代の節目に、もう一度私のもとに戻ってきた瞬間だった。
卒業式の朝、もう一度鏡の前で
卒業式の朝、私はそのネイビーのワンピースに袖を通した。
合わせたのは、母から譲り受けた小さなパールのネックレスと、控えめなパールのピアス。靴は、磨いたばかりの落ち着いたパンプス。
鏡の前で、何度も向きを変えて確認した。これは「親としての装い」だろうか。子どもの隣に並んでも、子どもより目立たないだろうか。
そして、もう一度、自分に問いかけた。「これは、私の好きな装いだろうか」。
答えは「はい」だった。3つの答えが、全部「はい」だった。それだけで、その朝、私はもう少しだけ背筋を伸ばして家を出られた。
娘の一言
式が終わって、帰りの車中で娘が言った。
「お母さんのワンピース、すごく素敵だった」
何気ない一言だったけれど、私は胸の奥が、ふっと温かくなるのを感じた。
12年間、「無難な親」で来た私が、最後の節目で「素敵な親」になれた瞬間。それは、自分のために装いを選んだら、結果として子どもにも喜んでもらえた、という発見でもあった。
「目立たないこと」を選んでいた12年間、私はいい親でいようとしていた。でも、本当に子どもが喜ぶのは、たぶん、**「お母さんがお母さんらしく、整っている装いの中にいること」**だったのかもしれない。
「親の装い」を更新する勇気
子育ては長い。一日一日が忙しくて、自分の装いを優先する余裕がない時期も、確かにある。
そんな日々の中で、「親としての無難」で済ませてしまうのは、ある意味、合理的な選択だった。
でも、節目に立ち止まる時、私たちは少しだけ装いに勇気を持っていい。「自分の好きな色」を、装いの中に入れる勇気。「自分らしいシルエット」を、選び直す勇気。
それを子どもが見ていてくれる。「お母さんって、こんな装いもするんだ」「お母さんは、お母さんでありながら、自分の人生も生きている」。装いは、そんな静かなメッセージにもなる。
子の節目は、親の装いの節目
入学式、卒業式、成人式、結婚式。子のために選ぶ装いだけれど、それは同時に、親としての自分を整え直す機会でもある。
「無難」で済ませてもいい年もある。でも、特別な節目だけは、自分らしさの一筆を入れてみる。
その一筆が、子どもにとっての「お母さんの記憶」になっていく。それは、子育ての豊かな副産物のような気がしている。
末っ子の卒業式は、私にとって、装いと自分の関係を見つめ直す、小さな転機だった。
あなたの節目を、月に一度の発見に
子育ての節目、自分の節目、人生の節目。装いは、その時々の自分を映す鏡です。
エアークローゼットでは、月に一度、プロのスタイリストが選んだ3着が 赤いairClosetの袋 に入って届きます。「子の隣で並ぶ装い」「自分らしさを少しだけ重ねた装い」。そんな出会いを、毎月の楽しみにしてください。
あなたの3軸を、メグラシで見つけよう
パーソナルカラー診断 / 骨格診断 / 顔タイプ診断
関連する編集部の本音
次に読むなら
よくある問い
- Q. 卒業式に着るのに「親らしい装い」のポイントは?
- 上品さ・清潔感・年齢相応の3つが基本。色は紺・グレー・ベージュ系の中間色がおすすめ。アクセサリーはパールなど控えめなものを。
- Q. 「無難すぎる装い」から脱したい時は?
- 一着の中に「自分らしい一筆」だけ入れてみてください。たとえば素材の艶、ネックラインの抜け、控えめなブローチ。全身を変えなくても、印象は変わります。
- Q. 40代の卒業式コーデで避けたいことは?
- 主役は子どもなので、過度に華やかな色・露出・大ぶりアクセは控えめに。「子の隣で並ぶ装い」をイメージすると選びやすくなります。
— メグラシ編集部





